月が揺蕩う復活譚   作:マスター冬雪(ぬんぬん)

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20ヶ月目の話。

おま、また暗躍かよぉ……そろそろ飽きが来るぞ?
そんな話。


第25話

先月の報告書の回答が秘匿回線を通し、暗号化されて届いた。

 

「……基本は静観。戦況を操作し、現地戦力のみで事を収めよ、か」

 

簡単に言ってくれるなぁ。

ギシリと椅子の背を軋ませて、俺は天井を見上げ嘆息した。

 

 

現状、表立って影響は見られない。敵対組織本体はヴァリアーやボンゴレに任せ、俺は並盛町及びその周辺で防衛戦を行う。

対象は派遣される暗殺者不確定数。所属は複数(・・)。同盟と言うよりはその場限りの契約と言っていい。目的は金か地位か。ともあれ行動傾向の統一性は望めない。

 

期限は敵対組織中枢の暗殺、ファミリーの粛清、見せしめを完遂するまで。これは末端である暗殺者達が指示役を失った事で暴走、もしくは逃走させぬように手を打たねばならない為だ。

暗殺者達はそれぞれ町に散り、一般人の被害も関係なくツナの命を狙うだろう。既にCEDEFにはボンゴレより指令が下されている。

 

来日する敵対勢力を、現在日本にいる戦力だけで対応出来る状態まで操作し、CEDEFに手柄を押し付ける(・・・・・)事が俺の役目。

 

ネックなのは誰にも俺の存在を悟られる事なく、違和感を持たせる事なく、俺自身の全てを使って、ツナ及びこの町を守護防衛するという点だ。

 

 

 

ヴァリアーとしては10代目候補であるツナの暗殺は都合が良い。そうなれば候補はボス殿ただ1人となる訳であるし、生存しているのであればボンゴレ10代目にと多く支持を得られるだろう。

 

それでも多くは"ゆりかご"を理由に拒絶する筈だ。最終的には全て9代目次第となる。

外部戦力との戦いは話になる程の物にはならない。相手は隠れるだけが取り柄の弱小、彼らの粛清は必定。

 

沢田家光が利用されるのか9代目に何かしらのアプローチがされるのか。ボンゴレと敵対する組織がゴタゴタの隙に攻め込んでくるか否か。寧ろボス殿の行方が分からぬままやもしれん。……不確定要素が多過ぎて確かではないのだ。確かなのは、ボンゴレ内どころではなく世界情勢全てが大荒れになる事のみ。

 

成功率90%を下回るというどころではない賭け。

それで取り返しのつかない事になるくらいならば、耐え忍ぶ方がまだ良いのだ。

 

 

……そもそもツナの暗殺は叶わんだろう。CEDEFが形振り構わなくなるという事は、本国からの人員の派遣を意味している。

ともなれば警備はより厳重となり、俺の正体まで行き着きかねない。

それは何としても避けなければならない。これを機にヴァリアーが弾圧されるなどあってはならない。現状俺達は辛うじて綱渡りをしているのだ。

 

それでこそヴァリアーであるとも言う。

 

 

言い方を借りるならばこれは戦略ゲームであり、

ヴァリアー暗殺部隊幹部候補三日月としてではなく、八朔政宗とプルトーネとしての力を振るう、

 

自らをも駒とする─────一種のチェスゲームである。

 

 

 

 

「参ったな。そういうのは得意ではないのだが……ん、前にもこのような事を言った気がするぞ?」

 

見下ろした指令書を脇に避け、ヴァリアーから送られた敵勢力の殺し屋の情報、プルトーネとして収集させた此方の戦力の書かれた資料、CEDEFの動きを記したメモ書きだらけの地図を広げる。

 

「……取り敢えず暫定侵入経路に監視かめらでも置いてくるか」

 

21の刺客の顔写真に、俺は乾いた笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

プルトーネとして暮れ時の空に身を投げる。電柱から電柱に飛び移りながら今日の目的地に向かうのだ。監視カメラの範囲から外れるにはこの方法が手っ取り早い。

昨日は廃ビル、一昨日は廃れた住宅街、その前は海岸沿い、そしてその前は隣町。

今日は商店街に程近い古びたアパート近辺になる。

 

