ゼロから始める『ぼくのさいきょうのIS』作り   作:星震

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ミキシングガンプラを作っていたのとリアルが忙しくて遅れてしまいました…

新たに高評価をくださったテントウムシ!!!さん、ミリオタでアニオタなバカさん、眞川 實さん、弟切社長さん、ムリエル・オルタさん、海苔餅海苔さん、ふにゃ~んさん、カレン・タイターさん、Godライザーさん、レインボーゴリラXDさん、9sigure4539さん、雅大0914さん、黒たんさん、始まりの0さん、サマーブックさん、士郎狐さん、bisyさん、ギャラクシーさん、なまこ102号さん、MK/シュウさん、福霊さん、コーチマSPLさん、漆塗りさん、がるっちさん、ユキニティーさん、雪ん狐さん、byakheeさん、らりぞーさん、 そうちぃさん、gosurolionさん、フランマさん、ありがとうございます!


本気VS本気

「ほう、これがそうか」

 

「えぇ。これがIS委員会が『打鉄・零式』をベースに開発した機体『真打』です」

 

 学園の開発室、そこで目の前に鎮座している二機のISの説明をする七瀬。

 その説明を受けているのは地上最強と名高い千冬であった。

 

「しかし、織斑先生に機体を品定めしていただけるとは、光栄ですね。てっきりもっと上の人間が来ると思っていましたが」

 

「どこかの馬鹿者が次々に規格外の機体を造り上げるせいで上は忙しいのさ」

 

「椅子に座っているだけの無知なお偉いさん方には用などありませんよ。バカ共には丁度いい目眩ましだ」

 

 先日、機体の状態を確認しに学園の上層部を名乗る女性が訪問してきた。

 その際、七瀬が本音や一夏たちと共に機体の説明をしようとしたのだが、『女から手柄を横取りした男に説明する権利はない』と七瀬を一蹴し、その場から追い出してしまった事件があり、それ以来、七瀬は学園の上層部を良く思っていなかった。

 

「女から手柄を…布仏のことか?」

 

「えぇ」

 

 七瀬は整備科志望である本音に手伝ってもらうことで機体を組み上げている。それは本音も了承している上でのことなのだが、そんな理由など知るはずもない者は七瀬が脅して本音に手伝わせていると思い込んでいる輩が少なからずいた。

 それに加え、七瀬が機体を自分ひとりで開発したものとし、売名のためにその技術をIS委員会に売りさばいたという噂まで広がる始末であり、上層部の中の七瀬の印象は最悪なものとなっていた。

 

「確かに自分はISの知識が足りないために布仏に頼りきりなところが多いです。そう言われても仕方ないことではありますが、売名のために機体を組み上げていると思われているのは不愉快極まりないものです」

 

「今日布仏たちが顔を見せないのはそういうことか?」

 

「…えぇ。そうですよ」

 

 本音や一夏たちは先の事件のようなことにならないようにと説明役を七瀬に任せることにしたのだ。

 一番機体の構造を把握している七瀬に数時間も説明されれば七瀬が機体の開発にしっかりと貢献していたことが嫌でもわかるだろうという本音の算段である。

 

「布仏たちには気を使わせてしまってばかりですよ。なにか礼でもできればと考えているんですがね」

 

 そう言いながら機体のデータを表示する準備をする七瀬。

 空間投影型に投影されたそのデータは国連の機関であるIS委員会から送られてきたということもあり、厳重なロックが掛かっていた。

 

「あのクソ上官が来たら24時間はこの機体について語り尽くして過労死させる予定でいましたが、織斑先生の貴重な時間を削るのはいけませんからね。できるだけ簡潔に説明しましょう」

 

 

 

IS委員会産実験機『真打(しんうち)』

 

和名:真打

世代:第二世代

形式:真打軍一陣目

国家:IS学園訓練機、IS委員会実験機

分類:近距離格闘型

仕様:改良型ゼロフレームの採用、豊富な拡張領域

装備:

近接格闘用メイス

近接格闘用ジャイアントアックス

腕部機関砲(弾薬は切り替え可能)

 

 

 

「本機は特殊な機能こそ持ちませんが、改良型ゼロフレームによって強化されたパワーは第三世代機にも引けをとらないものです。そのため武装もかなり重量のあるものとなっています」

 

「だがそれは『打鉄・零式』のときも同じだった筈だ。結局のところ、以前との違いはなんだ?」

 

千冬は七瀬に問う。

 

