私の中でオリエンタルマンは宮廷のお抱え舞踊家です。
「あなたに神のお告げがありますように」
その言葉と共に客がチップを差し出し、丁寧に受け取った。小さな袋の中に明日の食料が買えるだけのチップやコインが詰められている。
燃えるような赤い髪を持つクリスティーナは神託という意味のオラクルという名前でカードを使った占いを生業としている。
各国を渡り歩き閉鎖的な暮らしをするジプシーの民族性から差別と迫害に苦しんでおり、家族も失った。
一人になりアメリカでの定住を決めたが、彼女にとって息苦しい生活に変わりはない。
自分がジプシーである事を隠していてもインチキ占い師と野次を飛ばされたり、アメリカには異質な赤い髪を見て悪魔だ魔女だと囁かれる。
「神よ、全ての民を……私を正しい道へお導き下さい」
クリスティーナは太陽を信仰する事で心の平穏とジプシーとしての誇りを保っていた。
自宅に続く裏路地の壁に並ぶ貼り紙。一枚を手に取ってもP.Tバーナムという名前は聞いた事がない。
博物館のスターを募集するチラシを見ても何が目的なのか全く分からないが年齢や性別、経歴を問わずユニークな人を求めている。
「光の下で踊りたい、ここに行けば出来るかもしれない」
お祭りで民衆に混じって音楽と共に踊るのは占いと同じ位好きだった。
次の日、大勢の人で賑わうバーナム博物館でクリスティーナが順番を待っていると後ろから声を掛けられる。
「帽子、暑くない?」
嘲笑の声を聞いたら迷いが出てしまうかもしれないと思い珍しく帽子をかぶってここに来た。
振り返った先の男も自分と同じユニークな人なんだろう。本当の姿を見せるのに躊躇いはなかった。
「ありがとう、暑さも忘れる位緊張していたみたい。部屋の中で帽子なんて変よね」
「綺麗だ、君の髪」
まるで熟れた林檎みたい。と彼は続けた。自分を気遣い、赤い髪をそんな風に例える声を初めて聞いた。
「僕はミンホ、東の国から来たんだ」
「私はクリスティーナ、ジプシーよ」
それなら外の世界を沢山知っているんだろう?僕は故郷を出るのが初めてなんだと興奮気味に話すミンホ。次の人、と博物館の責任者らしき男がクリスティーナを呼んだ。
「順番が来たみたい」
「また後で話そう、クリスティーナ」
面接を終えてからミンホの事が気になって視線も嘲笑も感じなかった。
「待たせてごめん、採用されたよ。僕は東洋の男オリエンタルマンさ」
「私はオラクルジプシー、もう隠したりしないわ」
改めてよろしくと握手を交わすと、地球が太陽に引かれるようにクリスティーナもミンホに惹かれ始めていた。