ひたひたと確かに近付いてくる冬の足音に口元を覆うスカーフを鼻頭まで引き上げ、すっかり夜闇に紛れて視線を下に遣った。

 

くすんだ赤髪、よれたシャツ。その手には折り畳みのサバイバルナイフが弄ばれ、微かに鼻歌が聞こえる事から酷く上機嫌な事が窺える。お眼鏡に叶う獲物を仕留めたのだろう。

 

連続殺人鬼(シリアルキラー)ヘンリー・バンディ。

殺し屋としては二流以下の快楽殺人犯だがその手腕は馬鹿に出来ない。こと、隠蔽に関しては余念が無いのだ。それ故に足が付かず、姿の知れない彼は幻影(ファントム)と名付けられ国際指名手配されている。

 

……顔写真が出回っているのは、被害者の1人である夫人の息子である絵描きが偶然生き残り、その顔を忠実に描いて見せたからである。そこから監視カメラに写ったそれを本人と断定し、逃亡した彼をかの組織が雇ったという顛末。

最悪なのは一般人も何もかも関係なく、自分の美学に従って無差別に殺人する事。

 

「CEDEFも手が回らんようであるし、ヘンリー・バンディまで行き着いてさえおらん。これでは被害が広がるばかり、か」

 

真面目に暗殺しようという気がないのだろう、陽動・撹乱役らしい。ヴァリアーとしても、こういった狂犬めいた輩には早々に退場していただかねば。

 

電柱から音もなく飛び降りる。

ヘンリー・バンディは路地裏を自分の庭のように思っているらしい。まして上方から人が降るなど考えすらない程に、彼は浮かれていた。何せ幾らでも殺していいと、その殺した死体は雇い主が処理するという好条件。ただ派手に暴れるだけでいい。

ああ、そうだ、彼はあまりに若かった。

 

 

壁を蹴りつつ下降。ヘンリー・バンディの背後に降り立ち、何かの気配を感じたらしい彼がナイフを翳しながら振り返る前に、金属を編み込んだ縄……炭素鋼のワイヤーロープで首を吊り上げた。

 

「すまんな」

「ッッ?!!ぎ、いぅ、ご、ぁ……!」

 

ぎいぎいと不快な音、人の重さが支点となった単管パイプを軋ませる。

気道を塞がれ声が出ない。歯を食いしばり、それでも耐えられず舌を突き出し上を見上げ、首を緩めようともがき、だらりと手が落ちた。

 

意識があったのは僅か10秒。

それから数分程して縄から手を離し、落ちたナイフを拾い、折りたたむ。

 

崩れ落ちた彼の身体を麻袋に詰めて通信機器で人手を呼んだ。

桃巨会と繋がりのある……と言うより桃巨会の組員で構成された火葬業者に死体を処理してもらうのである。……いや、今更ながら真っ黒だな。

 

今回は限りなく隠密に、敵にもCEDEFにも国にもバレずに事を為さねばならない。剣戟音も流血も御法度だ。

……こう言ってはなんだが、あまり好ましくないやり方だ。

ヴァリアーの一般隊員に教わった事を実践する事になるとは思いもしない。

 

「……はぁ、」

 

ひいてはこれも無辜の民の為、だ。

初めに犠牲になるのはいつだって彼らなのだから。

 

今1つの命を奪った縄を束ねながら思うのは、今回派遣された殺し屋の名簿(ブラックリスト)だった。

桃巨会を利用し雇われの殺し屋の1人を捕縛、21の刺客の詳細を聞き出したのだ。

 

 

3日前の海岸沿い周辺の見回り時、不法入国をしようとした不審船は容赦なくブローニングM2重機関銃(キャリバー50)で撃沈された。

「漸くオレのMa Deuce(マデュース)の出番が来た!!」と漣明(トリガーハッピー)が絶叫してうるせぇ黙れと袋叩きにされていたのが印象的だった。

 

前々から対物ライフル(AMR)を買って欲しいと強請られていたが、今回の褒賞として前向きに検討しようと思う。

M2はあまりに重量があり、手入れ、組み付け、調整後の試射の手間、発射音にマズルフラッシュとかなりの短所があったのだとか。残念ながら俺は銃は専門外である。

 

