抹殺された神の愛し子   作:貴神

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今回が九校戦編ラストです。
楽しんでいただければ幸いです。

外出自粛で気持ちも落ち込むと思います。
朝は太陽の陽を浴びて、適度な運動か筋トレで鬱屈しそうな気分を解消してもらえればと思います。




26話

九校戦最終日

 

今日行われるのは本戦男子モノリス・コードのみで、決勝トーナメントの計四試合が行われる

 

最終日のため表彰式と閉会式があるため前日に予選が行われている

 

午前九時から第一試合、十時から第二試合、午後一時から三位決定戦そして、二時より決勝戦が行われる運びとなっている

 

その後、三時半に表彰式と閉会式によって九校戦は終了する

 

ーーのだが、最後のプログラムとして午後七時からパーティが開かれるのだ(達也としては早く帰りたいという願望がある)

 

とまあ、今日のプログラムを連連と並べてもまだ第一高校は試合があるためそんな思考が出来るのは予選落ちした五校だけだった

 

達也は昨日の報告の件もあり、風間の部屋を訪れていた

詳細は全て響子から報告は上がっており、特段この部屋に来る必要もないのだが今回の無頭竜(No Head Dragon)(ノーヘッドドラゴン)について訊ける情報があるならと思い訪れたのだ

 

風間『昨夜の件だが、ご苦労だったな。』

 

達也『いえ、私情と言っても過言ではありませんでしたから。』

 

柳『私情ではないさ。俺も襲われたのだからな。』

 

情報源は達也もとい小野であり、今回の任務に家族愛の達也の私情程度は問題ない

 

それにきっちりと任務を果たしたのだ

 

それを差し引いてもお釣りが来る

 

達也『お言葉に甘えさせていただきます。』

 

椅子に座りながら礼をする達也

 

響子『お友達と観戦はしなくていいの?』

 

響子からいただいていた紅茶を飲んでいると、彼女は不思議そうな表情をする

 

達也『私がいないと観戦出来ない試合なんてありませんよ。初戦の調整も終わってますし。試合中は体を休ませないと。』

 

どうやら、自分達の為に友人を放り出して来ているという申し訳なさを感じているようだ

 

心配は無用と、寛げるのは此処だと告げる

 

真田『それはそうだ。何しろ、この大会中エンジニアとして選手としても休まず働きまくってたからね。』

 

少し皮肉った達也の言葉に大笑いする

 

そんな真田を見て、柳は嘆息し響子も苦笑いを浮かべた

 

浩也『では、本題に入ろうか。』

 

雑談も一段落したところで表情を改めると風間に目配せする

 

今日は妻である凛と子供達三人はいない

 

理由は極秘であると同時にあまり聞かせて悪い気分にさせてくないという配慮からだ

 

風間『そうだな。達也の働きのおかげで無頭竜(No Head Dragon)(ノーヘッドドラゴン)を押さえることが出来た。』

 

達也『たかが、犯罪シンジケートの頭目の情報にそれほどの価値があったのですか?』

 

昨晩、何故達也があのような茶番劇を演じたのか

 

それは風間から無頭竜(No Head Dragon)(ノーヘッドドラゴン)のボスの情報を訊き出すよう命令していたからだ

 

でなければ、会話を長引かせあそこまで恐怖を煽り嬲るようなことはしない

 

一応、迷惑千万の意趣返しというのも含まれているが

 

風間『そこから少し話そうか。』

 

あっさりと達也の要望を聞いてくれた風間

 

極秘でも政治的にはあまり関係無いのかもしれない

 

真田『達也君は、【ソーサリー・ブースター】について何処まで知っているかな?』

 

風間に替わり真田が達也に問いかける

 

ここからは技術屋同士の方が話も進む

 

達也『小指の爪程も知りません。ここ、数年で犯罪集団に一気に広まった画期的な魔法増幅装置だとか。そんな眉唾物事実上不可能だと思っていましたから。私の経験を元に少し考えましたが、脳に何らかの刺激を直接与えるくらいしか…まさか。』

 

魔法師が魔法が体のどこからでも使えるわけではない

 

その大本になるのはある部位なのだ

 

しかし、そう考えると効率が悪いと結論付けたためその思考には蓋をしていたが真田達の表情が強張ったため、達也も驚愕してしまう

 

 

真田『そのまさかだよ。部分としては、人間の大脳だ。詳しく説明しよう。』

 

魔法は魔法式という「信号」を魔法師から対象物の個別情報体(エイドス)へ出力するプロセスを含むため増幅という概念と全く無縁なものとは言い切れない

 

だが、魔法式の出力プロセスは、情報体次元(イデア)という単一情報プラットホームの中における情報の移動であり、魔法式という信号が魔法師と対象物の間を物理的に移動するわけではない

 

達也『…』

 

魔法師が構築した魔法式を一体どこで増幅するのか、まずそれが疑問なのだ

 

真田『だから、増幅という言葉が違うね。…魔法式の設計図を提供するだけでなく、それを元にした魔法式構築過程を補助する機能も持つCAD、という表現が近いかな。…達也君風に考えると増設メモリーという言葉が近いね。』

 

そもそも、普通にソーサリー・ブースターという言葉を直訳するべきではない

 

俗称が本質を表現していないなんて珍しいことではないのだから

 

 

達也『そして、CADの中枢部品である感応石は現在分子レベルから化学的に合成しネットワーク構造に発達させた神経細胞(ニューロン)を結晶化して製造。また、ネットワーク構造の違いによって変換効率が決定されるため、重要となるのはニューロンの持つ物質的な特性ではなくネットワーク構造のパターンであると言われている。そして、この人造ニューロン以外の素材で感応石の製造に成功した例は無し。…今回、それを人造以外で非人道的に開発したところが。』

 

真田『…そう。無頭竜(No Head Dragon)(ノーヘッドドラゴン)だ。そして、この組織しかそれを製造していない。』

 

しかし、動物の脳細胞を仕様した場合、脳内に残留する想子(サイオン)の影響で使用者との感応は成立しない、それは人間の脳細胞でも同じ

 

CAD開発の黎明期、各国では倫理、良心、信仰何もかも無視して思考錯誤を繰り返して今の化学的に合成して製造するというノウハウが確立された

 

その常識を覆したのが、無頭竜(No Head Dragon)(ノーヘッドドラゴン)なのだ

 

通常の感応石の機能と全く同じではない

 

一つのブースターには一つの特定の魔法にしか使用は出来ない

そして、使用出来る魔法は各ブースターによって異なるがある程度パターン化することは出来るという

それが残留思念によって使用可能な魔法の種類が変わるらしい

 

脳を摘出するその際に何らかの刺激を与えることで生み出される魔法の種類をコントロール出来るという

 

達也『…まるで、蠱毒のような方法と言えますね。』

 

真田『そうだね。おそらく、それが基盤となっているだろうね。僕たちは魔法を武器とし、魔法師を軍事システムに組み込むことを目的とした実験部隊だ。しかし、魔法師を駒や道具として使うつもりはない。少佐や柳大尉、藤林少尉や他の士官、兵卒も含めね。だが、アレはこの世に存在すべきではない。』

 

珍しく怒りを抑えるような表情の真田に相当に酷いのだと推察出来る

 

達也『では、今回の殲滅は無頭竜(No Head Dragon)(ノーヘッドドラゴン)のボスを捕らえる為の情報が必要だったと?』

 

