抹殺された神の愛し子   作:貴神

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……5ヶ月ぶりです(泣)

こまめに書いていたのですが、その一週間後に多忙の日々が待ち受けているとは思いませんでした。

楽しみに待っていられた皆さんには申し訳ありません。

勘が鈍っていなければ良いのですが……楽しんでいただければ幸いです。


29話

翌日の放課後

達也は安定の地下の閲覧室に来ていた

 

本当は聖遺物(レリック)の分析をしたいところなのだが、論文コンペを先に済ませておかなければ後々に影響が出る

 

全力で好きなことをしたいのなら、面倒なことは先に片づけておいたほうが精神的にも良いからだ

と考えつつも、ちょこちょこと摘み食いのように興味が聖遺物(レリック)向いてしまうのは悪い癖だ

 

頭を一つ振り、気持ちを切り替え論文コンペ用の資料を探すかと意気込んだ時、奥にある個室の一つの扉が開く

 

真由美『あら、守夢君。今から調べもの?』

 

達也『はい、論文コンペの資料集めに。七草先輩も何かの資料集めですか?若しくは…読書の秋ですか?』

 

個室から出てきたのは前生徒会長の真由美

 

達也を見つるその瞳には恋情が宿っている

 

当たり前だが、九校戦以後ほのかや雫からのアプローチは増している

 

真由美もほのか達と比べて物理的な距離の接近は少ないものの、心理的距離を縮めようとしているのか積極的に会話を持とうと試みているようだ

 

真由美『後半はわざとよね?』

 

失礼ね、と可愛らしく頬を膨らます真由美

 

達也『とんでもないです。判らないから可能性を挙げただけなので、他意はありませんので。』

 

真由美『…受験勉強のためよ。』

 

達也『推薦があるのでは?』

 

そのあざとさを服部にでも向けてやれば彼も喜ぶだろうにと考えつつも、受験ならば真由美ならどこでも進路は選り取り見取りだろうにと推測するもなにやら事情があるようだ

 

真由美『残念。実は生徒会の役員は推薦を辞退することになってるの。当校の不文律としてね。』

 

達也『それは失礼しました。ということは私も辞退する流れですね。』

 

初めて達也に間違えさせた真由美の声音は弾んでいる

 

いつも達也には煮え湯を飲まされているため意趣返しと言わんばかりに

 

達也と言えば、生徒会役員になるべきではなかったかと己の安易な発言を省みた

 

真由美『うーん、そういうことになるのかな?で、ちょうど空室が出たのだけど。ここで話すのもなんだし、一緒にどうかしら?』

 

達也『弁明はお願いしますね。』

 

そして真由美は、先程自身が出てきた個室を指差し達也に入るように促す

 

周囲を見渡しても達也と真由美以外いないためここで遠慮するのも無粋かと真由美に従った

 

 

 

達也『…』

 

真由美に従い入室したわけだが、一人用のこの部屋に二人が入るのは物理的に無理があった

 

言っては何だが、達也の体型は痩躯の部類に入るがその実、成人男性よりも肩幅もあり、身長は日本人にしては長身だ

 

というわけで、この狭い個室で真由美は達也に体を密着させていた

そして、さらに密着させるために達也の腕に抱き着いた

 

所謂、当ててんのよ、というやつだ

ちらりと、真由美の表情を盗み見ると薄暗い照明でも判るほどに赤面していた

 

狙いはこれかと小さく嘆息する達也

 

赤面するくらいならやらなければいいと思うも恋する乙女としては少しでも効果があるならばやらないわけにはいかないのだろう

 

 

真由美『改めてだけど、鈴ちゃんのフォローお願いね?』

 

本当なら真由美も鈴音を手伝いたいのだろう

 

しかし、真由美には鈴音がやろうとしているテーマでは足を引っ張ってしまうため陰ながら応援することにしていた

 

人には得手不得手がある

 

真由美自身、自分が何でも出来るなどとそんな思い上がりは持っていない

ただ、魔法に関してはそれなりの自負はある

 

話が横道に逸れたが、真由美は複雑な工程の魔法を持続させるのは不得手であり、それを鈴音は理解していたから真由美を候補から除外していたのだろう

 

真由美もそれに関して異論はないのだと推察する

 

だが、それだけでは説明できない理由があるはずだ

 

達也『真由美さんは市原先輩の論文テーマについて何かご存知なのですか?』

 

真由美『どうして?』

 

