月が揺蕩う復活譚   作:マスター冬雪(ぬんぬん)

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剣道のルールも必勝法もわからんとです。(捏造モリモリ)
最早モドキ。

16ヶ月目の話。


第21話

 

 

「特別顧問?」

 

目の前には深く頭を下げて頼み込む剣介の姿が。

 

「はいっす。オレ、並中の剣道部に入ってるんですけど、あと2ヶ月くらいしたら大会があるんですよね」

 

一旦顔を上げた剣介。

彼は中学に上がると同時に道場を辞め、中学で仲間と共に剣を研鑽していた。その為俺が彼と会うのは約3ヶ月振りになる。

 

「自慢じゃないすけど、オレ剣道部で1番強いんすよ。来年度には主将になるくらいには」

「ほう」

「……オレから見たら、なんつーか……戦力にバラつきがあるっていうか。要は団体戦がヤバいんです」

 

個人は個人だから、本人の努力次第だ。でも、オレも出る団体戦でそんなんじゃ、悔しくても悔やみきれねーっす。1回戦落ちとかマジで嫌だ。

剣を志す身としては、やはり勝ちたいと剣介は言う。

 

「折角でかい大会に出るんだからさ、最初の1年だからって無駄にしたくねーんだ」

 

ダメかなー、と頬を掻いて苦笑する剣介。

そこに顔を出したのは、額の汗を拭う師範代だった。

 

「いいんじゃない?」

「……しかしその間道場を空ける事になるが、」

「いいよいいよ。夏の間くらいは僕でなんとかなるし」

 

マサくんが先生になった時の為の予行練習だって。

こっそり耳元で告げられた言葉に、俺は眉根を下げた。

師範には事前に教員の勉強をしている事を伝えてある。もしかしたら1年後には道場を辞めているかもしれない、と。勿論暇が出来れば顔を出す予定ではあるが。

人の良い師範は自分の事のように喜んだ。それって引き抜きじゃないか!絶対に引き受けなよ!、と。……いつか恩返しせねばなぁ。

 

「わかった。師範がそう言うなら……剣介、2ヶ月でどうにかなるとは言えんが、良いのだな?」

「!うっす!大丈夫っす。ありがとうございます!!」

 

うっしゃあ!打ち合いの相手確保ー!!

ガッツポーズして天を仰ぐ剣介。……剣介、もしやそれが本当の理由か?

 

「や、だってさ……オレと打ち合えるの、先輩しかいないんだわ。大会近付くとオレと打ってくれ、なんて言えねーし……だからといってオレも妥協したくねーし……」

 

勿論先輩達の参考になればなーとは思ってるけど。

バツの悪そうな顔で視線を逸らす剣介に、俺はひとつ微笑して頭に手を置いた。

 

「それならば初めからそう言え。真剣に取り組む者を無碍にはせん」

「!……へへ、はーい」

 

 

 

 

 

という訳で剣道部顧問の先生と連絡を交わし、7月の頭より放課後から剣道場にて稽古をする事となった。首に関係者のネームカードを、背中に竹刀袋、腕に道着の入った袋を下げて、俺は並盛中学校に立ち入った。

周辺に学ランとリーゼントの少年らが多々見られる中、未だホームルーム途中である為に人通りのない廊下を横切り、職員室を覗く。

 

「失礼する。佐々木先生はいらっしゃるか?」

 

開きっぱなしの扉から声を掛けると、側の机に座っていた女性職員がふと顔を上げた。

 

「佐々木先生は今担当クラスの、ホームルーム、で、……」

「そうか……やはり少し早く来過ぎたようだな」

 

俯いた所為で下がった眼鏡を押し上げ、腕を組む。

 

「すまぬが、待たせてもらって良いか」

「はっ!はいッ!是非ともどうぞッ?!」

 

少し顔の赤い彼女に礼を言って、邪魔にならないよう脇に立つ。

 

「あっ、こ、此処に座ってください!お茶持ってきますね!!」

「ああ、すまぬな。ありがたく頂こう」

 

見て回りたいところだが、10分程で来るとの事だ、大人しく待っていなければ。もしかすれば此処に勤める事になるかもしれんのだから、見て回るのはその時でいいだろう。

来客用らしきソファーに座り、氷の入った緑茶に口を付ける。

 

「俺の顔に何か付いているか?」

「ひょえっ?!」

「はっはっは。……いや、すまん。熱心に見るものでな、思わずからかってしまった。……大丈夫か?顔が赤いぞ」

「だ、大丈夫です……!」

 

 

 

10分弱でやって来た佐々木という剣道部顧問と共に剣道場へ歩く。

 

