ゼロから始める『ぼくのさいきょうのIS』作り   作:星震

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お待たせしました!劇場番コードギアスの最終章を見ていたりMGのクアンタフルセイバーを予約していたりで遅れていました……ちなみにコードギアス入場特典の手紙はオレンジ様とアーニャちゃんからでした!嬉しい!


新たに高評価をくださったe.u33さん、protoさん、ぺちぷにさん、 3区の二等捜査官さん、ボーアイディールさん、常乃磐さん、ハコネさん、最弱のニートさん、夜乃唱さん、tyuseiさん、8ナナシさん、輝零さん、リリカルイリアさん、ふくろう449型さん、フェリアルーチェさん、あきピザさん、ありがとうございます!


次なる犠牲者は

昼休み。それは普通の学生ならば、昼食をとるための時間である。普通の学生であれば、だが。

 

「さてさて、今年の三年の方々が余らせてくれた参考書の棚はどちらか...」

 

無論、普通の学生ではないこの男にとっては昼食をとるための時間ではない。

 

「ああ、これか。やっと見つけたぜ。こんなところにまで侵入したかいがあるというものだ」

 

昼休み、七瀬は学園の視聴覚室に侵入していた。生徒数の関係で余ったISの参考書を盗むためである。

 

「捨てられるぐらいなら俺が有効活用しないとな、うん。そう、これは学園の貴重な資材を無駄にしないようにしているだけのこと。故に徳を積んでるだけなのだ...」

 

七瀬がそう自分に言い聞かせながら参考書と教科書を持って逃走しようとしたときだった。

 

『山田先生から頼まれた資料、ここであってるかな...』

 

「!?」

 

誰かが視聴覚室に入ってきたのだ。

ドアに手を掛けていた七瀬は当然、入ってきた人物と鉢合わせすることとなる。

 

「あ、東君!?」

 

「た、鷹月...」

 

鷹月静寐(たかつき しずね)。七瀬のクラスメイトだった。

 

「どうして東君が…?」

 

「環境保護活動だ」

 

「?」

 

「捨てられる予定の教科書参考書諸々を盗んでおりました」

 

「……」

 

純粋な彼女を騙すことは七瀬ですらできなかったようである。そして潔く真実を告げた。

 

「その参考書ってこの間図書室で借りてた本に書いてあったところだと思うよ?」

 

「内容は同じだ。だがこの参考書にはフランスの第二世代IS『ラファール・リヴァイヴ』の解体図が乗っているからな。復習もできて一石二鳥なのだよ」

 

「そ、そうなんだ…」

 

熱烈に語る七瀬に対して静寐は苦笑いを漏らす。

 

「しかし、俺の借りた本なんてよく覚えていたな。確かに借りる手続きは図書委員である君にやってもらったが内容まで覚えているとは…」

 

「図書室に来るのなんて東君だけだからね。仕事がなくて人が借りてく本を覚えるくらいしかやることがなくて…」

 

「なんと、それは勿体ないな。あそこにはロボット関連の本が山ほどあるというのに!」

 

七瀬はISの知識や整備技術は本音から教わることが多いが放課後は図書室に通って知識を手に入れてくるのだ。それもあり七瀬の整備技術は本音ほどではないが、中々高いものとなっていた。

 

「東君はよくロボットの本を借りていくけどそれを読んでどうするの?」

 

「夢に繋げるのだよ」

 

「?」

 

七瀬の意味不明な説明にコテンと首を傾げる静寐。

 

「まぁ簡単に言えば他のロボットの技術をISの武装に流用したりできないか試しているんだ。例えば運送会社なんかで荷物を積むときに使われるロボットアームをISのサブアームに使えないか、とかな」

 

「さぶあーむ?」

 

「あぁ。ISは武装をいちいち収納、展開して使わなければならないだろう?あの弱点を補うには『ラピッドスイッチ』という操縦テクニックが必要だ。だが、ラピッドスイッチは才能がある者にしか使えない。つまり、俺のような凡人はISの操縦において不利ということになる」

