抹殺された神の愛し子 作:貴神
また、一ヶ月を超えた…目標は年内の筈が…
お待たせしました
達也『…(啖呵切ってみたものの、さて、どうしたものか。一条の嫡子にカーディナル・ジョージか、反則だろう。もし、俺に魔法力があった場合…いや、考えるのはやめよう。)どうした?結那、加蓮…響子さん?』
天幕にいた真由美達に試合の準備をしてくると言い残し、達也は身体を温めるためにヨガのような体操をしたり、座禅を組んで瞑想をしていた
達也にしては珍しく、その表情は硬い
勝つということだけを目標にすれば、達成は出来る
が、そのあとに待ち受ける厄介事を考えれば、勝ち方を違和感の無いようにする必要がある
そんな厄介事を無いようにするには魔法力があればと、そんな邪な考えが脳を掠めるも頭を振る
随分と、深い思考に耽っていたのか
人の気配を察知するのが遅れる
しかし、家族達なら当然かと納得する
加蓮『達也。』
結那『達也さん。』
響子『達也君。』
物陰から現れた三人だが、その表情は達也を心配しているように見える
達也『三人とも、そんな表情をするなんて珍しい。そんなに俺が心配か?』
そんな三人を励ます達也
力を封印された状態ともとれる達也が負けると思っているのか、安心させるように微笑む
結那『そういう訳ではありません。』
響子『達也君こそ、何をそこまで思い詰めているの?』
三人の心配はそこではなかったようで
達也が必死に隠そうとしている事をあっさりと看破する
達也『…』
加蓮『勝つ自信はあるけれども、その後から起こるであろう、厄介事を考えているんでしょ?』
本当に、今は亡きあやめを含め、響子や結那、加蓮に勝てたためしがない
そんなに判りやすいのだろうか?
達也『らしくないとは思っているが、それでも家族に余計な火の粉が降りかかるなら…負ける方が良いとは思っている。』
それでも、考えてしまうのだ
このような表舞台に立てば、必然的に隠すのが難しくなる
ならば、出なかった方が良いのではないかと
響子『それは、達也君の独り善がりではなくて?』
そんな達也を否定する響子
達也『響子さん?』
最近、身内から叱られるのが多い気がする
原因は達也だけの問題でもないため、なんとも言えない
響子『今までも同じような事はあったわ。その障害を排除しても何も無かったじゃない?それに、何があっても家族はそんなに弱くはないわ。…違う?』
結那『響子さんの言う通りです。例え、十師族だろうと、世界が相手だろうと私達は負けません。だって、達也さんが守ってくれるでしょう?』
もし、仮に十師族引いては全世界の魔法師全てが敵に回ったとしても勝つ自信はある
そこが論点ではないが、家族が言いたいのは暴れても問題ないのだということだ
なんともおかしな励ましである
三人は達也がどんな時でも家族を優先し、家族の事だけを考えてきたのを知っている
守ると口にするのは容易いが、実行するとなるとどれほど難しいのかということも
達也『…そうだな。ごめんな、いつの間にかこんなに弱くなっていたよ。』
家族たちの応援に情けないと思いつつもそれ以上に嬉しいと思う
あやめの手紙で吹っ切れたと思っていたが、家族に迷惑を掛けてしまうのでは?という思考はどうしようもない
加蓮『弱くなってはいないわ。ただ、守るということが大変だと気付いただけよ。まあ、大変といっても達也の場合は、全てを守ると背負い過ぎて、私達を信頼していないだけなんだけどね?』
結那『安心して下さい、私達は強いです。だから、達也さんの思うように戦って、勝ってきて下さい。家族は達也さんの勝つ姿、何者にも邪魔されないその姿が好きなんですから!』
やはり、自分の原点はこの温かな家族なのだと改めて認識する
だからこそ、家族の想いに応えたい
加蓮『あと、はいこれを。封印用よ。今は、それで数日間は我慢して欲しいって。』
当初の目的は達也の力を封印するための媒体を渡すことだ
達也『あぁ、ありがとう。助かったよ…加蓮?それ指輪じゃあ。』
只でさえ、力を制限して戦わなければならないのに、封印が無かった間はそれを抑え込みながら戦うのは達也でも難しい
今も、気を抜けば瞳の色が蒼から白銀に変わり、
今までの三試合に関しては実力はそれほどであったために抑え込みながら出来たが、一条を相手にするには少し荷が重い
そのため、助かったと思っていたのだが
まさかの指輪とは
加蓮『そうよ?この封印は私達家族の事を強く思えば、思うほど強固になるように呪を施したの。繋がるためには指輪という概念が適当でしょう?』
頬を引き攣らせた達也に気にした風もない加蓮と結那
達也の表情を見ても、どうしたのだ?と
響子に関しては解らないわけではないという表情をしているが、結那と加蓮と同様の想いではある
結那『それもありますけど。変な虫がつかないようにするためもありますわ。あとは、その指輪は右の薬指に着けて下さいね。』
封印の説明を終えた後を引き継いだ結那は思い出したかのように達也に追い討ちをかける
女性陣から貰ったのが指輪(あくまで、封印ですよ?)で、虫除けのためとはー
達也『………アリガトウゴザイマス。』
有り難くもない追い討ちに達也は苦虫を十匹ほど噛み潰したような表情をするだけに留めるのだった
新人戦男子モノリス・コード 決勝戦
第一高校VS第三高校
ステージは草原ステージと見晴らしの良い状況だ
つまりは、何の障害物が無いということ
これまで一高は障害物のあるステージで勝ち進んできたため、この状況でどのような戦い方をするのか
そして、優勝候補筆頭の三高に対してどのうように戦うのか
観客の注目が集まっていた
もう一つ、的になっているのはー
エリカ『あはははっ!な、何あれ!あっははは、おっかし~!』
観客席で大笑いするエリカ
何に対して笑っているのかは言わずとも知れたこと
美月『エ、エリカちゃん!そんなに笑わなくても。』
エリカ『だ、だって。あの二人の格好見たら、笑うしかないでしょ!陰険な二人がマントとローブで更に陰険になってるし…クックッ。』
流石に、陰険は酷い
ほのか『エリカちゃん、流石に笑いすぎだと思うよ?ねぇ、雫?』
隣で聞いていたほのかも度が過ぎると思い、雫にも同意を求める
雫『確かに、あの二人の格好はどうかと思う。』
ほのか『雫~!』
が、見事に親友に裏切られたほのか
見た目には判別出来ないが、雫も口許が弛み、肩を震わせている
表情をあまり崩さない彼女においてはとても珍しい
それほどまでにおかしな格好だったのか
こちらは天幕からモニター越しに見ている真由美達
何故か、天幕にも一高スタッフが多く集まっていた
おそらく、一高全員が集まっているのだろう
観客席はすでに満席
あとは見れる場所といえば此処くらいのものだろう
しかし、いくら新人戦の決勝戦とはいえここまで集まるものなのか?
