本日もう一話投稿しますのでそちらで高評価の礼文もさせていただきます。
「東君、頼まれてた本見つかったよ」
「本当か。ありがとう」
朝、教室にて七瀬は鷹月から本を受け取った。
もはや図書館といっても過言ではない、広すぎる図書室を全て記憶している彼女は七瀬が探していた本を探してきてくれたのだ。
「300番の棚にあったよ。誰かが読んだあとにもとの場所に戻さなかったみたい」
「300番……まだ俺がノートに記載しきれていない棚だ。早急に記載しておかなければ…」
七瀬はいつまでも鷹月に頼りきりではいられないと思い、図書室の棚の場所と置いてある本のジャンルをノートに記載しているのである。
「IS学園の図書室の棚は500番台まであるからね。それをノートに記録するのは時間がかかるんじゃないかな…?」
「しかし、いつまでもこうして君に探してきてもらうわけにはいかない。なにより、俺も覚えなければならないんだ。ISの知識を授業以外で手に入れるには自分から行動するしかないからな」
七瀬はついこの間もISの知識欲しさに視聴覚室に侵入し、生徒数の関係で余っていた2、3年生の参考書を盗みだすという行為を働いていたが、それだけでは飽きたらず、学園の図書室にある数万冊の本の知識までも求め始めたのである。
「本当は昨日の帰りに渡そうと思ったんだけど、東君昨日は先生に連れてかれちゃったから。何かあったの?」
「いやなに商談…いや、個人的な相談をしていただけさ」
昨日、千冬に呼び出された七瀬はIS委員会との商談の内容のひとつであった『打鉄零式』とその改修機の受け取りに行っていた。受け取りといってもアリーナまで機体を運んでくれた委員会の総技術管理長であるエリック管理長から機体の説明を言われただけであるが。
「相談…?何か困ってることがあるなら言ってね?私なんかが力になれるかは分からないけど、話を聞くことくらいはできるから、ね…?」
「(すげぇ罪悪感)」
嘘を本気にされたあげく、心配までされてしまい、罪悪感で満たされる七瀬。
だが、彼女の優しさに触れた七瀬は少しばかり嬉しそうでもあった。
「女神様…」
「そ、そんなのじゃないよ!」
両手を体の前で振りながら否定する図書室の女神様は今日も健在であった。
「そ、そうだ!それと、今回みたいに本を見つけたときとか先に連絡しておきたいから東君の連絡先教えてほしいんだけど…いいかな?」
「連絡先というと…L◯NEか?」
「うん」
七瀬は快くわかったと答えたかったが、それはできなかった。とある理由があるからだ。
「あ~…それはなんというか、その…」
「や、やっぱり、いきなり連絡先なんて迷惑だよね…ごめんね」
「いや!そんなことは決してないんだ!だが、その…」
断られたと思い込ませてしまったために七瀬は必死に理由を告げようとする。
「俺はLI◯Eをやっていないのだよ…」
「え…?えぇっ!?」
これには流石に鷹月も驚きを隠せずにいられなかった。
今時、学生でLIN◯をやっていないなど聞いたことがなかったからだ。
七瀬は唯一の家族である姉以外に連絡する相手がいないために電話以外の連絡アプリは片っ端から消しているのである。彼にとっての携帯は電話をするか、インターネットを開くための道具か、目覚まし時計でしかないのである。
「そ、そっか…それじゃあ仕方ないよね」
鷹月は仕方なく諦めようとした。
だが、そんな彼女を見た七瀬はこんなことを提案していた。
「電話番号とメールアドレスくらいなら持っているんだが…それでもいいだろうか?」
七瀬は今は使われることすら少ない、はじめからインストールされているアプリの連絡先を教えようと考えた。
「えぇっ!?それこそ教えて貰っていいの?」
「構わないが」
「ちなみに東君の連絡先を持ってる人っているの…?」
「…今思えばいないな」
「織斑君とか布仏さんは?」
「運がいいことに二人とも部屋が隣だから連絡はしないな。更に言うならば放課後とかもISを弄ったり手伝ってもらったりして一緒に行動してるから不要だと思ってる」
「そうなんだ…」
鷹月は七瀬の連絡先がある意味貴重なのではないかとそんなことを思うのだった。
「(考えてみれば、私の携帯に男の子の電話番号が入るなんて初めてだなぁ…)」