 

「ラピッドスイッチ…一瞬で武装の収納と展開を行う高操縦テクニックのことだよね?」

 

「流石だな。そして俺は考えた。いちいち収納と展開をして武器を入れ替えなくても一度に多くの武器を同時に持つことができればラピッドスイッチなどいらないのではないか、と」

 

「でも一度に多くの武器を持つことなんてできるの?ISに収納できる武器の量だと腕が何本あっても足りないんじゃ…」

 

「何も収納してある武器を全部持たせるわけじゃない。ようは使うことが多い武器だけを取り回しできればいいのだから。そのためのロボットアームだ。こいつを左右2つ背中に取り付けてその腕に武器を持たせる。こうすることでラピッドスイッチがなくても一度に武器を4つも使えるようになる。更にISの腕とロボットアームに持たせる武器を近距離用、遠距離用と別々に持たせることで近距離遠距離両方に対応できる機体となるんだ」

 

「ようするにたくさんの種類の武器を収納展開して使うんじゃなくて常にたくさんの武器を持たせるってこと?」

 

「簡単に言えばそうなる。それにさっきも言った通り、このシステムの良点は誰でも使えるという点にある。才能がなくても機体を合わせてしまえばできないことはないのだよ」

 

「なんか、凄いね…これがもし量産化でもされたら世界中が大変なことになっちゃいそう………」

 

「まぁ、騒動にはなるだろうな。ラピッドスイッチを持つ者たちの才能と努力が台無しになるんだからな。そのときはお疲れ様ということだ」

 

七瀬はニヤリと笑みを浮かべながら言う。つくづくこの男は強者に喧嘩を売るのが好きなようである。

 

「で、今はそのために必要な背部機関をいじる技術が掲載されてる参考書を盗んでいたというわけだ」

 

「…こんなところで参考書を漁ったりしなくても私が図書室から探して来ようか…?」

 

「……え?」

 

「この参考書、実は図書室にもあるんだ。私なら最近本棚の整理したからどこにあるかも分かるし」

 

「君はあの化け物みたいな大きさの図書室の棚を全部覚えているのか…?」

 

七瀬が知る限り、あそこは図書室という大きさではない。もはや図書館というレベルに等しいほど棚の量があり、七瀬は目的の本を探すときにいつも苦労していたのだ。

 

「大抵は覚えているよ。だから───って東君!?どうして両手を合わせて正座なんてしてるの!?」

 

「あの長い捜索の時間を減らしてくれる…だと?君は女神か…?」

 

「あ、東君!!どうして祈るように目を閉じてるの!?ちょっと~!?」

 

こうして七瀬の中で図書館の女神様が誕生したのだった。

 

****************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、なんとか間に合ったな」

 

「そうだね〜」

 

難航していた新型フレーム搭載型の機体、『打鉄・零』は一ヶ月という長い年月を掛けた末に完成した。

追加された補助筋肉と骨格保持シリンダーによってパワーに一層磨きが掛かった性能はもちろんのこと、強化改修以前と見た目も変わっていた。

 

「細かく分割した専用の装甲による可動範囲と運動性能の向上、そしてその装甲によって多少ながら防御力を上げることにも成功...以前よりも大分現実的な性能となりましたわね」

 

「その代わり、重くなった機体重量を減らすために補助筋肉を少し減らしたから予定されていた1.8倍のパワーよりも少し減っちゃったけどね〜」

 

改修された零をみてそう言うセシリアと本音。

 

「だがそれも調整の末に得た結果だ。東がフレーム補助のシリンダーを開発していなかったらもっとパワーが減っていた。ISの調整がこんなにも難しいものだったとは…」

 

箒は空間投影型のディスプレイに表示されたスペックデータを見てため息をついた。自分の姉がこんなものを作った張本人だということに呆れながら。

 

