安定の日常生活。と、捏造。
このように月の明るい夜は眠れぬ事が多い。仮にも月を冠する名を賜っているからか、あの月夜を彷彿とさせるからか、はたまた他の理由があるのか。
夜空に浮かぶ月の為に星々はその身の光を慎んで、今宵ばかりの名月をひっそりと彩る。
眩いばかりの月明かりを魔性と称したヒトがいるらしい。
嗚呼、確かに。この月は人に限らず、この世の生ある者を惑わせるような魔力を秘めているのだ。
平穏な現代、遠く離れた過去や異なる世界であっても、この月夜だけは変わらぬものだった。
縁側に座り、美しい月明かりに身を晒す。
今日は月が最も美しいと謂われる日。秋の訪れを思わせる澄んだ風に身を預ける。
傍で揺れる
薄は古くから神の依り代と考えられ、鋭い切り口は魔除になるとされる。
団子は十五夜を意味しており、月の満ち欠けで暦作りや農作業が行われた事もあり、日ノ本では大きな意味を持っているのだ。
十五夜は別名芋名月とも言い、これと共に旬の芋類の収穫を祝う行事でもある。収穫祭の意味合いに近いものがあるな。本丸であれば畑から収穫した芋を山程備えたものだが、今はスーパーで買った山芋2つ。これは明日煮っころがしにするつもりだ。
虫の鳴き声と、風の囁き。静謐。
先月、剣道部の大会が行われた。3年組である6名は県大会出場、突破、その内3名が全国大会ベスト8入り。団体戦では全国大会5位という輝かしい成績を修めた。残念ながら剣介は県大会止まりではあったが、彼はまだ中学1年、今後に期待したい。
小学校最後の大会だった、武が所属する野球のクラブは、全国大会ベスト5。大会内ホームランは通算8本とかなりの成績だ。中学でも野球部に入るという事であるし、来年の並盛中運動部は更に勢いを増すのだろう。
今年念願のボクシング部に入部した了平はフェザー級の大会で優勝したらしい。道場に殴り込みの勢いで報告に来た時は、すわ道場破りかと思ったが。
慌ただしくも熱い夏が終わり、夏休みを終えた学生らはバテ気味になりながらも学校に通っている。
傍らの朱塗りの盃を呷り、月見酒と洒落込む。
近頃監視に勉強に指導にと
6年前のヴァリアー多忙期にも及ぶのでは……うむ、考えるのはやめておくか。それだけで脱力しそうだ。
「……む、帰ってきたな」
暗い空から降り立った金色の鳥が差し出した指に留まる。よしよし、撃ち落とされずに戻って来れたか。
今の所偵察に失敗はない。運が良いのか、行き来は遥か上空を飛んでいる為か。艶やかな月明かりの御蔭か。
宵闇には目立つのにな、と小鳥の背を指で撫ぜる。その指に軽く頭や嘴を擦り付ける様子に思わず頬が緩んだ。オウゴンヒワに似たその身体からはゆらゆらと金の霊気が立ち上っている。
「ある程度込めれば3日持つか」
ツナの周りに怪しいものはおらぬ、と。
常に1羽を監視に、定期連絡用にもう1羽をツナの周りに配置している。
異常事態が起きれば直ぐに向かえるように万全を期しているという訳だ。でなくば流石の俺も疲弊してしまうからな。勿論週に1度は直接見に行くが。
再び小鳥に霊力を込めると、一瞬の明滅の後元気に羽を羽ばたかせた。
秋の七草が風にそよぎ、月へ向かう鳥の羽ばたきに風流を感じながら、最後の1杯を飲み干して盃を脇に置いた。
「……、客か?」
微かな物音がした方に目を向ける。
「……」
「おお、待っておったぞ」
門柱に現れた小さな客人に、部屋の内側に置いていた皿を持ってくる。
縁側の少し離れた場所に腰掛けた彼にそれを勧め、俺は盃と徳利を引き上げた。
「その団子は食べるなよ、猫の身では毒だぞ」
「……なーぅ」
ふんふんと団子の匂いを嗅いでいた黒猫にそう笑って団子の乗った三方を取り上げれば、彼は不服そうに鳴いて、キャットフードの方に口を付けた。
月の見える夜にのみ姿を現し、その金の目を光らせてこちらを窺う猫は、それこそ月のようだった。
「お主、首の周りの毛は白いのだな」
馴れ合いは好かぬという様子は酷く既視感を感じさせた。
元の場所に座った俺は団子の1番上を口に入れる。
中の餡が餅によく絡む。……上手く作れたな。流石は本丸のおかんだ、教わった甲斐があったというもの。
2つ、3つと噛んで飲み込むと、お前は食うのかという彼の視線が突き刺さる。
「気になるか」
「……」
ふいっ、と顔を逸らした黒猫は前脚を綺麗に揃えて行儀良く食事を進めた。
ツれないなと思いながらも、綻んだ頬は戻らぬのだが。
いつか撫でさせてくれたらなぁ……野生にしては艶やかな毛並みをしている。
今度はブラシを用意しようと心に決めつつ、俺は再び空を見上げた。
「月が綺麗だな」
「……みゃおぅ」
「マサ兄団子ありがとう!美味しかった!」
「うむ、口に合ったようで良かった」
木曜日。いつものようにいつもの場所で参考書を広げていた所、珍しくランドセルを背負っていないツナが駆け寄ってきた。
「母さんがお礼にって」
「ん?気にせずとも良かったのだが……」
大量に作ってしまった為、良ければと前置きして井戸端会議の時に配ったのだ。まさか近所の方に分けても余りあるとは。いやな、丸める作業がどうにも楽しくてだな。