真田『そういうこと。供給を止めるためにね。』

 

ブースターを買い付けるためではない

 

ブースターという存在をこの世から消し去るために

 

風間『感情面も抜きにしても魔法師のキャパシティを拡張するブースターは軍事的にも脅威だ。北米情報局(NAIA)も同様で内情に協力を求めていたらしい。…壬生が随分感謝していたぞ。』

 

達也『…』

 

壬生という人物とその人物から感謝の言葉を述べられても何故か嬉しくない

 

その表情を見た浩也と風間は時間が掛かりそうだと嘆息するのだった

 

 

 

 

時刻は午前九時三十分を過ぎたところ、第一試合は岩場のステージで第一高校と第九高校の組み合わせで順当に第一高校が決勝進出を決めていた

 

一高(こちら側)のメンバーは十文字 克人・辰巳 鋼太郎・服部 刑部

 

そして、そのハイライトがラウンジのモニターに映し出されていた

 

 

達也『当然か、一高(ウチ)が勝つのは。(それにしても服部先輩のスタイルはやはり集団戦闘に長けているな。)』

 

試合開始直後、先手を打ったのは服部だった

 

加速魔法と跳躍魔法を織り交ぜながら敵陣へ突進していく

 

九高は先制のタイミングを逃し自陣に全員地に根を生やしていた

 

距離が中間辺りに差し掛かった頃、服部は九高選手三人に魔法を放つ

 

上昇気流と共に白い霧が九高の三人の頭上に生じ、濃さを増しやがて小石程度の大きさの雹に形を変えて降り注いだ

 

魔法の名は【ドライ・ブリザード】収束・発散・移動の複合魔法

 

この魔法はスピード・シューティングで真由美が使用していた魔法の原型だ

空気中の二酸化炭素を集めて凝結させるが、-78.5℃にまでしなければドライアイスにはならないそして、凝固する時に持っていたエネルギーを運動エネルギーに変換させる

 

慌てて、九高の一人がそれを防ぐために自分達の頭上に落下速度を(ゼロ)にする障壁を展開する

 

それは自然の重力を対象にしていないため、雹は一旦静止するもすぐに自由落下し岩によって砕かれるなどして気体に変わるがそれだけで終わらない

 

ドライアイスは-78.5℃、その冷気は空気中の水蒸気を冷やし白い霧となって九高の三人の周りを取り囲み服に水滴として貼り付くと更に昇華した濃度の高い二酸化炭素も漂い、息苦しさが増していく

高濃度(約7~8%以上)の二酸化炭素を吸入すると、たとえ酸素が大気中と同等程度含まれていても、二酸化炭素が呼吸中枢に毒性を示すために自発呼吸が停止、窒息することがあり得るのだ

特に昇華して二酸化炭素の気体になった場合は足下に滞留しやすいため、窒息あるいは酸欠の危険も高い

 

息苦しさで思考が鈍らない内に取り払おうと魔法を使おうとする九高の三人だが、服部がそれより先にコンビネーション魔法を発動させる

 

土砂の粒子を細かく振動させ生じる微弱な摩擦の電気を、土砂の電気的性質を同時に改変し増量させる術式

 

前回、新人戦で八高の選手が一条将輝に放った同種の魔法だが、威力、洗練度は桁違いだ

その増幅した電流が地を這い、その姿はまるで数多の蛇のように標的と定めたものに接近する

更には、服部が仕掛けた飽和状態の水分が地面と空気中を満たしたことで水分がより電気を流しやすくする

 

這い寄る雷蛇(スリザリン・サンダース)

 

一見、ただ魔法を個々に使用したように思えるが前の魔法をの特性をして次に放つ魔法と相乗効果を生むように考えられた魔法

 

コンビネーション魔法と呼ばれる

 

コンビネーション魔法は複数の魔法工程を一つの術式にまとめるものではなく、発動する魔法の特性を組み合わせて個々の魔法の総和よりも大きな効果を生み出す魔法技術だ

 

それをこの場面では、九高の選手のプロテクトスーツの付着した水滴を利用したのだ

 

マルチキャストは一つの発動中に別の魔法を繰り出す技術のため圧倒的な力量を見せるには効果的だろう、だがこのコンビネーション魔法も次々に起こる魔法の相乗効果を考えればマルチキャストや単体の強力な魔法にも引けは取らないだろう

 

要は使い手次第だ

 

そういった意味では服部は魔法の効果を十分に理解し、次の魔法で相乗効果を期待出来そうな魔法を考え扱う事が出来るのはとても有能と言えた

 

しかし、有能だからと言って勝てるかと言えばそうではない

 

全体攻撃が出来るとしても致命傷を与えられなければ、隙を突かれる恐れもある

 

単体での攻撃で確実に戦闘不能に出来るならば、それも一つの手だ

 

今回は、完全に三人全員を戦闘不能に出来なかった

 

一人はシールドを張っていたため戦闘不能にしかし、一人は雷撃を受けながらも空中へ、もう一人は雷撃を弱めるために水滴を飛ばすことにより耐える

 

逃げ、耐えたと言ってもダメージはある

 

空中へ逃げた一人は辰巳の加速魔法により地面に叩き落される

 

残り一人となるもその程度で動揺はない、伊達に決勝トーナメントを勝ち抜いてきているのだから

 

収束魔法の圧縮空気を服部目掛けて放たれる

 

この地球上で最も身近にそしてそれを武器にも転用しやすいのは空気だろう

 

加えて、殺傷力を抑えやすいのもあり、このモノリス・コードでは圧縮空気や鎌鼬の使用頻度は高い

現に、達也達が戦った二高や三高も空気を媒体にしていた

 

圧縮空気が服部に当たるかと思いきや、その眼前で目には見えない障壁に阻まれた

 

それは服部が展開したものではない、服部が後方を振り返ると十文字が右手を前に突き出していた

 

反射障壁(リフレクター)】だった

 

個体・液体・気体を問わず、運動ベクトルを反転させる力場を発生させる領域魔法

 

しかも、大きなポイントと言った距離や焦点を測れるものも無いオープンな場所で数百メートル離れている服部の前に更には相手の魔法を確認し適切なタイミングで展開する技術は驚嘆に値する

 

服部もその十文字の技術を信頼して障壁を展開しなかった

 

息の合ったコンビネーションとはこういう類を言うのだろう

 

最後に服部が広域に広がる攻撃魔法の加速・収束系複合魔法【砂塵流(リニア・サンド・ストーム)】によって最後の九高選手を戦闘不能にした

 

 

達也『魔法を扱うとなると流石の一言しか出ないな。(それにしても。何故、服部先輩は先陣を切ったのか?あのスタイルでは向いていないだろうに。自信があったのか、作戦なのか。…後者なのかもな、よく解らんが。)さて、最終調整まで時間があるから。このラウンジでのんびりしておくか。』

 

流石というべきワンサイドゲームだったが、そこには濃密な魔法の数々があった

 

それぞれの魔法の特性に応じて繰り出す技術や味方の邪魔をしないが効率の良い援護魔法

 

それは達也にとっては羨望しかなかった

 

 

 

 

 

 

 

とある小会議室

真由美から決勝のステージが渓谷ステージに決まったと伝えられた十文字

 

併せて、少し話したいというためこの部屋に来ている

 

勿論、逢い引きの類いではなく真由美と十文字の共通点である十師族関係の要件なのだろう

 