「まさか持田から聞いた特別顧問が、貴方みたいなお若い方とは思いませんでした」

 

しかもイケメンだし、と若干嫉妬を垣間見せる佐々木先生。大体40代だろうか?独身らしい。

 

「まだまだ若輩者故、物を教えるには至らぬやも知れません。ですから、この道長いであろう先達である貴方を、是非とも頼りにさせて頂きたい」

「あ、ああ!勿論ですよ」

 

ふと、その小さいながら大きな背を見て、一言。

 

「……真の男は背中で語るもの。酸いも甘いも噛み締めただろう先生が、俺はとても格好良いと思いますよ」

「!!八朔くん……!」

 

紛れもない本音である。

先生とは聖職だ。俺のようなアルバイターの先生もどきとは比べ物にならん筈だ。

人一倍苦労もしているだろう、素直に尊敬出来るのでな。

 

 

 

「あっ!待ってたぜ政宗先生!」

 

道場を覗けば既にストレッチを終えた剣介を筆頭に、部員達が竹刀を振っていた。

 

「励んでおるか、剣介」

「勿論すよ!先生、早く稽古しようぜ!」

「まあ、待て。着替えてくるからな」

「紹介もあるからな、八朔くんの準備が出来たら一旦集まれよー」

 

どうやら部の雰囲気は悪くなさそうだ。その中でもやる気が突出しているのはやはり剣介で、今年が最後だという先輩並に張り切っている。

黒いベストと群青のシャツを脱ぎ、袴に腕を通す。

手には自分の竹刀を、ゆったりとロッカー室から出た。

 

「おい剣介!あの人誰だよ!」

「小学校の時通ってた道場の先生」

「めちゃくちゃイケメンじゃねーか!」

「本当に強いのか?」

「オレじゃ相手にならねーくらいには、マジでつえーよ」

「イケメンの上に強いとか……けっ、これだから勝ち組は」

「死ぬ気で努力してから言えや浜田ァ!」

「てめぇにも言ってんだよ持田ァァッ!!」

 

何やら剣介が詰め寄られているな。どこか得意げなのは目の錯覚ではないだろう。

 

「着替えたぞ」

「よっし、じゃあ全員集合〜」

 

 

 

軽く自己紹介をして、取り敢えず先ずは現状の訓練方法と実力を見る事になった。

まだ中学生、ブレも歪みも多々あるが、中々様になっている。

 

「……気が緩んでおるぞ〜?」

「っ気ィ緩む声出さないでください……!」

「修練が足りんな、素振り追加20。……右腕の位置に気を掛けろ。足が出過ぎだ、半歩引け。丁寧にやれよ〜」

「うげ、」

 

容赦なく剣介に小声で物申す。

他の者はどうにも俺に懐疑的故な、まだ指導はしない。

こうでもしないと俺も剣を振りたくなるのだ。すまぬな剣介。

 

素振りの次は3人1組攻守入れ替えの追い込み稽古になる。これは足さばきを鍛える稽古にあたる。

声を挙げながら面や小手面の連続打ち。これがまたしんどいのだ。何せ相手は全速力で下がる。掛かる側は粘り強く追い込まなければならない。道場の端まで相手が下がり切れば掛かる側がしっかりと面を打ち込む。これの繰り返しだ。

 

3年の先輩ともなれば、かなり足さばきが良い。勢いと気勢が段違いだ。

 

「ヤァァ!!メェェンッ!!」

 

竹刀が強かに面を打ち据える良い音がする。

 

「八朔くん、手が、」

「……、あなや」

 

片手が竹刀をしっかり握っていた。

 

「……後で誰かと打ちます?」

「……面目ない、よろしくお願いします」

 

うむ。苦笑いされてしまったな。

 

 

 

「オレ!オレが相手します!」

 

推薦したのオレなんだから、そう!試金石ってやつっすよ!!

佐々木先生が言った途端剣介がぐいぐい迫ってくる。

 

「おいおい、そこは主将か副主将だろ」

「別にいいんじゃね?あ、オレ2番目な」

「じゃあ僕3番目で」

「主将も副主将も案外乗り気なのな?!」

 

……さて、防具を着けるのも久しいか。まあ、最初はな。見本としては忠実に在ろう。

 

「?政宗先生面付けんの?」

「おう。剣介がどれだけ成長したか分からんしな」

「っ……、ぜってー1本取るから正解かもしんねーな!」

 

頬を緩ませるにはまだ早いぞ。構えを取って中段に剣を置く。

ぴりりとした空気に剣介が武者震いした。

 

「はじめ!」

「ッラアアァァァ!!」

 

裂帛。電光石火と踏み込んだ剣介は、大上段から本気の振り下ろしを俺に見舞う。

狙いは……袈裟懸け、胴か。

鋭い、針で突くような一閃だ。

笑みを深める。……成程、日々の鍛錬は欠かさず行っていたようだ。

 

「だが……まだ甘い……ッ!」

 

敢えて死地へ。身体を屈めて剣閃の下に潜り込んだと同時に横から絡め取るように剣先で竹刀を掬い上げる。

 

「っっ……!?」

「面ッッ!!」

 

パァァアアン!!