達也『【重力制御魔法式熱核融合炉の技術的可能性】には何か特別な思い入れがあるように感じます。それでなければ、わざわざ選考に参加していない俺に話が来るとは思えません。単なる興味本位ではなく、必ず形にする必要があったから。違いますか?』

 

真由美『そうよ。鈴ちゃんの夢は魔法師の地位の向上よ。政治的ではなく、経済面からのね。』

 

魔法師という最初は兵器として政治的道具としての扱いだったが、このままの立ち位置では意味がない

 

兵器としての宿命から解放され経済面やエネルギーの観点から魔法師という人種が重要なファクターに生まれ変わる

夢物語と思われるかもしれないが、でもその夢を実現させたならば魔法師という人種の可能性が無限大になるだろう

 

達也『なるほど。』

 

真由美『?達也君、少し驚いていたけどどうかしたの?』

 

達也『いえ、大したことはありません。一応、私も魔法師の地位向上の為に市原先輩と同じテーマを取り組んでいるものですから。しかもこのようなマイナーな思想の持ち主が俺以外にも居たとは驚きでした。』

 

これで合点がいった

 

どうして鈴音が達也を候補として選んだのか、単に【重力制御魔法式熱核融合炉の技術的可能性】を論文として出すなら、達也でなくても問題ない

 

鈴音はその先を見据えているからこそ候補者でもない達也の資料の検索履歴も調べたのだ、自分の想い、この論文の力になってくれそうな人間を見つける為に

 

そして、幸運なことに想い人が同じテーマを掲げていたのは心が躍ったに違いない

 

達也自身、このテーマは鈴音と同じように魔法師の地位向上の為だがその根本は家族の為だ

 

この時代、魔法は重要なファクターだ

表の顔でもCADのメーカーであるためそうなると魔法を使える家族も魔法師の一人に数えられてしまう

そうなれば、兵器としての側面がまだ強いこの時代に否が応でもその渦に巻き込まれてしまう可能性はある

それを阻止するためには戦争や政治的側面から脱却し、代替のものが必要とされる

 

それが達也の場合【重力制御魔法式熱核融合炉】だ

 

このコンセプトは達也のオリジナルでは全く無く

五十年以上も前から原子力ムラから脱却を図るために様々な案が出されたが、利権が絡みあい中々脱却出来なかったため今でも核燃料を使わざるを得ない状況だ

 

あとは核の効率良く、廃棄物もほとんど無いエネルギーの抽出を目指すだけなのだがこれが中々上手くいかないのが現状だ

 

もっとも、鈴音とはテーマが同じであってコンセプトや動機は全く違う

 

そして、大きく膨らませたが家族が戦争や政治に巻き込まれることは無いだろう

あの家は表に出ることは無く、あまり言いたくないが裏の支配者だ

 

そのため達也による転ばぬ先の杖だろう

 

真由美『…ふーん。達也君、鈴ちゃんみたいなのが好みなんだ?』

 

鈴音の考えに僅かに目を瞠った達也に真由美は面白くないという表情だ

 

達也『好み?確か、数ヵ月前にも訊かれましたが今は婚約者もいますよ?』

 

真由美『それは対外的なものでしょう?私達は知ってるんだから。』

 

達也『そうですね。対外的には、偽りですね。』

 

真由美『やっぱり、大人っぽい方鈴ちゃんが私より好みに近いんじゃない?』

 

どうも他の女性に目が向くことが気に食わない様子の真由美

 

恋人でもないのに浮気の真偽を確かめられても困る

 

達也『回答を差し控えさせていただきます。』

 

真由美『むう。ふーんだ、子供体型でごめんなさいねぇ。』

 

達也『…はぁ。真由美さんは子供体型ではないでしょう?出るところは出てますし、容姿も美少女と言われてもおかしくない。バランスも良いと思います。…まぁ、敢えて言うならしn…』

 

好みを探り出したかった真由美だが、黙秘されては面白くない

 

達也は達也で真由美の言葉に首を傾げる

今回はたまたま鈴音と共同で論文を完成させるだけであって、本来は同じテーマを競うライバルなのだ

 

それに真由美自身が卑下するほど女性としての魅力が無い訳ではない、寧ろ大半の人間が羨む体型だろう

 

ある一つのコンプレックスを除いて―――

 

真由美『た・つ・や・く・ん?それ以上言ったら、大声で叫ぶわよ?』

 

達也『冤罪です。』

 

真由美と二人きりのこの状況を他の人間に見られれば、誰もが誤解と達也が悪いという冤罪が出来上がってしまう

 

