月が揺蕩う復活譚   作:マスター冬雪(ぬんぬん)

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6ヶ月目の話。
ツナとの交流の詳細と、ミカさんから見たツナ。


第11話

 

沢田綱吉はランドセルを背負いながらとある場所に急ぐ。転けないよう、ほんの少し速度を落としながら。

ほんの少しだけの寄り道。真っ直ぐ家に帰るように先生に言われたから、ほんの少しだけだ。

この時間のこの場所……並盛公園はあまり人がいない。もう少ししたらクラスメイトや同学年といった人が集まるが、早々に学校を出た綱吉の目には、待ち人以外の人影は見当たらなかった。

 

「マサおにいさん!」

「おお。来たか、ツナ」

 

 

八朔政宗。

 

艶やかな黒髪と穏やかに細められた目。黒縁メガネを掛けた、麗しい顔立ちをした美青年である。今日は特別寒いからか、首元にマフラーを巻いていた。

ベンチに腰掛け、手には本が握られている。

 

「何の本を読んでるの?」

「【武と舞は通ずる】、という本だ」

 

綱吉は慣れたように政宗の隣にランドセルを置くと、自身もそこに腰掛ける。

 

 

 

政宗とは4月頃に出会った。綱吉が体育のドッヂボールで失敗した所為で負けたのだと公園で転ばされ、痛みと悔しさに泣いていた時だ。

 

「少年、そう目を擦っては腫れてしまうぞ」

 

そう言って怪我の応急処置をして頭を撫でてくれたのだ。

怪我を覆ったハンカチを母に洗ってもらい、それを手にうろうろと町を歩いて、出会った時の公園に訪れた。

 

その時ベンチで、今のように本を開いた政宗がいた。

 

「ん?ああ、ツナか。怪我は大丈夫そうだな。……どうした?」

「あ、あの!これ……」

「おお。態々返しに来てくれたのか。ありがとうな」

 

それから、彼らの小さな交流が始まった。

 

 

 

毎週火曜、木曜。

政宗は雨の日以外、決まってそこにいた。

 

「ねえ、マサおにいさんってムショクなの?」

「まさか。ちゃんと働いているとも」

「ええー?だっていっつも此処にいるじゃん」

「俺の仕事は、平日は大体夕方の6時頃からだからな」

 

綱吉と話す時は政宗は本を必ず閉じる。そして綱吉の目を真っ直ぐ見つめて、話をしてくれるのだ。

綱吉は足をぶらぶらと揺らして、今日あった出来事を話すのだ。

 

「べんきょーなんかさ、大人になって役に立つの?算数とかさ。英語だって、日本にいれば関係ないじゃん」

「便利だぞ?算数があれば買い物に行った時、予め計算すれば余った金で菓子が買える。英語があれば外国人に道を教えてやれる」

「……そーいうもの?」

「学んだ事は決して裏切らんぞ」

 

でも分かんないんだもん。綱吉は頬を膨らませる。

簡単な問題が解けなくて赤っ恥を掻いたばかりなのだ。

宥めるように頭を撫でる政宗は少し考えた様子で口を開いた。

 

「What is your today's dinner?」

「えっ?」

「My dinner is planned for boiled fish.」

 

突然の流麗な英会話に綱吉は目を白黒させている。

 

「英語は暗号だ」

「……暗号?」

「うむ。分かれば秘密の会話が出来るぞ」

「秘密の会話……」

 

確かに、ここまで上手くなれば、同級生や、もしかしたら先生にも聞き取れないかもしれない。

 

「まあ、そうだな。色々挑戦してみる事は良い事だぞ。諦める事はすぐに出来る事だ、もう少しやってみないか?」

「……うん」

 

綱吉は少し俯きながら頷く。

 

「……それで、さっきはなんて言ったの?」

「うむ。……お前の今日の夕餉はなんだ?」

「えっ」

「俺は煮魚にする予定だ」

「マサおにいさん。……おじいちゃんみたい」

「はっはっは!俺はじじいだからな」

 

