月が揺蕩う復活譚   作:マスター冬雪(ぬんぬん)

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みじかーめ。
だってなんかこっから色々キャラ増えるんだもん……


第32話

─────死ぬ気弾というのは、ボンゴレファミリーに伝わる特殊弾が額、つまるところ脳の特定の位置に被弾した時の俗称である。

 

─────被弾する位置によって効果が変わる特殊な弾丸。脊髄ならば爆発物に曝されてもものともしない強靭な皮膚を得られる耐熱ヒフ弾。肩、肘、腕ならば地を割れる程の強拳に変わるメガトンパンチ弾。そして腿ならば凄まじい跳躍力を発揮するジャンプ弾へと。

 

 

 

のんびりと体育館から轟く歓声を聞きながら、俺は手元の書類に筆を走らせる。

今日日(きょうび)ツナはリボーン殿の指導の下こってりと絞られているようで、数日の間であるのに随分とボロボロで何より(・・・)である。即ちツナの成長と等しくなる事と同義だろう、かの人物がそんな、ツナをストレス解消のサンドバッグにしていないのならばだが……いや、杞憂だ、杞憂。

その間ツナからは相談という名の愚痴を連日聞き、当然のようにリボーン殿からは観察めいた視線を感じている。それは構わんのだが、戯れなのか殺気を向けるのはやめて欲しい。反応せざるを得ん。それに挑発を含めた意図を感じてしまった暁には……いや、流石に冗談だ。冗談だとも。

 

 

「……む?」

 

書類の束を崩していく最中でふと目に止まったのは、配布された封筒の一通である。

宛先は1年A組の担任、池沢先生への物だろう。これ(・・)が未だ未熟な俺の手元に来る筈がない。どうやら校長殿が誤って混ぜてしまったらしい。

 

 

……─────転入生の経歴書のようだった。

 

「獄寺隼人」

 

イタリアからの帰国子女、らしい。

 

「……池沢先生、誤配書類です」

「はい?ああ、ありがとうございます」

 

 

 

 

 

《でさ、リボーンの奴なんて言ったと思う?撃ってないと腕が鈍るから、これでガンガン撃てるようになるって言ったんだよ……》

 

めちゃくちゃ嬉しそうにさ、と、ツナがボヤく。

 

「理不尽だなんだと言う割に、お主はあまり怒っておらんようだが」

《え》

 

端末を耳に当て、片手で持ち帰った仕事に筆を走らせつつ。

 

《……そう聞こえる?》

「ああ。良き先生なのだな」

《じ、冗談じゃないよ!あんなおーぼー教師!》

 

"横暴"、か。

……だが、そうか。ツナの内面をよくよく見てくれる良き先生に出逢えたか。まあ、俺も教師だが、それとこれとは別よな。

 

《……確かにさ、オレの事考えてくれてるのは、今日あったので分かったけど》

「今日、といえば、球技大会か、活躍したのだったな。……俺も見に行ければ良かったのだがなぁ」

《あ、マサ兄来てなかったんだ》

「すまぬな。また機会があれば必ず駆け付ける故、許せよ」

《うん。こんな事もうないだろうって思うけど……多分、次もあるんだろうなぁ、》

 

アイツの事だし、とツナは少し草臥れたように空笑った。

 

「今日は疲れただろう、早めに寝て、また明日教室で、な」

《はーい……。……ちぇっ、独眼竜先生厳しい。明日くらい休んだっていいじゃん、ちょっとくらい贔屓してよ》

「はっはっは。なれば特別に追加課題でも、」

《あ、あー!宿題終わってなかったんだったー!マサ兄おやすみっ》

 

ガチャン!つー、つー。

 

「ふ……ツナの奴、」

 

慌ただしく電話を切ったツナに一笑して、端末を机に置き、改めて書類に向き合う。

 

 

「─────この様子では彼の方から接触があろう。やはり受動的にあるべきか」

 

しかしなぁ。思い浮かぶのは自分の別の顔であるプルトーネの事だ。

ロンシー殿が会いたがっておられるようだし、桃巨会の会長である西川からは酒宴に誘われている。漣からは銃の腕を見て欲しい等と、……その他も組員に顔見せを請われているのだ。

今はどうにもならんのだがな。

 

「せめて監視が離れれば違うのだろうか」

 

そう口に出して、はたと考えてしまう。

何も全てを隠す必要などないのではないか─────?