真由美『全く。セクハラ発言満載だし、女心も分かってないし。こんな可愛い美少女が隣に居るのに、達也君は何とも思わないわけ?』

 

達也『…そうですね。そこまで仰るのなら遠慮はしませんよ?』

 

あからさまに挑発しているが、本当に迫られた場合どうなるのか

 

右隣にいる真由美に向き直ると逃げ道を塞ぐように真由美の左側を右腕で壁を作る

 

所謂壁ドンである

 

逆側は簡易のデスクであり背中は部屋を区切る壁のため達也の腕の要素で即席の檻の完成だ

 

真由美『!ちょっ、た、達也君?何か近いんだけど?』

 

突然の達也の豹変により逃げ道を失くした真由美

 

そして、徐々に縮まる二人の物理的距離

 

真由美『っ!ね、ねえ。聞いてるの?こ、こんな場所で…///。』

 

達也『(フッ)』

 

更に達也の左手が真由美の頬に触れ、顎へと移動し顎を上向きに持ちあげる

 

親指が下唇に触れると途端に大人しくなる真由美

 

そして、何を期待したのか目を閉じている

 

その様子に満足した達也は触れていた手を離し、資料を漁るためにモニターに向き直る

 

真由美『…(もしかして揶揄われた?)達也君!』

 

真由美はと言うと、いつまで経っても来ない接触と達也がいるであろう場所でキーボードを叩く音に閉じていた瞼を上げる

 

達也本人は居るものの、隣の真由美を一瞥することもなくモニターを凝視している

 

そこで漸く、自分が達也に遊ばれたのだと理解した真由美

 

達也『はて?』

 

真由美『っ~!!乙女の純情を弄んだ罪は重いわよ!』

 

赤面した真由美に素知らぬふりをする達也

 

真由美は気づいていないだろうが、この各個室には監視用のカメラが設置されており如何わしいことを行えばすぐに見つかってしまうのだ

 

と外向きの説明しようとも、そもそも先程の行為は調子に乗り過ぎの真由美に対して痛い目をあわせるためのものだ

 

どれ程、彼女が達也にアプローチを掛けようとも無駄であり、【骨折り損の草臥れ儲け】である

 

まあ、もしかしたら達也にかまってもらえたという意味では真由美にとってはラッキーなのかもしれないが

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーその夜、達也は自室で珍しい現象に遭遇していた

 

 

達也『?…クラッキングか(珍しい…そして、命知らずな。)』

 

学校側に論文コンペの提出期限を三日後に控え、データ処理も最終段階に入っていた達也はホームサーバーが攻撃されていることに気付いた

 

それも素人ではないプロの犯行だ

 

たまたまアドレスを見つけた素人ならば、何度もアタックをしてはこない

反撃を受けたら、そそくさと撤退するのが多い

 

しかし、侵入に対しての防御システムからの撃退を何度も受けてもアタックを試みようとするのは何か意図があるのだろう

 

とりあえず、達也は自作の逆探知システムを立ち上げるのだった

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

朝、達也は昨夜の出来事を浩也と凛に報告する

 

すると、浩也から達也が関わっているこの一連の事件を結那、加蓮、恭也に話すなと指示があった

 

いずれは話すそうだが、今はその時ではないということらしい

 

 

達也『ーーー結局ですね、プログラム破壊のウイルスは持ち帰らせたのですが追跡の方は外されてしまいまして。手掛かりが無いということなのですが、このような困った生徒に知恵をお貸しいただけませんか?』

 

小野『…あのね、守夢君?ここは貴方みたいな困ったではなく、年相応に成長したいと真剣に悩む生徒が訪れる場所なの。』

 

朝の浩也と凛と話し合った結果、結論としては達也の独自の行動が必要になってくるそうだ

 

そういう訳で縁浅からぬ小野の下へと赴いていた

 

達也『私も年相応に困っています。また、ちょっかいをかけられたら面倒くさいなと。だから、関連性をつけるために小野先生の知恵をお借りしたいのです。』

 

小野『年齢詐称もいいところの君が何を言うのかしら。全く…最近、横浜港の周辺で相次いで密入国が確認されているわ。』

 

一度、関わり合いを持ってしまえば切るのが難しいのが情報を扱う業界だ

 

今更だが、甘言に唆されて達也と契約をしなければよかったと後悔する

 

達也『…(重要港湾で大胆にも密入国か、誰かの手引きがなければスムーズには入れない。)魔法協会か論文コンペだとどちらの可能性が高いですか?』

 

狙われるべきは家の情報で判っているはずなのに、何故達也は小野にあまり価値の無さそうな情報を訊くのか?

