一応作者はIS原作全巻読んでます。
ですが不定期更新、駄文はお許しください。
よろしくお願いします!
プロローグ: 東 七瀬という凡人
───『夢』とは誰もが抱く幻想である。
───生まれついてその才を与えられた者だけがその幻想を実現させる。
───人、その者を天才と呼ぶ。
───ならばその者と対である者は幻想を実現させられないのだろうか?
───凡人が夢を見ることは意味がないことなのだろうか?
───だとするならば、これは夢という意味のない幻想を追い続ける男の物語である。
「あぁ、またやってしまった……」
某家電量販店にていつの間にか渡されていた領収書を見ながら彼、東 七瀬(あずま ななせ)はため息をつく。
「これで今月5体目…そして本日の出費5200円…とんでもない出費だ。万死に値する」
七瀬は手に持った紙袋を膨らませている元凶である箱を見つめながら閉店のメロディを背に店を出る。
『プラスチックモデルキット』。俗にプラモと呼ばれるそれは中学3年の受験勉強で忙しい七瀬にとっての唯一の癒しであった。
「サーフェイサーと紙やすり、塗装用のブラシはまだ余りがあるから問題ないか。さて、休日のフィーバーといくか」
勉強を学校と平日で休むことなくやり続け、休日の時間全てをプラモに費やす。これが彼の一週間の生活サイクルであった。これが近年で変わった試しはない。
「今月の食費…危険だな」
これが彼の問題点である。
七瀬は数年前に両親を亡くし、唯一の肉親である姉から送られてくる食費で生活しているのだが、その一部を趣味であるプラモデルに使っていた。
「本当に何やってんだろうな…俺は」
自分を生かすために姉が稼いでくれた生活費をこんなことに使うなど人として最低なことをしているのは七瀬自身も分かっている。
理由は平日になれば説明できるのだが、今はプラモ祭りの前夜祭に集中したい、それが今の彼の心情だった。
【時変わり平日】
「(今週のフィーバーは実に良かった…)」
月曜日という嫌な筈の日にちから七瀬はご機嫌であった。
今週は学校の体育祭の振り替え休日があったことを忘れていたのである。
「(時間があり余っていたおかげで部分塗装だけでなく関節の延長工作までできるとは。パチ組で終わると思っていたがこれは嬉しい誤算だった)」
そんなことを思いながら七瀬は鞄から時間割表を取り出して授業の用意を始める。
「(一時間目は何だったか──あぁ、英語か。嫌だねぇ)」
七瀬は一時間目から嫌いな授業があるということに絶望するがなんとか気を持たせ一時間目までの間にやる英語の自習の用意をする。
が、そのときだった。何かが凄い速さで七瀬の目の前に落ちてきた。
「雑巾……?」
濡らされていた雑巾が七瀬の自習のノートをびしょ濡れにしていた。
「あぁ、今日もか…」
七瀬はそう呟く。苛立ちながら雑巾が飛んできた方を向く。
『おっ、どうしたキモオタ?睨み付けやがって…やんのか?』
『やめてやれよwこいつにそんな根性ないって!』
七瀬を嘲笑うのはクラスのカースト上位にいるような人種だった。といってもいつものことなので七瀬には振り向かなくとも分かるのだが。
『なんだ?あぁ!?』
七瀬は彼に近づき濡れた雑巾を投げ返した。七瀬が投げ返した雑巾は彼の制服を濡らす。
『この!やりやがったな!!』
「っ……」
彼は七瀬の襟元を掴み教室の壁に叩きつける。
敵とも言える相手が近くにいるのでこの状態から反撃したい衝動に襲われる七瀬だが、クラスメイトの視線が集まってしまったこともあって迂闊に手を出せずにいた。
『俺は皆の思ってることを代弁してやってるんだよ!!なんで俺がこんなことをしてるか分からないか!?』
「自分から火種を蒔いておいてやり返されたらすぐ暴力。こんなことになんの意味があるんだ?」
七瀬は彼の腕を払いのけて言う。
すると彼は七瀬にこんなことをした理由を語り始める。
