オリ主人公ものは書きやすく筆が進みます…
今回もよろしくお願いします
『おい、聞いたか?なんか今日ISの適性テストが行われるらしいぜ?』
『あー、あれか。男でISを使える奴が現れたっていうから他にも適性がある男がいるか試してるんだろ?』
『でもラッキー。おかげで授業無くなるしな』
七瀬がいつも通りラノベを読んでいるとそんな会話が耳に入ってきた。
「(ISを使える男、確か織斑とかいったか…)」
織斑一夏。女性しか扱えない兵器『インフィニット・ストラトス』を操れる唯一の男。彼がISを動かしたことは世界中で話題となり、同時に世界の秩序が変化の兆しを見せ始めていた。
ISが使えるということから女の方が男より偉い、女尊男卑の関係が出来上がっていた世界だったが、織斑一夏がISを起動させたことによって男にもISが使えるということが分かり、男性も女性も平等だと訴え、蜂起を起こす者たちが現れ始めたのだ。
「IS、ねぇ…」
ISは現行存在するどんな兵器よりも強力な力を持っているというのに、今はもっぱらスポーツ目的で運用されている。アラスカ条約によって軍事利用が禁止されているからである。
「(ま、俺の場合ロボットなら兵器だろうがスポーツだろうが構わないけどな)」
そう、どちらにせよロボットなら七瀬が興味を持つことに変わりはないのだ。かくいう七瀬も昔、父親に連れられてISの世界大会である『モンドグロッソ』を間近で見たことがある。
「(とはいったものの、兵器とも認識されるISがあることで苦しむ人間がいることも事実。開発者様は何をやっているんだか…)」
かくいう七瀬も自分がその一人であることを自覚している。この話は七瀬の両親に関係しているのだが、それは追々話すこととしよう。
話が脱線してしまったが、そんな中で七瀬は二人の『織斑』について考えていた。
「(そういや、織斑ってあの第一回世界王者の織斑千冬と同じ名字だな)」
偶然か、と思う七瀬であったが織斑という名字がそうたくさんいるとも思えないし、二人の名前の共通点も気になった。一夏と千冬。どちらも名前に数字と季節が入っている。ますます二人の共通点が気になる七瀬であったが近くから聞こえた話題の内容でそんなことはどうでもよくなってしまう。
かくいう七瀬も自分がその一人であることを自覚している。七瀬の両親に関係しているのだが、それは追々話すこととしよう。
話が脱線してしまったが、そんな中で七瀬は二人の『織斑』について考えていた。
『太田君なら起動できんじゃね?何でもできるし』
「ははっ、やめてくれよ。流石にISは起動できないさ」
太田とその取り巻きが起動テストのことで話していた。確かに彼なら問題なく起動させてしまいそうで怖い、と七瀬は納得してしまう。どれだけ道理の通らないことを言っても許される彼ならば、という皮肉つきな理由で納得したのだが。
************************
【テスト会場】
『次の者、前に』
白衣を着た研究員が生徒の移動を促し、次々にISに触れさせていく。
そしてしばらくして七瀬は自分の番がきたことを確認する。
『目の前のISに意識を集中させて触れて下さい』
七瀬はそう言われ、目の前のISに触れる。
「(ラファール・リヴァイヴだったっけな、このIS…)」
七瀬は一瞬、意識が研ぎ澄まされるような感覚があったがその後は何も起きずに稼働テストは終了した。
『適性は無し、ですね。もう大丈夫です』
「…ありがとうございました」
七瀬はそれだけ言って会場を出る。学校が手配した送迎バスが発進する時間まではまだ長い。
「(今日は学校も終わりだし、さっさと帰るか)」
バスを待つのも面倒になった七瀬は歩いて会場を出ることにした。
「(つーか、もう金曜日か。なんで休日のプラモフィーバーだってのにこんなに虚しい気持ちなのかねぇ…?)」
