月が揺蕩う復活譚   作:マスター冬雪(ぬんぬん)

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十二月末日。という事で今までの総集編もどき。
除夜の鐘を聞きながらこれまでを少しだけ振り返るミカさん。
かなり短め。

9ヶ月目の話。


第14話

マフラーに手袋、白い息を吐きながら、手に持ったビニール袋を揺らして空を見上げる。

どうやら、明日は晴れるそうだ。

12月末。

日本に訪れてから9ヶ月が経過しようとしていた。

 

 

 

 

 

ビニール袋の中身は出汁と、油揚げ。蒲鉾。それと蕎麦の麺。

やはり年越しには蕎麦がなければな。

 

皆はあったかい蕎麦の時は米を食べるか?俺はおにぎり2つと漬物だな。少し苦めに淹れた緑茶があるとなお良し。

ん?酒?まあ、あったら嬉しいな。

 

買ってきた材料を冷蔵庫に仕舞い、ゆったりと炬燵に入る。

衣服はヒートテックに作務衣。その上に袢纏だ。今日ばかりは許してもらおう。手元には黄色いバンダナが綺麗に畳まれて置いてある。

 

実はルッス嬢に捨てられる寸前で死守したのだ。インナーと股引は没収されてしまったが。

やはり思い出だからな……捨てられんのだ。

まあ、縋るという訳では無いが。

 

「しかしそれにしても、うむ。……炬燵、侮れんな」

 

寝転んで良し、座って良し。頬を天板にくっつけて堪能する。

 

「……、……出られん」

 

まあ、良いな。うむ。まだ蕎麦の準備は早い。

 

 

 

大掃除も終わり、年賀状も出し、後は年を越すのを待つのみ。

今日ばかりは、自宅で過ごしているらしいツナとその母君の監視は、早めに切り上げた。というかツナにはもう会った。今夜はどうしたのか護衛が厚くてな。俺が手を出すまでもない様相だったのだ。

……道場も休みだしな。

 

 

「今年ももう終わりか」

 

ボス殿。我が主よ。

呼べば飛んでゆくものを、お主は声すら出せぬ場所にいるのか。

 

ボス殿は未だ見つからず。もう6年だ、正直もう殆ど諦めている者も多いだろう。此処まで行方が掴めぬとは、となれば何かしらの手掛かりは……ボンゴレ本部にしかあるまいな。

ヴァリアーはボス殿がいなくなってから、現状に瞬く間に順応した。しかし俺達は新たにボスを迎える事は良しとしなんだ。

俺達のボスはザンザス只1人なのだから、と。

頭が固いと言うなかれ、これは意地だ。

 

……それはボンゴレ本部としても好都合やもしれんが。頭がいない集団は御しやすいのは明白。

……それを是とするものは誰一人おらんのだがな。俺達は今は只管に息を潜めるだけだ。

 

 

 

思えば、俺がこの世界に渡って6年と少しが経過したという事だ。そう考えると少し感慨深い。

スク殿と出会い、皆と出会い。紅き斜陽、我らがボスに忠誠を誓い。大規模なクーデターを起こし、ボス殿が失踪。

長きに渡る屈辱を耐え忍ぶ日々が続き。

 

気付けば世界は異なるが、祖国である日ノ本にてトリプルフェイスか。

 

「……濃いな」

 

蜜柑の皮を剥いて実を口に入れる。

 

独立暗殺部隊ヴァリアー幹部候補、三日月宗近。

並盛道場剣術指導アルバイター、八朔政宗。

桃巨会特別外部相談役、プルトーネ。

 

どうしてこうなったのだろうな?不思議だ。

俺が好きなようにしたからか。はっはっは。耳が痛い。

 

好きなように剣を振り、好きなように人と触れ合い、好きなように食べ物を食べ、好きなように生きる。

これ程贅沢で、これ程幸せな事はないだろう。

 

「……」

 

去年まではヴァリアーの皆で年越しをしたのだが、そうか、今年は1人か。

ルッス嬢が御馳走を作って。

ベル殿がそれを摘み食いして。

レヴィ殿が来年こそはと涙ぐみながら決意し。

スク殿が煩いとレヴィ殿を叩き伏せ。

マーモン殿がやってられないと言いながらも少し離れた場所でファンタズマを愛でる。

その様子を苦笑して見守るオッタビオ殿。

 

脳裏に浮かぶそれにくすりと笑い、窓の外を見上げる。

 

「こうして静かに今までを振り返るのも粋か」

 