くっきーをやろう。夕餉の後にでも食べるといい。

からからと笑いながら、政宗は隣の鞄から小さな袋を取り出して渡す。

 

「母君には内緒だぞ?」

「わかった!」

 

政宗が口の前で人差し指を立てて言う。

綱吉も同じように指を立てて笑った。

そしてはっとしたように綱吉は視線を逸らす。

 

「おれ、あと半年で6年生だよ?子供扱いしないで」

「おや」

 

政宗はもうそんなになるか、と目を細め、やはり顔を綻ばせた。

 

「だが、なんだ。俺がしたい事だからなぁ。ツナには今暫し付き合ってもらいたいのだが」

「……しょうがないなぁ」

 

綱吉は嬉しそうに微笑む。

大人は自分を叱ってばかりだ。だから、何をしても怒らない政宗のような甘えていい存在は、母親以外に初めてだった。

父親は世界中で交通整理をしていて、滅多に帰って来ないから。

まるで、本当の兄のように思っていた。

 

「ねえマサおにいさん、今度ウチに来てよ!」

「んー、そうだな……まあ、いつかな」

「いっつもそれじゃん!」

「ははは、すまんな。俺は何かと多忙なのだ。落ち着いたら、また誘って欲しい」

「絶対だから!約束!」

「ああ、約束だ」

 

小指を繋ぎ、指切りげんまんを歌う。

 

「指切り、かねきり、高野の表で血吐いて来年腐って又腐れ。指切り拳万嘘吐いたら針千本飲ます。指切った」

 

「え、何それ?!」

「うん?指切りとはこの唄ではなかったか?」

「違うよ?!」

 

なんか恐ろしい事言った気がする────?!

綱吉は白目でツッコミ。

 

「最後の指切りげんまんのところからだよ?!」

「そうか……。まあどちらにしろ、約束を破れば拳で万殴られ、針を千本呑まねばならんが」

「……おれ、もう指切りげんまんしない」

「では、普通に指切った、で」

「うん」

 

くすくすと口元に手をやって笑った政宗と綱吉は、改めて小指を繋ぐ。

 

「「指切った」」

 

 

 

「ツナ、そろそろ帰らねばならんのではないか?」

 

公園の遊具、ジャングルジムの上で、政宗は隣のツナに話し掛ける。

太陽は沈みかけ、町と彼らの顔を赤く染めていた。

 

「えー?もうちょっと……」

「だがなぁ、もう9月だ。直ぐに日が暮れる」

 

また来週、此処にいるから。政宗の言葉に渋々頷いた綱吉はそっとジムから降りる。政宗も同じように、少し高めの位置から飛び降りて手を払った。

 

「また来週、だ」

「うん!」

 

 

 

綱吉にとって八朔政宗は兄のようで。

 

先生や母親には相談出来ない事もいつの間にか言葉に出来て。

 

少し突拍子がなくて、天然で。

 

確かに心を許せる、秘密の友達だ。

 

 

 

 

「すまんな、ツナ」

 

八朔政宗────否、三日月宗近は少し目を伏せて笑い、マフラーを鼻まで引き上げる。

 

彼もまた、綱吉を友と思っていた。弟のようだと思っていた。

 

だが、彼は綱吉とは違い大人であり、人斬りの刀。

出来れば斬りたくはない相手だが、それを決めるのは、彼ではない。

 

「俺はお前を斬れるぞ」

 

刃物のような鈍色の光を目に宿し、主へ忠する一振の刃。

 

「……お前と会ったのが、あの紅き斜陽よりも先であったら……俺はお前に、」

 

いや、と。三日月は首を振る。

たられば等、2人に対して礼を失している。

 

「温かい、抱擁するような広き青空。澄んだ朝霞。黎明。……蒼き暁天(ぎょうてん)よ」

 