 

小野『…それだけではないわよ。それと同時期にCADのメーカーのマクシミリアンやローゼンに部品を納入している会社が盗難の被害に遭っているわ。今は、警察や湾岸警備などが捜査にあたっているわ。あなたのご家族の会社に関連する会社はほとんど被害に遭っていないのは何故かしら?』

 

達也『さあ?たまたまではないですか?』

 

小野『…最後に忠告よ。論文の提出はオンラインではなく、メディアで行うように。』

 

達也『ご忠告ありがとうございます。』

 

おそらく、国内での情報の統制がとれているのかだろう

 

政治は様々な利権や思惑が絡み合うものだ、一枚岩で対処など出来るわけがない

 

特に自分の家はそうそう表には出ない

 

本当に日本が危うい状況でしか力は見せない

 

だから、出来る範囲で降りかかる火の粉は自分で払わなければならない

 

 

 

 

 

 

五十里『それは本当かい?』

 

達也『はい。何が目的なのかは不明ですが、クラッカーのコマンドを見ると、魔法理論に関するファイルを狙っているようでした。先輩のお宅も用心してください。』

 

放課後、摩利に呼ばれて風紀委員会本部に達也と五十里は居た

 

五十里『被害は何も無かったんだね?』

 

達也『えぇ。ご心配には及びません。(近い、この人のパーソナルスペース狭すぎないか?)』

 

余程クラッキングのことが心配だったのか、身を乗り出す形で距離を縮める五十里

 

そんな五十里を宥めるように両手を前にする達也

 

 

五十里『でも、この事は市原先輩には伝えたほうが良いよね。』

 

達也『…はい。時期的に論文コンペですからその線が濃厚かと。』

 

五十里達の常識というか知識としてはこのイベントしか考えられないが、達也だけが知っている情報としてはいくつか考えられるのだが、それは伝える必要がない

 

五十里『うーん。あまり僕はそれ以外では心当たりは無いね。』

 

達也『念の為、注意は払っておいて下さい。』

 

暫し考え込む五十里だが心当たりがあるはずもなく、当然かと納得の達也

 

花音『啓、おまたせ!』

 

五十里『か、花音!?』

 

摩利『やあ、守夢。十日ぶりくらいか、元気だったか?』

 

二人の会話が終わった直後、扉が開き二人の女子生徒が入ってくる

盗聴でもしていたのか?と思わせるほどにジャストタイミングだ

 

一人の女子生徒、現風紀委員長千代田花音は入室するなり婚約者である五十里啓に抱き着くと頬擦りをし始める

 

その様子を間近で見た達也はドン引きの表情をする

 

そこに二人目の女子生徒、元風紀委員長渡辺摩利が達也の肩を叩く

 

達也『渡辺先輩、ご無沙汰というほどでもありませんが。まさかとは思いますが、呼び出したのは論文コンペに関してですか?』

 

相変わらず男前な仕草をするな、と心の中で呟く

 

摩利『それも一つ。その前に花音の仕事ぶりを聞きたくてね。』

 

その言葉と同時に花音の肩が僅かにあがり、視線を泳がせる

 

摩利には否、婚約者である五十里に知られたくないのか

 

達也『巡回はすでに別々ですから。事務処理の方はそうですね…。』

 

摩利『…』

 

花音『…』

 

達也『断捨離と言いますか。整理整頓という意味ではありませんが、捨てるということに関しては流石の一言につきますね。重要書類までもが処分とは。…本当に誰に似たのやら。(ボソッ)』

 

最後は吐き捨てるように言うと摩利と花音は居心地が悪そうに身動ぎする

 

花音の捨てると決める判断は中々のものであるが、必要なものまで捨ててしまい探し回ることもしばしばだ

 

そして、二人共自覚はしているものの、行動に反映されていないため達也の頭痛の種になっているのだ

 

外野の五十里はそれを聞いて、苦笑を漏らすしか出来なかった

 

 

 

 

達也『先程の話ですが、論文コンペは風紀委員会が何か担うのでしょうか?』

 

達也の評価に花音は抗議を申し立てたのだが、容赦の無い口撃で花音を再びしずめた達也

 

またもや涙する花音を尻目に学習しないなと溢す達也は摩利に向き直る

 

 