理由は、一つしかないだろう
それは、達也だろう
二科生ながらにして、この九校戦では数多くの選手を優勝や入賞に導いてきたそのエンジニアとしての腕前
そして、風紀委員として体術のみで一科生を取り締まってきた実績
なにより、達也自身があの一条に、十師族に勝つと断言したのだ
気にならない訳がない
真由美『なんで、守夢君は着てないのかしら?』
ふと、三人を見ていると違和感を覚えた真由美
達也と他の二人の装備が違うことだ
もし、達也がマントかローブを着用していれば、宛ら魔王か不気味な魔術師だろう
それはそれで恐怖は覚えるがー
摩利『あいつは攻撃の要だろ?動きにくい格好なんて出来ないだろう。』
摩利は達也の考えを理解しているようだ
鈴音『それに、彼はCADを四つ用意してますし、これ以上の装備は出来ないでしょう。』
鈴音は達也の装備に関して分析しているようで
普通は多くても二つのCADを持つが、達也は拳銃型を二つと両手首に一つずつという重装備すぎるスタイルだ
基本、CADを二つ以上装備していても同時になど不可能だ
それを達也は二つではなく、四つというセオリーを超えたことをしているのだ
気にならない訳がない
幹比古『…なんで、僕達二人だけ。』
と、ボヤく幹比古
手渡された時には達也の分もあると考えていたのだが、見事に裏切られた
達也『前衛の俺が着てたら、動き難いから仕方がない。諦めろ。』
ごもっとも
レオ『…この格好、絶対あいつ笑ってやがるぜ。』
レオはこの服装に関して不満を諦めたのか、学友?であるエリカに対して自分達の服装に関してどのような反応をするのかという予測を立てていた
まあ、当たっているのだが
エリカ『…あー、笑った。』
ひとしきり笑うのに満足したエリカの横で美月はおかしな物を見つけたような表情をしている
ふと、美月が大人しくステージの方向を見ていることに不思議に思ったエリカ
美月『?…吉田君の周りを精霊が…。』
いつの間にか眼鏡を外しており、一心に幹比古の周囲を見ている
幹比古は自分の周りに精霊が集まっているのを感じていた
中々感知することの出来ない精霊達が自分の周りに群がっているのが判る
達也『…どうだ、幹比古?そのローブの感想は?精霊がより感じられるだろう?』
達也も幹比古に集まる精霊が見えているため、ローブの効果は抜群と言えた
幹比古『凄いね。』
達也『だろう?』
思わず、感嘆の声を漏らす幹比古に達也も満足げな表情をする
なにせ、八雲に教わりつつ、自分の手で編んだのだから
嬉しさも一押しだ
幹比古『うん、流石は達也だね。精霊を認識出来るなんて。』
しかし、幹比古はが称えたのは達也のその元々備わっている能力の事を指していた
決して、ローブに関してではない
達也『一応、古式魔法の弟子の一人だからな。だが、一流には及ばないさ。精々、三流さ。』
幹比古に一体君は何者だい?と言外に問い掛けられた達也は曖昧に返す
決して、古式魔法の弟子だから見えるわけではない
幹比古『そういうことにしておくよ。』
まともな回答が来るとは思っていなかったため、落胆はない
謎の多い達也だが、こういうことに関しては信用に足る人物だということは理解していた
一方で、敵陣の三高陣営
吉祥寺『なんだ?あの装備は。』
一高のレオと幹比古が纏っているマントとローブに警戒が集まっていた
まあ、無理もないだろう
ルール上は問題無いとはいえ、誰も持ち込みの装備など想定していない
規定のルールに則っとるのが当然なのか、ルール上の穴を突いた達也が一枚上手なのか
ここでは、おそらく後者なのだが
相手側にとっては不気味でしかない
三高選手『そもそも、あんなのに許可が下りるとは思えないけどな。』
吉祥寺ともう一人は違反ではないのか?と疑いを掛ける
将輝『いや、大会委員会にチェックを貰わなければならないからそれはクリアしているんだろう。まさかとは思うが、ジョージの【
しかし、将輝は論理的に考え、あの装備が許可が下りたものだと理解する
そして、それが何のために用意したのかも推測を建てた
吉祥寺『確かに、あの魔法は貫通力はないけど。ただ、布一枚で防がれるようなものでもない。…読めない、守夢 達也。この期に及んで、こんな隠し球を用意していたのか。』
将輝の推論にあのエンジニアとして圧倒的な力を見せた達也なら策の一つや二つ用意していたとしてもおかしくはない
そして、この三人は気付いていないだろうが、先の発言は相手を軽視し、見下しているに他ならない
無知が生む、相手が自分達より優秀だということを認めたくないのだ
将輝『気にするほどじゃないさ、ジョージ。それにあんな布切れ一つで俺達の勝利を阻めることは出来ないさ。だろ?』
十師族の一員である彼でさえ、そのことに気付いていない
もしかしたら、そういった意識がすでに勝敗が決しているかもしれない
吉祥寺『そうだね、将輝。』