「相変わらず整備コストと時間は短縮することが叶わなかったが、分割装甲を増やしたおかげでフレーム自体が壊れることも少なくなった。あとは稼働テストをするだけだ」

 

七瀬はそう言うと機体の最終調整を管理するタブレットに触れた。

 

「…やはり俺の専用機、というわけではないようだな」

 

「わたくしとの試合のときに起きた『最適化』はなんだったのでしょうか…?」

 

そう、この機体はセシリアとの決闘のときに確かに七瀬の機体となった筈だったのだが、どういうわけか今では学園の訓練機に戻っていたのだ。

 

「あのときの戦いで起きた現象について山田先生に聞いてみたんだが、今まで前例がないらしく不明らしい。…もしかするとこいつは俺以外にも乗って欲しいと願っているのかもしれんな」

 

「どうしてそんなことを願ってるんだろ~ね~?」

 

「この機体、この学園に訓練機として払い下げされる以前は研究用サンプルとして国家研究所に展示されていた代物らしい。だから動けなかった分、思い切り暴れたいんだろうな。沢山の生徒に乗ってもらってより多く戦いたい、そういうことかもしれん。全く、活発な子で困る」

 

そう言いながらも機体を撫でる七瀬。

改造をしていく中で七瀬はこの機体に偶然残されていた整備データを見たことがあった。その際、この機体が一度も大きな故障を起こしたことがないことを知り、この機体が研究用のサンプルとして使われていたことを理解したのである。

 

「と、いうわけだ。試運転は俺以外が乗ってやるのがこいつのためかと思うんだが…どうだ?」

 

先の話を聞いたからか、その場にいた全員が止めることはなかった。

そして真っ先に立候補した者がいた。

 

「東、私にこの機体を預けてくれないか」

 

意外なことに立候補したのは箒だった。彼女は最初はやるせなしに協力していたものの、機体の整備という裏方作業の精密さや苦労に触れていくに連れて機体への思いも変化していた。わけのわからないものでしかなかった機体が今では我が身の一部のように大切なものへと変わっていたのだ。

そんな感情が芽生えた彼女の意思を七瀬が引き留める筈がなかった。

 

「その言葉を待っていた。こいつもその方が喜ぶだろうしな。是非お願いしたい」

 

「あれ?試運転はセシリアに任せるんじゃなかったのか?」

 

一夏が七瀬に問う。

 

「東さんはわたくしだけでは飽きたらず、他の女性(の操縦データ)も欲しいそうですわ。今回はお譲りしようかと」

 

「言い方に悪意混めてるだろ、オルコットよ」

 

セシリアの言い方は誤解を招くので辞めていただきたい、そう七瀬は思うのだった。

 

「それに私は自分の機体もありますから。テスト操縦者は篠ノ之さんに一任いたしますわ」

 

「じゃあその実験台は織斑で決定だな。専用機もあることだし」

 

「せめて対戦相手って言ってくれよな!!」

 

かくして役者は決まった。

一夏とその専用機『白式』との対決。それが改修を終えた『打鉄・零』の初陣であった。

 

「それじゃあアリーナに行こうね~」

 

「了解だ。俺はトレーラーの準備をしてくる。織斑、篠ノ之の両名はISスーツに着替えておいてくれ」

 

「ではわたくしは戦闘データの記録を担当させていただきますわ」

 

七瀬たちは各々自分の役割を見つけ移動を開始する。この機体の改修をしている間にその動きは洗練されていき、今では千冬の授業の移動の際に一番早く準備が終了しているという始末であった。

 

*************************

 

 

 

『篠ノ之、準備はいいか?』

 

「あぁ。機体の調子も問題ないようだ」

 

通信で送られてくる七瀬の確認に箒は機体の起動フェイズを行いながら答える。

 

『カタパルトでの出撃は初めてだろう?使い方は大丈夫か?』

 

