月が揺蕩う復活譚   作:マスター冬雪(ぬんぬん)

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25ヶ月目の話。

この話を最後に空白の8年編は終わります。厳密には続くんですけど原作に突入するので、表記は日常編です。
そんな訳で。


第30話

「只今より平成X年度始業式を始めます─────」

 

 

麗らかな春の日差しの心地よい中、粛々と式が行われる。

生徒達一人ひとりの顔を眺めていると、話が進められていくにつれてうとうとと船を漕ぐ姿がちらほらと見られて、思わずくすりと笑ってしまう。そうよな、この陽気だ、校長殿の声がまるで子守唄のように聞こえるに違いない。

それに気付いたのか、校長殿は毎年の事だと苦笑して言葉を結んだ。

 

 

 

学期で初めの式は、俺を含めた新任教師にとっても深い意味を持つ。生徒との正式なる初顔合わせとなるからだ。

 

「続きまして、着任式に移ります。……着任者紹介、着任する先生方、壇上にお上がりください」

 

並盛中学校始業式。……そして並びに着任式の日である。

緊張した面持ちで壇上に進んでいく2人を追い、校長殿の立つ舞台へ、ゆったりと上がっていく。

期待を含んだ生徒達のざわめきが、まるで波のように押し寄せてくるようだった。

 

「えー、昨年までお世話になった先生方に代わり、今年から新たに3名の先生方をお迎えする事となりました。皆さんから見て右から、自己紹介の方をして頂きます」

「はい。皆さん、おはようございます……!」

 

マイクを手渡され、若干上擦った声で話す同僚の声を聞きつつ、どうしてかそちらではなく俺に集まっている視線を一つひとつ辿っていく。まあ、手持ち無沙汰というのか。勿論同僚の声にも意識を裂きながら、だが。……あ、うむ、今舌を噛んだな。大丈夫か?

 

「これからよろしくお願いします!一緒に頑張っていきましょう!」

 

2人から回されたマイクを手に1歩前へ。

……少し照れ臭いな。そう嘯いて、口を開く。

 

「─────皆さんおはようございます。私は八朔政宗と言います。数字の八に新月を意味する朔、政治の政に宗家の宗、と書いて八朔政宗です。かの有名な武将であらせられる伊達政宗公の名前と同じですね」

 

ゆったりと、しかし明朗と。

 

「以前までは並盛道場で剣道を教えていました。去年の夏頃に特別顧問として、本校の剣道部の皆さんに指導させていただき、部員の皆さんには"独眼竜先生"と呼び親しんでいただいています。部員の皆さんは一様にひたむきで、並盛中学校に赴任する事となるのが以前から楽しみでした」

 

真ん中辺りにいる剣介と目が合って悪戯げに笑い、独眼竜先生の名を知る者らがざわめくのを尻目に言葉を継ぐ。

 

「海外育ちで、趣味は旅行です。高じて2年前までは海外で生活していました。今回は数学を担当する教員1年生として、そして1年A組の副担任として、皆さんと一緒に勉強していきたいと思っています」

 

これからよろしくお願い致します。

 

 

 

 

 

「聞いてないんすけど!!!」

「言っておらんからなぁ」

 

ツナにも言われたぞ、入学式後に。どういう事なのマサ兄ぃぃ!!と。

 

始業式を終え、生徒達がHRを終えた時間の少し後、職員室に飛び込んできた剣介をデスクで迎えた。

入学式の後は生徒に質問責めに遭い、今もこうして剣介の反応を悪戯心に楽しんでいる訳である。

 

「持田ァ職員室では静かにな」

「す、すみません」

 

開いていたファイルを閉じ、いつもの様に笑ってみせる。

 

「すまんな、守秘義務だ」

「……政宗先生、なんかズルいぜそれ……」

「知らんかったか?大人は皆、どこかしら狡いものだ」

 

仕方のない事に負け惜しみのように口にしたそれにそう返す。

 

「……で?独眼竜先生が1年の副担なのは聞いたけど、剣道部の顧問はしてくれんの?コーチ?」

「ははは、顧問は佐々木先生が居るではないか。……まあ、部活動については、まだ何も決めておらんよ。1年目は色々と学ぶ事が多いだろうし難しいだろうが……予定は未定にして決定にあらず、というやつだな」

 

程々に顔は出す。

取り敢えずそれで納得したのか、剣介は渋々頷いた。

 

「じゃ、今日来てくれよ!剣道場開けてるから」

「わかったわかった、行けたら行こう」

 

と、いうのが幾らか。

剣道部の部員だの、偶然職員室に用があったらしい町で出会った者や近所の公園で一緒に遊んだ子の兄や姉が声を掛けに来たりだの、周りの先生方には人気者だと揶揄われてしまった。

 

「人徳ですなぁ」

「いや、はや。騒がしくしてしまい申し訳ない」

 

「全くですな。此処は神聖なる学び舎の聖職者である教師が集まる職員室ですぞ?教員となったからには、もっと責任感と自制心を持つべきです」

 

と、和やかな空気を打ち破るように、一声が放たれる。

 

「、根津先生……」

 

職員室中の視線が俺の席に来る人影に向けられていた。

 

根津銅八郎理科教諭。

眼鏡のズレを直しながら見下ろす彼の目には負の色が見えた。

……はて、俺はこの人に何かしただろうか?