将輝の根拠のない勝てるという発言に安心感を憶える吉祥寺だが、結果はやってみなければわからない
達也らを分析しているのは三高だけではない、もう一家あった
大会委員『九島先生、このような場所に如何されましたか?』
そう、魔法師の大御所と呼ぶべき御仁だ
九島 烈
現段階では、九島 烈本人か九島家のどちらかが達也に興味があるのかは不明であるため警戒が必要だ
九島『なに。一条の嫡子の戦う姿を見ておこうかと思ってな。それに、第一高校のエンジニアであった者が決勝まできたのだ。興味があってな。(ここまでの試合で常人ならざる力を秘め、忍術まで行使している。初日での仕業があの者ならば。そして…)』
大会委員の面々が不思議そうに尋ねるも観戦者と同様な回答をする烈
十師族である一条の嫡子がどのような戦いをするのか、そして、エンジニアとして一躍名を馳せた守夢達也がどう抗うのか
しかし、烈の本心は別にあった
初日の出来事と嘗て、経験したことのある古式魔法に似ている点、そしてもう一つ
大会委員『九島先生?』
自分達の問いに対して答えた後、眉間に皺を寄せて黙した烈に不思議な彼ら
九島『なんでもない。』
大会委員会の面々に気にするなと言い含め、その場を終わらせたのだった
試合の開始のカウントダウンが始まった
泣いても笑ってもこれが最後の試合だ
達也は目を閉じ、呼吸を整える
久しぶりに緊張してしまうが、悪くはない緊張感だ
達也『(来い、十師族。)』
試合開始のブザーが鳴ると同時に自陣に魔法が現れる
しかし、それは瑠璃が砕ける音と共に一瞬の内に打ち消される
まるで、それは術式を押し潰すような
真由美『まさか、
初撃の偏倚解放を防いだなら未だしも、破壊するなど考えられる可能性は一つしかない
摩利『グラ…なんだ、それは?』
真由美の驚愕ぶりに摩利もただ事ではないのだろうと悟るもそれほどまでに凄いものだろうか?
しかも、高校三年間で初めて聞く名前だ
鈴音『
摩利や周りも名前が聞き取れなかったのか真由美に意識が向く
しかし、真由美は興奮状態で周囲の様子に気付いていない
鈴音が代わりに答える
摩利『それはそんなに凄いのか?確かに、一条の魔法式を破壊するほどだから相当だろうというのは解るが。』
確かに、達也の魔法力では将輝の魔法力には太刀打ち出来ないのは理解しているが、何が凄いのかが摩利や周囲のスタッフ達は解っていない
真由美『凄いなんてものじゃないわ。無系統魔法の超の付く高等の対抗魔法よ。圧縮された
事象改変のための魔法式としての構造を持たない
砲弾自体の圧力がキャスト・ジャミングも寄せ付けず、物理的作用は一切無いためどんな障碍物でも防ぐ事は出来ないという厄介さ
あと、可能なのは強力な
摩利『お、おぉ。…つまり、稀少な使い手ということだな?』
熱の籠った真由美の解説に思わず引いてしまう摩利
ここまで熱く語った真由美などついぞ見たことがないため、内容の理解が遅れてしまう
真由美『そうよ。これで解ったわ、彼が模擬戦で司波さんの魔法を破壊したのよ。全く、何処まで手の内を隠しているんだか!これ以上、何か隠し持っていても私は驚かないわ。』
模擬戦の時、深雪の暴走した魔法に真由美らは止めることも出来ず、手も足も出なかったのを涼しい顔して達也は止めたのだ
秘密主義にも程があると憤慨する真由美だが、秘密にしなければならないのだから仕方のない
摩利『…そう言えば、バスの時、【魔法式を吹き飛ばす魔法力はありませんよ】と言っていたな。…ということは。』
ようやく、冷静に物事が考えれてきたため、摩利はもう一つの状況を思い出していた
そう、達也は魔法力は無いと言っただけで他は無いとは言っていないのだ
単に自分達が深く考えれなかっただけのこと
鈴音『二回とも守夢君の仕業、いえ、おかげということですね。』
そのどちらも自分達の窮地を救っていた達也に恩しかない
鈴音は自分にも言い聞かせるように溢すのだった
天幕で客観的に見ても凄まじい光景ならば、対戦相手はもっと面喰らっているのは当然で
将輝は自分の作り出した魔法がいとも容易く破壊されて動揺していた
将輝『!?(なんだ?今のは錯覚か?いや、違う。)もう一度、確かめてみるか。』
頭をふり、切り替える将輝
今度は、二つ作り出すも瞬く間に達也によって破壊される
将輝『(間違いない。)
確証を得た将輝は自らを落ち着けるように言葉にする
吉祥寺『…それしかないね。尚の事、数で勝負だよ。』
将輝と同様に吉祥寺も達也が
しかし、作戦に変更はない
将輝『解っている。』
驚きはしたものの、将輝は実戦経験のある魔法師だ
どうやって攻めるべきかは解っている
愛梨『守夢 達也…恐ろしい男ね。(どこまで私達をこけにすれば、気が済むのかしら?…いえ、違うわ。彼は自分の出来る事を最大限にまで突き詰めた結果ということ。魔法力が無い分を別のもので。)』