鷹月は七瀬の連絡先を電話とメールに登録している最中、最近はあまり使われないアプリであるために少しばかり不思議な気分になっていた。学生の友達というと◯INEは持っていても電話番号やメールアドレスは持っていないというのが大半であるが、今回の場合は逆だ。電話番号やメールアドレスのやりとりとなるとそれこそ、現代における学生の、友達という関係の人がするものなのかと考えると不思議だった。
「ところで、電話番号やメールアドレスの登録とはどうすればいいんだ?」
普段はISという精密機械を弄り回している七瀬が携帯という簡単なものを使いこなしていない不器用さに鷹月は笑みを溢すのだった。
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「聞いたか織斑、二組に代表候補生が来たらしいぞ」
「えぇっ!?こんな時期にかよ…タイミングが悪いぜ…」
「あぁ。だからこそ伝えた」
一夏はこのクラスの代表である。クラス代表は生徒会の定期会議の出席等の他に、もうじき行われるクラスリーグマッチに参加することを義務づけられている。
つまり、この学園においてクラス代表になるということはそれ相応の実力を持っているということである。その一方で一夏がクラス代表にされた理由は珍しい男性操縦者であるからというだけで代表にされている。他の代表と一夏の力の差は歴然である。
「ただでさえ力の差があるのに敵が強くなったときたら、流石にお前も余裕はないか」
「最初からないよ!!そんなもん!」
涙目になりながら叫ぶ一夏。
そんな悲痛な叫びを上げる一夏とは反対に七瀬の表情は笑っていた。
「(また代表候補生が増えるとは。機体はどんなものか、今から楽しみで仕方がないな)」
七瀬がそんなことを考えていると、教室のドアが勢いよく開いた。
『頼もー!!』
そんな声がドアの開閉音と共に聞こえてきた。
その声の大きさにクラスメイト全員がドアの方に視線を向けた。
『織斑一夏はいる?宣戦布告に来たんだけど』
「(相手の安否も確認せずに先に用件を言うか?普通)」
七瀬がドアを開けて入ってきた少女を見たときに初めて思ったことはそれだった。
「鈴…?お前、鈴か!?」
「そうよ!…久しぶりね、一夏」
「(あぁ…こいつの身内か)」
こういった常識はずれの少女は基本、一夏の身内である。IS学園にきて七瀬が学んだことのひとつであった。
「(篠ノ之にせよ、織斑先生にせよ、どうしてまぁこいつの身内は顔が整ってる女性ばかりなのかねぇ…)」
そんな柄にもないことを思った自分に嫌気が差す七瀬。
「本当に久しぶりだな!学園にいるなら連絡くらいしてくれればよかったのに」
「最近転入してきたのよ。本国で色々手続きが遅れて──って、そんなことはどうでもよくて!」
「?」
「久しぶりに再会した幼なじみよ!何か他に言うことがあるでしょーが!」
「言うこと?」
「あたしの姿見てなんか思うことない?ほら!」
「う~ん……」
二人のそんなやりとりを見て七瀬は察した。
「(もしや、あいつも織斑に?…また面白くなるな)」
人の恋愛事情を見て楽しむこの男は一度馬に蹴られて死んだほうがいいのかもしれない。
「背、少し縮んだか?」
「そんなわけないでしょ!」
「じゃあ伸びた?」
「中学時代から一センチも変わってないわよ!っていうか身長以外はないの!?」
「う~ん…じゃあ大人っぽく──もなってないよな?」
「……あんた、喧嘩売ってんの?」
「「………」」
二人は一度黙る。そしてお互いを見合ってから硬くなっていた表情を崩した。
「このやり取り、やっぱり鈴だな。何も変わってないよ、昔から」
「ほんと、このやり取りだけで私の知ってるアンタも変わらないんだって実感できるわ。…特に鈍感さが」
二人のこのようなやり取りは中学時代、二人のクラスの名物コント(痴話喧嘩)として有名になっていた。それは今においても変わることはなく、二人にとっては暖かいものであるようだ。
「連絡してないのは悪かったけどそういうアンタこそ、ISを動かしたなんて大事なことをどうして言わないのよ。ニュースで見たときビックリしたじゃない」
「いや、あのときは俺も突然のことすぎてさ。しばらく国の人に隔離された上に一切の連絡も禁止されてたんだぞ?そりゃあ俺だってお前や弾に真っ先に連絡しようとはしたさ」
