月が揺蕩う復活譚   作:マスター冬雪(ぬんぬん)

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続きました(2度目)
なんか日刊短編ランキングに載っててファッた。すぐ消えたけど。
BGMにええのめっけて、そのノリで書いたで、ノリで。

漸くアンチヘイトタグが息をします。オッタビオよ、永遠なれ。お前は礎の礎となるのだ。
捏造とオリジナル展開が嫌ならブラウザバックだ。飛ばすぜェ゙。いつものように三日月さんのキャラが行方不明。ごめんなさい。
9000字超え。

飲酒喫煙は20歳になってから。ぬんぬんとの約束だぞぅ!

にしてもドラマCD闇の10分間面白いな。いつかそこまで辿り着きたいなぁ(願望)


第3話

 

ヴァリアー暗殺部隊にて暫し留まる事となり1ヶ月が過ぎた。内密の状態ではあるが幹部候補としての待遇を許され、一般隊員とは別に優遇を受ける事となっている。

組織運営上、入って直ぐに幹部に入られるのはあまり良くないのだ。そもそも完全に弱肉強食といえど、元傭兵の経歴不明というのは怪しいにも程がある。俺にもその自覚はある。

見定めの為、一般隊員には幹部と共に行動していると通達されている。勿論の事、事実そういった意味合いを含んでいるのだと思う。

……例外的に数ヶ月前入隊したばかりのベル殿の場合、一般隊員の方に入れれば不敬だと暴れたそうだしな……普通のマフィアの中でも荒くれ者揃いのヴァリアー隊員も、針千本のサボテンとなって死ぬのは御免だろう。

最終的にベル殿は前にいた嵐の幹部を殺して自分の力と意志を通したという。

 

……、……俺はしないぞ?

 

 

「……」

「……」

「ねえ」

「何だ?茶菓子はまだあるぞ。ほら、ちょこれいとだ」

「んむっ……、もぐ……ごくん。うま、……じゃなくて」

 

さて、俺は今日数週間ぶりのフリーの日だ。いつもの隊服は脱いで、久方振りに私服に身を包んでいる。暫くオッタビオ殿を始めとした幹部の皆と任務を熟してきたが、中々仲良くなれたのではないかと思う。

マーモン殿は目深にフードを被った赤子だ。ひと回りふた回り所か、何倍も体躯が小さい。幼子の身でこのような後暗い場所に進んで身を寄せる彼(彼女?)は現ヴァリアー霧の幹部であり、その実力は測り知れない。……残念な事に俺は幻術が効かないらしくそれを目にする事はなかった上、いたく気に障ったらしいマーモン殿には暫し目の敵にされていた。

 

「僕はいつまで君の膝の上にいればいいんだい」

 

撫でくり撫でくり。

今は、俺の膝の上で紙幣を数えている。

 

「まあまあ、じじいの楽しみを奪ってくれるな」

「……君、じじいって歳?」

 

じじいもじじいさ。

 

「あ、三日月……と、マーモン?」

 

そんな所に通りがかったのはベル殿だ。任務の帰りらしく隊服には血が染み付いている。

以前ベル殿とも任務を共にしたが、彼は素晴らしいナイフとワイヤー捌きで敵を一網打尽にしていた。俺の出番は殆ど無かったのだが、最後の最後に手を切ったらしく、自身の血を見て暴走してしまったのだ。ベル殿は自分の血を見ると、初めて殺した双子の実兄を思い出して興奮してしまう体質らしい。仕方なく峰打ちして連れ帰った。

 

「マーモン、三日月の膝には大人しく乗ってんだ?」

「仕方なくだよ」

 

少しいじけたような口調のベル殿にマーモン殿は鼻で笑いながらぶっきらぼうに言った。

ベル殿はまだ小さいからなぁ。マーモン殿を膝に乗せるともなれば、抱き枕になってしまうのではないか?

ならば、と俺は提案する。

 

「ベル殿も来るか?菓子もあるぞ」

「誰が……!」

「……来ぬのか……」

 

しょんぼりして俯く。

 

「っう……、……」

 

お?