真由美『ごめんね、十文字君。こんな時に呼び出して。』

 

第一高校の代表である真由美は大会委員会から業務連絡を受ける立場にあるため、今日の午後からの決勝戦のモノリス・コードの試合ステージの連絡を受けていた

 

しかし、それを伝えるためだけにリーダーである十文字を呼び出す必要はない

 

十文字『いや。こちらこそこんな姿で不快にさせてしまってすまない。要件を聞こう。』

 

十文字は下半身をプロテクトスーツを身に着けているものの、上半身はタンクトップ一枚のみだ

 

汗も流しているため臭いも気にして消臭スプレーをしているがそこは気遣いとしてだろう

 

真由美『気にしないで。それで、新人戦モノリス・コードで一条のプリンスが守夢君に負けたでしょう?あれで父から暗号で師族会議の通達が来たのだけれど。』

 

十文字の紳士的な振る舞いに感謝し、呼び出した用事を説明する真由美

 

十文字『なるほど。』

 

真由美『?十文字君には来てないの?』

 

それも当然かといった風で驚いた様子もない十文字

 

そんな十文字に真由美は不思議そうに首を傾げる

 

十文字『あぁ。いや、もしかしたら来ているのかもしれないが、時間がな。』

 

師族会議の通達ならば十文字のところにも来ている筈だが、それならば真由美の父が自分に送ったのはどちらかが確認出来れば良いということか

 

しかも、この暗号は解読に時間がかかるのだ

 

この状況でリーダーである十文字が席を外すのは宜しくないとなると、父から真由美宛は十文字にも宛てられたとも取れる

 

真由美『そうね。続きだけど、「十師族はこの国の魔法師の頂点に立つ存在。十師族の名前を背負う魔法師はこの国の魔法師の中で最強の存在でなければならない。例え、高校生のお遊びであっても、十師族の力に疑いを残すような結果を放置しておくことは許されない」だそうよ。』

 

十文字『…あれをお遊び、と言えるか微妙だがな。』

 

真由美から伝えられた言葉に十文字は表情は変えないが、どう見ても危険な試合であったことは確かだ

 

あの試合を戦闘と捉えても何ら問題はない

 

真由美『…下手をすれば。いいえ、守夢君だったから死人が出なかっただけで普通なら死人が出てもおかしくはなかったわ。』

 

脳裏に焼き付いたあの光景は真由美には耐えられないものだった

十師族の家の者として凄惨なものも見てきたが、現在進行形では初めてと言えた

 

自分の体を両腕で抱き締めようにする真由美の表情は血の気が引いている

 

十文字『言いたいことは解った。十師族の力を誇示するような試合をすれば良い、ということだな?』

 

真由美『ごめんなさい。十文字君にこんな事を頼むのは筋違いなのだけど。』

 

落ち着けや大丈夫か等という言葉は逆効果だろうと判断した十文字は別のことで気を逸らすことに成功する

 

十文字『気にするな。寧ろ、十文字家次期当主である俺の役目だ。この事を伝えてくれただけで七草には感謝している。』

 

己の役目は重々自覚しているつもりだ

 

事実、真由美が七草家の直系ではあるものの後継者ではないためこういう役目は自分だと考えている

 

一条将輝も一条家の後継者であるため十文字と立場は同じだ

 

真由美『…ほんと、馬鹿馬鹿しいわ。十師族の傍流でもいいから守夢君がその血を引いていたらこんな三流以下の喜劇にも巻き込まれずに済んだのにね。』

 

十文字『…』

 

真由美の言葉に沈黙の十文字だがその沈黙は肯定なのか否定なのか

 

そしてこの三流喜劇も達也には全く謂れのない言い掛かりだ

 

例え、直系だろうと傍系だろうと関係ない

 

強い者が勝つのではない、勝った者が強いのだから

 

 

 

 

 

 

 

達也『お待たせしました、調整完了しました。十文字会頭。』

 

決勝戦の三十分前に調整を終え、十文字に声を掛ける

 

調整と言ってもそんな大したことはしていない、精々ソフトのゴミ取り位のものだ

 

十文字『…』

 

達也『…会頭?』

 

達也の声が届かなかったのかもう一度声を掛ける

 

十文字『あぁ、すまない。』

 

何か考え込んでいたのだろう

 

達也からCADを受け取り、反応を確認する十文字

 

表情から問題無いようだと判断する

 

達也『いえ、問題なければこれで失礼します。』

 

十文字『守夢。』

 

達也『はい?』

 

試合に向けて精神統一もあるかもしれないと、部屋を出ようとする達也を十文字は呼び止める

 

十文字『後で話がある。空けておいてくれ。』

 

そう言い残すと達也の静止も無視して部屋を後にした十文字

 

達也『?あ、会頭!…おいおい、俺は承諾した覚えは無いんだが。』

 

自分の要求だけ伝えて回答すら拒んだ十文字

 

怒りを通り越して呆れる達也だった

 

 

 

 

 

本戦モノリス・コード決勝戦

 

長年因縁の関係にある第一高校と第三高校

今年の九校戦でも新人戦モノリス・コードや本戦ミラージ・バットと幾度となく戦ってきた

結果は第一高校に軍配が上がるもその差は僅差であり、第三高校が勝ってもおかしくない試合内容でもあった

 

そして、今年の九校戦最後の試合

 

三高にとってはブーメランにも似た展開に苦虫を噛み潰していた

 

それは新人戦モノリス・コードで一条将輝単独で第八高校に対峙した時のように十文字単独で第三高校に相対しているのだから

 

達也『(あれが多重移動防壁魔法【ファランクス】か。何が凄いかと言えば、維持ではなく、何種類もの防壁を途切れることなく更新し続ける持続力だろう。流石は十文字家次期当主。…これは、あれだろう。俺と一条の試合に触発され、それを十文字が対応したというのが主な理由じゃないか?)面倒な連中だ。…帰らないんですか?』

 

氷の飛礫や突風、1m以上の岩を落としたりと様々な魔法を繰り出すもその全てが十文字が展開する魔法の障壁によりはね返されていた

 

その障壁は質量体の運動ベクトルを逆転させ

電磁波、光や音波を屈折させ

分子の振動数も設定値に

想子(サイオン)の侵入も阻止

 

全てを寄せ付けない障壁が十文字を守っていた

 

その様子を最近の定位置であるラウンジのカウンターで観戦しながら十文字の魔法を分析していると背後から窺うような視線に気付く達也

 

夕歌『あら?バレてたのね。』

 

本当に随分と彼女の興味を惹いているらしい

 

冷え冷えとした声音の達也にも臆することなく、逆に声を掛けてもらえたことが嬉しいようだ

 

達也『気配には敏感なもので。』

 

夕歌『忍者…ではなく、忍だったわね。その血を引いているのかしら?』

 

達也『さあ?というか、質問に答えてほしいのですが。』

 

気配という言葉に対して忍を連想した夕歌

 

その観察力と分析能力はかなりのものだと関心する

 

八雲との関係がバレたかといって問題はないが、なるべくなら知られないほうが良いだろう

 

夕歌『最後に貴方の顔を見たいなと思って。…そうだ、今度会う時は私の名前覚えておいてね。』

 

達也『二度と会わないでしょうね。』

 

会いたくないではなく会わないでしょうという言葉を使うあたり相当関わりたくないという感情が表れている

 