自分に適性がないことくらい分かっていた筈なのに少し残念な気持ちが残るのは何故だろうか。自分に何か可能性があるならそれを開花させたかったのか、あるいはまだ自分はロボットに乗るという夢の途中なのか。
そんなことを考えていた七瀬の意識は轟音と共に突然途切れることとなる。
「うぅ……」
七瀬は倒れていた。朦朧とする意識の中、目を開ける。
「は……?」
目を開けるとそこは地獄だった。
周囲が炎に包まれ、さっきまで賑わっていた人々が命の灯を消していた。周囲に黒ずんだ体で横たわる人、それが焼死体だと理解するまでそう時間は掛からなかった。
「うぅっ…!?」
七瀬は猛烈な吐き気に襲われる。初めて人の死を目の当たりにしたのだ。それもこんな残酷な形で。
『くっ…!!』
「お…おい!!大丈夫か!?」
一人の白衣を着た男性が七瀬の近くでうごめいていた。その症状はまさに虫の息同然だった。
『男……君は男なのか?』
「そんなこと言ってる場合じゃないだろう!女性の方がよかったなんて文句受付けねぇからな!」
七瀬は出血していた彼の腹部を彼の着ていた白衣を破って止血を試みる。
すると突然、彼は白衣のポケットを漁り始める。何をしているのか、そう思う七瀬の意思を置き去りにして彼はいつの間にかその大きな大人の腕を振り上げていた。
『悪く思わないでくれ』
「何を…ぐっ!?」
七瀬は突然彼に止血していた腕に注射器を打ち込まれる。中から血のように赤い色をした液体を流し込まれる。
「っ!?一体何をした!?」
『これで…我々男の祈願は達成される……女共はこれで終わ…り…』
渇いた声で笑った後、言葉の続きを言えぬまま彼は息を引き取った。
「このバカが…!!」
注射された部分を抑えて七瀬は炎の中、周りを見渡した。そしてあるはずのものがないことに気がついた。
学校の手配した送迎バスがなかったのだ。
「あぁ、そうか。ここにいる奴等は皆、見捨てられたのか…」
バスは生き残っていた数人の生徒を連れて既に出発してしまったのだろう。周りの取り残された生徒たちが悲鳴や泣き声を挙げている。その足元には友であろう者たちの亡骸があった。
「どうしてこんなことに……」
七瀬はこうなった元凶を探す。炎の熱で目を開けられず、視界が見えにくい中で周囲の現状を理解しようとした。
そして七瀬は炎の中で何かを探すように稼働する巨体を見つける。
体の大きさからしてまず人間ではないことが理解できた。ならば何なのか、それは先程まで自分たちが触れていたものであった。
「IS…どうして攻撃を!?」
周囲の建物や人にISがその手に持っている重火器から火が吹かれる。人が、建物が焼けて黒ずんだ炭になっていく。
「あれは…拠点制圧用の重装備か!?こんな場所で!?」
プラモの設定やロボットアニメの情報から敵の武器の使用用途と火力を知る。そして七瀬は敵のISの目的を理解した。敵のISの目的はこの試験会場の破壊とここにいる全ての人間の抹殺なのだと。
抵抗手段を考えるが何も思い付く訳がない。スポーツとして見なければISは最強の兵器でしかない。つまりISに勝てるのはISだけなのである。
七瀬はここにきてISの兵器としての恐ろしさを身を持って知ることとなった。
「IS…確かさっきの稼働テスト用のが…」
七瀬は敵のISに気がつかれないようにISがあった方向へと走る。周りの生徒の死体をできるだけ見ぬようにただひたすら走りぬけた。瓦礫の山を越えた先にそれはあった。
七瀬はISのあった格納庫まで辿り着いた。いくつかの格納庫を探したがどうやら他の機体は現在も殺戮を続けている敵に持ち去られてしまった後だったらしく、今七瀬の目の前にある機体が残された最後の一機だった。
ラファール・リヴァイヴ。フランスの企業が開発した量産型のISだ。
だが、どういうことか体の一部が破損していた。
『き、君は……?』