愛梨も将輝vs達也の試合に興味があり、天幕で観戦していた
もっとも、将輝の魔法力で瞬殺と考えていたが、それが達也によって阻まれていることに恐ろしさを感じていた
そして、この試合により愛梨は魔法力が絶対だと信じていたが、達也の
そして、こちらは氷の女王?様
深雪『(なんて膨大な
達也の
これなら、模擬戦とバスの魔法に納得がいく
水波『深雪様?』
ブツブツと聞き取りづらい声を出している深雪に水波か不思議そうな表情をする
深雪『!何でもないわ。(しかし、何故これを隠す必要があったのかしら?普通なら…いいえ、あの男の性格なら他人を馬鹿にした行動をとるわ。)…全く、忌々しい男ね。』
水波の気遣いに大丈夫だと答え、達也が何故、このような隠すような行動をしていたのかを考える
本来ならば、隠す必要性は無い
しかし、あの達也だ
あの生意気な態度(←いえ、単に、魔法力の無い人間を軽視している深雪さんの主観だけです。)ならば、今までの行動にも合点がいくため、認識を改めるまではいかなかった深雪だった
そして、達也を特別に気にかけているもう一人の人物
観客席から試合を観戦していた夕歌
夕歌『凄い。身体的な力でも魔法で強化した魔法師より強いわね。けど、魔法力に関してはイマイチなのね。(でも、それを補って尚余りある力。相当苦労したはず。達也君、益々貴方の事が気になるわ。)』
彼女は純粋に達也の生い立ちとその他人に見せない苦労を察しようとしていた
達也は夕歌に自分の事は何も話していないが、彼女は今までの試合から表面的ではあるが、達也の分析をしていた
達也にとっては迷惑な話だが、夕歌自身の事を知って欲しいならば、夕歌自身が達也を理解する必要はあると思っていた
そういう点においては真由美やほのか、雫、愛梨他数名は教えてという受け身のスタンスであるため達也からの歩み寄りが無ければ関係は変化しない
その行動は経験からくるものかもしれないが、生来の人間性が出てくるのだろう
ある意味、夕歌の大きなリードと言えるかもしれない
外野が様々な思惑をしている中、達也は将輝に対して感嘆を抱いていた
達也『(肉体面は成長しているな。干渉強度に関しては、流石十師族といったところか。)さて、どう攻略したものか…(ボソッ)』
流石の達也もここまで魔法力の差に開きがあると、笑ってしまう
だが、諦めの笑みではない
そんなこと始まる前から判っていたことだ
だからこそ、どのようにして当てるのかが重要なのだ
摩利『そのグラムデモリッションとやらは、聞く限りでは相当の
鈴音『そういう訳ではないかと、彼は古式魔法の弟子でもありますので。その表現の仕方をするならば、彼はオーラウンダータイプでしょうね。』
パワーファイター
達也の場合は、強ち間違いではないが
しかし、十文字という例を出すと、尚更その方程式が変わってくる
真由美『胆力は凄いとは思うけど、魔法力は無いわよ?』
鈴音のオールラウンダーに魔法力は無いと訂正する真由美
鈴音『戦い方を表しているので、そこは関係ありませんよ。』
しかし、鈴音が言いたいのはスタイルというだけで魔法力や
達也には戦い方が多数あるということだ
十文字『歓談中悪いが、その守夢が防戦一方だぞ?』
話し込んでいたのか、十文字から達也の戦況が芳しくないらしい
達也『やるな。(やはり、攻撃を止めさせないことにはこちらも動けないな。そろそろ、あの二人も動く頃合いだろう。)』
将輝の攻撃を防いでいても、攻勢に移れていない達也
ちらりと三高陣営を盗み見れば、モノリスの前にいた吉祥寺ともう一人が何やらしゃべっているのを確認する
次の瞬間、吉祥寺が一高のモノリスへ走り出す
レオと幹比古に吉祥寺の相手は任せてはいるものの、牽制は必要だろうと考えるも一条の魔法により阻まれる
先程までの攻撃とは違い、圧倒的な物量にモノをいわせる作戦に出てくる
予想はしていたものの、いざ対処するとなると面倒臭いため、迎撃しつつもある程度は避けていく達也
そのため、地面には深さ30cmの直径約1mの大穴が出来ていく
更に、増えていく偏倚解放に嫌気が差してしまう
これでは、破壊行動をしているのか自分に感じてしまうではないか
達也『…(仕方がない。)』
普段はしない目を閉じるという行動をわざと行い、
イデアにアクセスし、存在を認識することができる能力だ
今回は、将輝の魔法発動を確認しその場所を特定していく
将輝から放たれる魔法の位置などの情報を読み取り
そして、上空に現れた魔法式を現れた瞬間に破壊していく
一秒も経たず、無数の魔法式を破壊した達也に観覧席から歓声が沸く
山中『藤林の言う通りか、使ったな。しかし…。』
モニター越しに達也が
それほどまでに魔法が現れてから破壊するまでの時間がこれまで以上に速いのだ
凛『あの一族に目を付けられると?』
これでリスクを一つ背負うことになったと山中
しかし、凛や浩也はそう思っていない