夕歌『冷たいなぁ。津久葉夕歌よ、今度抜き打ちで会いに行くから。じゃあね!』

 

達也の拒絶にも似た言葉に気にした風もなく、自分の名前をもう一度伝えて夕歌は去るのだった

 

 

 

 

 


 

 

 

 

夕歌と話している間にどうやら試合は終わったようで、ハイライトを見て再度十文字の戦闘スタイルを分析する

 

試合で使われていた【ファランクス】の用途は一部なのだろう、本来というか全力時はあの障壁の使われ方は違う筈だ

 

更にモニター越しの十文字のあの目は達也に向けられているのだろう

 

俺はお前よりも強いと言いたげに

 

勝手にライバル認識されては困るのだが、今はそれを横に置いておく

 

達也『(今日は来客が多すぎるだろう。)こんなところで油を売っていると表彰式と閉会式に遅れますよ?』

 

なぜなら、テーブルの向こうにあるもう一つのソファとの間に立つ三人の三高の生徒が達也を観察しているからだ

 

何か自分が恨みを買ったのか?と思いたくなるが、ここは早々に離れてもらうことが先決だ

 

愛梨『貴方にもそれは言えるのではなくて?』

 

だが、それは上手くいかない

 

達也『私は只のしがないエンジニアですので、居ても居なくても大して変わりませんよ。』

 

どうやらサボる気満々のようだ

 

どうりでソファで珈琲を飲みながら読書しているわけだ

 

愛梨『謙遜しすぎて嫌味にしか聴こえないわ。…今晩のパーティで少し付き合っていただけるかしら?』

 

達也『用事でしたら、今言っても問題無いのでは?まあ、内容を聞くこととそれを叶えることは別の問題ですがね。』

 

愛梨達は達也に用事があり、そのためにここに居るらしいのだが

 

何故、パーティのタイミングでなければならないのか不思議だ

 

暗に誰が興味もないお前達に時間を割いてやらねばならんのだと暴言を吐いてみる

 

沓子『一言余計じゃ。全く、お主鈍感以前に乙女心が理解出来てないのぅ。愛梨が…』

 

これもまた見事にスルーというか、理解してもらえず

 

達也は頭を抱えたくなった

 

そしておかしなことに、乙女心が理解出来ていないと注意される始末

 

愛梨『沓子、それは私が言うわ。…守夢達也さん。そ、その、今晩のパーティ…なのだけれど。ダ、ダンスのお相手を、お願い…したいのだけれど、いいかしら?』

 

沓子『儂もお願いしたいのだが?』

 

栞『私も貴方にダンスのお相手をお願いするわ。』

 

一応、(対戦相手として)顔は覚えているが名前は忘れた彼女達から突然のダンスの誘い

 

長年の宿命(ライバル)であることと対戦相手のエンジニアであることを含めても大して達也との接点は無かったはずだ

 

達也は知る気も無かったため仕方ないが、この九校戦の最後のパーティ(懇親会)は本当の意味での親睦の場となる

 

これがきっかけで何組かの遠距離恋愛のカップルが生まれたりもする

 

またこの時に魔法師界における有力な人物やCADのメーカーとの繋がりも出来たりするため三年生達にとっては一挙両得のチャンスでもあるわけだ

 

だから、彼女達が達也と関係を作ろうとするのは当然であり今回に限って言えば、達也がこれを事前に確認していれば防げたミスであった

 

結局、断ろうにも理由もないため空いていればというほぼ確実な約束をしてしまうのだった

 

 

 

 

 

 

 

表彰式と閉会式も滞りなく進みいよいよラストプログラムである懇親会が幕を開けた

 

高校生にとっては長丁場であった九校戦も終了した

九校戦の間は各校共にライバル校であるため敵意を剥き出しにしてきたが、今日の懇親会は初日のものとは別物でその名の通り他校と交流を深めることが出来る

 

更に付け加えるとするならこの十二日間のプレッシャーと緊張、ライバル校に出し抜かれないように気を張り詰めていた糸が一斉に緩んだことでまだまだ成熟しきっていない一面が顔を覗かせていた

 

 

摩利『こんなところにいたのか、守夢。』

 

達也を探していたであろう渡辺摩利と七草真由美が寄ってくる

 

達也といえば数多のCADのメーカーから声を掛けられ、それの対応が終わり一息ついていたところだった

 

達也『何か御用でも?』

 

摩利『あぁ。約束を果たしてもらおうと思ってな。』

 

達也『履行するかは別だとお伝えしたはずですが?』

 

摩利が来るということは理由は決まっている

 

すっとぼけるもそれは許さないらしい

 

真由美『お疲れ様、守夢君。』

 

達也『…なるほど、内容は理解しました。ですが。』

 

真由美と来ている時点で摩利の要望など一つしかない

 

摩利『果たすかどうかは別問題ということか?』

 

達也『ええ。この十二日間に私の望むような報酬は一つもありません。ですから…』

 

さて、どうやってお断りしようか考えていると日頃の行いが良いかどうか知らないがありがたい援護が来てくれた

 

???『ちょっと失礼。ここに居たのかね、探したよ。守夢達也君。(やあ、達也助けに来たよ。)』

 

達也『あなたは、エリシオン社の森城社長。初めまして、守夢達也です。(ありがとう、義父さん。)』

 

いい加減にあしらうのもありだが、他校もいるこの状況では下手な噂にしかならない

 

そんな状況に浩也の登場だ、本当に感謝しかない

 

お互いが読心術が使えるため心の中で思うだけで相手に伝わる

 

心の中でお礼を言う達也

 

浩也『初めまして、守夢君。君の腕前に感服したよ。高校生であれほどの調整技術とは恐れ入ったよ。(お前は天然ジゴロだな。この状況だとダンスの相手をせがまれているんだろう?)』

 

達也『ありがとうございます。大したことでもありません。元のデータがありますから、それを競技用CADにコピーしているだけですのでオリジナルのものは何一つありません。(落としているつもりはありませんよ。好きな人しか落としたくありませんから。俺にはあの三人がいればいいんですから、いい迷惑です。その通りです。何故か優勝したら、俺が要望に応えるみたいなことになっています。)』

 

口上では初対面での会話が成り立っており、当り障りのない会話が交わされている

 

その反面、心の中では身内同士でどのようにしてダンスの誘いを断るかの作戦会議が行われている

 

浩也『いやいや、大したものだよ。その元のデータを正確に読み取れる技術というのは中々難しい。何故なら、その理論が完璧に理解出来ていなければ不可能なのだから。(すまんすまん。もうすでにあの三人は籠絡済みだから。次は愛人候補か、羨ましいな。その要望に応えるくだりはお前がしっかり断れば問題無かっただろうに。)』

 

達也は真剣に考えているものの、肝心の助け人たる浩也は面白半分のため話が進まない

 

達也『魔法力は無いに等しいので、出来るもので補うしかないと考えて勉強したまでのことです。(義母さんに義父さんが俺に愛人を作るようにと命令してきますと捏造しますよ?要望に関しては反省してます。というか、すでに第三高校の生徒三名にダンスのお願いはされているんですがね。これもどうしましょう?)』

 

そんな浩也の態度に達也は少しだけ意趣返しをする

 