七瀬は声が聞こえた自分の後ろを振り向く。そこには一人の研究員がいた。その手には大きな資料のファイルを持っていた。
『その服装…今日の学校の試験生か!すまない、人手が足りないんだ。コイツを直すのを手伝ってくれ!』
突然の頼みに七瀬は動揺を隠せずにいた。
「俺、ISなんて直したことないですよ?」
『これを見てくれ。これはこの機体の整備データのコピーだ。緊急事態で本社から送って貰ってね。これを見ればきっとできるだろう』
「・・・どうせ死ぬくらいなら少しは足掻いてやるか。わかりましたよ!」
七瀬は研究員からファイルを渡してもらい、資料と機体に目を通す。
「歪んでいる背部のウィングはどうします?」
『ユニットごと交換する。向こうに高周波カッターがある。そいつで交換の邪魔になる部分を切り落としてくれ』
七瀬はそう言われて高周波カッターを探してくる。道具を見つけ、指定されたウィングを切り落とす。
『おぉ、なかなか手慣れてるじゃないか』
「この切り跡見てそう言えます?」
七瀬が切り落としたウィングはいくらユニットごと交換するから適当に切ってもよいとはいえ、酷く歪なものだった。
『最初の僕はもっと酷かったさ。それより君、IS好きだろ?』
「よく分かりましたね」
『いきなりこんな作業を頼まれて楽しそうな顔をする奴なんて、ISが好きか、ドMかのどっちかだろ?』
「比べ方の単位が酷すぎるな」
七瀬は作業を続けていく中、七瀬はマニュアルにない異常事態が機体に起きていることに気がついた。
「くそっ…こいつ、ところどころケーブルが焼き切れてますよ…!」
『予備のケーブルがあるか見てきてくれ!今ちょっとハイパーセンサー周りの接続で手が放せないんだ!』
七瀬は周囲に予備のケーブルがないか確認する。予備の補充品だと思われるコンテナを確認してケーブルを探す。だがケーブルは見つからず仕舞いで持ち場に戻ることとなった。
「お?ケーブルってこれか?」
探していたものが持ち場にあったという事態に動揺する。灯台もと暗しとはこのことなのか。
「明らかにさっきまでなかったが…大丈夫なのか?取った瞬間『はい、捕獲ー』とかないよな?」
怪しみながらもケーブルを取り、それを目の前の機体、ラファールに繋ぐ。するとラファールは空中投影型のディスプレイとキーボードを表示した。
「エネルギー残量が少ない…それに調整も不十分…こんな状態でテストしていたっていうのか…!?」
『上の奴等、そこまで期待なんてしてなかったのさ。二人目の男性操縦者が現れるなんて』
ISの手配をした政府と企業のやることが滅茶苦茶であることと状況の悪化を感じる。
『OSは僕が書き換えておく。君は最低限できる調整をマニュアル通りに頼むよ。もうすぐ操縦者も来るからね』
「了解」
七瀬は自分でできるほんの僅かな調整をラファールに加え、起動できる状態にはなった。
「俺にできるのはこれが限界です」
『こちらも終了した。あとは乗り手を待つだけだ。僕らの役目は終わ──』
彼がそう言おうとしたそのときだった。彼の携帯の着信音が鳴り響いた。通話相手の話が進むにつれて彼の顔が青くなっていく。そして通話が終了すると彼は突然携帯を地面に投げつけた。
「なんだったんです?」
『操縦者の連中は既にここを離脱していた…ここに残されたのは僕と君、そして可哀想なこの機体だけだ』
七瀬が積み上げたものが崩れ去った。最後の希望であったISは操縦者のいない今、ただの人形となったのだ。
「どいつもこいつも信用ならねぇな…」
自然と身体の力が抜けていくのが分かる。足に力が入らなくなった七瀬は目の前のISにもたれ掛かる。
「(死ぬ前にこの間買ったプラモ、作りたかった…)」
建物が揺れ始める。敵のISはこの格納庫への攻撃を開始したらしい。あと何分持つか、そんな考えだけが二人の脳裏に浮かんでいた。
『……!……!』
「(あ……?)」