 

「……着替えてくる。菓子残しとけよ!」

 

うむ。やはり素直が一番だ。

 

「三日月さ……結構態とだろ」

「さてなぁ」

 

ヴァリアーはあまり個々の関わりがない。ぶつかり合い殺し合いはよくあるが、穏やかな時は皆無だ。

俺としてはこういう、気を抜く時間は好きなのでな。だから暇な時はよく談話室で茶を飲んでいるのだ。

そしてそこに来る者は皆誘う。多ければ多い程茶会は楽しくなるからな。

 

「……、……じゃない!また流される所だった!僕はもう部屋にもど、」

「おおそうだ。すっかり忘れていたが、マーモン殿に小遣いをやろう」

「……」

 

マーモン殿用に用意してもらった貨幣型の茶菓子を手に、満点の笑顔を向ける。マーモン殿の手には新たに分厚い封筒が手渡された。

 

「……君、本当に……はぁ……」

 

そして目の前でそれを数え出す。

先程まで数えていた分は制服の中に収めたようだ。

 

「ははは、俺はあまり物欲はない方でな。美味い茶と、菓子と……まあ、食物があればそれでよし。酒があればなお良し」

「僕からしてみれば頭おかしいとしか言い様がないね」

 

と言いながらも、マーモン殿はルッス嬢、ベル殿に続き、よく茶会に参加してくれるのだが。幹部で1番少ないのは意外にもオッタビオ殿だ。やはり腹心は何かと忙しいのだろう。

スクアーロ殿とは茶を交えた剣談義の後、手合わせになる。寧ろその為に茶会に参加しに来る。

レヴィ殿はボスの話を振れば直ぐに参加してくれる。何かと不憫だが実直で良い人だ。

因みに、ボス殿には時稀に手に入った良い酒とツマミを持っていく程度にしかないが、いつか共に呑みたいと思っている。未成年?……うむ。それはもう時既になんとやら、彼の蔵にはウィスキーやウォッカなど、様々な度数の高い酒が並んでいる。犯罪等、暗殺部隊という時点でお察しだ。

 

「三日月」

「おおベル殿。こっちだ」

 

まあ、なんだ。

構ってくれねばじじいは寂しいぞ?

 

 

 

 

 

 

暫く後のこと。とある日。

今現在ボス殿とスクアーロ殿は不在である。何でもボンゴレファミリー本部の方に用向きがあるのだとか。

 

「?そこはオッタビオ殿が従者ではないのか?」

「彼奴今潜入任務してるだろ。……なんか急に決まったらしいぜ」

 

現在ヴァリアー本部には俺とベル殿、ルッス嬢、レヴィ殿、そして一般隊員400名がいる。マーモン殿とオッタビオ殿は任務中だ。……因みに、俺も数時間程前まで護衛任務に入っていたが、護衛対象の敵勢を全てを殲滅した為に予定していた対談が早急に終わり、俺は早めに帰投した。バディはベル殿である。

 

「ボス達、暫く帰って来ねーからその間任務ないって。本部の守りしっかりしてろってカスアーロが」

「そうか」

 

ベル殿が俺の手札から1枚取り、手札に加える。

 

「ぁ?……チッ」

 

ベル殿はこれでもかと手札を混ぜている。

トランプである。最初は普通だったのだが、少しずつルールを足して行っている変則ルール付きだが。

今しているのはババ抜きだ。天才であるベル殿にとっては、唯のババ抜きは簡単過ぎてつまらないものだったらしい。

 

ゲームの最初に各自、1枚ずつ札を選択し除外する。

捨て札に出来るのはハートとダイヤのセット、クラブとスペードのセット。

 

7ヶ国語を話せる事が前提にあるヴァリアー幹部であるベル殿の記憶力は確かなもので、何度か札を交わすだけでババの正体を暴く。中々心理的に面白い。

 

……そしてその水面下ではイカサマ合戦が行われている。

 

 

「ベル殿」

「……何」

「カードの端を削るのは良い手だが、その欠点は俺にもわかるというところだ」

「げっマジで?……、……なんで今言った」

「それを利用したイカサマをさせてもらったからな」

「は?……あっ?!」

 

ベル殿の札を迷いなく1枚取って上がり。

 

「その札の傷だが、俺が付けたものだ」

「やっぱりかよ!!何か思ったようにならねーと……」

「はっはっは。いつバレるかとヒヤヒヤしたぞ」

 