「お前たちのやり方を見ていたから問題はない筈だ」

 

『そうか。では発進シークエンスを始めるぞ。布仏、カタパルトのリニアボルテージの上昇を開始してくれ』

 

『りょーかいだよ~。しののん、数値が安定値まで到達したら足を乗せてね~』

 

「分かった」

 

しばらくしてカタパルトのレールに青い光が灯り始める。そして箒はカタパルトのボルテージが安定値を突破したのを確認した。

 

「…よし。乗ったぞ、東」

 

『了解した。続けてリニアボルテージを上げる。布仏、あとを任せていいか?』

 

『は~い。リニアボルテージ730を突破~。機体との同調率安定値の突破を確認。射出タイミングをしののんに渡すよ~』

 

「分かった。いざ、参る!!」

 

箒がそう言って発進しようとしたそのときだった。

 

『駄目だ!!やり直しだ!!』

 

「な…なんだと!?」

 

『当たり前だ!機体の名前も操縦者の名前も言わないなど言語道断!!折角のお前にとって初めての発進シーンが勿体ないだろう!!』

 

カタパルトで発進しようとした箒を七瀬が呼び止めた。この男、箒の発進の仕方がお気に召さなかったようである。

 

「じ…自分の名前だと?」

 

『そうだ!!自分が全てを預ける機体の名前と、その操縦者であることを宣言しながら発進するんだ!さぁ、自信を持って!!』

 

「わ…分かった。やり直す」

 

了承しなくてもいいことなのだが箒は了承した。そしてもう一度宣言した。

 

「し…篠ノ之箒、『打鉄・零式』出陣する!!」

 

『合格だ!!』

 

七瀬の合格(どうでもいい)を貰いながら箒は名前を新たにした機体『打鉄・零式』と共にカタパルトでアリーナの地面に降り立つのだった。

 

*************************

 

 

 

「来たか、箒」

 

「あぁ。今日はいつもの訓練機とは違うぞ。覚悟して挑め、一夏!!」

 

「あぁ、望むところだ!!」

 

二人はそう言うと向かい合って試合開始の合図を待つ。

 

『よし、それではこれより、稼働テストの仕上げとして『打鉄・零』改め『打鉄・零式』と『白式』による模擬戦を始める!!両者試合開始だ!!』

 

「行くぞ、一夏!!」

 

「来い、箒!!」

 

七瀬の試合開始のアナウンスと共に両者はその手に持っている刀でぶつかり合った。

その初撃を制したのは箒だった。

 

「くっ…!これが零式のパワーか!!白式でさえ力負けしている!」

 

ダメージこそ防いだものの、吹き飛ばされた一夏はいきなり零式のパワーを思い知らされることとなった。

原型は量産機でありながら第三世代のパワーに勝る性能、それは一夏にとって恐るべきものだった。

だが、そのパワーもいいことづくめではない。

 

「いつもと剣を振るう感覚が違う…?零式のパワーに私が振り回されているというのか!」

 

箒は零式で初めて剣を振るった感覚に困惑していた。

普段箒が一夏の練習に付き合うときは学園の訓練機である『打鉄』を利用しているのだが、零式のパワーが打鉄と比べ物にならず、武器を振るう感覚までもが変わってしまっていたのだ。

 

「だが、機体が持つポテンシャルを使いこなすのは私の仕事だ!」

 

箒はアリーナを走り抜け一夏の白式に接近する。補助筋肉が搭載されているフレームが箒の走る速さをより一層高める。

 

「(白式に遠距離武器はない。それにここは地上…あの力を振り回されると分が悪いな。なら──)」

 

一夏は手に持っている刀、『雪片弍型』で地面を抉り、砂ぼこりを起こす。白式の強い力で抉られた地面はたちまち辺り一面を覆った。

 

「なっ!?」

 

