私は見られる方? それとも観る方?
夜は嫌いだ。
昼間の雑踏が嘘みたいに静まり返るあの夜が嫌い。どんな楽しいことがあった日でも、変わらずにやってくる冷たいあの夜が嫌い。何もかもを連れ去ってしまうかのように訪れるあの夜が嫌い。青を塗り潰して、夕暮のグラデーションを描きながらだんだんと黒に染めていくあの夜が嫌い。
嫌い、嫌い、嫌い。
あの、嫌でも一人を感じる夜が、私は孤独だって、何にもない暗闇に語りかけられてるようで。
本当はそんなはずはないのに。
喧騒を取り払って静寂をもたらす夜は、とても安らぐもののはずなのに。
それでも、私にとっては恐怖そのもの。
だって、あなたに会えないから。
だから嫌いで、怖くて、こわいもの。
でも。怖くないって、最近は思えるようになったんだよ。プロデューサー。
あなたの声が聞こえるんだよ。頭の中を回ってる。孤独をかき消す。恐怖が安らぐ。あなたの表情を、形を、声を思い出して自然と笑顔になれる。
夜は嫌いだ。でもそれ以上に、明日のあなたを想う気持ちの方が強いから。
嫌いでも、イヤではないんだよ。好きじゃなくても、早く終わって欲しいと思っていても。
この、あなたへの想いが育っていくのを感じる。あなたに会いたいと、心が躍るのを感じるから、夜は……。
――アンドロメダは地球から何光年も離れた遠い遠い銀河にあるらしいよ。……まるで私とプロデューサーみたいだよね。
そう言ったら、あなたは不思議そうな顔をしてたよね。「どう言うこと?」とも言ってたよね。
だって、考えてみてよ。地球からアンドロメダが見えるなら、アンドロメダから地球も見えるはずだよね。なのに、お互いに見えてるはずなのに、その距離は途方も無さすぎて、届かないんだよ。
手を伸ばせば触れられるのに、抱きしめようと思えば抱きしめられるのに、出来ないんだよ。
だって、あなたはプロデューサーだから。私を十二時の向こう側まで導いてくれる魔法使いだから。
私はアイドルになれて幸せ。
毎日が輝いていて、同じ景色を夢見る仲間がいて、そんな私たちを見てくれるファンがいる。
全部私が、アイドルとして掴んだもの。でも、そのきっかけはプロデューサー、あなたがくれたものだった。
“ただの”女子高生だった私を見つけて、ここまで辿り着かせてくれたのは、他ならぬあなただった。……そしてこれからも。途方もなく長い道を、きっとあなたは共に歩いてくれる。
でも、あなたはアンドロメダだ。もしくは地球。そして私はそのどちらか。分かっていることは、私たちは互いに姿を見合うことしか出来ないってこと。
……やっぱり、夜は嫌いだ。
窓の隙間の夜空に星が輝いている。私はアンドロメダを思い出す。
プロデューサー。私は夜が嫌いなんだ。
そっちはどう? 好き? 嫌い?
そしたらあなたは何て言うだろう。いつもみたいに洒落た答えを返してくれるかな。もしくは、どこか気取ってクサいポエムを読んでくれるのかな。
なんにしたって、愛おしい。今すぐプロデューサーの身体に顔をうずめたくなる。いつかそんなことを、なんの気兼ねもなくできる日は来るのかな。
私の嫌いな夜は、私が心の奥の想いに悶えている間に寿命を減らしていく。それでもまだまだ夜は長い。今彼は何をしているのかな。事務所で残業でもしているのかな。私たちのプロデュースを、寝る間も惜しんでしてくれているのだろうか。それとももう家のベッドで寝ているのかな。
そんなことを考えるだけで、胸の奥が熱くなる。秘めた想いがむせ返る。あぁ、今すぐにでも彼を―――。
いや、それはダメだって、自分に言い聞かせて留める。
わかっている。
私の、この想いは秘めておく。いつか伝えると誓って、今は秘める。こうして、昼は抑える。彼への想いを秘めながら、彼のことを思い続ける。
だから、こんな一人の夜くらい、悶えさせてくれてもいいでしょ。
ねぇ、プロデューサー。
いつか、直接伝えるつもりだけど。
愛してるよ、心から。
アイドルとして頂点に立つまでは隠すけど、その後はもう遠慮する気は無いっていうしぶりん。