実を言えば、俺は少し楽しみなのだ、と。

一振の人斬りは、似合わぬ優しい笑みを浮かべる。

 

「紅きに染まるか、蒼に包まれるか。……なんて、な」

 

 

「独眼竜先せーい!」

 

三日月は背後からの声に目を向ける。

 

「剣介か」

「うっす!今日も宜しくお願いします!」

「うむ。……そういえば剣介は来年中学生だったか」

「あ、はい。中学からは道場じゃなくて部活の方の剣道部に入るつもりですけど、」

 

正直政宗先生に教わった方が強くなれる気がするんだよなぁ、と竹刀袋を背負った少年は溜息を吐く。

 

「ははは、先生冥利に尽きるな。だが、まあ……異なる環境で見識を広めるのも剣士には必要だぞ」

 

まだ基礎も甘いが、と嘯けば剣介は顔を苦く歪ませる。

 

「ンな事言ってさ、今の先生自身も未熟っつーんだろ?」

「未熟だな」

「ドきっぱり言うなよ……。そしたらオレはいつ一人前になれんだって話」

「さてなぁ、剣の道に終わりはないぞ?」

「先生、マジで剣士の鑑だわ……」

「はっはっは。……ほら、そろそろ行かねば遅れるぞ」

 

擦れ違いざまに背中を叩くと、八朔政宗は笑いながら道を歩いていく。

 

「どうせなら一緒に行こーぜ先生!」

「ああ」

 

 

 

 

 

「む?おお、オッタビオ殿か。久方振りだな」

《三日月さんですか?!》

 

びっくりしたような声音に三日月は無意識に微笑んだ。

 

「ああ。月イチの報告をな」

《潜入任務……でしたね。驚きましたよ、いつの間にかイタリアを発たれていたんですから》

「はは、すまん。心配を掛けた。極秘の上急に決まったものでな、挨拶も出来んかった」

《いえ……無事なようで安心しました》

「それで、報告がしたいのだが……伝えてくれるか?」

《私で宜しければ》

「まあ、何という事はない。異常無しとだけ。緊急性のある事件事故等は起こっていない」

《了解しました。スクアーロに伝えておきますね》

「うむ。……任務に期限は無いのでな、終わり次第また会おう」

《ええ。ご武運を》

 

 

 

電話を切った三日月は目を伏せる。

 

「……オッタビオ殿よ。お主の歩みは、もう先の方にまで行ってしまったのか」

 

鉄色に固まった声音に、三日月はつい、言葉を零してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

観察記録・其ノ陸

 

監視対象に異常無し。目覚めの兆しは見えず。何処か歯止めが掛かっているようにも見受けられる。深く調査すれば護衛に感づかれる可能性がある為、現在は凍結。本隊の指示を仰ぐ。

トマゾファミリーに関して、現地協力者と共に潜入を決定、翌月に実行する。支給品は不要、深入りしないよう、情報を秘する事を優先し、状況を開始する。

報告は以上、翌月に遂行結果を添付する。

 

 

 

 




という訳で次はトマゾFaに潜入します。

だって思うんですよ、2代目(憤怒の炎持ち)と争ってたんですよ?
強くない筈がなくない?あのザンザスが憧れてる人と戦ってたんだよ?
調べない筈がなくない?


という訳でアニリボで見事にZAPPされてたトマゾFaを出します。
サブキャラのがメインキャラよりたくさん出てない?って思うやろ?
本編で天下無双に出て来なくなるからな


ですので短め。
かなり伏線広げたけど皆分かったかな、


ミカさんに舞わせたい人生だった
突撃隣のツナ缶家
独眼竜先生(人斬り)に教わりたい中学生


三本立てでお送りいたします(予定は予告無く変更される場合があります)
次回もまた見てくださいね!

ジャンケンポン!ウフフフフフフフ
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