傷だらけになったトランプを脇に寄せ、新しいものを箱から出す。

 

「大人気ないわねぇ」

「ルッス嬢」

「ルッスーリア、菓子!」

「はいはい」

「次は別のゲームな!ポーカーしようぜ」

 

ベル殿は全力で俺を出し抜こうとゲームをする。俺はそれに応える。……ベル殿自身天才、という名に相応しく、思ったより俺には余裕がない。本気も本気、だからこそなのか、ベル殿は悔しそうにしながらも楽しそうだ。

裏社会に身を窶す大人に囲まれていれば、遊んでくれる者はいないだろう。物騒な的当てか、一人で出来るコンピュータゲーム。それはまあ、なんと味気ない。

構ってやれと言おうにも周りにいるのは仕事上の関係、同僚と上司。……つくづく思うのだが、幹部の皆は未成年だが、普通に遊びに行きたいと思わないものなのだろうか?ないのだろうなぁ。

 

スクアーロ殿は剣の道をひた走る求道者。

レヴィ殿はボス殿に尽くす事が全て。

マーモン殿は金稼ぎ。

ルッス嬢は菓子作りに料理、……あと好みの肉体を死体に変えて保存鑑賞。ああ、でも服にも興味を持っていたか。彼女は人並みか。

 

まあ、人それぞれという事だな。未だに学ぶ事は多いな。良きかな。

 

「どうだ、ルッス嬢もしないか?」

「ン~そうねぇ、ちょっとだけならァ」

「うししっ!ボコボコにしてやんよ!」

「……ん?レヴィ殿?扉の陰に隠れてないで、お主も入って、共に遊ばぬか?」

「うむ?!……ど、どうしても言うなら入ってやらん事もないぞ!?」

「げぇっ!三日月コイツも入れんの?めちゃくちゃ弱ぇよ?」

「なんだとぉ?!」

「仲が良いな」

「「やめろ!!」」

「あらあら、」

 

……それでも何か共有するのは大事な事だと思うのだ。

 

 

 

 

 

 

3日後にオッタビオ殿が帰還した。

 

「お疲れ様だ、オッタビオ殿」

「ええ、ありがとうございます。……ザンザス様は、まだ?」

「うむ。今暫く掛かるようだ」

「……」

 

とても疲れた様子の彼を呼び止め続けるのは、と思い口を開き、再び閉ざす。

オッタビオ殿の目に過る黒い意思。

胸中が騒めく。

 

「オッタビオ殿……?」

「!……はい、どうされましたか?」

「……、いや、酷く疲れている。早く寝床に着く事だ」

 

……嫌な事を考えてしまう前に。とは、言えそうもなかった。

 

「……はい。すみませんが、そうさせていただきますね」

 

不穏な気配に俺は佇むばかり、後ろからやって来たマーモン殿に険しい顔をしていると指摘されてしまった。

 

「何を考えているのか知らないけど、考え過ぎて足元を掬われて足引っ張るなよ。僕は容赦なく見捨てるからね」

「分かっているさ。唯、」

「唯?」

「……。

……帰って菓子でも食うか」

「ちょっと?!続きが気になるんだけど?!」

「マーモン殿は金貨のちょこれいとと金塊のちょこれいと、どちらがいいか?」

「え、どっちも……、……君って奴は、もう!」

 

むきゃー!もう知らない!と言って俺の腕の中に収まるマーモン殿を抱え、俺は部屋に戻っていく。

窓の外は曇天、今にも雨と雷が落ちてきそうな、重く垂れこめた悪天候だった。

 

 

 

 

 

 

ボス殿とスクアーロ殿が帰って来たのは、その日の真夜中の事だった。

雷が轟き大雨が地面を叩き付ける。

それに負けない程に大きな、玄関の扉を破壊する音。

そして、調度品も何もかも粉砕するけたたましい音。

俺は敵襲ではないだろうが、と万一の為に腰に刀を帯びて階下へ降りる。

迎えの隊員残らず叩き付けながら自室へ戻っているらしい、いつもの煮え滾るマグマのような気配は、静謐の欠けらも無く噴火した活火山を思わせる程に荒ぶっていた。

ベル殿と合流し広間にてボス殿と出会す。

 