 

「……うむ」

 

 

 

 

 

「イタリアに留学していた、転入生の獄寺隼人君だ」

 

銀髪に翠を帯びた灰の目。着崩したシャツからは銀の装飾品が覗く。眼光は鋭く、一心にツナを睨み付ける。池沢先生の脇でその様子を眺めていれば獄寺がツナの机の脚を蹴った。

 

……転入を教唆した仕立人は案の定リボーン殿であろう。

ツテを頼って独自に調べたところ、経歴の大半は偽装されたものだった。調べれば露呈するような偽装をリボーン殿、ひいてはボンゴレがするとは思えない。ともなれば獄寺自身が工作したという訳で、確かに獄寺の背後には何やらあるのだろうが基本は雇われの体だと見た。

人間爆撃機(スモーキンボム)、獄寺隼人。

リボーン殿にツナの暗殺でも嗾けられたか。

 

 

何にせよ今日から彼も俺の生徒。"学びたいと思うのなら学ばせてあげられるように努めるのが教師の役割"、だからな。表側俺は何ひとつ知らぬ一般人故、獄寺の事も一生徒として見る事にする。

 

……因みに、前言は校長殿の受け売りである。

 

 

 

「獄寺、授業中は机から脚を下ろせ」

 

ん、と首を軽く傾げて言えば視線を緩慢に上げた獄寺は舌打ちをして視線を逸らす。

変わらぬ態度である。彼は所謂不良というやつらしい。机に脚を乗せ、授業には少したりとも耳を貸さず、注意する先生には鋭く睨み付けるのだという。結局これまでの三時間、誰も真面目に授業を受けさせる事は出来なかったようだ。

 

「チッ……るせェ」

「はっはっは、こやつめ」

 

……うむ。少し思案。

 

教科書を教卓に置いて、獄寺の目の前に気配なく立った俺は片手で獄寺の髪の毛を思い切り掻き混ぜてやる。

年相応に目を見開いた獄寺は直ぐに俺の手を弾き睨み上げた。

 

「っ!何しやがる!」

「漸く目が合ったな」

「!」

 

やんわりと微笑むと獄寺は更に眉間に深い皺を寄せる。

 

Facciamo un patto.(取引でもしようか)

「あぁ?」

 

単純な事だと前置きして、イタリア語で更に告ぐ。

俺が授業の始めに出題する問題を1問、正解すれば日々の宿題や長期休暇間の課題は免除する、と。

 

それでも乗り気にはなれないらしい。

敵意剥き出しのまま俺を睨めつける獄寺に、俺は黒板に書いた問を指でコンと叩く。

 

『それとも、お主はこの問すら解けぬと言うか?』

 

解けんと言うなら特別課題の捻出も視野に入れねばなぁ、と。

 

『であれば、前の学校の授業の進み具合も調べなければならん』

 

つまり、経歴の偽装がバレる事になるぞ、という訳だ。にやりと妖しく笑ってみせる。

いよいよ蟀谷に青筋が浮く。

どん!と机に拳を振り下ろした獄寺は黒板に歩み寄った。チョークを手に取り、黒板に書かれた問題の下に、几帳面にこと細かく模範解答を書き込み、チョークを押し付けながら俺の胸倉を掴んでガン付けるのだった。

 

「うむ。正解だ。よく出来たな」

「……っ、……こんな簡単な問題をオレに解かせてんじゃねー」

「おお、言ったな?では次の授業では更に難度を上げるゆえ」

 

楽しみにしておれよ、と。いつもの様に頬を綻ばせると獄寺は目を見開き、変な顔で黙り込む。まるで振り下ろそうとした手のやり場をなくしてしまったかのような。

 