 

打ち上げられて尚剣から手を離さない剣介に成長を認めつつ。そのまま流れるように振り下ろして、唐竹割りに面を討ち取った。

ひたり、竹刀を最初と同じく中段に構えて残心。

 

「あ、赤……」

「ありがとうございました」

「ぐ……ありがとう、ございました」

 

納刀、礼。小手を外して防具の上から剣介の頭を荒く撫でた。

 

「うっ、ちょ……先生ぇ?!」

「良い剣だった」

「っ、うっす。……でも、一瞬でした」

「思い切りの良い所は認めるが、格上には少し速さが足りんな」

 

竹刀を脇に持ち、軽く叩く。

 

「……」

「他の技を鍛えよとは言わん。お前はその技を極めろ。お前ならば上まで行ける」

「ッ、はい!」

 

あと剣介は調子に乗ると基礎がトぶからな。感情的になるのは打ち込む瞬間だけだと言っておいたが、まあ剣介らしいというか。性格は典型的な先鋒(一番槍)、実力はあるのだから少し耐えれば良いのになぁ。それも修行か。

 

「さて、次は誰が相手してくれるのだ?」

 

途端、剣道部員達の間で興奮混じりのざわめきが湧き上がった。

 

 

 

「脇が甘いな」

「ッハァァ!!」

「脚が遅れている」

「っぐ、ラァッ!!」

「そら、意識が左手から離れたぞ」

 

バシィィン!!

跳ね飛ばされた竹刀。

敢えて斬撃を躱し、流し、受け続けた。

彼は自身の勢いに振り回され、徒に体力を消耗してしまったのだ。

 

「全ての一撃に渾身を込めては、長期戦になった時にバテるぞ。体力を付けるか、立ち回りに工夫を凝らせよ」

「た、立ち回り……っすか?」

「今度は俺が追込みを掛けるぞ」

 

中段に構えると少年はぎしりと身体を強ばらせる。先程の剣介、続く主将、副主将を討ち取った剣を思い出したのだろう。

それに反し、俺が面に振り下ろす竹刀の速さはお世辞にも速いとは言えない。それに軽くほっとしたようで、その竹刀を受けて素早く下がる。

次に胴へ袈裟懸け。それも悠々と防いだ少年はその竹刀の衝撃の軽さに首を傾げ、更に下がる。

 

「次だ」

 

強弱に加え、俺は竹刀を振る速さにも緩急を付け始める。

ほんの少し遅く、逆に早く、しかし弱く。次いで更に遅いひと太刀は重く打ち据える。

此処で少年の受けの姿勢にズレが生じた。

 

「う……っ、」

「最後」

 

眉を寄せたような雰囲気にくすりと笑い、俺は1歩、また1歩と踏み込んでいく。

剣に集中するも距離を詰められ、下がるにも拍子を狂わされた剣戟に追い込まれていくのだ。

 

「え、うあ、ちょ……まっ、」

「胴」

「あだっ?!」

 

スパン!

綺麗に隙が出来た場所を、物打で軽やかに打ち据える。

 

「……とまあ、これを虚実の攻めと併せて行えるようになれば、体力面の問題は解消したも同然よな」

「……先生、一朝一夕では出来ないと思います」

 

虚実の攻め。実を攻めて、虚を打つという剣道の教えのひとつだ。"実"は充実していて、隙の無い所。"虚"は不十分で油断、隙のある所、という意味を持っている。

要は、今から此処を打つぞ、と思わせて、出来た隙を突く、という事。フェイントとはまた異なった極意である。

 

「しかしだな、14、15ともなれば体格差は如実に表れるというもの。唯只管に打ち込んで怯むのは同輩か身長が低いもの位だぞ?」

「先生、それ明確に言ってますよね。オレは小さいって言ってますよね」

 

150cmよりデカい奴らは絶滅しろ!