山中『そうだ。あと、もう一つ。』
浩也『かもしれないなぁ。だが、あの一族は魔法力を絶対としている。そして、自らを兵器としている。魔法力の無い達也は受け入れられんよ。…というか達也はやらん。』
浩也や凛は目をつけられるであろう相手が何を心情にしているのかも解っているため、そこまで心配はしていない
また、他の家が達也に接触してこようが、達也がはね除けるに違いない
かといって、純粋に達也が欲しいと言ってきても渡すつもりは毛頭ないが
結那『勿論です。』
加蓮『そうそう。所有権だのと言ってきたら、叩き潰してあげるんだから。』
この娘二人は達也のことになると暴走しがちだが、ここまで物騒な発言が飛び出してくるとは思わなかった
浩也『山中君の言う通り、あの御仁には気を付けてはおこうか。』
風間『無論だ。』
しかし、山中のもう一つについては懸念があったのは確かだ
はしたないですよと、凛が諫めつつも達也の義父である浩也と風間はこちらも準備だけはしておくかと確認しあうのだった
真由美『今、守夢君、一条選手の魔法が何処からくるか判っていたようだったわね。』
また、天幕でも達也の迎撃の速さが不可解だということが話題になっていた
魔法が現れてから
まるで、そこに現れることが判っていたかのように
鈴音『それこそ、第六感というものではないでしょうか?九重 八雲の弟子ならば、そういった修行はしていると思われますが。』
真由美『…そうよね。いつも彼に見透かされているから、下手に勘繰ってしまったわ。』
真由美の疑いもわからなくはない
しかし、達也がそこまでの千里眼に似た眼を持っているとは考えにくい
そもそも、そんな代物を人間に偶然の産物として得られるはずもない
徒人ならばーー
摩利『気持ちは解らなくはないがな。しかし、このまま防戦一方では、勝てないぞ?互いに距離を縮めている分、照準、魔法の発動も速くなる。守夢の攻撃は少ないためか防御しかしていないぞ?』
最初にあった600m以上の距離も互いに歩を進めているため、縮まる距離が倍だ
そのため、攻撃力の弱い達也は将輝の情報強化のみで防がれ、逆に将輝の魔法は自身の情報強化などでは力及ばずで防御出来ない
そのため、
魔法力の差が浮き彫りになってくる
十文字『それに
真由美『(達也君…。)』
十文字の言うことも一理ある
しかし、達也をそこらへんの常識で当て嵌めるなど愚の骨頂だ
十文字の懸念を気にしつつも、真由美は祈るしか出来なかった
所変わって、一高陣営
モノリスより約50m離れた位置でレオはある人物を待ち構えていた
吉祥寺『(来たね、…一人か。嘗められたものだね。それならそれで、こちらは…。)楽だね!』
それが、三高の頭脳であるカーディナル・ジョージだ
そして、基本コードという強力な手札を持つ人物でもある
レオに手を向け、魔法を発動させる
レオ『フンッ!』
しかし、レオは身に付けているマントを外し、風に靡かせ広げる
そこにレオの得意分野である硬化魔法を展開する
そうすると、レオのマントはピンと鉄板のように張ったものになる
その角を地面に突き刺し、自分の姿を隠す巨大な遮蔽物として使うようだ
吉祥寺『くっ!(見えない。これでは
そんな思考に気を取られた瞬間だった
吉祥寺の感覚では僅かな時間かもしれないが、その時間がレオに攻撃の余裕を与える
レオ『うぉぉ!』
達也自作の小通連を武器に二高にモノリスに鍵を撃ち込まれながらも見事に守りきったレオ(作中での活躍は見えなかったものの、きっちり成果は出してます)
飛翔体を伸ばし、吉祥寺めがけて振り抜く
吉祥寺『ちっ』
小通連の刃を避けるため、跳躍の魔法を使う
攻撃を凌いだと思いきや、左から風が巻き起こる
それに気付き何とか凌ぐ吉祥寺
吉祥寺『2対1か。(これは、幻術か!?もう一人も狙いが定まらないようにしてきてる。あの服にはこんな狙いがあったのか。これでは
二人が行く手を阻み、吉祥寺も上手く事が進まないことにやきもきする
そして、加勢に来た幹比古にも
視界がボヤけたのかと瞬きをするも変わらない
幹比古の魔法が思いの外、吉祥寺の余裕を奪い、レオに更なる追撃を許してしまう
レオ『もらった!うおりゃあ!』
吉祥寺『しまっ。』
気付いたときには遅く、眼前に小通連の刃が迫る
やられる、そう覚悟した
レオ『ぐあ!』
しかし、レオのがら空きの背中を圧縮された空気が襲う
攻撃の瞬間は、必ず自身の守りが薄くなる
そのため、攻撃のチャンスは自分のピンチにもなるのだ
吉祥寺『…っ、将輝!』
誰が自分を守ってくれたのかは一目瞭然
これほどの威力は限られた人物しかいない
見やれば、自分に視線を投げかけていた
ありがたい援護射撃で吉祥寺も調子を取り戻す
幹比古『なっ!?ぐうぅ…』
幹比古は思わぬ相手の援護の威力にたじろぐ
その所為でローブに掛けていた魔法が切れ、吉祥寺の