「なんでそこで弾が出てくるのよ!あたしにしなさいよ!」
「一緒に高校見学まで行ったんだぞ?俺だけいきなり進路変更することになったら、あいつと打ち合わせしていた高校見学まで中止になるわけで…」
「あたしと弾どっちが大事なの!?」
「そんなの決められるわけないだろ!」
この発言によりクラス中がざわついた。
「(弾、ということは男か…?一夏…お前まさか同性に興味が…!?いや、そんなことよりあの女は誰なんだ!?一夏と随分親しそうだが…)」
「(一夏さん…あぁ、どうか嘘だと言ってくださいまし…!)」
「(こりゃやっちまったな織斑)」
「(おりむーだいた~ん)」
一夏の同性愛者疑惑が浮上する中、再び教室のドアが開く。
そして入室してきた人物は静かに鈴音へと近づいていく。
「おい」
「なによ、大事な話を───」
「ほう、教師に反抗を見せるとは、随分と度胸のある転校生がきたものだな」
「ち、千冬さん…」
鈴音は睨まれただけで引き下がる。いくら彼女といえど、世界最強の千冬には敵わないようである。
「自分の教室に戻れ。授業を始められん」
「は…はいぃ……またあとで来るから、逃げないでよ一夏!」
彼女はそう言い残すと去って行った。
突然現れては大きな爪痕を残し(一夏の疑惑で)、それだけ済ませると去って行った。まるで嵐のような少女であったとクラス中がそう思ったことだろう。
「本日の最後の授業は二組と合同でISの基礎実習を行う。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。解散!」
千冬がそう言うと生徒は着替えを始めようとする。
「七瀬、急いでここから出るぞ!」
「了解した」
実習があるたびに二人は部屋を出なければならない。
自分たちが部屋を出なければ女子たちが着替えられないので急いで教室を出る。そしてアリーナにある更衣室で着替えているのだが……
「…今日は盗撮のカメラないといいな。織斑」
「勘弁してくれ…」
その更衣室にも危険がいっぱいだったりする。
数日前は七瀬のロッカーに、そして先日は一夏のロッカーに盗撮が目的と思われるカメラがあったのだ。
「(織斑はともかく、俺を盗撮する物好きなど一人しかありえん)」
七瀬は、先日自分の部屋に侵入していた痴女が頭に浮かんだ。
「(あの処女ビッチ会長…次、俺の前に姿を見せてみろ。今度は身ぐるみ全部剥いでやる)」
更衣室に移動しながら、七瀬は自分のロッカーにカメラを仕掛けたであろう者への復讐を決意したのだった。
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「本日は戦闘を実演してもらう。誰か我こそはという者はいないか?」
アリーナに集まった一組、二組の専用機持ちも名乗り出る者はいなかった。
「あぁ、一応言っておくが対戦相手は私ではない。なんなら生徒同士の対戦でも構わないぞ」
千冬がそう言うと生徒は胸を撫で下ろした。
だが、それでも教師が相手である以上、下手に勝負を挑めばたこ殴りにされるのは目に見えているからだろう。
だが、千冬の後ろでラファール・リヴァイヴに搭乗し、実演の準備をしていた山田先生が今にも泣き出しそうな顔になっていたのを一夏は見逃せなかった。
「俺、やろうかな」
そう思って一夏が手を挙げようとしたときだった。
一夏の手を引き留めた者がいた。
「なんだよ箒」
「やめておけ。お前はクラスリーグマッチを控えている。二組の代表もいる前で力を見せるのは危険だ」
「…そうだな。分かったよ」
一夏は手を降ろした。
仕方ないと呆れた千冬は生徒を指名した。
「…東、お前でいい。前に出ろ」
「自分、専用機持ってないっすよ」
「お前がいじりまわした機体があるだろう。それを使って構わん。持ってこい」
「了解」
七瀬は千冬に促され、機体を取りに向かった。
「(あれ~?あずさん、今笑ってた~?)」
七瀬が機体を取りに行く際、口元が緩んでいたのを本音は見逃さなかった。
もうひとつ投稿するのが七瀬VS山田先生です。
では、仕事に備えて寝ます。
今回もありがとうございました!
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