「ぼ、ボス……?」

 

幼子であるベルに対しても容赦なく殺意ある眼光を向けたボス殿に、ベル殿すら身体を硬直させた。

一流の殺し屋をも畏れさせる威容。俺は態と視線を阻むように前に出る。

 

ボス殿は大雨に降られた所為か、全身ずぶ濡れであった。

黒い隊服から床に水が溢れるように零れ寒いだろうに、それを感じさせぬ紅き目は血走り爛々と紅く燃え上がる。

 

 

「……」

「よく戻られた。お早いお戻りだ」

「……退け」

「───うむ。さぞ寒かろう、酒でも用意しよう。さあ、外套を預かろう」

 

掌に宿る光球の炎。それを目にしたベルは俺の脚にしがみつく。

 

憤怒の炎。触れた全てを風化させる、ボス殿をボス殿たらしめる、目映いばかりの美しい焔。

 

嗚呼、そう、その灼熱した色は。

紅く、紅く、燃え上がり。

 

「……」

「……」

 

その瞳は揺るがぬ。

 

魔性の紅。俺はそれに惹かれたのだ。

他ならぬ、XANXUSという男の魂の色に。

 

 

何を恐れよというのだ。

 

─────その炎は俺という刀を造り出した、言わば親のようであるのに。

 

 

どれだけ向かい合っていたか。否、それ程経っていないのか。

ふとその瞳は伏せられ、俺に何かが叩き付けられた。

 

「お、」

「……退け、カス」

「む、うむ。今宵は俺のとっておきを持っていく。期待しておけ」

「うるせぇ黙れ、ドカスが」

「はっはっは。ドカスか」

 

また、新しいな。

ボス殿の後姿を見送り、受け取った水濡れの外套を広げる。……うむ。洗濯はルッス嬢に任せよう。

その時、ぼすっ!と脚に衝撃が走る。

 

「おっっっ前何考えてんだよ!!死にてぇのかよ!!!死にたいなら1人で死ね!!!」

「ん?俺は別に死ぬ気など、」

「どの口が言うんだよドカス!!死ぬかと思ったじゃねぇか!!!」

「あなや」

「あなやじゃねぇぇ!!!」

 

ベル殿、まるでスクアーロ殿のようだぞ。ははは、叩くな叩くな。

ぼすっ!ぼすっ!と脚を小さな拳で殴り蹴り飛ばしてくるベル殿を連れ、ボス殿が来られた方へ向かう。

 

ヴァリアー本部は3分の1崩壊していた。

どうやら憤怒の炎で玄関を消し飛ばしたらしい。隊員は瓦礫に潰れたり炎に焼かれたり殴り飛ばされたりと、殆どが意識不明である。一部は仏になっているな。御愁傷様だ、冥福を祈ろう。

まるで破壊された調度品の代わりのような、趣味の悪いオブジェが並んでいる。……ああ、すまん、そんな言い方は良くないな。思わず所感が。

 

「お、ルッス嬢~悪いが洗濯をお願いしたいのだが」

「今そんな場合じゃないわよッ!状況見なさいな!?」

 

半死半生の一般隊員の治療に追われるルッス嬢。……うむ、すまん。悪かった。

 

「……ルッスーリア、でもそれ、ボスのなんだけど」

「……、……、それを早く言いなさぁい!!」

「うごぉぉ!?」

 

ぺしーん!と包帯を巻いた一般隊員の身体を叩いて立ち上がるルッス嬢。何故叩いた?

 

「良く無事だったわねぇ二人とも」

 

スクちゃんでもこれ以上ないってくらい燃やされてたのに。とルッス嬢は床に寝かされた包帯まみれの人型に目を向ける。……あれは果たしてスクアーロ殿なのか?