「我々が開発した『打鉄・零式』はフレームに稼働範囲が増えた分、装甲にも同じ稼働範囲を設けなければならないために機体全体の防御力が低いことやフレームにブースターが対応しなかったために飛行ができないことが問題点でしたが、この新型ゼロフレームではそれが改善されています。総合すると、『打鉄』の性能全てを1.5倍にしたものが本機ということになります」

 

「ほう…『特長がないことが特徴』ということか」

 

「しっかりと『特長』の部分を強調していただいてありがとうございます」

 

 繰り返すようではあるが、『特徴がないのが特徴』ではない。

 特出している性能は見受けられないが、操縦に余計な負担が掛からずに扱いやすいというのが注目すべきところなのである。

 

「ですが、『打鉄』の性能を全て1.5倍にした上で『零式』での問題点全てを解決している点では極めて高く評価せざるを得ません。流石は国連の機関といったところですな」

 

「たしか、『打鉄・零式』のパワーは『打鉄』の1.8倍程度だったか…近距離格闘に特化させるべくしてパワーを極限まで強化した『打鉄・零式』に対して、この機体は全ての性能の安定と扱い易さを追求した、そういうことだな」

 

「はい。そして注目すべき点はもうひとつ、豊富な拡張領域にあります」

 

 七瀬は外されている機体の足の一部の装甲を指す。

 そこには本来、装甲が装着されるはずの場所にブースターの基部が備え付けられていた。

 

「これは…追加ブースターを装備するための場所か?」

 

「えぇ。先ほど自分は『特長がないことが特徴』と言いましたが、逆に言ってしまえば、乗り手次第では『特長を持った機体』にすることも可能なのですよ。本当、委員会の技術にはつくづく驚かされます」

 

「将来的面も考慮された機体…量産機に求められる要素を詰め込んだような機体だ」

 

「それが、そうでもないみたいですよ」

 

 七瀬にどういうことだとでも言わんばかりに視線を向ける千冬。

 

「量産機に求められるものは性能、将来性…あとは何だと思います?」

 

「…生産コストか」

 

「それもありますが惜しい答えですね」

 

 千冬に七瀬は答えを出す。

 

「信頼、ですよ。いくら機能がよくても世間に認められなければ量産の予定は立ちません。さきに先生が仰ったコストもこれに関係します。余程の馬鹿でもない限り、学生の設計した機体なんぞに高いコストをかけてまで量産しようなどと考えないでしょうよ」

 

 IS委員会を通しているとはいえ、世界で467機しかないISコア。

 そんな代物を消費してまで学生の作った信頼のない荒削りの機体を量産化するよりも、自分たちが長い研究の末に作り出した『確かな信頼』のある機体を生産し続ける方が懸命だと判断するのが普通である。

 

「性能は保証できます。ですが表舞台に出ることのないであろうゴーストファイター、それがこの機体です」

 

「この機体が学園に送られてきた理由というのはまさかとは思うが…」

 

「えぇ、この機体の信頼を集めるための広告塔にするためかと。自分が零式を引き渡す契約をしたときに何の支障もなく『零式を改良した機体は送れる』と言われたのはそういうことでしょう」

 

「ほとんどの国家は作った者の立場だけで性能を判断して損をしているわけか。だが、打鉄を作った企業からすれば首の皮一枚繋げて助かったようだな」

 

「この機体が生産されれば打鉄は不要になってしまいますからね。新時代の機体が古い技術のブラッシュアップのみで作られた機体に負けるとは皮肉なものです」

 

 されど長い年月をかけて使われてきた機体の信頼は揺るぎなかった。

 どの国家も、その長い時間の間で使われてきた機体が学生風情が作った機体をもとに改良された機体に負けるはずなどないと判断したのだ。

 

「ですがよかったですね!こんなにも素晴らしい機体を学園が独占して使えるなど、有難いことですよ。しかも二機も!」

 

「あぁ。これがあればわざわざ教員用の機体のパッケージを新しく受注する必要もなくなる」

 

 教員用の機体というのは、量産機に企業から送られてくる強化パッケージを装着したものである。

 しかし、最新技術を盛り込んだパッケージも無償で要求できるわけではなく、その使用する教員の実績や働きによっては要求できないことがある。

 そんな貴重なパッケージを消耗品のように消費しては学園としても被害が大きく、学園の上層部はこの問題に対して頭を抱えていた。

 だが、この機体、『真打』はパッケージなしの状態で量産機とはかけ離れた性能を有している。

 今までのようにパッケージを壊しては要求しての一連の動作を行う必要がなくなるのだ。

 

「なるほど、この機体の性能はわかった。ところで───」

 

 千冬は二機から視線を外し、その隣のハンガーデッキに視線を向けた。

 