摩利『そうではない。風紀委員会が担うのはチームメンバー、今回は市原と五十里そして君だ。君たち三人を護衛をするかどうかをということをね。』

 

花音『啓は私が守るから安心してね。』

 

五十里『よろしくね、花音。』

 

立ち直りは早いのか、五十里に抱き着く花音

 

達也『なるほど。』

 

摩利『そういうことだ。会場の警備は魔法協会がプロを手配するから問題ない。相談したいのはチームメンバーの身辺警護とプレゼン用資料と機器の見張り番だ。』

 

摩利の話はこうだ

 

論文コンペには魔法大学関係者を除き非公開の貴重な資料が使われる

 

この事は外部にも結構知られているため、産学スパイの標的になることもときどきある

 

達也『…(なるほど、それで見張りに護衛か。)ということは窃盗などが多いということですね。間違ってもクラッキングなど重大犯罪は無いということですね。』

 

摩利『そういうことだ。そこまで大した事件は無い。お前が思っていそうな如何にもといった犯罪は無いから安心しろ。』

 

どうして高校生である達也の口から物騒な言葉が出てくるのかは不思議でならないが、そこは藪蛇だろう

 

達也『そういうことでしたら護衛などは不要ですね。(寧ろ、余計に邪魔になりかねない。)』

 

もし達也に護衛を付けるなら、達也より危機察知能力か戦闘力が上でなければ足手まといにしかならない

 

これからのことを考えれば他人を関わらせることはかえって危険だ

そして、その場面に遭遇させては達也自身の秘密を晒すこともあるかもしれない

そうなれば存在を消さなければならないし、後始末もある

 

摩利『そう言うと思ったよ。五十里は花音。市原は服部と桐原の二人だ。』

 

部活連会頭を駒遣いするとは鈴音も流石であるが、まあ服部も鈴音には頭があがらないのだろう

 

達也『話は変わりますが、何故先輩が調整役を?』

 

摩利『あ~それはだな…。』

 

ふと、何故摩利が今回の風紀委員会が護衛兼見張りの件を伝える必要があったのだろうか?と気になった達也

 

普通であれば現風紀委員長である花音が行うはずだ

 

摩利に問うような視線を投げかけると、これまた面白いほどに良い反応を見せてくれた

 

更には分かりやすく目が泳ぎその視線の先には案の定、花音はこちらに背を向けている

 

達也『…ほぉ。これはまた教育的指導が必要なようですね。』

 

花音『…!?』

 

摩利『…お手柔らかに頼む。』

 

摩利の所為ではないが、彼女の言葉が発端であるのは間違いない

 

100%が摩利が起因してはいないが、一部は摩利が花音を甘やかしていたために起きたのも事実

 

そのため、摩利も今回の件に関しては達也に強くは出れない

 

風紀委員会は事務処理という面では達也なしでは成り立たないからだ

 

摩利に出来ることとすれば、花音への仕置きを少しでも小さくすることだけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

達也『お二人のお手を煩わせることですから来ていただかなくても問題はありませんでしたよ。』

 

五十里『そういうわけにはいかないよ。それに、気分転換にもなるしね。』

 

達也は現在、学校の外に買い出しに出ていた

 

第一高校の購買部は一般の高校の購買部とは一線を画する

 

第一から第九まで全てに言えることだが、魔法実習関係の品揃えは相当に充実している

 

それでも完全とは言い難く、外に買い出しに出かけなくてはならないときもある

 

だが、外の魔法科高校の御用達とも言える商店街には高校内の購買部では買えないもの全てが揃っているため、購買部に無かったとしても心配する必要はない

 

機材然り、雑貨、消耗品、書籍、ここで買えない物は何もないとでも言いたげに

 

今回達也達が訪れた理由は、論文コンペで使用するプロジェクター用の記録フィルムが購買部で品切れであったためだ

 

論文コンペの原稿を提出期日が明日とあっては選択肢は一つしかない

 

そう考え、一人で来る算段で鈴音と五十里に報告したつもりが見事に裏切られる結果となった

 

今更ながら、事後報告にして自分一人で買い出しに来れば良かったと嘆息した

 

達也『そうですか。』

 

というのも、達也の真横で五十里と花音が仲睦まじい以上のやり取りを見せられて口から砂糖を吐きだしそうだからだ

 

そういう達也も双子や響子とのやりとりは誰もが甘ったるい関係だと断言できるので、達也のグチというやつだ

 

一応、救いとしては五十里が花音のそれを持て余している感がある

 