 

「ゔお゙ぉい゙……ルッスーリアぁ゙……てめぇ゙適当に包帯巻きやがったなぁ゙……」

「喋れるんなら大丈夫よぉ!」

 

因みにその横で頭から血を流して気絶しているレヴィ殿がいる。未治療。

 

「マーモン殿は……」

「此処だよ」

 

どうやら幻覚で隊員の痛覚を誤魔化しているらしい。医療部がその間に縫合手術をしている。

その脇では額を割られたらしいオッタビオ殿がタオルで傷口を押さえて眉を寄せていた。

 

「無事か」

「あのボスの前に出られる訳ないだろ。僕はまだ死にたくない」

「……コイツ出てったんだけどな」

 

ぽつりとベル殿が呟いた。

どうやらこの場で出来る事はなそうだな。重傷者はもう治療が終わっているらしい。

 

「では俺はボス殿に酒とツマミを持っていこう。外套は頼んだぞルッス嬢」

「まかせて~新品同然にピシッとしてあげちゃうんだからぁ♥」

 

 

 

 

 

 

軽く三日月は扉をノックしてノブを捻る。

 

「ボス殿、酒を持ってきた」

 

きっと相当に呑むだろう。三日月は両手いっぱいに酒瓶を抱えて部屋に入る。一部ヴァリアーのワインセラーから失敬した物もあるが。

 

「ツマミは後で持ってきてもらう事になっているぞ」

 

部屋は灯りがなく、しかし三日月には良く見えていた。

浮かび上がるような三日月の瞳は夜の闇を映す。酒瓶をデスクに乗せ、腰に備えていたランプに灯を灯してデスクの端に置く。

目を閉ざしたザンザスは濡れたシャツのままだ。どうやらシャワーを浴びてはいないらしい。三日月はしたいようにすれば良いとザンザスの為に用意したグラスに、とっておきだという日本酒を注ぐ。

 

とうに嵐は収まり、重く垂れ込む雲は変わらずとも、静けさに沈むような夜であった。

 

「……」

「今日は俺もここで呑むからな」

 

ぴくりとザンザスの眉根が寄るが、三日月は知らぬ振りをして機嫌良く自身の盃を呷る。

 

「うむ。やはり誰かと共に呑むのは良いものよ」

「……何の真似だ」

「いやな、前々から酒を酌み交わしたいと思っていたところよ。1人呑むのも良いがな」

 

老耄の趣味だ。付き合ってもらうぞ。

飄々と曰う三日月にザンザスは苦虫を噛み潰したような顔でドカスが、と一言。度数の強い酒であるが水のように飲み干した。

それを許可と取った三日月は穏やかに笑う。

瞳の月が灯に照らされ柔らかく歪んだ。

空になったグラスに再度酒を注ぐ。

 

「……おいドカス、オレに何を言わせたい」

「何も」

 

手酌で自身の盃に注ぎ、同じように呷る。

 

「俺はお主の部下だからな。この世界に於いて此処を根を張る場所とした恩は、忠義を尽くす事で返す。故、少し腹を割って語ろうとな」

 

ことりと盃を置いて居住まいを正した三日月は真っ直ぐザンザスの紅い目を見つめる。

 

 

「銘は三条の三日月。作は宗近。俺はお主を(あるじ)とし、お主の命運尽きるまで忠を尽くし、刀を預ける」

 

 

"友"から授かりし名。姿。

魂よりも大切なそれを誓いの証として掲げ、腰に携えし現身(うつしみ)たる刀を捧げる。

 

「俺はお主の魂に惚れたのよ。……是非は如何に?」

「死ねと言えば死ぬか」

「然り。二言は無い」

 

一片の迷い無く告げられた言葉。

額に憤怒の炎を向けられようと変わらぬ瞳に、ザンザスは拳に灯した炎を収めた。

 

「……注げ」

「あいわかった。まだまだ酒はあるぞ」

 

 

 

 

 

 

それから、というもの。

ボス殿は苛烈に他のボンゴレ10代目候補を敵視し、ボス殿に敵対する者はボンゴレファミリー内外問わず秘密裏に暗殺していった。

ボンゴレにバレれば敵対と見られて潰されかねない所業であったが、必死に静止を忠言するオッタビオ殿を黙殺し、ボス殿は止まる事は無かった。

他の幹部も止めるどころか、今こそボス殿が10代目となる時なのだと乗り気であり、オッタビオ殿と幹部らの溝は深まるばかりである。

 

 

「……三日月さん」

「オッタビオ殿、!……またボス殿に忠言を?」

「……ええ」

 

取り出した手巾を、血を滲ませた口元に当てるよう差し出す。

オッタビオ殿はそれを丁寧に断ると、俺に強い眼差しを向ける。……はて、それには恐怖と懇願が見えた。

 