ぼやけた視界の中、目の前の研究員が何かを叫んでいることに気がつく。力の抜けた体を起こして彼の言葉に意識を集中させる。
『ISが起動している…!?君は何を…?』
「何っ!?」
ISの話になり、七瀬は息を吹き返した。そして後ろの機体に目をやった。さっきとは違う、神々しいまでの光を放つISの姿があった。
「(だがさっきのテストで俺は落ちた。なのにどうして…)」
考えうるはさっきの研究員に打たれた薬。それが原因だと分かっていても七瀬は立ち止まっていられなかった。もしかしたら、と微かにある希望を手にしたい気持ちで頭が一杯だった。
『君なら、ISに乗れるんじゃないか…?』
七瀬は彼にそう言われ微かな希望を抱き、ラファールのコックピットに乗り込む。依然として投影されているキーボードをいじり起動シークエンスを開始させる。コックピットに乗り込むとラファールが生体データの読み込みを始める。何もつまづくことなく起動シークエンスが終了する。
七瀬を操縦者と認識したラファールの装甲が操縦者の体の位置に合わせてスライドする。
フォーマットとフィッティングが完了したことを投影されている画面で知らされる。
『…完了だ。これで君は正真正銘、二人目の男性操縦者だ!』
「ロボットに乗っている…俺が…この俺が!」
喜びに浸っている二人だったが建物が再度揺れると冷静さを取り戻した。
「奴を叩きに行く。武器は?」
『・・・君が持ってきたあれだけだ』
七瀬はフォークリフトで運んできたコンテナを開き武器を確認した。
『これが何も考えちゃいない政府のやり方さ…機体の強奪の危険も考えずに…!』
研究員はコンテナにあった武器を見てそう吐き捨てる。
言い方からするに、彼は強奪の恐れも視野に入れていたらしい。
だが七瀬の反応は違った。
「いいねぇ、この武器。こういう武装は大好きだ。いかにも量産機って感じじゃないか」
七瀬は目を輝かせながらその武器を手に取る。ISを装着しているためあまり重さを感じないソレに七瀬の心は更に高揚した。
『そんな旧世代の武装で太刀打ちできるわけがない!どうするつもりだい!?』
「逆に聞きます、太刀打ちできないとしたらどうするんです?戦える力が目の前にあるというのに、生きることを諦めるんですか?」
『………』
「それに自分はロボットに乗って死ねるなら本望です。
とはいっても、自分は初心者である身です。あなたにアシストをお願いしたい」
『・・・私は大人としてあるまじき行為をしている。子供を戦地に送り込み、自分は助かるかもしれないという希望をもっている。こんな僕でも君は命を預けられるというのか?』
「言ったでしょう。ロボットに乗って死ねるなら本望。ロボットに乗るためなら何だってしてみせますよ。それでは、あとはよろしく頼みます」
『ま、待ってくれ!』
七瀬はそう言ってその場を去ろうとする。だが、それを研究員が呼び止めた。
『名前は?』
「……東 七瀬、です」
『東君か。少しこの老害の話を聞いて貰いたいんだけど…いいかい?』
「えぇ、どうぞ」
老害というが彼はどう見ても20代後半だった。七瀬はツッコミたくなる衝動を抑え、彼の話に耳を傾けた。
『僕は幼い頃から大好きなロボットに憧れてIS企業に入ってね。…だが、そのロボットへの熱を企業にいる間に忘れていたようだ。感謝する、僕のロボットへの愛を再点火させてくれて』
「・・・失礼ですが好きな機体は?」
『ジオン公国軍の旧ザク一択だ。当時旧式さえも投入せざるを得なかったジオンの戦局を教えてくれる素晴らしい機体だ』
「数あるザクの中でもあえて旧ザクを選ぶとは…貴方とは旨い酒…いや、茶が飲めそうですよ。帰ったら語りに付き合ってもらうとしましょう」
『折角だ。発進のときに初めての出撃台詞を言ってみてはどうかな?』
「では、自分が一番思い入れのある作品の出撃台詞を使わせていただこう」