 

「あくまで仮定の話ですが、緊張感なく生徒と、まるで友人かのように振る舞う教師がいるとしましょう。……そういう者は生徒に嘗められ、次第にそのクラス、ひいては学校全体での権威を失っていくでしょうなぁ」

 

ねっとりとした声でそう言った根津先生。

 

「あまり調子に乗らぬ事です。貴方は未だ新人も新人。そのような態度ではこの先が心配でなりませんな」

 

次いで紡がれた言葉に刮目させられた。

 

「……お恥ずかしい限りです、浅慮が過ぎました。すみません、以後気を付けます」

「! わ、分かれば良いのです。……全く、最近の若いもんは……」

 

眉根を下げながら軽く会釈すると、根津先生はどこかたじろいだように頬をひくつかせ、気を取り直すように咳払いした。

大股で去っていく根津先生に向けられる視線は、どこか諦めすら含んだ複雑なもの。

隣に座る1年A組の担任である池沢先生が小声で囁く。

 

「気を悪くしないで下さいね、八朔先生。……こう言ってはなんですが、毎年の事ですから」

「む、そう……なのですか?」

「ええ……」

 

出る杭は打たれるとも言いますが、彼程積極的に実行しているのは他にはいないでしょう。

 

「洗礼、というやつでしょうか、」

「そんな大層なものでもないですよ。八朔先生の人気に嫉妬してるだけです。根津先生、生徒にかなり嫌われてるから」

 

向かいに座るのは根津先生と同じく理科教諭の浜野先生だ。少々シワの目立ち始めた年頃の、それでも良い年の重ね方をした愛らしい面立ちを不愉快そうに歪めている。周りに根津先生がいなくなったのを確認して、今までの鬱憤を晴らすかのように捲し立てた。

 

「いくら東大卒だからって、偉そうに威張って。なぁにがあくまで仮定の話だが〜、よ!」

「そうだったのですか?てっきりここではそうなのだろう、教師というのも奥が深いなぁ、などと思ったのですが」

「そんな事ないですから!」

「ははは、八朔先生は器が大きいですねぇ」

 

 

 

 

 

「それで、どうだ?馴染めそうか?」

『気が早いよマサ兄……』

 

少し疲れたような声で綱吉はボヤいた。

 

『別に、小学校の時のクラスメイトとか、一緒に上がってきてるし……そ、そんなに変わんないよ、』

 

口篭る綱吉に三日月は電話口で口角を上げる。

 

「ほほう?何かあったか」

『はぁっ?!』

「ほれ、話してみぬか〜。友か?もしや好きな娘子でも出来たか」

『んなぁっ……そ、んなんじゃないしっ?!』

「はっはっは、お主、バレバレだぞ〜」

『うう……マサ兄、お願いだからそっとしとしてよ』

「あいわかった。同じくらすなのだな?」

『だからなんで分かるんだよ!?』

「学校での俺とツナで関わる事などくらす内しかないだろう」

 

後は勘とカマをかけただけだ。

 

『……マサ兄、カマかけ過ぎ……』

「ん、そうか。自重しよう」

『(それ絶対しないやつだ!!)』

 

三日月はのほほんと剣道部を覗いた時の事を思い出す。

そういえば、剣介のやつも可愛い子が来ただのとはしゃいでおったか。中々の浮かれようだったと流石の三日月も苦笑しか出ないのである。

 

だが、まあ、それも良かろう。

現代、武を持たなくとも良いというのは良きものゆえ、恋にうつつを抜かすも、平穏の証というものだろう。

などと、スクアーロやレヴィが聞けば怒り狂いそうな事を考えながら。

 

「気の持ちようだとは思うがなぁ、」

『……どーせ変わんないよ』

「変わるも変わらぬも、結局はお主次第だぞ。変わらぬと思えば、変えられるものでも不変になる」

『どーにも出来ない事だってあるよ』

「そうか?」

『そうだよ』

「そうなのだなぁ」

 

その後も何気ない雑談に興じ、三日月は端末を置く。

出来れば綱吉にも、心置き無く話せるような同年代の友を作って欲しいものだ。

 

三日月はそう思い、少しだけ悲しげに顔を歪めた。

 

 

 




前話で入学式と言ったな。あれは嘘だ。

そんなこんなで伏線張る。


根津銅八郎理科教諭
言わずもがな。アンチヘイトになるのか?

小学校の時のクラスメイト
綱吉くんのダメツナ根性は多分ここからだと邪推

好きな娘子でもできたか?
興味津々ですね、ミカ=サン。
持田よ、覚悟は出来ているか?おれは出来てる

どーせ変わんないよ、どーにも出来ないことだってあるよ
ダメツナだけど政宗さんには劣等感を抱いていないらしい。何となくそういう感情を外に向けるより、「オレはダメツナだから……」って自分に対して諦観を向けてる感じするよね

悲しげに
─────どの口が言っておるのだろうな。その幸福を、他ならぬ俺が壊す事となるというのに



で、原作編に進む訳ですが。
感想での懸念通りこっから暫くヴァリアー達は出ないよ!(無慈悲)
ちょくちょく閑話としてエピソードヴァリアー入れてくけど
だって入れようがないしね(白目)

まあ、気長に待っててね。なるべくサラッと読めるようにするから。あんまり複雑にしても面白くないもの。暗躍とか陰謀とか入れるつもりはないです。タグにオリ展開とかあるけど風呂敷広げ過ぎて回収出来んとかなるとエタるし頭こんがらがる(マジレス)

ミカさんがどれだけツナ達と馴染めるか、そして来る日来る時、どれくらいの衝撃を彼らに与える事が出来るのか
これは私の挑戦でもある訳で。頑張って日常編書くぞー(衰弱)

基本1話が原作の1話になるんじゃないかなぁ
つまり最終話になると話数が……?(無理)(嘘予告)

原作始まるまでに何話使ってんだお前、苦行か
よぉし原作沿いタグ入れるぞぉ(次話でな)
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