ともあれこれで桃巨会が(・・・・)殺害した刺客の人数は6人になる。

 

 

 

「先生、お待たせ致しました」

 

ふと路地裏の外を見れば黒のワゴン車が止まっている。

俺は麻袋を肩に背負い、声の元へと顔を向けた。

 

「ヒトのシマぁ荒らし回りやがって……」

「誰を躍起になって暗殺しようとしてんでしょう、コイツら」

 

礼服を纏う男は子供も泣き喚くような殺気立った顔をして麻袋を受け取り、後部座席に下ろした。

 

「知る必要のない事だ」

「しかし、っ」

「知れば不要なモノすら引き寄せる。それこそ日本では収まりきらぬ程の無慈悲な闇を。……貴様、その意が分からぬと?」

「……!」

 

極力色を廃した声音にぞわりと身体を震わせた組員の男達。

 

「……出過ぎた真似をしました」

「良い。肝に銘じておけ」

 

貴様らはまだ其方で生きろと告げる。

知り過ぎた者程碌な事にならないのは、彼らも知っての事だからだ。

……というか、あまり探ってくれるな。俺も今の彼らを好ましいと思っている。

 

故に、味方殺しなど何度もしたくないのだ。

 

 

 

 

 

帰宅と同時、裏用の携帯端末に連絡が入った。

主は西川智。相談だろう。

 

《先生ですかい?儂です》

「何用か」

《へぇ。実はとある組織から会談の場を設けてほしいと言われまして》

「とある組織?」

 

屋根から滑るように部屋に戻り、外套を脱ぎながら首を傾げる。

 

《─────"CEDEF"とかいう組織だそうで、今回の件について詳しく話したいと》

 

大半が先生ェ主導じゃけぇ、一応報告したんじゃが、どうなされるか。

そう言う西川に、俺は漸く釣れたかと安堵した。

並盛町のヤクザ者が刺客を見つけ次第排除していると情報を流したのだ。寧ろ行動は早い方だろう。

 

ペンを取り出して写真の貼ってあるボードの前に立つ。

 

「私は出ぬ。その者らにはこちらで排除した暗殺者共の情報を渡し、それ以降同盟なりを組んだ上で静観せよ」

 

アンナ・ジョンソン、エイブラムス・ミラー、アンテロ・ハーパネン、ビアージョ・ジョルダーニ。

並ぶ21の顔。その1つ……ヘンリー・バンディに赤のバツ印が付けられる。

 

 

「貴様らが6人、我らが12人。……残るは3人だとな」

 

既に18もの顔には、死を意味する刻印が刻まれている。

 

 

 

 

 

さくさくと小さなスコップを手に土を掘り起こし、埋める。

 

「お?マサさんじゃん。何してんすか?」

「む、武か」

 

声の方に顔を向けるとバットとグローブを肩に掛け、自転車に跨った武がにこやかに笑っていた。

 

「うむ。花の種を植えているところだ」

 

所謂ぼらんてぃあだな。

花壇の土で汚れた手を払い、空になった袋を手に立ち上がる。

 

「春になれば綺麗な花を咲かせるぞ。桜も良いが、こちらの花見も粋で良いものよ」

「へぇ〜、そういや毎年綺麗な花が咲いてたよなぁ」

 

チューリップとか!と明るく笑う彼に俺も微笑み返す。

 

「そういう武は今から野球か?最近寒くなってきたからなぁ、風邪を引くなよ」

「うっす!ありがとうございます!」

 

軽く手を振ってその背を見送り、近場の水場で手を洗って頭のバンダナを外した。

 

 

「嗚呼、来年もきっと……美しい花を咲かせるだろうよ」

 

 

「八朔さーん!終わりましたー?」

「……うむ、今行く」

 

 

 

その夜、2つ知らせが入った。

1つはこの町に紛れた残りの刺客を全て捕らえた事。

そして、イタリア本国の敵対組織の粛清が完了した事。

 

斯くして二地点で起こった抗争は表に出る事なく、静かに終結したのだった。

 

 

 

 

 

《だらしねぇぞぉ゙三日月ぃ゙》

「はっはっは……返す言葉もないな」

 