「隣にあるその機体は何だ?」

 

「その機体に目が行くとは、流石は織斑先生。お目が高い」

 

 千冬が指したのは一部のフレームが露出したままの異形の機体。

 普通のISよりも巨体なその機体は、見るもの全てを威圧する『鬼』のような見た目をしていた。

 

「その手の込んだフレーム構造は…返却されてきた『打鉄・零式』の改造機か?しかし、搭載されているブースター基部は『超兵』(エクス・トルーパー)のもののようだが…」

 

「えぇ。そして───」

 

 

 

 

「自分の技術集大成『第一弾』です!!」

 

****************************

 

 

 

「あずさ~ん、こっちこっち~」

 

「おぉ…ここなら両機ともよく見えるな」

 

 七瀬は、千冬への機体の説明を終えた日の午後、アリーナにて行われるクラスリーグマッチに来ていた。

 

「すまなかったな、俺の分のチケットまで頼んで」

 

「いいよ〜、もう一枚予約分のがあったからね〜」

 

 午前に千冬への機体説明があったために七瀬はチケットを購入することができなかった。

 そのため、本音にチケットの購入を頼んでおいたのである。

 

「詰めが甘かった...まさかチケットが10分足らずで完売するとは...」

 

「この件は貸しですわよ、篠ノ之さん」

 

「くっ...なぜだ!?こうならないように早くから準備をしておいたというのに!」

 

 自由見学であるこの大会だが、今年は例年よりも観客の数が多かった。そのため、チケットも例年よりも早くに完売した。

 それもそのはず、今年は一夏という史上初の男性操縦者の参加者がいるのだから。

 

「一夏は大丈夫だろうか...」

 

「白式のシステム周りもアイツ用に調節し直した。鍛錬も積んだ。あとは時の運に任せるしかない」

 

 この日に備えて訓練を重ねた一夏であったが、他の生徒との差はやはり歴然であった。

 

「一戦目からあの転校生が相手なんだね~。おりむー、がんばれ~」

 

「(さて、見せて貰おうか。新しい代表候補生の機体の性能とやらを…)」

 

 七瀬はそう言ってアリーナのフィールドに視線を向ける。

 そこには既にカタパルトから発進した二機のISが飛行しており、試合開始の合図を待っていた。

 

「いい、一夏?負けた方が勝った方の言うことをなんでも聞くんだからね!」

 

「俺、頼みたいことなんてないけどな…」

 

 試合開始の合図を待つ二人の間に交わされる賭け。

 鈴音が一夏にこの賭けを持ちかけたのには理由があった。

 

「(これであたしが勝てば一夏をデートに…って何考えてんのよ、あたしは!)」

 

 と、このように一夏をデートに誘うのが目的なようである。

 一夏に対して、素直にデートしてくれと言えない鈴音はこのような手段を取ったのだが、この賭けが一夏には利がないために成立していないことに気がついていない。

 

「(あの男と一夏の試合からある程度の一夏の能力は分かってるけど、相手はあの一夏。あたしの考えることはお見通しよね…)」

 

 鈴音の中で一夏の強さは『自分と過ごした時間の長さ』にこそあった。

 行動というものはその者の性格に影響するが、一夏と鈴音の場合はお互いがお互いの性格をよく知っているために、次に相手が何をするのか、何を考えるかが読みやすいのだ。

 

「それでは両者、試合を開始してください」

 

 試合開始の合図と共に双方は武器を拡張領域からコールする。

 一夏は雪片弐型、鈴音は双天牙月を手に取った。

 

「いくわよ、一夏!」

 

 鈴音は双天牙月を二刀流で持ち、一夏に接近する。

 対する一夏は雪片弐型で応戦する。

 

「甲龍のパワーと互角に渡り合えるなんてやるじゃない!形だけの第三世代機じゃないみたいね!」

 

「いや、形だけだったさ!最初はな!」

 

 一夏は鈴音の双天牙月を振り払い、腕部の装甲式装備である滑空砲を放つ。

 以前の失敗を糧に小型化されたそれは一夏の雪片を振るう際の動作を邪魔することなく使用できた。

 

「(こんな装備、以前の戦闘データには無かった筈...まさか、ここで作ったって言うの!?)」

 

 鈴音はこの試合の前に、ルームメイトが採取していた白式の戦闘データを見て戦い方を研究してきた。

 だが、そのデータには無かった装備に対処に戸惑いを隠せずにいた。

 

「たかが遠距離武器ひとつで!」

 

 最初こそ滑空砲に翻弄されていた鈴音であったが、すぐに弾丸の軌道になれ始め、得意の近距離格闘戦に持ち込んだ。

 