五十里『それは悪いよ。これは三人でやり遂げるべきもの、今この時は年齢や序列は関係ないよ。と言っても、僕もサンプルは確認しておきたいしね?』

 

花音『なに?守夢君。あたしの啓が着いてくるのは不満だっていうの?』

 

五十里先輩ならギリギリセーフですが、貴女まで来るのはノーサンキュー(大迷惑)ですとは言わないでおく

 

 

 

 

目当ての物を購入したが、五十里と花音は少し品揃えを見ておきたいとのことらしく達也は先に出ていると伝え店から出た

 

達也『何か恨みを買うようなことをしただろうか?(ボソッ)』

 

五十里『おまたせ。さぁ、帰ろう…?どうしたんだい?何か言いたげな様子だけど。』

 

花音『いつまであたしの啓を邪な目で見てるの!』

 

達也『…(はぁ、面倒だな。)そこの女子生徒、いつまで見ているつもりですか?』

 

仕方ないと謂わんばかりに嘆息し、花音ではなく自分を見る第三者に声を掛ける

 

 

花音・五十里『!?』

 

達也『姿を現さないならば、此方から行きますよ?』

 

花音『何処なの!スパイ!?』

 

五十里『花音、落ち着いて。』

 

達也の肩を掴むや否や詰め寄る花音に五十里は宥める

 

こうなることが判っていたからこの二人には着いてきて欲しくなかったのだ

 

最近、達也をストーキングしている人物がいた

理由は不明だが悪意は感じていたため、達也という人間を歓ていないということは理解していた

 

今日もそれがあったため、内々に処理出来ればと思っていたが気が変わった達也

 

面倒事に巻き込まれるならば、こちらからも巻き込んでしまえば良いとーーー

 

何ともよく分からない思考回路の達也が導き出した行動に振り回される二人だが、そんな打算など考え付かない花音は達也の思うように振り回される

 

達也の何気ない視線の先にある木陰、一目見ても隠れられる場所ではなきが、花音は何かあると信じ猛進していく

 

それが達也の誘導だと知らずに

 

花音『見つけたわよ!…!?居ない?』

 

その言葉と同時に一つの影が激しく動揺する

 

五十里『花音!そっちじゃない、向こう!』

 

花音の言葉に反応してしまい、達也だけではなく五十里にまで気配を悟られてしまう

 

慌てて、その場から離れようとする影に花音が追い始める

 

余談だが、千代田花音は同世代トップクラスの魔法師であると同時に陸上部ではそれなりにスプリンターという一面を持つ

 

無論、非魔法師に適う脚力は併せ持っていないが並みの高校生と競えば勝つ自信はある

 

スカートを翻しながら疾走する花音は第一高校の女子生徒の制服を身に纏う小柄な姿を追う

 

花音『待ちなさい!』

 

???『くっ…!』

 

花音が逃げる一人の犯人とおぼしきその人物を十メートルに届く距離にまで肉薄する

 

その圧力を感じ取ったのかは不明だが、逃げる犯人は背後に迫る花音に振り返る

 

化粧や何を隠そうとするわけでもなく、素顔を見せたその少女に花音は一つでもその素顔の特徴を記憶しようと頭部に意識を集中させる

 

が、その行動は他の挙動を見落とす結果となった

 

達也『!(あれは。)』

 

不意の行動には誰もがその行動に視線や意識が向いてしまう

 

しかし、達也にとっては行動一つ一つが注視すべき事柄であるため、花音が追う少女(変装含む)がイレギュラーな行動を起こそうとも少女の全てが警戒すべき事象なのだ

 

簡単に言ってしまえば、誰にも油断はしない

 

だから気付いたのだ、少女が懐に手を入れ、地面に放った直径5センチメートル程のカプセルの存在に

 

花音『!?しまった、逃がさない!』

 

達也『チッ、(巻き込まければ良かった。)何を犯罪者でもない人間に魔法を使おうとしている。』

 

カプセルが地面に落ちる衝撃で割れた瞬間、目を閉じなければならないほどの閃光が辺りを焼く

 

それは花音、あとから追いかけていた五十里、達也も例外ではない

 

視界を焼かれた瞬間、達也はすぐに視界を回復させると、懐からバイカーズシェードを取り出す

 

学校でこんな時にしか役に立たない不要なものを持ち歩くとは、相変わらず何を考えているのか解らない達也ならではである

 