「三日月さんは、あの夜……ザンザス様と2度対話したと聞きました」

「うむ、間違いないぞ」

 

あの後夜が明けても両方とも酔いもせず、酒が底を尽きそうになって御開となったのだったか。

良い酒宴であった、と頷いていれば、オッタビオ殿は眉間に皺を寄せて、俺に深く頭を下げた。

 

「!」

「お、お願いします、ザンザス様を止めてください……!協力だけでも良いのです!あの夜、あの方と対話したという貴方なら……!」

 

オッタビオ殿は、自身の積み上げたものに対して、強く誇りを抱いている。それがあったからこそ、ボス殿に仕える事が出来たのだと。

故に、入って半年ばかりの俺に頭を下げる等、……誰が思うだろうか。

 

「……頭を上げてくれ、オッタビオ殿」

「もう、ザンザス様にも、幹部たちにも、隊の皆にも!私の言葉は聞こえないのです!!」

 

このままでは、謀叛の意志有りとしてボンゴレに取り潰されてしまう!

ザンザス様のボンゴレ10代目ボスへの、栄光への道が、閉ざされてしまう……!!

 

……あまりに悲痛な、血を吐くような哀願であった。

 

 

「オッタビオ殿。顔を上げるのだ」

「……っ、」

「お主のボス殿への忠誠心はよく知っている。日頃の忠言全てがボス殿を案じての事であるとは、重々承知の上だ」

 

ゆっくりと顔を上げたオッタビオ殿に、伝える。

 

「故に告げねばならぬ。……俺にボス殿を止める事は出来ん」

「なっ……ッ何故!!」

 

焦燥した様子のオッタビオ殿に、成る可く同情を見せぬよう表情を硬め、口調だけはいつも通りを意識する。

 

「オッタビオ殿も見たであろう。ボス殿は覚悟を決められている。あの夜の赤き眼の耀きは、嘗てなかった筈だ」

「っ……」

 

オッタビオ殿の目に恐れが交じる。ああ、きっと、俺とは違い、オッタビオ殿は彼に恐れを抱いてしまったのだ。

 

「ボス殿は何の考えもなく、不容易にこのような事を命ずる御方ではあるまい」

「で、ですが……!」

「俺が言えるのは、決してボス殿は自棄を起こしているのではないという事だ。オッタビオ殿の言うじっくり成果を上げて評価を受けるという"正攻法"が通じぬようになったのではないか、と考える方がそれらしい。ボス殿は忠臣の言葉を聞けぬ程愚かではない」

 

オッタビオ殿は視線をうろうろと彷徨わせると、がくりと肩を落として俺に謝罪をした。

 

「頭に、血が上っていたようです。……申し訳ない」

「良い良い。友が悩めれば相談に乗るのは当たり前よ」

「しかし……」

「気に病むのであれば、今度美味いものでも食わせてくれ」

 

やれ、オッタビオ殿は少し考えが硬いな。まあそれが彼の良いところでもあるのだが。

 

「……はい」

 

 

 

なあ、だから、そのような昏い目をしてくれるな。

 

 

 

 

 

 

ボンゴレ本部強襲計画。

深夜呼び出されたと思えば、ボス殿の執務室には幹部が揃っていた。いよいよ、という所まで来たようだ。

候補といえど俺も幹部相当、当然俺も参加メンバーに加えられ、計画書に目を通す。皆、獰猛に笑みながら戦意を滾らせる。

 

「……、オッタビオ殿は?」

「最近のアイツの言動は目に余る。万全を期する為に、奴は指揮系統から除外する」

 

その計画書にはオッタビオ殿の項目は……急場の参加でも構わない、エリート隊員と合同の囮……本部に程近いボンゴレ支部強襲部隊。

 

「何か問題があるのかぁ゙?言っておくが情だの何だのと御託を言うようならたたっ斬るぞぉ゙」

「……俺が気になるのは、大マフィアボンゴレ相手にオッタビオ殿程の指揮戦力を遊ばせて良いのか、という事くらいだな。隊員の士気にも多少関わる事だ」

 

全体的に、良く組まれていると思う。ボス殿、スクアーロ殿、マーモン殿の手が加わっていると見える、柔軟性のある計画だ。

 