慌てて、ローブに魔法を掛けようとするも、その大きな隙を見逃してくれる訳もなく
体に加重魔法が掛かり、地面に伏してしまう
金縛りにあったかのように指一本すら動かせず、全身が圧迫され、骨が軋むように感じる
将輝『…(よし、これで…!?)』
達也を攻撃している合間を縫って、相棒である吉祥寺と一高のディフェンダー達の様子を窺っていた
理由はマントとローブだ
用意したのは守夢達也だと理解するのはさほど時間は掛からないが、効果は不明のため動向を把握しておく必要があった
そのお陰で、相棒の
二人の内一人は戦闘不能にした
もう一人は相棒だけで大丈夫だろう
これで、自分が守夢達也を仕留めれば三高の優勝だと
ーーーが、
忘れてはならないのは一つ
それは達也が常人離れした駿足の持ち主であることだ
最初にあった600m以上の距離も半分近くに縮まっている
障害物の無い草原ステージでその距離ならば、達也にとって余裕の間合いだ
併せて、将輝がレオ達に意識を向けた僅か数秒で楽に距離を縮めることが出来た
長々と説明したが、結論から言うと将輝の油断で達也が5m近くにまで距離を詰めていたということだ
将輝は数少ない実戦経験のある魔法師だ
その5mという距離は将輝を恐怖させた
更に、将輝を脅えさせたのは達也が纏っていた殺気だ
その二つが将輝に咄嗟の防衛本能を起こさせる
刹那の間に十六の魔法が達也を囲む
そのため、力を制御して発動させることなど不可能
一発一発が重傷以上の傷を負わせるに十分な魔法が十六発
将輝『(しまった、加減が…。頼む、避けてくれ!)』
発動した瞬間に、自分のミスに臍を噛む
しかし、発動したものをキャンセルすることは出来ない
対抗魔法である
強引であるために効率は極めて悪い
あまり知られていないが魔法式にも強度がある
干渉力の強い魔法式はその構造を維持しようとする力が強いサイオンの情報体だ
十師族である一条将輝のそれは相当なもので、達也といえど、並大抵のことでは破壊することは出来ない
力ずくで消し飛ばそうとするならば、それこそ、並の魔法師が一日では絞り出せないほどの大量の
それも一瞬で十六発分をーーー
最高機密の魔法を使うという選択肢は無い
間に合わないと瞬時に悟りつつも、この思考とは別に、この状況を好機と捉えていた
自分の魔法力では突き崩せなかった牙城が間合いを詰めることで将輝に精神的な余裕を失くさせることが出来た
しかし、
そのため、無惨にも時間切れという形で二発分の圧縮空気が達也を襲った
真由美『達也君!』
摩利『守夢!』
天幕のモニター越しでも判るほどの圧縮空気の威力に悲鳴があがる
他のスタッフ達も達也を心配する声があがった
ほのか・雫『達也さん!』
観客席から見ていた二人も達也が吹き飛ぶ様子に悲壮感が表れる
【肋骨骨折 肝臓血管損傷 出血多量を予測】
【戦闘力低下 許容レベルを突破】
【自己修復術式/キャンセル】
いつもなら自己修復術式はオートで発動させるが、この試合に限っては止めていた
というよりも、それすらも勝つための手段として考えていたからだ
一つ誤算だったのは将輝の圧縮空気が予想以上だったことだろうか
倒れることはなかったが、体が衝撃に耐えきれずに吐血する
達也『ガハッ(生身で受けるべきではなかったか、ここまで、成長しているとは思わなかった。)』
いくら鍛えているとはいえ、内臓までも鍛えることは難しい
しかし、鋼鉄にまで近い肉体は傷は負わなかったものの、肉体の内側を破壊するとは、魔法とは恐ろしいものだと感じた達也
将輝『なっ!大丈…』
まさか、意識があるとは思っていなかった将輝
思わず駆け寄ろうとするが、そのような行為は愚かに等しい
達也『油断が過ぎるぞ、十師族(あの頃から中身は変わっていないとはな。)』
言い終わらない内に左手を地面に叩きつけ、放出系統の魔法で達也の体内にある電子(静電気)を放出し、将輝の体を麻痺させる
大抵の人間は足腰の痺れで体勢を崩す
将輝も例外ではない
だが、僅かな痺れのため数秒のもので回復は早い
しかし、その僅かな時間でも達也にとっては十分すぎる時間だ
将輝『!?(吐血をしたのに、動けるのか!しかも、さっきの言b…)しまっ…』
片膝をついた将輝だが、端から見やれば達也に頭を垂れているようにも見えた
問題はそこではない
片膝をついたその頭の高さが達也にとって楽に攻撃が出来る位置ということだ
敵から視線を外してはならないのが戦場の常(ここはただの親善試合)だが、将輝は咄嗟に視線を落としてしまう
慌てて、頭を上げて視線を達也に向けると達也の右手が自分の顔の左側の耳元にあった
達也『じゃあな。(高校生になり成長したと思ったが、まだまだ子どもか)ボソッ』
将輝『まっ…(どういう意m…)』
待てと言い終える前に
まるで、悪人のような台詞と同時に達也の右手から乾いた大音量の破裂音が発生する