浩也『本当かい?それは尚の事素晴らしい。実技が出来てこそ理論が出来るというのは通例だが、実技が不出来でも理論を理解することは可能だ。いや違うな。実技がしっかり出来ているほど理論はどうしても柔軟に考えれなくなってしまうこともある。そのため、実技が苦手の人は意外と理論において柔軟に思考が出来たりするものだ。君は腐らずにその道を突き進んだのだ。誇って良いと思うよ。(え!?それは止めてください。そんなことしたら、凛だけでなく結那と加連にまで怒られる。しかもお前も怒られるよ?…え?今なんて?もうお誘いの予約三名あるって?諦めたら?まあ、ダンスの時間考えたらあと多くて五、六人位か。)』

 

達也の真面目に考えてくれと叱られ反省する浩也

 

しかし、先程の達也の後半の言葉は少し予想外だったようだ

 

すでに先約があるなら逃げることは出来ない、それは約束を反故にするからだ

 

そういう人間になるなと教え、浩也自身もそれはしない

 

達也『ありがとうございます。今まで頑張ってきた甲斐がありました。これからもっと精進していきたいと思います。(死なばもろともですよ。他校とダンスの相手をしていることは絶対バレますし。どうやって被害を最小限に食い止めるかを考えた結果、サボろうと画策していたのを先手を打たれたんですから。出来れば三人だけと踊って他は無視して逃げようと考えてはいるんですけどね。)』

 

面白半分から諦め半分に方向の浩也に達也もそうだよなとこちらも諦めが入っている

 

だがまだ希望はある

 

浩也『忘れるところだった。そういえば、守夢君。飛行術式を使用していたね。うちの彼、トーラス君が感激していたよ。あの年で自分の構築した術式を理解出来るなんて凄いと我が開発部門に来てほしいとね。まだ先のことだけど、より身近に感じてもらうためにアルバイトでなんかどうかな?(鬼、悪魔、達也!まあ、あの娘達の勘と言ったら恐ろしいことこの上ないからな。少し牽制の意味も含めて助け舟出すから上手くのってくるんだぞ?)』

 

達也の為にもここは考えるしかない

 

このまま達也が他の女性と踊ることになってしまえば、自分の家で事件が起こる

 

それは恐怖でしかない

 

達也『それは、本当ですか?とても嬉しいです。あの方とお会い出来るだけでも光栄なのに。大した腕前も無い私を呼んでいただけるなんて。あの術式は使用者に無理をさせないように安全第一で設計されたものですし、ソフトももちろんですがハードのタイムレコーダー機能も一役買っていると思われるんですが。(義父さん、鬼や悪魔に失礼ですよ。そもそも十師族や師補、ナンバーズに気にいられても嬉しくありませんよ。牽制?ですか。それで退いてくれれば良いんですが。)』

 

浩也『うん。彼も年齢的にはそれなりに若いがそれだけではこのままやってはいけない。技術継承や新たな視点も必要になってくるからそういった人物を探してはいたんだよね。そこで今年の九校戦に君だよ。エンジニアとしての腕前に彼もピンと来たようだよ。私の場合はそれ以外にも家の娘と気が合うかな?と思ってね。どうかな?(良い機会だからこの際、外堀を埋めてしまおう。)』

 

浩也の作戦はこうだ

 

エリシオン社の社長として守夢達也という人間のエンジニアとしての腕を称えるというもの

 

この九校戦で達也は第一高校の勝利に多く貢献してきた

 

優勝を売上と考えるとすると、全体の3~4割程を達也が売上に貢献してきたと言える

 

それほど功績があるなら出世してもおかしくない

 

話を戻すと、達也のエンジニアとしての腕前を見込んで社長直々にスカウトし、更には社長の娘と見合いをさせるというもの

 

これまでの達也の在り方を考えればエンジニアとしては魅力的ではあるが、見合いには興味は無いだろう

 

しかし、これは浩也が画策する達也保護作戦なのだ

 

二人の周りでは第一高校の面々や他校の生徒達に更には魔法界の有力者までが聞き耳を立てている

 

それを利用して世間的にも達也を引き込む

 

森城昌浩の娘が達也と見合いをするということで達也を狙う人間達に牽制をすることが可能なのだ

 

浩也の思惑通り周囲で聞き耳を立てていた人間がざわめき立つ

 

誰から見てもこれは異例の大出世

高校生からすれば、憧れの会社でもあるエリシオン社にしかも、あの有名な魔工師のトーラス・シルバーが認め、社長からも職も結婚相手という将来が約束されるなど羨望と嫉妬の嵐だ

そして、他のCADメーカーの人間や魔法界の有力者は悔しそうな表情をしていた

何故なら、浩也が来る前に達也をスカウトしていたのだ、それを達也はさり気なく断っていたのにここに来て掌を返したのだから

 

浩也は心の中でガッツポーズを決めていた

 

ーーーしかし、

 

 

達也『それは願ってもないことです。私のような者でよければ教えを請いたいです。そして、それがあの方に良い影響を与えられるなら尚更です。…娘さんですか?それはつまり…。(それは第一高校には通用しませんよ?七草の所為で九校戦のスタッフ全員にエリシオン社の社長の息子だと知られてますから。)』

 

達也から第一高校には効果は全くないと指摘を受けるまでは

 

浩也『そうかそうか。なら、彼にも話は通しておくよ。いつでも良いからこの名刺に書かれている番号に電話をして欲しい。あと、娘の件は君の考えている通りだ。婿に来て欲しいなと思ってね。無論、嫁でも構わないよ。(え、何それ聞いてないんだけど?調べていた十師族や師補、ナンバーズは仕方ないかなと思ってたんだが。…どんまい、達也。)』

 

表面上は取り繕っているものの、内心は恥ずかしさで顔を覆いたくなる浩也

 

九校戦のスタッフに選ばれたというのは知っていたが、達也から何故選ばれたのかは聞いていなかった

 

これは達也の報告ミスだ

 

大方、十師族の七草か十文字からの後押しがあったのだろうと考えていたから納得はしていた

 

が、すでにそれがバラされていては一番ダメージを与えたい相手に効果は全くないのはショックでしかない

 

達也『此方の番号にですね。何時頃が電話が繋がりやすいとかありますか?私は夏休み中はいつでも構いません。その際にお義父さんの娘さんにお会いさせていただくことは可能でしょうか?(最後の最後に見捨てられるとは。…仕方ない、毒を食らわば皿まで。最後までダンスに付き合うまでだ。)』

 

浩也『!?た、達也?…コホン、守夢君、気が早いよ。その気持ちはとても嬉しいけどね。…では、義息子になる予定であろう達也君。連絡を待っているよ。(最後の最後で力になれずすまない。まあ、敵を半減出来たことは多少効果はあっただろうし。骨は拾っておくから。)』

 

浩也の働きも空しく作戦は失敗に終わった、あとは達也自身で乗り切ってもらうしかない

 

無責任発言の浩也に達也も投げやりになる

 

こうなったらやけ酒ならぬ、やけダンスと言われ浩也は焦った

 

そんなことをすれば達也が帰ってくる明日は確実に流血騒ぎだが、それを防ぐための策が無い

 

達也『そうなれるよう精進します。ありがとうございました。(それなら、荼毘でお願いし…冗談です。三人に外の庭で待っていると伝えて下さい。遅くなるが必ず行くと。)』

 

謝る浩也だが、別に浩也が悪い訳ではない

 

一定の有効性はあるのだ

 

あとは自分で何とかするしかない

 