先ず賊に扮した囮強襲部隊がボンゴレ本部に程近いボンゴレ支部を複数箇所強襲し籠城、時間を稼ぎ、少しでも本部から戦力を引き離す。

広域破壊技を持つレヴィ殿、同じく大規模破壊(・・・・・)の出来る俺が追加戦力が来ないよう派手に暴れ、目を引き付ける。

俺たちに目が向いたと同時にボス殿と幹部を筆頭に本部強襲部隊が突入。

マーモン殿が先ず先行し幻術で内側から指揮系統を破壊。

室内戦に有利なベル殿、近距離と万一の医療要員であるルッス嬢が部下を指揮しながら本部の戦力の無力化。

そして最大戦力であり、9代目の実子である為に本部の内装を良く知るボス殿、そのボス殿をサポート出来るスクアーロ殿が本丸であるボンゴレ9代目を討つ。

 

適材適所であり十分遊びがある良い策だが、作戦には予期せぬ事が起こるのが常。あまり余裕のあるとは言いづらい厳しい戦いになる事だろう。

 

何せ、敵側には神の采配と謳われる超直感を持つ9代目だけではない、歴戦の9代目幹部、6人の守護者もいるのだから。

 

スクアーロ殿に目を向ければ彼は舌を打つ。

 

 

「これは謂わば叛逆行為だぁ゙。実行犯は皆殺しのな。不穏分子をこの作戦に組み込んで情報漏洩、という事は真っ先に避けなきゃならねぇ゙」

「彼が裏切ると?」

「逆に考えろぉ゙。今の奴にこの作戦を伝えた場合何を言うと思ゔ?」

 

今度は俺が閉口した。

 

「先ず、止めるだろうね。常々言ってるだろ、ボンゴレに叛逆するつもりなのか。もっと別の方法がある、貴方は何れ10代目になられる御方なのだから、ってね」

「この前なんて逆ギレだぜ?"何故、何故私の言葉を聞いてくださらないのですか!!"。オレ達はアイツの駒じゃねぇよ」

「オレ達は唯、忠実に、偉大なるボスに従っていれば良いというのに……愚かな」

「少しくらい荒っぽい方が私達らしいと思うのだけどねぇ。彼はちょっと、真面目だから」

 

皆が皆、少し頭を冷やせと、私情は挟むなと言っている。

ボス殿の紅い目が俺に向けられる。

 

「……」

「勝算があるならば、俺からは何も言うまい。

……俺は元傭兵であり、現ヴァリアー暗殺部隊の幹部候補であり。ボス殿の刀。存分に振るうが良いぞ」

 

それでいい、とボス殿は瞑目し、再度その紅を燃え滾らせた。

 

「5日後、あの老耄を引き摺り下ろし。このオレがボンゴレの頂点に立つ」

 

 

 

 

 

 

「ボス殿。宜しいのか?あの者はボス殿の腹心であった筈だが」

 

極力色を消した、飄々とした声で問う。

 

「オレに逆らうか」

「否。俺は(あるじ)を傷付ける刀に非ず。……然して、アレはお主を見限るぞ」

「……ふん」

 

その見透かすような瞳は嘲笑に細まった。

 

 

「既に失意した弱者にくれてやる施しなど無い」

 

 

俺はその言葉に一瞬だけ、目を見張った。

 

「そうか。……ならば、仕方あるまい」

「他にねぇのか」

「ないな。知らなかったか?……刀は只、(あるじ)の道阻むものを──────」

 

俺は刀の鍔を指で弾き、再び収める。

 

「──────斬るのみよ」

 

 

 

 

 

ボンゴレファミリー本部強襲まで、5日。

 

 

 

 

 




オルァ!書いたぞォォォ!!
目に見える評価さえあればこんなもんよ……(あしたのジョー症候群)
燃え尽きたら本部強襲できないんでそこそこにします。
バトル描写苦手だけど……
大丈夫だよ俺もこれから頑張って行くから……
時間かかっても許してや。
あと物凄く三日月さん捏造です。
ほんと、ごめんなさい。これが私の限界ですや……


次回!
XANXUS死す!
デュエルスタンバイ!
また見てくれよな!!
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