受け取った袋に入っていたタッパーに詰められていたのは、奈々嬢の料理で最も好みとする煮物だった。しっかり味の染みた俺好みの味付けで、初めて食した時は思わず調理法を聞いてしまった程だ。
満面の笑みを浮かべて礼を言う。
「ありがたく頂こう。母君にそう伝えてくれ」
マサ兄母さんの煮物好きだもんな〜。照れ笑いして頷くツナの頭を撫でた。
「また遊びに来てよ!母さんも待ってるしさ」
「うむ。その時は是非とも頼む」
約束だ、と指切りして、俺は今日1日の事を尋ねるのだった。
後日偶然通りがかった雲雀殿に、雲雀殿に似た猫を見掛けたと言ってしまい、町中を駆け回る殺伐とした鬼事が始まったのだが、単なる蛇足である。少しばかり虫の居所が悪かったらしい。
「と、いう訳でな。護衛網が少し変更されている」
《めんどくせー。とっとと殺しちまえば楽なのに、刺客もニセモノもさ》
刺客の数の増加に応じ、護衛網が警戒態勢になっている。三日月は生真面目に勢力圏を地図に記して送ったと口にした直後の言葉だ。
天下のボンゴレといえど巨大マフィア、恨みも相当数買っているのである。
ベルの言葉に三日月は一頻り笑う。
「見殺しはともあれ、そんな事をすれば俺がボンゴレとスク殿とボス殿に殺されてしまうな?」
《……。……なー、三日月》
「何だ?」
《ボスさ、生きてると思う?》
拗ねたような口調だ。三日月は少し首を傾げる。
その様子に気付いたベルは口を開く。
《この前言われた。……テメーらのボスはもういない、この6年がその証だ、9代目に傅きボンゴレに頭を下げて生きていけって》
殺しそうになって隣にいたスクアーロに止められた、と。
ナイフを弄びながら、今は主のいない執務室の椅子に胡座を掻くベルは、まるで嘲笑うように口角を吊り上げている。
《別にボスがボスじゃなくても、オレは殺しが出来ればそれで良いと思ってる》
現に少し窮屈だが、スクアーロをトップとしたヴァリアー暗殺部隊は正常に回っているのだ。
居心地も悪くない。
それでも、それが唯一の場所という訳では無い。
だから、いつでもヴァリアーを辞められるのだと嗤う。
「……」
《だけど、さ。……つまんねーじゃん。ボスがボスじゃなくなっちまうと。オレ達を率いるのが、ホントにボスじゃなくなっちまうと》
オレ達は実力主義の自由な殺し屋だけど、ボスの手足なんだからさ。
「ベル殿。辞めるのか?」
《……辞めねーよ》
諦めたくねェ。
髪の短いスクアーロと、その先を行く真っ黒な闇のような後ろ姿。
オレは初めて、その背中に触れてみたいと思ったんだから。
ベルは天井を仰ぎ見て、いつものように笑みを浮かべた。
《……ししっ、オレ達全員女々しっ。ボスが帰ってきたら全員カッ消されるんじゃね?》
「その時は誰が生贄になるだろうな」
《スクアーロだろ》
形だけでも元に戻ったベルに、三日月が口を開く。
深く、静かな声音を。
「最近な、ずっと同じ夢を見る」
《……あ?》
「暗くて冷たくて、それでも燃え滾るような憎悪を内に宿して、只管寒さに耐える夢だ」
《……》
ベルが困惑する中、三日月は淑やかに笑った。
唯ひとつ言えるのは。
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観察記録・其ノ拾捌
監視対象に異常無し。
刺客の数が増加傾向にあり、イタリアにて抗争に発展する可能性がある。本隊に調査を依頼する。
現地が戦場となる可能性は極低。尚、暗殺に関しては除外。場合によっては殺し屋同士による暗殺合戦も有り得る。状況に応じて介入も視野に入れる。
刺客に姿を見られ次第、以前同様速やかに口封じを行う。
報告は以上、監視を継続する。
見殺しはともあれ(今回の問題発言)
あくまで監視対象なので。
自分の姿を見られれば口封じの為にヌッコロしますが、能動的にミカさんがツナくんを護衛する事はないでしょう。奈々さんにはするかもしれないけどね。奈々さんが殺される、もしくは人質にされでもしたら、10代目候補のツナくんの護衛が分厚くなりかねないので
月と七草と鳥と猫と。
あと酒ェ!(デ-ン)
拙作のミカさんはお酒っょぃ
熱い(誤字ではないです)
本丸のおかん
「かっこよく決めたいよね!」
ミカさん「ところで最近お主に似た黒猫が、」
雲雀さん「僕の事馬鹿にしてるよね。咬み殺す」
最近文字数少ない……はいはいネタ切れネタ切れ
書きたいのは決まったから描写するだけなんですがどうしても腕が動かぬのだね(言い訳)(目逸らし)
お気に入り登録500突破&20000UAありがとうございます!
まさかこんな事になるなんて……
最近ハーメルンで復活書いてる人少ないなー(チラッチラッ)とかしてましたけど自分で書くと難しいもんですね
これからもよろしくお願いします!
ちなみに評価の方も深く、重く、受け止めさせて頂いております。
低くてもばっちこいです。訂正箇所があれば物語の進行状況を見つつ参考にしますので、是非とも評価コメントの方に。例え☆が低くても書くのを辞める気はないのであしからず。
不屈の闘志ですよ……みなさん、不屈の闘志を持つのです……(ウィスパーボイス)