草臥れたような声音の三日月にスクアーロは呆れ混じりに苦言した。

 

「作戦はまだしも暗躍は俺には無茶だぞスク殿ぉ……」

《あんだけ出来りゃ上等だぁ゙。今後もやれ》

 

鬼畜である。

 

《奴らに借りを作れたのはかなりでけぇ゙。今後も使える手札は増やしとけぇ゙》

 

プルトーネとしてのコネクションは幅広い。

現地の裏側の存在(桃巨会)、それに連なる各施設・組織。

現地を統治する者(雲雀恭弥)

そして、監視対象の護衛(門外顧問機関)

 

表側(八朔政宗)は人望が厚くなりつつあり、疑われる隙も殆ど無いというまでに至っている。

生来の器の大きさと積み上げた年月の重さが、三日月を三日月たらしめているのだ。

そんな彼を誰が人斬りと思おうか。

 

《詐欺だろぉ゙》

「……人聞きが悪いぞ、?!」

《ほざけぇ゙!……ともあれこっちも片付いた。暫く警戒が強くなるが、奴らに尻尾を掴まれるんじゃねぇぞぉ゙!!》

 

 

 

 

 

観察記録・其ノ弐拾

 

防衛完了、任務完遂を確認。

現地協力者と護衛組織間で貸しを作ると共に繋がりを得る。今後護衛組織からの接触が見込まれる。信用度はD、未だこちらを軽視する傾向あり。寧ろ彼らが情報を得ている外部相談役を注視している模様。外部相談役としての活動は暫し自粛し、動向を観察する。

 

報告は以上、監視を継続する。

 

 

 




よくわからん代物ができてしまった(デデドン)
少ししたらちょっと弄るかも


そんな訳で20ヶ月目。ようやっとCEDEFがこの小説で息し始めた
本当は桃巨会と雲雀さんとCEDEFで三勢力会談しようと思ったけどそこまでいくとイタリア本国まで出張りそうだったのでボツ。門外顧問と雲雀さんが顔合わせしてしまうのはアカンわ(白目)
イタリアンマフィアに対するマイナスイメージが半端なくなる

という訳で今回雲雀さんの出番はないです。ごめんね!


メイりんは影の黒幕的な感じで存在を匂わす程度、CEDEFはメイりんを警戒して様子見。

マフィアは小さな町のヤクザ者なんて歯牙にかけないイメージあるよね。原作の桃巨会の扱いがそんな感じする。一方的に襲い掛かられた上で備品と治療費だけポンと渡されて許せます?許せる?貴方が聖人か(曇りなき眼)
私は許さない訴訟も辞さない(鉄の意志)(暴力団に人権は無いのか?……無いか)
もうアレだろうけどね、原作初期だしね、仕方ないね、ギャグだもの(無慈悲)


そして何気に6人やってるミカさん

アッサリ風味でコロコロされてる暗殺者諸君。
彼らはアレです噛ませ……(咳払い)……殆ど弱小暗殺者です。

ヘンリーさんは某運命の某COOLさんイメージで、現場に足を残さず周りに馴染む事に特化した殺し屋未満。台詞もなくご臨終。アーティストではないです。只の血と悲鳴が好きなサイコパスです(ギルティ)

他は死体処理担当とか放火魔とか色気担当とか。ともかく場を荒らす人員が多く、CEDEFが確保した内の数名が本命だったりする。使い捨てられるのはフリーの下衆暗殺者の宿命。美味い話にゃ裏がある(達観)
選ばれたとか調子付いてたりするとミカさんがワイヤーロープ持ってニッコリします(デュエルしろよ)
彼らの名前は適当です

銃とかはニワカ知識ですごめんなさい


21という数
祟としてこっそり利用。
神の怒りに触れたものは須らく罰を受け、行く末には破滅しか残らない

暗殺の後の花を植えるミカさん
血塗れた身であっても彼の日常は変わらない。
命を殺めた手で命を育む彼は、一体どれだけの生を救い、どれだけの骸を積み上げたのだろうか


次でようやっとフラグを拾えるよ……長かった
ゆっくりお待ちくださいませ

ええ加減原作入りさせたいんやが?(おこ)
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