突然のことに箒は一瞬動揺するが、すぐにその場を離れてISの標準機能であるハイパーセンサーで一夏と白式を探す。

 

「(馬鹿な!?ハイパーセンサーに反応しないだと?なら一夏は──)」

 

箒が一夏を探していると自分の影に何かが重なっていることに気がついた。

まさかと思い背後を振り向いたときには既に遅かった。

 

「ぐっ!?」

 

切り裂かれた機体の装甲が未だに熱を帯びて発光していた。そして箒が振り向いた先、そこには一夏がいた。

 

「(白式は空中戦もできる。今の目眩ましは私を空から奇襲するための時間稼ぎか!)」

 

陸戦専用といっても過言ではない箒の零式。それに対して一夏の白式は空中戦も可能な機体だ。

 

「(明らかに私の方が不利だな。どうしたものだろうか…)」

 

零式と白式はどちらも近接戦闘型の機体であるため、相手に接近する必要がある。だが箒の零式は白式が空に上がってしまえば接近することはできない。

 

「(何か空中相手の対策はされていないのか?いや、東ならきっと──)」

 

箒は一夏と距離を取りながら武装を確認する。そしてひとつの武装が目に留まった。

 

「零落白夜、発動!!」

 

一夏はここぞとばかりに単一使用能力『零落白夜』を発動させる。これは一夏の白式の専用能力であり、自分のシールドエネルギーを減らす代わりに相手のシールドバリアを無効化することができるという代物だ。バリアを破り機体に直接ダメージを与えるということはまさに一撃必殺の力といっても過言ではないのだが、これは自分のシールドエネルギーを減らすために使い所を間違えれば自分が負けてしまう、まさに諸刃の剣である。

 

「くっ!!」

 

一夏の『零落白夜』の使用承諾を得た刀、『雪片弐型』の刃の部分が開きレーザー状の刃が生成される。

箒はそれを刀で防ぐ。

 

「本気で行くぜ箒、雪片弐型を最大出力で使用!フレーム内部排熱ダクトを解放する!」

 

一夏が白式に語りかけると『雪片弐型』のレーザー刃が太くなり、白式の一部装甲が開く。装甲がスライドして解放された隙間からフレームに備え付けられている排熱ダクトが現れた。

 

「なんだ!?この出力は!うわぁっ!!」

 

雪片弐型のレーザー状の刃が箒の持っていた刀を焼き切った。いくらパワーが零式の方が上だとしても使っている武器の性能が違いすぎたのだ。

武器の破壊によって吹き飛ばされる箒を一夏は追撃する。

 

「くっ!!この私が敵に背を向けなければならないとは!」

 

箒は一夏の猛攻を避けながら態勢を立て直そうとするが上手くいかずにいた。

そしてついには追い詰められてしまい、一夏が勝負を着けるべく、雪片を振り下ろしたときだった。

 

「!?」

 

雪片が何か強い力によって防がれた。そして一夏はいつの間にか自分が吹き飛ばされたことに気がつく。一夏は起き上がり、何が起きたのか状況を確認しようと箒の方を向いた。

するとそこには異形の武器を手にしていた箒の姿があった。

 

「な、なんだその刀!?」

 

一夏は箒の異形の刀を見てそう叫んだ。

一夏が動揺するのも無理はない。何故ならその刀は全長が機体の大きさの倍はある巨大な刀だったのだから。

 

「私としてもこのような化け物のような刀を持つのは気が退けるが……刀は刀だ!」

 

箒はその巨大な刀改め『機神刀』を軽々と一夏に振り回す。

 

「なっ!?反則級だろそれ!」

 

一夏は立場が逆転したかのように箒から距離を取る。だが、自分は今『零落白夜』を使用していることを思い出した。

 

「(どうせエネルギー切れでやられるくらいなら…)」

 

一夏は空中に飛翔する。そしてもう一度、あの奇襲攻撃を仕掛ける態勢に入る。

 