互いに軽口を叩き合うと、浩也はさわやかな笑顔で去っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

真由美『も~り~ゆ~め~く~ん?何故鼻の下を伸ばしているのかしら?他の皆は騙されても私達は騙されないわよ。』

 

達也『伸ばしてませんよ。』

 

とっくの昔に騙されているんですがねとは言わないでおく

 

言うとまた再調査してくるからだ

 

摩利『真由美の言う通りだ。よし、私達を揶揄った罰として真由美と踊れ。』

 

真由美『摩利?』

 

摩利『悪いな真由美余計なお節介かもしれんが、善意というものは基本お節介みたいなものだろう?あの約束をこれで果たしてもらう。』

 

摩利から真由美へのお節介は良いのだが、今回は達也にも影響はあるわけでいい迷惑なのだ

 

しかも、揶揄った罰とは冤罪にもほどがある

 

他人を不快にさせるのが罪なら摩利や真由美、十文字等々から自分を不快にした罪に対して彼らを罰することは出来そうだなと達也は考える

 

真由美『守夢君、あのね、これは摩利の戯言だから。その…無視しても良いから。』

 

達也『…承りました。』

 

真由美『!!いいの?』

 

達也『ええ、これ以上放置してサラ金の雪だるま式の利子を付けられて身の破滅に陥るよりはここで清算したほうが後腐れもありませんから。』

 

真由美はもじもじと指先を弄りながら上目遣いで達也を見ながら、断ってくれても構わないと言う

 

だが、傍目には達也と踊りたいというのがはっきりと表に出ていた

 

達也は(憶える気も無い)見ず知らずの人と踊るよりも多少なりとも関わりのある人の方が後々が面倒臭くなくて良いだろうと考えた

 

もし、街で出会ったとしてもその踊った人物を確実に忘れている自信があるからだ

 

真由美『もう、一言余計よ。ここはこんな美人なお姉さんと踊れるとは(結婚したいくらい)嬉しいですといえないの?』

 

摩利『自分で言うか。』

 

達也『そんな軟派ではありませんので。ですが、会長と踊る前に先約がありますので失礼します。』

 

一瞬、摩利が真由美の心の中を読めたのか?と思ったが違ったようだ

 

真由美が口に出さなかった言葉をここで暴露してやろうかと考えたが、そろそろダンスの時間のようだ

 

真由美『えぇ!?どういうこと、守夢君!』

 

摩利『浮気か!?私は真由美以外は認めんぞ!』

 

先約があると言われれば誰だって驚く

 

片思い中なら尚更だ

 

達也『…どうもこうも、私は誰とも関係は持っていませんし。閉会式前にホテル内で第三高校の方三人に声を掛けられまして。このパーティで踊ってほしいということで誘いを受けていましたから。それが終わりましたら、すぐに伺いますので、では。』

 

浮気でもないし、お前は俺の母親か家族なのかとツッコミを入れたくなった

 

誰も踊らないとは言っていないし真由美より先に彼女達から誘いがあったのだ

 

あの場は達也一人で居たとはいえ、勇気を振り絞ったその行動を蔑ろにするわけにはいかない

 

自ら行動するか親友からのお願いでは、当然達也が優先するのは前者なのだから

 

摩利『(ダークホースに三高とは。)?真由美?…流石にショックを隠し切れなかったか。』

 

後ろ髪を引かれることなく、愛梨達が居るであろう三高のグループの中に消えていく達也

 

摩利は恋敵(ライバル)一高(うち)だけではなかったかと反省していた

 

そしていつもならブツブツと文句言っているはずが、静かすぎる真由美

 

そろりと、顔を覗き込むと真っ白という言葉が当て嵌まる位に真由美は呆然と立ち尽くしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

三高の生徒から好奇の視線を浴びながら愛梨達三人の下へと辿り着く達也

 

何故か愛梨だけは少し不機嫌な表情をしている

 

愛梨『遅いわよ。』

 

達也『まだ時間はありますよ。』

 

愛梨『そういうことではないわ。こういうときは少し会話をして場を和ませてから踊るものよ?』

 

どうやら、こちらに来るのが遅かったのが原因のようだ

 

だが、ダンスなど人生で初めての達也はそんな気遣いは皆無に等しい

 

沓子『まあ、愛梨よ許してやってはどうじゃ?守夢も七草の姫ではなくわしらを優先してくれたからのう。』

 

栞『そうね。本来なら第一高校(身内)を優先しても文句は言われないのに、断って来てくれたのだから。』

 

栞と沓子は最初のダンスの相手を自分達に優先してくれたことで大目に見てくれているらしい

 

そうなると、真由美達との会話だけでなく浩也との会話も聞こえている可能性はあるだろう

 

達也『それは当然かと。約束したのがどちらが先か、それを蔑ろにするのは大変失礼でしょう。』

 

愛梨『それもそうね、ありがとう。…でも、貴方はあのエリシオン社の社長の娘と会うというじゃない。素直に喜べないわね。』

 

優先した理由を述べたためか栞と沓子のフォローのおかげか愛梨は少し顔を赤らめるもすぐに先ほどの不機嫌そうな表情に戻ってしまう

 

どうでもいいかと思った矢先、愛梨の嫉妬にも似た不満に浩也との作戦の効果は成功したようだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーティでのダンスといえど初心者も多い高校生が踊るため難しいステップ等は無かったため、達也も愛梨達の足は引っ張らずに済んだ

 

踊っている最中、周囲の視線主に一高の女性陣から射殺すような視線があったのは気の所為ではないだろう

 

理由は同じ高校で声も掛けやすいはずがライバル校である三高の生徒(しかも、師補十八家とナンバーズ)と踊っているからなのだが、本人は分かっていない

 

 

沓子『今日は楽しかったのじゃ。ありがとうなのじゃ、守夢。』

 

栞『私も愛梨や沓子以外でこんな面白い人は初めてだったわ。ありがとう。』

 

達也『それは良かったです。』

 

二人の満足げな様子に妙な解放感があった

 

愛梨『私からもありがとう。無理を聞いてもらって。』

 

達也『いえ、それでは私はこれで。』

 

そして不機嫌な様子だった愛梨も曲が流れ踊り始めると口許は綻んでいたので満足はしていたのだろう

 

お相手も終わり休憩する間もなく、真由美が待っている

 

早く戻らなければ何を言われるか分かったものではない

 

愛梨『!待って。』

 

達也『何か?』

 

愛梨『…メールとかで構わないから連絡取れないかしら?』

 

立ち去ろうとする達也の背中に愛梨は静止の言葉を掛ける

 

ダンスは終わったのだから用は無いはずだ

 

振り返ると愛梨の右手に小さなメモが握られていた

 

達也『暇な時にしか返信出来ませんが、それでよろしければ。』

 

もしかしたら、ダンスの誘いはこのメモを渡すためにあったのかもしれないと理由は聞けないかわりに邪推する達也だった

 

 

 

 

 

 

 

その後、自分を後回しにされ不貞腐れていた真由美のダンスの相手をし、ほのかと雫、更には鈴音とダンスの相手をし終えた達也

 

残すところ数曲でこの長かった九校戦の全てのスケジュールが終了する

 

そろそろ、外に出ようか考えていたところに絶世の美女?が達也の前に立ちはだかった

 

深雪『守夢さん、私とも踊っていただけるかしら?』

 

達也『見ていたかと思いますが、ダンスに関しては上手くありませんので悪しからず。』

 

いつも隣にいる女子生徒は九校戦に参加していないためかこの場には居ない

 

とりあえず、予防線だけは張っておく

 

深雪『構いませんわ、期待してませんもの。』

 

なら、何故踊れと?