七瀬は一瞬で勢いをつけて発進するためにブースターにエネルギーを集中させ、前屈みの体制になる。ブースターにエネルギーを集中させることは結論から言うとエネルギーの無駄でしかないのだが、二人にとってはどうでもよかった。今この瞬間のロボットという夢を発進させることだけが二人の頭を支配していた。
『スラスターエネルギー充填、限界まで完了!いつでもいいぞ!東君!』
「了解!ラファール・リヴァイヴは東七瀬で行きます!」
七瀬は自分が最初に見たロボットアニメ、ガンダムF91の出撃台詞を叫びラファールのブースターを蒸かす。
七瀬がブースターを吹かすとラファールはそれに応え、先程まで残っていたエネルギーでは想像もつかない程の加速を見せてくれる。
「これがISなんだ……あんな少しのエネルギーでこれだけの速さだなんて…!」
こんなときであるというのに七瀬は喜びを感じていた。幼き頃からの夢が叶ったことに。
「見つけたぞ、初めての獲物!!」
七瀬は敵のISまで接近する。
敵のISは七瀬に気づいたようでその手の重火器から炎を吐き出した。
「量産機だからって甘く見るなよ!」
『男の声…?まさか、男がISに乗っているのか!?』
敵のISの操縦者はそんな声をあげた。
初心者特有のデタラメな動きでなんとか炎を回避する。だが、ただ動き回るだけでは撃墜されてしまう。七瀬は死中に活路を見出だすためにラファールのストレージから武器を探した。
「腕部マイクロミサイル8発…これだけか!」
最低限防衛用として装備されていたのであろうマイクロミサイル。
だがたった数発しかないそれで敵のISを倒せる筈がない。
『東君!敵は重装備で動きが鈍い!ラファールの速さを利用して活路を開くんだ!』
「了解!」
旧ザク研究員(仮)からの通信によるアシストを受け、七瀬はラファールの片方のブースターだけを吹かして急旋回をかける。その際発生するすさまじいGにもISに乗っているからか耐えられた。
「そんなただでさえ重そうな機体に重装備を付けてたらついてこれないだろうな!この武器の見せ所だ!」
七瀬は敵の背後に周り込み、その手に持っていた武装を振り下ろした。
敵のIS、『打鉄(うちがね)』の特徴ともいえる部分である肩のアーマーが宙を舞った。
「やはり、この武器はいいものだ!」
その手に持っている武器、鋼鉄製のアックスが鈍く光を反射する。
「ヒートにできないのは残念だがそれもよし。ドンパチするにはもってこいだ!」
敵のISは時代遅れなその武器に戸惑いながらもその重火器から炎を吐き出し続ける。その攻撃を避けながら七瀬は次の反撃の機会を伺う。
「見える!初心者の俺にも隙が見える!」
隙を見つけた七瀬は鋼鉄のアックスを振り下ろす。だが、敵もそう何度も同じ手が通じるはずもなく、振り下ろされたアックスを瞬時に呼び出した刀で塞いでいた。ラピッドスイッチという高等戦術である。
「ぐっ…細い刀のくせにやる!」
七瀬はアックスで刀を振り払うが、その刹那、敵がもう片方の腕に呼び出していた刀でラファールの胸部装甲を破壊していた。
「二刀流かよ…まだそんな隠し手を!」
すっかり態勢を立て直した敵は続けて七瀬に攻撃を仕掛ける。敵の刀が七瀬の脚部の装甲に突き刺さる。七瀬は咄嗟の判断で刀を持っていた敵の腕をアックスで切り裂く。敵のISの装甲が壊れ、内部のフレームが露出した。
「このままじゃあジリ貧でしかないか…何か策は……」
『東君!』
旧ザクの研究員から連絡が入る。ある位置データと共に。
『この場所まで奴をおびき寄せてくれ。面白い物を見つけたよ』
「ここまでって…無茶苦茶いいますね」
送られてきた地図に表示されていた場所は七瀬がいる場所から程遠い場所だった。
「なら、こちらも無茶苦茶させてもらいます」
七瀬は通信を切るとすぐに行動に移した。だがその行動に敵さえもが戸惑いを見せる。