「考えても答えなんて出ない!勝機は己の信念と剣の中にあり、だ!!」

 

かつて自分が箒と共に習った篠ノ之流剣術の極意を叫ぶ。そして空中からトップスピードで箒に接近する。イグニッション・ブーストである。

 

「今こそこの武装、使わせて貰うぞ東!」

 

箒は接近してくる一夏に向けて零式の腕部に備え付けられている武装を向ける。そしてそこから金属の塊のようなものが一夏に向かって飛翔する。

 

「なんだ!?」

 

その金属の塊は一夏の雪片弐型の前で姿を変える。花の蕾のような形から爪のようなものへと。変形したその爪は一夏の雪片を捕まえた。

ワイヤーアンカークローである。

 

「捕らえたぞ一夏!!」

 

「何!?うわぁぁぁっ!!」

 

一夏はその手に持っていた雪片ごとワイヤーで引っ張られ、バランスを崩した。イグニッション・ブーストを実行しているときにバランスを崩せばあとは地面に落下するだけである。だが、それは自由落下する場合だ。今は箒のワイヤーアンカーに引っ張られて引き寄せられていく。そしてその先には先ほどの『機神刀』を構えた箒の姿があった。

 

「(待って!箒さん!?そのコンボは流石に死ぬ!)」

 

ISを身に纏っているので死亡することはないが、今のシールドエネルギーが少ない白式でこのコンボを喰らえばただでは済まないだろう。

だが、これも勝負の結果である。

 

「終わりだ、一夏!!」

 

「ま、待て箒!ぎゃあぁぁぁ!」

 

こうして無慈悲にも決着が着いたのであった……

 

********************************

 

 

 

「……死にかけた」

 

「おう、そうか」

 

実際のところ一夏は巨大刀に吹き飛ばされてそのGに耐えきれずに気絶していただけなのだが。

 

「しかし…零式は化け物だな。あんな巨大な刀を平然と振り回すなんて……」

 

「設計した俺が言うのもなんだが、それには激しく同意する。もはやこれは打鉄ではないな」

 

今さらそんなことをぼやく七瀬。フレーム自体が異なるのでその時点で打鉄とはいえないのだが。

 

「試作品として作ったワイヤーアンカークローは成功だな。だがやはりあのパワーを活かしきる装備には刀は向いていなかった。いっそのこと機神刀を標準装備にするべきか…?」

 

「俺と同じ犠牲者が出るのか…」

 

二人が整備室でそんなことを一夏の待機状態になっている白式に通信が入った。

 

「千冬姉からだ。えーっと何々…『零式の開発に関わった生徒全員を集めて応接室に連れてこい』だってさ」

 

「何だと?」

 

七瀬はその通信を聞いてそんな声を上げた。この通信は千冬から直接送られてきたものであり、更に一夏の白式の個別暗号アカウント宛に送られてきていた。千冬が通信を出すときは基本、副担任である山田先生から送られてくるのだが今回は違った。更に極秘情報を伝えるときなどに用いられる個別暗号アカウントに送ってきたというのだ。七瀬は違和感に気がついた。

 

「ちょっと大事になりすぎじゃないか?何かをやらかした覚えはないんだがねぇ…」

 

「けど普通個別暗号アカウントになんて送ってこないよな…?とりあえず、もう遅い時間だけど皆を集めようぜ」

 

「はぁ…嫌だ…出席簿喰らいたくねぇな……」

 

殴られることを前提としている時点でこの男の常識は歪んでいる。

 

だがこれが後に全IS企業を揺るがす始まりとなることをこのときの二人はまだ知る由もなかった。

 

******************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

七瀬と一夏が千冬からの連絡を受けた時間と同刻、とある研究施設では任務を終えた一人の少女が主の元に帰還していた。その美しい銀髪を揺らしながら歩く様はさながら妖精のようであった。

 

「あ、くーちゃんお帰りー」

 