 

相変わらずの女王気質に諦めるしかない

 

達也『…では、参りましょうか。』

 

この時ばかりは曲よ早く終わってくれと願う達也だった

 

 

 

 

 

深雪『初心者にしてはまあまあでしたわ。』

 

達也『それはどうも。』

 

無情にも時間は早く過ぎてくれず、更にはぎこちない動きだのもっと動きを女性に合わせろだの小言を言われる始末

 

嫌いなら無視してくれる方がありがたいが、理解不能な人種である

 

将輝『司波さん、と守夢。』

 

曲の後奏が長いためか、周囲では次のダンスの相手を探すのに時間を掛けているようだ

 

誰かこの女王様の相手をしてくれる人はいないかと思った矢先、ちょうどいい生贄(一条将輝)が現れた

 

傍から見れば美女である間違いない深雪とそこそこ容姿は良い達也、そこに美男である将輝が現れれば周囲は三角関係なのかと視線が集まってくる

 

深雪『あら、一条さん。どうかされましたか?』

 

将輝『い、いえ、その……。司波さん、一緒に踊っていただけませんか?』

 

深雪『えぇ、喜んで。それでは、エスコートお願いしますね?』

 

先ほどまで達也に向けていた冷酷な微笑は微塵もなく、花が綻ばんとする笑みで将輝を出迎える

 

そんな深雪の一面を知ってか知らずか自分に向けられた微笑みに赤面する将輝

 

これで外に出れると思い背中を向けると、自分を呼び止める将輝の声

 

 

 

将輝『は、はい。あっ、その前に守夢に聴きたいことがあるので、少し待ってもらえませんか?』

 

深雪『構いませんわ。』

 

達也『?彼女とは恋人でも何でもないですが?赤の他人ですよ。』

 

将輝『そ、そうなのか。…良かった(ボソッ)!って、そうじゃない。あの時の言葉の真意を知りたいと思ったんだ。俺に止めを刺す直前、成長出来ていないと言った。あれはどういう意味だ?』

 

この状況で聴きたいことと言われれば、一つしかないだろう

 

それは男女の仲であるかどうかだろう

 

答えはノーだが

 

真面目に答えるとそんなことが聴きたいんじゃないと怒られてしまう

 

一体何を答えないといけないのかと思っていたら、自分の発言に疑問を抱いていたらしい

 

達也『?そのようなことを言ってたんですか?』

 

そのような問いを簡単に答えるはずもなく、達也は惚けてみせる

 

将輝『憶えてないのか?』

 

達也『さっぱりです。』

 

深雪『呆れた、まるで他人事のような口振りね。まあ、貴方がどこかで一条さんと出会っていたなんて信じられないわね。』

 

一昨日の出来事ならば辛うじて憶えていてもおかしくはないが、いくら頑張っても思い出せない達也にありえないといった様子の将輝

 

ショックを受ているらしいが一ミリも胸は痛まない

 

深雪はそもそも達也と将輝が出会っている方がありえないといった様子だ

 

将輝『良いんです。司波さん。三年前のあの佐渡の時、俺は絶体絶命の危機をある人に助けて貰いました。その人の口調が今回の守夢にそっくりだったんです。いえ、逆ですね。守夢がある人の口調に似ているんです。』

 

深雪『………』

 

新ソ連の佐渡島への侵攻

 

その時、将輝は一条の戦力として出兵していた

そこで数多の敵を己の爆裂という魔法で屠った、その通り名として爆裂の一条と恐れられるようになった

 

その作戦で将輝は命の危機を救われたという、その救った人物の口調と達也がモノリス・コードで発した口調が酷似しているため将輝は達也に問い掛けたのだ

 

それを将輝から聴いた深雪も何か考える素振りをみせる

 

達也『私が一条さんを助けた?冗談にも程がありますよ。お二人ともご存知かと思いますが、魔法力の無いのに佐渡侵攻の作戦に参加出来るとでも?年齢も考えてください。嫌味も大概にして欲しいですね。そろそろ、次の曲が始まりますよ?…では。(まさかあの時の事を憶えていたとは。)』

 

とりあえず、ひとしきり唸る素振りを見せた後将輝に向き直る

 

将輝が上げた根拠では信憑性が薄いことや徴兵の年齢等を根拠に挙げ自分とは無関係であることを告げる

 

時間も無いため切り上げた達也だが、あのまま会話を続けていたらあらぬ誤解が生まれることは予想出来た

 

もし、周囲の生徒達の間で佐渡侵攻作戦の時達也が将輝を助けた恩があるからモノリス・コードでもワザと負けたなどと吹聴されれば十師族等で調査が行われるに違いないだろう

 

一条の戦果は問題無いが、その場に参加していた人間への再調査が行われるのは間違いない

 

全くTPOも弁えずこんな公衆の面前で問う内容ではない

あの問いに対して肯定などするつもりもないが、まだまだ精神的に成熟しきっていない将輝に呆れた達也だった

 

 

 

 

 

 

 

 

会場を抜け出し、数十メートルほどの距離に噴水が中央に設置された小さな庭園に駆け足で寄る達也

 

そこには会場で浩也が離れる間際に達也が言伝を頼んだ三人、響子、結那、加蓮が待っていた

 

達也『待たせてしまってすまない結那、加蓮。響子さんもお待たせしました。』

 

響子『気にしないで。あのパーティを抜けることは難しいのは解ってるから。』

 

どうもパーティは苦手だ、社交辞令は性分ではない

 

響子も過去に九校戦に出場し優勝もしており、おまけに彼女自身が美女だ

 

集まる男達の数も多かっただろう

 

加蓮『まあね。これくらいは将来の妻としては許容範囲内よ。』

 

結那『でも、他の女性をエスコートしていたことはお仕置きが必要ですよ?』

 

達也『弁明は無いよ。ただ、寛大な処置を期待するよ。それじゃあ…三人とも少し離れていてくれ。望まれざる客がこちらに来ているようだ。』

 

やはり、ダンスに関しては許してはくれなかったかと苦笑するしかない

 

次の演奏が始まろうとしているため三人に声を掛けようとするとゆっくりとした歩みで近づいてくる一人の男の気配

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十文字『時間を空けといてくれと頼んだはずだが、ここまで離れることもなかっただろう。』

 

達也『貴方の要望に応えたわけではありませんよ。休憩したかったからここまで来ただけで、貴方が勝手に金魚のフンのようについてきただけのことです。』

 

その男、十文字は噴水の縁に腰かけた達也を見留めるともう少し場所を考えて欲しいと訴えかける

 

しかし達也は年上だろうと十師族だろうと関係ない、人対人、対話で成り立つ

 

お互いが了承し合わなければ意味はない

 

そんなこと説明したところでこの男には釈迦に説法、馬の耳に念仏だろう

 

十文字『…守夢、お前は十師族の一員だな?』

 

達也『…』

 

珍しく言葉を詰まらせたから謝るかと思いきや正体を現せという

 

失礼な奴だと思いながら、欠伸を一つ

 

十文字『沈黙は肯定と受け取るぞ。』

 

達也『…』

 

十文字『…まあいい。それならば、十師族十文字家代表補佐である俺から助言をする。守夢、お前は十師族になるべきだ。理由は聞かずとも解るだろう。しかし、あの試合で一対一(サシ)で一条の後継者に勝つということはお前が思っているより遥かに重いのだ。その力を活かせる場所にいなければならない。』

 

達也『…』

 

十文字『いきなりなれと言われても難しいだろう。…そうだな、七草はどうだ?』

 

達也『…』

 

十文字『お前が婿となり、七草と結婚する。これならば問題も無いだろう。あいつがお前に好意を寄せているのは見れば分かる。お前もそれを分っているはずだ、お前が歩み寄りさえすればいいだけのことだ。だから…』

 

十文字の言葉はこうだ

 

一条将輝を倒せる実力者はそういない、そうなると達也が十師族であることを隠しているのではないか?