『この間の体育祭、誰のせいでウチのクラスが負けたと思ってるんだ!お前が最後の競技でしくじらなければビリにはならずに済んだんだ!!あの日皆の足を引っ張るくらいなら学校に来なければよかったんだ…家でお得意のプラモでも作って引きこもってりゃあよかったのによぉ!!』
「俺が負けた競技はあの最後の種目だけなんだが?」
『言い訳をするな!!』
七瀬は壁に突き飛ばされる。周囲のクラスメイトの反応は笑う者、見て見ぬふりをする者と様々であった。
俗に言ういじめである。
『お前ら何をやってるんだ!!やめろ!!』
そんな殺伐とした空気の中、クラスに入ってきた人物がいた。クラスのカースト頂点に立つ太田優樹(おおたゆうき)という人物である。
「お前らいくらなんでもやりすぎだ!体育祭で負けたのはクラスの団結が足りなかったからだ!」
『お、太田…そうだけどよ……』
「分かったら汚してしまった教室を掃除するんだ。俺も手伝うから」
『あ、あぁ。サンキュー…』
七瀬に雑巾を投げた彼は七瀬を一睨みした後、雑巾を洗いに水道へ向かっていった。
「あんなことをされる原因は君にもあるんじゃないのか?」
「どういう意味だ?」
太田は七瀬の目の前でそんなことを言い出した。やはりただ助けてくれたわけではないらしい。
「アイツは喧嘩っ早いところがあるが、何の恨みもない相手にあんなことを言う奴じゃない。それも他人の趣味を否定するようなことなんて…」
「(趣味を否定…あぁ、キモオタって言ってきたことか。……キモオタって言ってる時点で趣味否定されているんだが)」
彼のような人種は自分と違う者を普通じゃないと捉えるということを七瀬は分かっていた。だが、太田がそんなことを知る筈がない。太田からすればクラスメイトは皆仲間でそんなことをする輩がいるなど信じたくなかったのだから。だが、既に一連の会話の中で七瀬は趣味を否定されていた。都合のいいことにその一部始終を太田は見ていなかったが。
「君の持っている本、勝手ながら見せて貰ったよ。あんな過激な絵がある本だからあんなことを言われるんじゃないのか?」
「お前ライトノベルってジャンル知ってるか?ていうかカバーもしてあったのに勝手に読んだのか?よくもまぁ手の込んだ調査をしてくれたもんだな」
ライトノベルをエロ本と同じような扱いをされても困るのだが、そう思う七瀬を横目に太田の話は進んでいく。
「なぜ自分を変えようとしないんだ?そうすれば君だってクラスの仲間に…」
「やりたいこともやれずに何を言われても黙っている、それが仲間の条件なのか?俺は嫌だね。それに今の嫌がらせが俺が読んでいる本が元凶でこうなったと本当に思っているのか?」
雑巾を洗いにいった彼が言っていた体育祭の一件の話は嫌がらせをするための建前にしたかったのだろう。先程の会話の中で本の話が出てきただろうか?七瀬の中の答えは否である。つまり、さっきの彼はただ自分たちが体育祭で負けたという不満を七瀬にぶつけたくて行った嫌がらせであり、七瀬のライトノベルの内容が原因で嫌がらせをしてきたわけではない。
「違う!あれはアイツなりの注意のつもりなんだ!俺はアイツを信じる!」
太田は人を疑うということを知らなかった。自分が周囲の中心にいるようなタイプだからか、それは分からない。だが、人を疑うということを知らない彼を七瀬は少し羨ましくも思っていた。
「少しは自分の悪いところも考えたらどうだ?そうすればこんなことも無くなるさ」
そう言うと太田は去っていった。周りのクラスメイトはそんなことを言って去る太田に声援や激励を送る。
そう、これが七瀬が食費にまで手を出してプラモを買ってしまう理由だ。
学校ではこのようなことが日常的に起こり、七瀬は過度な人間不信とストレスに悩まされていた。
だからこそ家では娯楽が必要なのだ。平日の嫌なことも消せるような大きな娯楽が。
「(こんなにも心が弱い俺を見たら両親はどう思うだろうか?)」
そんな罪悪感だけが壁に突き飛ばされたままの状態の七瀬の心を支配していた。
ISの小説なのにISが登場しないという駄目っぷりを発揮していく…
次回は出す予定ですのでよろしくお願いします!