そして、花音達の視界を遮る閃光も元々がそこまで大きくもない閃光手榴弾であったため数秒程で視界は回復すると、花音は再び少女の姿を探す

 

数秒程でも逃げる時間を稼ぐには十分な時間だ

 

十メートル未満に詰めた距離も十数メートルにまで拡がっており、花音は追いかけながら左手のブレスレット型のCADに右手を添える

 

しかし、その行動を達也が見逃すわけもなく

 

コンマ数秒で追い付き、花音のCADを操作しようとしていた右手を背中にまわし、左手も高く持ち上げドスの利いた声音で花音を恫喝する

 

花音『っ!…守夢。…でも、捕まえないと!』

 

五十里『任せて。』

 

達也の言葉に我に返るも逃す理由ではない、と反論すれば追い付いた五十里がCADを操作していた

 

彼の視線のその先には少女が乗ってきたであろう小さなスクーターがあり、ちょうど少女がスクーターに乗ったところだった

 

間髪入れずに魔法を発動

 

放出系魔法

伸地迷路(ロード・エクステンション)

 

スクーターの両輪が空回りし始める

 

この魔法はタイヤの接地面と道路の電子の分布を操作し、クーロン力(電荷の符号を正か負に偏倚させる)を斥力に偏倚させ、摩擦力を近似的にゼロにする

 

言葉にすれば簡単だが、タイヤが空回りすればするほどその力は摩擦力ではなく、反発する力に変えるなど実行するには複雑な魔法式を必要とするためこのテクニカルな術式を選択する五十里も相当な腕前である

また、複合的に放たれたジャイロ力を増幅させる魔法により倒れることも出来ず立ち往生の状態となる

 

五十里『これなら文句は無いよね?』

 

花音『流っ石、啓!さて、大人しく観n…』

 

五十里の魔法の効果を確認した達也はようやく花音を解放する

 

花音は五十里の腕前に当然のごとく安心しきっており、五十里と共に足留めしているスクーターに歩み寄っていく

 

【手負いの獣には気を付けろ】

 

今回は手負いでも獣でもないが、追い詰めている状況ではあるため気を付けるべき事案ではある

 

人間の感情としてヤケや形振りかまっていられない時に取る行動が恐ろしいことを見逃していた

 

相手の外見で判断するべきではないが、能力まで分析しなければプロか素人かを見定めなければ次の手の予測も難しい

 

今回はドが付くほどの素人であり、達也が気付いたのはほんの偶然だった

 

他の同等のスクーターにしては一回り大きく、マフラー周りも改造を施されたように見え、疑問に感じていたからだ

 

少女の右手の親指がハンドルに付いている透明のカバーを外し、如何にもといった赤いボタンを押した瞬間だった

 

達也『…!?伏せろ!』

 

スクーターのマフラーの右側の外側が外れ、もう片方も覆われていた樹脂が外れ、小型の噴射口が現れると同時にジェット機を連想してしまいそうなほどの轟音と風圧が花音と五十里を襲う

 

しかし、寸でのところで達也が二人を庇うようにして地に伏せる

 

???『ひっ、きゃぁぁぁ!』

 

そして、名も知れぬ少女の悲鳴とともに小型ジェットスクーターは遥か彼方に飛び去るのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

横浜の中華街から少し離れた雑居ビルの一角

 

 

 

 

???『呂上尉(リュウじょうい)、あの小娘はまだ使えるのか?』

 

聞けば、報復対象者ではないものに顔を見られそうになったと報告があったため、隣で控える呂という部下に問い掛ける

 

呂『問題は無いかと考えます。(ワゴン)と回収メンバーをを手配したのもあの娘を紹介したのも周大人(チョウたいじん)ですからあの娘からこちらの情報が漏れるのはありません。』

 

(リュウ)と呼ばれた人間は上司の問い掛けに問題はないと答える

 

???『どこまで信用出来るのか判らんな、あの男は。レリックの方はどうなっている?』

 

そう、あくまで末端から情報が漏れないというだけだ

 

あの周という男から情報が漏れないとは限らないため、何かしらの対策を講じる必要はあるだろう

 

男の中で一通りの考えが纏まり、別の話題に移ると会社のような外壁が映るモニターを凝視する部下が立ち上がる

 

 

 

 

部下『フォア・リーブス・テクノロジー社の役員とおぼしき人間がエリシオン社に接触したものの、それ以降は持ち出された形跡はありませんが、保管場所は判明しておりません。』

 

???『(チッ)四葉とは忌々しい。あの四葉とは無関係でいいんだな?』

 