……とても怨みの篭った言葉だな。

 

「先生には分からないでしょ!体育の授業で整列する時腰に手を当てて休めの体勢しかやった事ねーヤツの気持ちなんて!!」

「うむ。すまん、分からん。すまん」

「2度も謝んないでくださいよぉぉぉ!!」

 

悪いな、これが普通になって長いのだ(180cm)。

こらこら地団駄を踏むな。俺が悪かったから。

 

「体格で負けるなら技で勝て。幸いお主は技量たいぷ、基礎はできている事だし、後は慣れだ」

「……下剋上っすねぇ!オレより身長高い奴ら全員叩きのめして1人ずつ踵か頭の先削ってやる……」

「その意気だ」

『(殺される……)』

 

 

まあ、そんなこんなで順番に指導する事になった。

時間がない為今日は主将、副主将、2年部員の3人だったが、どうだろう。俺はやっていけそうか?

 

「寧ろこっちから頼みたいくらいです」

 

副主将が防具を手に軽く頭を下げる。

 

「オレもコイツも今年が最後なんで、本気でやりてぇって思ってるんです」

 

主将がその隣に並んでにかりと笑った。

それに俺も笑みを返す。

 

「この2ヶ月でどう変わるか分からんが、俺も全力を尽くさせてもらおう」

『よろしくお願いします!!』

 

 

 

居残り練習はなく、部活動時間が終わる5分前には道場を後にする。巡回している風紀委員に見つかれば厳重注意を課されるのだとか。此処にも雲雀殿の威光が見えるとは。まあ、此処は彼の根城だしな、それも当然か。

 

 

「じゃあ、失礼します佐々木先生、"独眼竜"先生!」

『おつかれっしたー!』

 

 

終礼を終えた直後、笑いを含んだ声音だった。

 

「……剣介だな?呼び名を広めたのは」

「唯の愛称じゃないっすか!」

 

それは面白半分ではなかったという証拠にはならんぞ?

 

 

 

 

 

「もしもし」

《む、!その声は三日月か……?》

「おお、レヴィ殿」

 

月一の報告でその受話器を取ったのはレヴィだった。

 

「レヴィ殿とこうして会話するのは初めてではないか?」

《あ、ああそうだが……その言い分ではオレ以外の者とはとうに報告を交わしたと、?》

「そうだな」

 

スクアーロ、ルッスーリア、ベルフェゴール、マーモン、オッタビオ。その面々がこれまでの報告で三日月と会話を行っている。レヴィはぐっ、と詰まったような声を出して視線を彷徨わせた。

 

《い、いや、オレはボスの行方を捜して……別に報告を受けるのは義務では……仲間外れ等では……》

「レヴィ殿?すまぬが報告を……まあ異常無しだが」

《分かった。業腹だがスクアーロに伝えておく》

 

レヴィは未だにボス代理の座についているスクアーロの事が気に食わないらしい。相変わらずの様子で三日月は声に出さないよう、少し笑った。

 

「ではな、レヴィ殿。体を壊さぬよう」

《ああ、貴様もな。来たる時に向けて、ボスの為に励め》

 

 

 

観察報告・其ノ拾陸

 

監視対象に異常無し。

護衛とは別に外部から密偵が送られた模様、ボンゴレの派閥のひとつと推定。敵対の可能性は低い。監視対象へのものであり、此方の存在が露呈している恐れはない。

その動きに変化があれば次いで報告を行う。

 

報告は以上、監視を継続する。

 

 

 

 




この後めっちゃ刀振った。

剣道するミカさん。
格好良いから書いた(建前)原作入りしたら剣道どころじゃなくなるんでここで出しとく(本音)

剣介は犠牲になったのだ……試金石として名乗り出るなんてお前……(他人事)
やっぱり君はかませなんだなぁ(1話並感)

名もなき低身長男子
彼は何れ剣道界のリトルモンスターと呼ばれて血涙を流す。

レヴィが電話口に出て来ましたねぇ、もう出ませんけどねぇ(ゲス顔)


端末変えて使いづらくなったりして。

あと10個くらい空白の8年編書いたら原作入りしますから!(長い)
本当に修羅の道だぁ……(瀕死)(言い出しっぺ)
季節ネタ入れられるのがここくらいしかなかったんだな〜勘弁してくれなんだな〜(以下略)

何だかなぁ、殺伐している描写のが私らしい気がするんだなぁ(更なる修羅の道へようこそ)

20話超えて改めて前の文章見ると大分変わってるんですね、
ちょっとリハビリして調子を戻さないとですね
初心忘るべからずといいますのですね

早くイタリア組出したーい
殺伐コメディさせたーい(ニッコリ)

頑張って書き方思いだすぞぅ(白目)
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