「捉えたわよ!!」

 

「うわっ!!」

 

 鈴音は双天牙月の刃を白熱化させ、白式の腕部に装甲ごと装着されている滑空砲に向けて振り下ろす。

 双天牙月に搭載されているジェネレーターによって白熱化された刃は白式の滑空砲を焼き切った。

 

「ヒート状態にもできるのか!?」

 

「この試合のために本国から送ってもらったとっておきよ!!それに──」

 

 白式の滑空砲が爆散するのと同時に鈴音が片手を広げる。

 次の瞬間、爆風で目が眩んだ一夏の目の前には両手に双天牙月を構えた鈴音の姿があった。

 

「一本だけじゃないのよ!!」

 

 爆炎の中から双天牙月を二刀流で構えた鈴音が現れる。そしてヒート状態に白熱させた双天牙月の刃を一夏に振り下ろした。

 

「(このままじゃやられる...!)」

 

 双天牙月の刃が一夏に触れたと思ったそのときだった。

 鈴音の目の前から一夏の姿が消えた。

 

「な..なに!?」

 

「もらった!!」

 

 鈴音は自分が地面に落下していることに気がつく。

 地面に叩きつけられた鈴音はすぐに上空を見上げる。すると、そこにはブースターから青い炎を巻き上げている一夏の姿があった。

 

「イグニッションブースト...!?アンタ、そんな隠し球をもってたのね!」

 

 鈴音は損傷を確認し、すぐに上空へ戻る。

 

「(右翼の龍砲は駄目ね。奥の手を封じられるなんて...けど...)」

 

 一夏の思わぬ行動により、隠していた武装を破壊される鈴音。だが、その表情は笑っていた。

 

「最高の盛り上がりじゃない!!すぐに終わっちゃうと思っていたけど、訂正するわ!!」

 

 鈴音は二本の双天牙月を連結させ、一夏に構える。

 

「(イグニッションブーストはもう使っちまった。鈴が今ので見切れていないとしても、もう一度使うには時間がかかる…なら─)」

 

 一夏は深呼吸をしてその場で雪片弍型を構える。

 そして鈴音に告げる。

 

「鈴、本気で行くからな」

 

「当たり前よ!こっちも全力で相手したげるから、泣くんじゃないわよ!!」

 

 一夏は白式のシステムから単一使用能力の解放を知らされる。

 それは一夏と白式の同調率が最高状態にあることを知らせる証であり、一夏の奥の手の発動の合図でもあった。

 

「零落白夜、発動!!」

 

一夏の『零落白夜』の使用承諾を得た『雪片弐型』の刃の部分が開きレーザー状の刃が太くなる。

 

「雪片弐型を最大出力で使用!白式のフレーム内部排熱ダクトを解放する!」

 

 一夏が白式に語りかけると『雪片弐型』のレーザー刃が太くなり、白式の一部の装甲が開く。装甲がスライドして解放された隙間からフレームに備え付けられている排熱ダクトが現れた。

 

「それがアンタの奥の手ってわけね!なら、こっちもこれを使うわ!」

 

 鈴音がそう言うと『甲龍』のウィングブースターの装甲がスライドし、砲身のようなものが現れる。

 鈴音が指示を送るとその砲身が一瞬光を放つ。

 そして次の瞬間、一夏は見えない何かに吹き飛ばされた。

 

「ぐうぅぅぅ!?」

 

 吹き飛ばされた際の急激なGに一瞬意識がブラックアウトしそうになる一夏。

 それをなんとか堪え、シールドエネルギーの残量を確認する。

 

「(たった一撃でこの威力…!?もう一撃喰らったら確実にやられちまう!)」

 

 衝撃砲『龍砲』。それが鈴音の使った武装だった。

 甲龍の肩部装甲に装備された空間圧作用兵器である。

 その仕組みはPICの技術を応用した空間圧によって空中に砲身を作り出し、衝撃を放出するというものだ。

 空間圧兵器であるために、砲身はおろか砲弾すら見えない。それがこの装備の特徴でもある。

 

「(やっぱり片方の『龍砲』だけじゃ当てにくいわね…!片方で誘導して当てる方が確実なのに!)」

 

 龍砲は出力を下げることで連射も可能だが、鈴音は先程の一夏のイグニッションブーストによって片方の龍砲を破壊されていたために、一撃に全てを込めて龍砲を放ったのである。

 

「(けど、俺も一撃に全てを賭けなきゃ勝てない!!無理は承知!!)」

 

 一夏は鈴音に接近する。

 