その音は瞬く間にステージを越えて観客席まで響き渡る
誰もが、音の大きさに耳を塞ぐ
魔法を行使していた吉祥寺ですら、そのあまりの大音量に振り返る
大音量の発生源と思われる達也と将輝を確認すると、あろうことか将輝が片膝をつき、見下ろす形で達也の右手が将輝の頭の横にあった
恐らく、音の発生源は達也のあの右手なのだろう
将輝の左耳に右手をやり、中指と親指を互いに押さえつけながら、一気にずらして音を発生させたのだ
要は指を鳴らしてその音を増幅させたのだ
その証拠に右手には特化型の振動系統のCADが着いていた
審判や選手、観客席等のこの試合を観戦している全員が見守る中、片膝をついていた将輝がグラリと地面に横たわる
次いで、達也も片膝をついた
そして、先程の吐血よりも多く、血反吐という形で口から溢れだす
達也『ガフッ!ゲホッゴホッ!…ハァァ…疲れた。少し休憩するか。(図体はでかくなり魔法の威力も上がったが、精神はまだまだだったようだな。だが、俺も油断したのは同じか。生身で受けるべきではなかったな。あとで嫌味の一つでも…いや、泣かれるかもな。)』
将輝の魔法から受けたダメージも何とか堪えきった達也だが、自身に何も魔法をかけずにはさすがに堪えた
これほどまでの威力とは思わなかったため、完全に達也の油断である
しかし、流石は一条と言ったところか
並の魔法師では達也に傷一つ付けられないところを将輝は達也に相当なダメージを負わせたのだから
そして、今回の試合も見ているであろう家族達にも心配をかけてしまった
そこについては達也も反省しかなかった
摩利『…なんて、体をしているんだ。奴は不死身なのか?』
将輝に勝利した達也に摩利達は畏怖していた
普通ならば、致命傷を与える位の魔法を達也は吐血する程度の傷にとどめ、尚且つ一条将輝を戦闘不能にしたのだ
十文字『確かにな。おそらくだが、修行では肉体の活性までやっているのだろう。それでも一条の魔法には耐えきれなかったか。急いで手当てをしなければならないだろうが、まだ試合中だ。医療班の手配だけはしておこう。服を着ているから判らんが、外傷と内側がどれだけ損傷しているかの見当がつかないからな。』
鈴音『そうですね。十師族一条選手の魔法を生身で受けた反動は想像もつきませんからね。…命だけでもあって良かったです。』
十文字や鈴音は将輝から受けた傷を心配する
摩利『…?(市原もなのか?それよりも…)!?真由美?お前何で泣いてるんだ?』
鈴音が小さく呟いた言葉に摩利は驚いていた
少し、場が静かだと思っていたら、肝心の真由美が静かすぎる
気になり、表情を窺えば何故か泣いていた
ギョッとして、肩を掴む
真由美『……て……た。』
摩利『?』
何か言っているが、聞き取れない
真由美『…か…た、良かった。…達也、君が。達也君が、…一条選手の、規定、違犯のオー…バー、アタックで殺…されなくて、良か…ったぁ。』
嗚咽しながらたどたどしく言葉にするも単語単語で文章にならない
言い終えれば、また大号泣な真由美
摩利『わ、わかったから。落ち着け、な?』
真由美の大号泣に呑まれてしまった摩利
赤子が何故泣いているのか解らないという状況と似ている
真由美『だ…だって、あんな魔法を生身で受けたら死んじゃってたかもしれないのよ!…試合前に少し無茶するって言ってたけど。…こ、こんな無茶は聴いてないわよ!達也君の馬鹿~!!』
ようやく、落ち着いてきたのか
今度は、はち切れんばかりの声で達也に対して文句を言う
それと同時に真由美はあることに気が付いていない
摩利『…確かにそうだな。他人に死ぬか生きるかの選択を見誤るなと言っていた奴が、自分だけは例外で、自分は大丈夫ですみたいに魔法を受ける達也君は大馬鹿にもほどがあるなぁ。』
摩利は少しニヤニヤしながら、真由美の言葉に同意する
というよりも、更なる真由美の墓穴を煽っているようにも見受けられる
真由美『そうよ!達也君ったら酷いのよ?二つの競技を優勝したご褒美で名前呼べるようになったのにね?ようやく、これから距離を縮められるかな?と思ってた矢先に、こんな自殺行為みたいなことされたらもう、何がなん…だ……か…。』
ここまで感情的な真由美も珍しいため、誰も真由美を止めない
それどころか、普段見せない素に近い真由美が見えてレアだと思っているのだ
だが、その墓穴に気付いても時すでに遅し
摩利『ほう?真由美よ、た・つ・や君だって?』
先程までの真由美を心配する表情から一転、良い肴が入ったと謂わんばかりの表情の摩利
真由美『ち、違うのよ!あの、これには色々と訳があってね?』
摩利『そうか。大変な事情があるわけか。いや、情事か?』
真由美は慌てて、撤回を試みるも何の効果も無く
何故か摩利は嬉しそうにしていた
真由美『摩利!』
鈴音『会長、そのお話、後程たっぷりと訊かせて下さい。』
真由美『り、鈴ちゃん!?なんか、恐いんだけど?』