「束様、東七瀬の開発した機体のリーク情報の拡散が終了いたしました」

 

「そっかぁ。やっぱり面倒だけど管理することに越したことはないからね」

 

銀髪の少女の名はクロエ・クロニクル。束の使いであり、主の束いわく娘である。

娘の任務完遂の報告を受け、束は微笑んだ。

 

「…束様は例の機体をどうお思いですか?」

 

「う~ん……ありゃ駄目だね。ISの基礎理論はおろかISが何なのかさえも全く理解しちゃいない奴に造られた可哀想な子だよ」

 

「そうですか」

 

「けどさ」

 

束は途中で言葉を止める。そして先ほど行われていた試合、箒が乗ったときの零式の戦闘映像を再生する。

 

「この機体、なんでか分からないけど幸せそうなんだよね。企業に実験機として使われていたときとは別人に思えるくらい」

 

「束様はこのISを知っておられるのですか?」

 

「くーちゃん、私はね、今までに作ったISコアの467機全てを覚えているんだよ。勿論、君の中のソレもね」

 

「……」

 

クロエはそう言われ自分の心臓があるはずの部位に手を当てた。

 

「このISコアはね、正直最悪といってもいいくらいに機体との同調率が悪かった。いわば私が作った初めての欠陥品なんだよね」

 

天才と呼ばれた彼女が始めて生み出した欠陥品。それこそが企業で研究用の実験機体として粗末な扱いを受けていた原因だった。

 

「それが今じゃあ別人のように笑ってる。傷つきながら戦っているのに喜んでいるんだよ、この機体は」

 

束はわけがわからないと言わんばかりに頬杖をつく。そんな主をクロエは物珍しそうに見ていた。

 

「東七瀬がISに及ぼす影響力が束様でも理解できないと、そういうことでしょうか?」

 

「悔しいけどそういうことになるかな」

 

そう言うと束は先程まで見ていた箒と零式の戦闘映像を切る。そして長い時間椅子に座っていた為か立ち上がり際に背伸びをした。

 

「だからこそ監視を続けてほしいんだよね、くーちゃんには」

 

「ご命令とあらば」

 

「うん。そんなことより私はお腹が空いたな。くーちゃん、何か作ってくれる?」

 

「かしこまりました」

 

クロエは返事を返すとキッチンへ足を運ぶ。

一人、与えられた任務の監視対象を考えながら。

 

「(束様でも理解のできない相手、東七瀬。最近監視をしている際には目立った変化は現れていない…けれど現に知らないうちに機体は完成していた…)」

 

クロエは七瀬の動きに違和感を覚えていた。数日単位で彼を監視していたが、その際に機体の開発や整備などを行っていたことはなかった。

 

「(まさか監視に気づいて…?)」

 

これがクロエが覚えた初めての不安だった。自分は主に与えられた任務を完遂するための存在。それすら果たせないかもしれない、そう考えると怖かったのだ。

 

「(今回は私の失態。…ですが次は見逃しません)」

 

少女の初めての失態。それも七瀬が生体同化型のISとしての少女に与えた影響のひとつであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼女が生体同化型のISということは七瀬にとってはIS(ロボット)と大差ないのかもしれない………

 

 




接近戦の小さい方の刀オンリーの戦闘描写も書いたのですがいまいち説得力がなかったのと燃えなかったというのが理由で2回ほど書き直ししました(これにより作者無事オルガ状態

あと白式に独自解釈として零落白夜発動時に装甲展開からのフレームの排熱ダクトが見える要素を追加しました。イメージはユニコーンガンダムのサイコフレームチラ見え的なのを。詳細は後程機体設定に書きますね!

あとさりげなくくーちゃん狙われる…


では次回、『ランサー(槍使い会長)が死んだ!この人でなし!』でお会いしましょう。


今回もありがとうございました!
ロボット愛を込めた熱い感想、高評価をお待ちしております!!
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