寂しいと、少し、思わなくもないが。この情緒すら人の身故と思えば、愛おしくなるというものよな。

まったりとテレビの年末特番を眺めつつ、そろそろ蕎麦を用意するかと炬燵から出る。……出るまで10分の死闘があったが割愛だ。手強い相手だった……。

ぶるりと外気に身を震わせつつ。頭にバンダナを着けて、袢纏を脱いで腕を捲る。

 

こうして自分の手で料理を作っていると、あの頃を思い出す。

我が朋友は目を離すと砂糖と塩を間違えるなんてベターな事を仕出かすのだ。そして出来た料理を別の者に味見させるという。暫くすればそれも直ったが。

 

「……間違えてはおらんよな?」

 

肉団子を作りながらぽつり。

 

 

 

《今年も残すところあと30分と──────》

 

もくもくと自身で作った蕎麦を食べながら、最近の歌を聞く。

調味料を間違えたという事はなく、無事に蕎麦は出来上がった。色々な場所で飲食した御蔭か、俺の舌も肥えたらしい。そこそこ美味いものが出来たとは思う。

 

レヴィ殿ではないが、来年こそはボスを迎えられればと思う。自ら潜入して探す事が出来ないのは些か口惜しいが。……ヴァリアー隊員が本部へ入り込める筈もないか……。

もどかしいのは変わらんが。

 

ごぉーん……

 

「む、」

 

外から重深い鐘の音が聞こえ、ふと顔を上げた。

除夜の鐘だ。

 

「この音を聞くと尚更、今年が終わるのだと実感するな」

 

108つの鐘の音は煩悩を打ち払う。

……ヴァリアーの皆が聞いてもしぶとく残りそうな気がしなくもないな。

 

来年は来年で、また忙しくなりそうだ。

監視の任を初め、剣術の研鑽、【先生】としての働きかけ、嗚呼……雲雀恭弥との再戦もあったな。来年は了平や剣介も中学に上がり、道場に通う事もなくなるだろう。確か了平は何とか、妹さんを説き伏せたようだからな。桃巨会の奴らやトマゾのボスとの関わりも多くなる筈だ。

 

目まぐるしく、環境が変わって。

そして人は順応し、前に進んでいく。

 

俺は人の営みを見つめながら、時にその命を摘むだろう。

 

人は俺達刀の担い手ではあるが、今、俺の主はただ一人。

幾年、幾千年と待ってみせよう。

それが俺の忠義。

 

 

 

《3、2、1!……あけましておめでとうございますっ!!》

 

「ああ、あけましておめでとう。……今年も頼むぞ、我が朋友」

 

壁に立て掛けた月の柄の描かれた鞘が、僅かに輝いた気がした。

 

 

 

 

「む?」

 

携帯電話にメールの着信があったらしい。

件数は3。

1つは師範代。新年の挨拶だ。……絵文字多いな。

1つは剣介。どうやら友達と集まっているらしいな。飲み食い騒ぎをしている動画が添付されていた。

1つは……ルッス嬢か。

 

《そちらではもう新年ね!一緒にお祝いできないのは寂しいわ。

 

こちらは相変わらずの年越しになりそうよ。ベルちゃんったらまた厨房に入り込んでつまみ食いしていくのよ?今年はマモちゃんも協力させて!どうしてそう本気を出すのかしらね?!

 

今年もレヴィが飲み過ぎないように見張らなくっちゃね……あの子お酒が入ると服を全部脱いじゃうものね。

 

……ところであの将来有望な子は今どうなってるの?すっごく気になるから早いところ伝えてちょうだい?待ってるわ♪》

 

「相変わらずだなぁ」

 

のんびりとそう口にして、早速返信しようと携帯端末に指を走らせるのだった。

 

 

 

 

 

観察記録・其ノ玖

 

監視対象に異常無し。

現地にて本隊の命令通り怪しまれないように治安の維持を開始。ある程度鎮火。

早急に表社会の秩序を確立すべき。

報告は以上、監視を継続する。

 

 

 




評価バーが赤くなってる……?!?!ヒェッ(戦慄)
あああああありがとうございますううううう!!
き、今日もうひとつ投下するから短くても許して(自分で自分を追い詰めるスタイル)(二言はない)


携帯端末(文明の利器)をすらすら使うミカさん
ヴァリアークオリティ


あああ泣きそう……ありがとう……ありがとう……
皆ミカさんとリボーンが好きなんだね……私もずっとファンです

早いとこ原作入りさせたいです(遠い目)
どれだけ話数が多くなるか見ものですねぇ(ゲス顔)

急いで書いてくるので一先ずここらで失礼しますね!(大慌て)
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