摩利の嬉しそうな表情とは反対に鈴音の背後には般若が見えた真由美
突如豹変した鈴音に真由美は慄いていた
吉祥寺『…将輝が負けた?そんな!』
吉祥寺は将輝が倒されたことに衝撃を受けていた
自分達の立てた作戦は完璧の筈だった
いくら、達也が規格外の
しかし、結果は変わらない
三高選手『吉祥寺避けろ!』
仲間の声にハッと我に返ると、頭上に雷撃が見えた
慌てて、後ろに飛び退き回避する
吉祥寺『!?(まだ、立てたのか?)』
視線を向ければ、倒したと思われた幹比古が立ち上がろうとしていた
幹比古『(勝てたんだね、達也。凄いね、本当に二科生とは思えない。僕も負けていられない。こっちは達也がくれたローブとCADで勝ってみせる!)はあっ!』
十師族である将輝を辛くも勝利したであろう達也に手放しで称賛する幹比古
達也がたった一人で最大の障壁を打ち砕いたのだ
弱音を吐く訳にはいかない
吉祥寺に受けた魔法のダメージを感じながらも魔法を行使していく
精霊魔法は精霊と対話して術式を完成させる
しかし、今回達也が幹比古に提示した方法それは
一連の連続動作として、結果を一々確認せずに処理を進めていくというものだ
先程、幹比古が起動した魔法の数は五つ
基本、汎用型のCADでの操作は二桁の数字と決定キーのため、幹比古は十五回操作している
通常の魔法の発動速度の五倍だが、これでも大幅に短縮されたといえる
先の説明の通り、精霊と対話しながら術式を完成させるよりも遥かに短いのだ
吉祥寺『うわ!くっ!』
幹比古が一つ目の魔法を行使する
地面に手を叩きつけると地面が揺れる
勿論、全体が揺れているわけではない
表面を振動させているだけに過ぎないというのは吉祥寺にも理解出来ているが、そのように錯覚するのは仕方がない
次いで、地面が割れていき、衝撃が吉祥寺まで届く
これも錯覚というか勘違いで
実際には地面に圧力を掛けて割れを押し広げたが正しい
だが、このままでは幹比古の魔法の餌食になるため、加重軽減と移動の複合魔法で回避しようとする
幹比古『まだだ!』
しかし、それを見逃さない幹比古
不自然に草が吉祥寺の足に絡み付き、跳躍を妨げる
吉祥寺『こっの!』
不自然に絡み付くそれに草に魔法をかけたのか?と疑う
しかしそれは、吉祥寺の思い込みで、実際は風の魔法で草を媒体に吉祥寺の足に絡み付かせたというのが事実だ
そして、地割れが吉祥寺の真下に到達し地面が陥没する
その影響により草も吉祥寺ごと僅かだが、引っ張られる
こんな自然に命を吹き込むような魔法は自分の知識にない
そんなことを連連考えるよりも更なる跳躍魔法で草から逃れた吉祥寺だが、これだけで攻撃が終わらない
幹比古『くらえ!』
跳躍により更に上に雷撃を用意していた幹比古
跳躍の距離も相まって、回避は不可能
幹比古の魔法が吉祥寺を貫いた
【地鳴り】【地割れ】【乱れ髪】【蟻地獄】【雷童子】と一見、一つの纏まった魔法に見えるが各々が確立された魔法だ
それを一連の自然な魔法にしたのは幹比古の手腕によるもので、決して達也だけのお陰ではない
ーーーしかし
幹比古『ハアッハアッ(な、なんとかやれた。これで…)』
吉祥寺を倒せたものの、もう魔法力はない
吉祥寺も戦闘不能で残るはあと一人
三高選手『このやろう!』
だが、その一人も尚武の三高だ
【陸津波】
移動系魔法で土を掘り起こし、それらを塊としてぶつける
本来ならば、想定される規模は大きいが、今回は人一人分を飲み込める程度の大きさだ
苦手の魔法なのか、威力を抑えているのかは不明だ
しかし、幹比古を戦闘不能にするには十分な威力といえた
幹比古『(結局、負けちゃったな。)…?』
大量の土砂が幹比古に迫るも、回避するほどの力は残っていない
諦めた直後だった
風を切る音と共に近くで硬い物が地面に突き刺さる音がする
そして、その物体が幹比古を守る盾となる
それはある人物が障壁として使っていたマントでその人物は一条将輝により早々に戦線を離脱していたはず
レオ『うおぉぉ!』
三高選手『ぐぁっ!』
レオの放った小通連が最後の一人の腹部に直撃し、意識を刈り取るもその直前に試合終了のブザーが鳴る
だが、観戦していた人間全員が不思議に思う
まだ倒れていなかったのに試合終了はおかしいと
しかし、理由はすぐに解った
それは、倒れた将輝の横で満身創痍であったはずの達也が、いつの間にか三高選手の隙をつき、モノリスのコードを打ち終えていたのだった
結果、第一高校の完勝という形で締め括られるのだった
いかがでしたか?
①自己修復術式をキャンセルさせて痛い目させてしまいました。
②将輝は達也の言葉が理解出来たのか(笑)
③鈴音さんがこれから追い上げをみせるのか、それとも真由美さんがリードを保ち続けるのか
④愛梨さんの心境の変化ですね。
⑤九島烈がどう動くのかお楽しみに。
それでは、次話も読んでいただければ嬉しいです。