「来いよ、女が繰り出す細ぇ刀の攻撃くらい受けきってやるよ」
七瀬はアックスを捨て、人差し指を立てて挑発する。あとは相手方がこんな安い挑発に乗るかが鍵となる。
『男風情が…嘗めるなぁ!』
七瀬は笑みを浮かべる。
敵は刀を持って七瀬に向かって接近する。七瀬はそれでも動かなかった。そして敵が七瀬に刀を振りかぶらんとしたそのときだった。
七瀬のISの装甲が吹き飛んだ。いや、正しくは七瀬がパージしたのだ。
結果、普通のISよりも一回り小さくなったラファールが完成する。七瀬は背丈の小ささを利用してそのまま、敵のISの懐に飛び込む。敵の腕を抑え、刀の動作を封じるとその残されたエネルギーを惜しみなく使い、トップスピードを出す。イグニッション・ブーストと呼ばれる動作である。
「アンタがバカじゃなかったら終わってただろう」
七瀬はそのまま敵のISに直進し、敵のISを建物の壁に叩きつけた。建物が崩壊し、敵のISも脱出するのに時間がかかっていた。そこから七瀬は作戦を開始する。
身動きを取れない敵のISに上空から旧ザク研究員がコンテナで見つけたという液体を上空から流し込む。
『……?』
敵のISは困惑していた。この液体はなんなのか、なぜこのようなことをする必要があるのかと。
『今だ!東君!!』
旧ザクの研究員からの通信が入ったことを確認すると七瀬はマイクロミサイルを一発のみ撃ち込んだ。
たった一発のそれがあたっただけだというのに、敵のISが爆炎に包まれた。しばらく時間が経っても敵のISから火は消えない。
それもその筈。先程上空から流し込んだ液体、それは石油やニトログリセリンといったとても引火しやすいものだったのだから。ニトログリセリンの爆発とミサイルを合わせて威力を上げた。ただそれだけなのだが身動きのとれない相手には効いたようである。
『!!』
「逃がすか!!」
建物を残ったミサイルで壊しつくし、瓦礫が敵のIS襲いかかる。
敵のISのシールドエネルギーが崩落した建物から操縦者を守るべくして防御に働いた。先ほどの爆発に続いての猛攻を受けた敵のISは立っているのがやっとの筈である。
こうしている間にもシールドエネルギーは消費され続けている。未だに敵のISから炎は消えていなかったのがその証拠である。
『おのれッ…!この私が男ごときに!!』
敵のISは流石に分が悪いと判断したのかその体に炎を纏ったまま撤退していく。
「クッソ……鹵獲し損ねちまったか……ん?」
七瀬がそんなことを考えていると七瀬のIS、ラファールから白い煙が吹き出し、七瀬の体からフィットしていた機体が外れる。どうやらこの機体もあれ以上の戦闘を続けていたら危なかったらしい。
「東君、無事か?」
「えぇ、何とか」
ラファールに乗ったまま、七瀬を追いかけてきた研究員に答える。
「・・・いや、無事ではないですね。さっき野郎を建物に叩きつけたときに腕折ったようです」
「なんで君はそんなに平然としているんだ…?」
七瀬は折れた腕を抑えながらラファールごと地面に倒れ、空を仰ぐ。
「(ISを動かせるようになった、か
…俺はもう一度、夢への切符を手に入れたことになるな)」
ぼんやりと頭に浮かぶのは、かつて自分が作ることを夢見た機体の姿。幼い頃から試行錯誤を繰り返し理想とした、言わば『ぼくのさいきょうのろぼっと』。
「待っていろ、絶対作りあげて乗ってやる…!」
そんなことを考えながら七瀬は目を閉じるのだった。
「それとラファールはもう少しこのままの状態で頼みます」
「……何故だい?」
「壊れたフレームの露出した機体の姿を写真に納めておきたいのです」
「僕はとんでもない奴に機体を使わせてしまったかもしれないな……」
ここから彼は狂い出す。
夢というたったひとつの幻想を手にするために。
まだ学園には入学しませんね。文で誤字脱字があればご報告いただけると嬉しいです。
今回もありがとうございました!