 

そうでないならば、達也は十師族の一員になる必要がある

その候補として身近なのは七草真由美だ

真由美自身、達也に好意を寄せているため達也さえ問題なければ婚姻を結ぶことが可能だ

 

その理由は殺し合いではないとはいえ戦闘で十師族を倒した一般人の達也

 

強力な魔法力がある方が有利であり、それを持つのがこの日本の魔法師界の頂点に立つ十師族なのだ

 

そんな頂点の内の一人を大した魔法力のない高校生が打ち砕いたのだ

 

そんな人物を野放しにするわけにはいかない

 

達也『あれ、独り言まだ続いていたんですね。』

 

尚も話続ける十文字に再び欠伸を一つ漏らす達也

 

ここまで十文字が捲し立てたのは理由は浩也と話した婿入りの件が大きいだろう

 

第一高校の面々は身内同士だと解っているが、周囲は違う

 

エリシオン社の社長と守夢達也が身内であることは知らないため今回の話は既成事実になりかねない

 

将輝を打ち破った達也の力を問題にならないように手に入れたい、つまりはそういうことだ

 

十文字『お前に話しているのだが?』

 

達也『そうだったんですか。私は貴方からの時間を割くように言われましたが、了承した憶えはありませんので。よくその傲慢さが私に通じると思いましたね。』

 

十文字『守夢。お前は事の重大さが理解出来ていないようだな。』

 

意外と一高にも効果は覿面だったようです義父さんと心の中で溢す達也

 

そもそも論として十文字側の要求を伝えただけで達也側は了承もしていない

 

したがって達也と十文字の会話は成り立ってすらいないのだ

 

正論をぶつけても十文字(十師族)側の要求(命令)の方が重要であるらしい

 

達也『知ったことか。お前達十師族のものさしで物事を測るな。一条が無名の魔法力の無い人間に負けるなどあってはならない?それはあいつが優先順位を間違えたからだ。それにお前達が俺に出場しろと言ったのだから、俺が勝つことも予想は出来ていただろう。それを十師族(お前達)の都合で一般人である俺を巻き込むな。』

 

十文字『十師族と敵対するということか。』

 

達也『…なぜそうなる。お前の読解能力を疑う。俺に関わるなと言っている。』

 

もしこの場に椅子があったなら、おそらく達也は椅子ごとひっくり返っていただろう

 

極論しか議論が出来ないのか?と疑うしかない

 

そんな集まりの一人だから一条将輝は達也の土俵に乗せられたのだ

 

 

そんな人間達の中に入るなど真っ平御免だ

 

 

十文字『それでは何の解決にもならんと言っている。お前の戦闘力を欲しがる家は山ほどいる。排除したがる家も同様にな。』

 

達也の拒絶に十文字も珍しく声を荒げる

 

全ては達也の為なのだと何かあってからでは遅いのだと

 

達也『大変だな、魔法師というのは。自分に対して脅威となり得る者は容赦なく排除し、もしくは自分達に益がありそうなら無理矢理にでも取り込むか。…いいぞ、いつでも掛かって来い。相手になるかどうかは別だがな。肉塊になっていても俺は責任は取らないからな。師補も含めた十師族に伝えておけ。』

 

十文字『…』

 

義理とはいえやはり親子なのだろう

 

言葉は違うが、内容としては九島烈に浩也が言った内容と酷似しているのだ

 

十文字の反論を封殺するように殺気を放つ達也

 

その殺気に反応してか十文字の右手がピクリと動く、その動きはまるでCADを操るかのように

 

しかし達也の殺気が収まるとハッとし、すぐに冷静さを取り戻す

 

達也『あぁ、そうでした。これだけは言っておきます。十師族には興味ありませんが、魔法師か魔工技師にはなれるよう頑張りますよ。』

 

その行動に流石は当主補佐を務めるだけはあるなと、達也は関心するのだった

 

 

 

 

 

 

 

響子『良かったの?』

 

達也『何がですか?』

 

会場の中に戻っていった十文字

 

響子は十文字の立場は理解はしていた、何故なら祖父があの九島烈なのだ

 

十師族にも矜持はあるし日本の魔法師界を纏める立場にあるため今回の行動を一概に否定はしない

 

響子『…ううん、何でもない。』

 

しかし、それでも許せなかったのも間違いない

 

達也一人の人間だ、感情だってあるから好き嫌いもある

 

それを政治の道具のような発言をする十文字に不覚にも怒りを露わにしてしまった

 

達也『解っているつもりではあります。それに政治には興味はありません。けれども守る為に政治を利用するのはやぶさかではありませんけどね。それより、良く耐えてくれた。三人ともありがとう。』

 

響子が言いたいことも解っているつもりだ

 

このまま何事もなく過ごせるわけはないと

 

それを回避するためには犠牲をしなければならないことも、だがその人身御供(ひとみごくう)は一人だけで良い

 

加蓮『三人とも殺気は出てたけどね。』

 

結那『だから、達也さんは誤魔化したんでしょ?』

 

十文字の戯言を気にも止めず沈黙を保っていたのを突然、喧嘩を売るような形で割り込んだのは三人の殺気を十文字に気付かせないためだ

 

僅かな時間なら気付かないだろうが長時間だと悪寒を感じただろう

 

そしてそれが殺気であることも

 

達也『さあ?何の事だろうね。』

 

加蓮『照れ屋さんめ。』

 

響子『ふふっ、そうね。』

 

そんなこともあったかなぁと惚けてみせても意味はないが、達也だって男の子だ

 

大切な女の子を守りたいのだ

 

達也『さて、そろそろ最後の曲が始まってしまった。僅かな時間で申し訳ないが私と踊っていただけますか?』

 

『『『喜んで』』』

 

そんなところも含めて十分に良い男なのだが、欲張りな女の子はもっとそれを表に出して欲しいと願う

 

何故なら、恋敵(ライバル)は多いのだから

 

 

 




如何でしたか?
①これからも夕歌さんは出てくるかもです。
②愛梨さんも達也に気が、これからの展開を見守ってください。
③将輝と達也の関係はいずれまた
④ごめんなさい、十文字と喧嘩?に発展させ掛けてしまいました。
⑤周囲を発破掛けるには外堀を埋める作戦はアリですかね。
⑥原作での深雪さんの立ち位置をオリキャラと響子さんに。

とまあ長々と様々な人種の思惑を書いたつもりでしたが、目指すは丸く?治めることですから。

ご期待に添えなければすみません。

ではまた次回お会い出来ればと思います。

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