「甘い!」

 

 鈴音は自分に向かって飛翔してくる一夏に龍砲の照準を合わせていた。

 そして龍砲を出力全開で一夏に放った。

 

「……今だ!」

 

 一夏はタイミングを見て白式の独立飛行しているウィングブースターを機体前方に展開する。

 そして龍砲の見えない弾丸が当たる寸前に、ウィングブースターと機体のリンクを切断した。

 

「耐えてくれよ、白式…!!」

 

 『甲龍』の全力の龍砲を喰らった白式のウィングブースターが一夏の目の前で爆散する。

 だが、ウィングブースターの機体とのリンクは切断していたために白式のシールドエネルギーが減ることはない。

 

「ウィングブースターを盾にした…!?まずい…!」

 

「逃がすかぁぁ!!」

 

 鈴音が一夏から距離を取ろうと離れるが、それはかなわなかった。

 何かが鈴音を引っ張っていたからである。

 

「これは…ワイヤーアンカー!?」

 

 白式の左腕の装甲ごと装着されていたそれは『零落白夜』との相性を考えて作られた装甲式装備である。

 自分のシールドエネルギーまで攻撃力に変える零落白夜は最強の矛ではあるが、当たらなければ意味がない。動くISに対してどうすれば確実に当てられるかを考慮した結果、『自分から当てられないならば相手を無理やり引き寄せて当てる』という結論に至った。

 ワイヤーアンカーによって引き寄せられた相手を零落白夜で倒す。それが新たな白式の切り札となったのだ。

 

「雪片弍型、最大出力!」

 

 ワイヤーアンカーによって引き寄せられる鈴音。

 そしてその先には零落白夜を最大出力で展開している一夏の姿があった。

 装甲の隙間から見えるフレームの排熱ダクトから熱が放出されていた。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

 そして、一夏の振るった零落白夜が甲龍に命中する。

 最強の矛が甲龍のシールドエネルギーを0にした。

 決着は着いたのである。

 

『試合終了!勝者、織斑一夏!!』

 

「いよっしゃあぁ!!」

 

 試合終了のアナウンスが入るのと同時に一夏が拳を突き上げ、会場から大歓声が上がった。

 今ここに、男性操縦者が公の場で大金星を上げたのである。

 だが、この歓声は決して一夏一人だけに送られた訳ではなかった。

 

『……鈴』

 

「簪…」

 

 鈴音の元にルームメイトの簪から通信が入ってきた。

 通信越しに見える鈴音の表情は無理に笑顔を作っていることが見てとれた。

 

「ごめんね。あんなに手伝ってもらったのに、勝てなかった…」

 

『…かっこよかったよ』

 

「え…?」

 

『…すごく、かっこよかった。…それに負けても次は勝てるように頑張ればいいと思うから…』

 

「…ありがと」

 

 簪から告げられた言葉にそっぽを向いてしまう鈴音。

 照れ隠しなのか、少し赤面していたのは簪には分からなかった。

 

「鈴!」

 

 そんな鈴音の前に白式を装備したままの一夏が歩み寄ってきた。

 そして鈴音に手を差し出す。

 

「ナイスファイト」

 

 普通は戦っていた相手と握手などしないだろう。

 だが、一夏は『戦い』ではなくあくまで『幼馴染みとの試合』と捉えていたのだろう。

 殺意と殺意の戦いではなく、本気と本気のぶつかり合い。それが一夏にとってのこの試合だったのだ。

 

「(あたしは代表候補生になったときから勝ちにこだわりすぎてたのかもしれないわね)」

 

 鈴音は今までの自分を思い返す。

 代表候補生として、専用機持ちとして、ただひたすらに強さだけを求めて戦ってきた自分。

 この学園に来てからも同じだと思っていた彼女だったが、変わらない幼馴染みを見てその気持ちは変わった。

 

「(けど、このままじゃ悔しいから──)」

 

「次は負けないわよ、ばか」

 

 そう言って鈴音が一夏の手を握ろうとしたときだった。

 

 

 一筋の光の矢がアリーナを貫いた。




次回、遂に七瀬の技術集大成第一弾が出撃!!そしてゴーレムさん登場。

余談
BANDAIさん、モビルドールサラ(の予約)が死んだよ…(ヤメナイカ!!バチン!!キボーオーノハナー
だからよ…再生産とまるんじゃねぇぞ…
そしてガンダムデュナメスMG化おめです。この調子でハルートも頼みます…その前にキュリオスですけどね。

今回もありがとうございました!ロボット愛を込めた熱い感想、高評価お待ちしております!!
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