部下『(シー)。詳細に調べましたが、何も繋がりは出てきませんでした。そして、この国では四葉(しよう)八葉(はちよう)といった言葉は魔法関連の企業で多数使われています。』

 

???『紛らわしい。守り神のつもりなのか…。それで、エリシオン社に保管されている可能性はどうだ?』

 

部下の回答に男は怨みを込めて忌々しく吐き捨てる

 

しかし、その言葉とは裏腹に苦々しくそして、僅かに畏怖が滲み出ていた

 

八葉とは現代魔法の四系統八種と胎蔵界曼荼羅の中台八葉院、この二つの魔法的な意味を示すが四葉はもっと世俗的な意味で利用されている

 

十師族 四葉家

 

この名は魔法界では誰もが恐怖の念を抱く、謂わば禁忌の一種

 

日本の企業はこの四葉という言葉に肖り、スパイ組織や犯罪組織から身を守ろうとする

そのため、この四葉と意味合いの近い企業には中々手を出そうとすることは躊躇うことが多い

 

現に自分達もFLT(フォア・リーブス・テクノロジー)に四葉の影を連想してしまい、警戒するハメになったのだから【虎の威を借る狐】とはよく言ったものである

 

部下『ありませんでした。どうも、エリシオン社に共同で研究を行おうと考えていたようですが、断られているため可能性は低いかと。もし万が一エリシオン社に預けられていた場合、あのセキュリティーを突破し奪取出来る可能性は0.1%(パーセント)未満です。』

 

???『(チッ)…そうか。(解せん。触れざるも者(アンタッチャブル)でもないただの一企業に上層部は何を脅えているのだ?一体、何があるというのだ?)見えない糸で操られているかのようだ(ボソッ)』

 

だが、自分達が四葉という言葉に恐れる以上に上層部は別のものに恐れ慄いている

 

そして、その得体の知れない何かに振り回されている自分達がもどかしく感じてしまう

 

調べもさせたが一般企業ということしか分からず、秘されている様子も無い

 

単なる思い過ごしと無理矢理納得させるしかなかった

 

呂『上校?』

 

???『いや。FLTの動向を見逃すな、その社員達もな。司波小百合と司波龍郎の家には二人しか住んでいないのか?』

 

我が上司の怪訝そうな表情に腹心の部下は気掛かりな様子を見せるも何でもないと制止する

 

部下『不是(ブッシュ)。司波龍郎の連れ子の司波深雪と桜井水波が住んでいるようで司波小百合と司波龍郎の両名は別宅に住んでいるようです。』

 

???『桜井?司波ではないのか?桜井水波はどう繋がりがある?』

 

部下『どうやら、居候のような形でいるようです。両親は他界し、親戚筋の司波家に引き取られたとのことです。二人とも魔法大学付属第一高校の生徒のようです。そして、現地協力者の報復対象もこの高校に通っているとのことです。名前は守夢達也。』

 

???『…ほう。ならば、魔法大学付属第一高校も活動の対象に追加。必要であれば他から人員を割いても構わん。それから小娘に対する支援の強化。機密情報の漏洩が最も効果的な報復だと教えてやれ。そのブツもな。あと、武器も持たせておけ。…(リュウ)上尉。』

 

呂『(シー)

 

???『現地で指揮を執れ。余所の犬が嗅ぎまわっているなら排除しろ。』

 

FLTの社員の事情など何ら問題はない

此方の仕業だとバレずに強奪すれば問題ないのだから

 

おそらく、先日の一件で自宅にはレリックは置いてはおかないだろうからセキュリティーの高めの会社だろう

 

問題はない、一つの手間が増えただけで強奪することには変わりはない

しかし、念には念の策も講じておく必要はあるだろう

 

それにしても現地協力者の報復対象者がとレリック奪取の関係者の共通点がこんなところに転がっているとは

 

腹心の部下に指示を出しながら心の中でほくそ笑むのだった

 

 

 

 

 




如何でしたか?

①真由美さんを誂うのは良いですね。
②原作もそうですが、達也の事務処理能力の高さは真似出来ませんね。
③そもそも、外で魔法を行使するのは身の危険を守るためですけど今回って魔法を使う理由はないんですよね…。
④陰謀論って好きじゃないなぁ(笑)

今月にもう一話を投稿出来ればとは考えてはいますが、またお待たせしてしまうかもしれませんが、お許し下さい。

また次回も暇潰しがてらに見てください。
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