乱暴に胸倉を掴んだ手を離した獄寺はどっかりと椅子に座り外方を向いた。

 

「では、授業を再開するぞ〜」

 

終始目を白黒させていた生徒達をぐるりと見渡して、俺は飄々と笑うのである。

 

「(チッ、気が抜ける先公だぜ……)」

 

 

 

 

 

さて、4時限を終え、教室から出て行ったツナを殺気立った獄寺が追う。程なくして爆発音が校舎裏の方面で轟き始めた。

 

「派手にやっておるなぁ」

 

昼休みの間は人気のない棟の校舎裏であるからか周りに野次馬や物見遊山はおらず、リボーン殿の誘導(・・)によって先生達が集まるような事もなさそうだった。流石に準備がいい。

爆発音に紛れて5時限開始のチャイムが鳴る。ツナと獄寺はサボり、と、職員室でのんびりと明日の授業の課題を纏めながら笑う。

 

 

ツナの安否に関して、俺は心配をしていなかった。

リボーン殿がおられるからというのもあったが、最たるはツナ自身にある。

あやつなれば、何とかするだろう。その確信があった。

 

「獄寺の奴もまだ、浸り切ってはおらなんだ」

 

挑発され、揶揄(からか)われ、子供らしく不貞腐れた顔。

彼はまだ、間に合うだろう。ツナはそれを成せるだろう。

俺は2人の事を買っているのだ。

 

深く、笑う。

 

「さ、て。そろそろ俺も動くか」

 

あくまで最初は慎重に、水面に小さな滴で波紋を齎すように。それは夜闇の白波のように揺らぐだろう。

何れ嵐のように巻き起こるやもしれぬ。

もしくは何も起きる事なく、波は千々と消えるだろうか。

手に取った端末を耳に当てる。

声は無機質ながら冷徹に、殺気すら孕んだそれを。

 

《はいもしもし、》

「私だ」

《せ、先生ですけぇ?!随分とお久しぶりで……》

「以前よりお前が計画していた宴の件だが……─────忘年会兼ねて12月(師走)でどうか」

《!!》

 

息を詰まらせたその呼吸は歓喜に揺れている。

 

「今度の抗争は私も顔を出すゆえ、日の程を伝えよ。良いな」

《も、勿論です!お待ちしております!!》

 

最後まで聞く前に通話を切った俺は呵々と笑う。

 

「愛いヤツめ」

 

 

 

 

 

次の日、和解……と言えるのか。

ツナの舎弟にもなったかのような(桃巨会の漣のような)獄寺の豹変に、俺は思わず固まってしまうのだが、それはまた別の話になる。ああ、まさかあんな事になるとはなぁ……。




死ぬ気弾の説明。
おーい情報漏洩してますよ〜
……まあ死に設定になりそうなんですけど、(黙殺)


獄寺隼人。
ツナの舎弟と化した。戦闘描写は一切無し。ミカさんはリボーン氏の視線を思って見学不参加。また今度な


何も全て隠す必要などないのではないか?
フラグ。ミカさんはここで大人しくするようなお人ではなかったのだった(楽観主義)


挑発に弱い獄寺。
ずっと幼い頃から一匹狼でやってきた獄寺くんは、日本人の血が入っている事と幼さで数多のマフィア達から嘗められてきました。言わば大人に対する防衛本能。
大人に頭を撫でて無邪気に微笑まれるなんて、そんな事なかった訳で。
胸倉を掴んでガン付けてなお、変わらぬ様子で、気の抜けるような温かな笑みを向けられる事もなかった訳で。

……つまり?(好感度微上昇)(ショック値微上昇)(無慈悲)


派手にやっておるなぁ。
着実に復活の空気に汚染されているミカさん


波紋。
それは誰に向けてのものだろうか?(コオオオではない)


12月頃の宴。
露骨なフラグである。
さぁてなにがありましたかねぇ(下手くそな口笛)


まさかあんな事になるとはなぁ……。
処刑のお時間がやって参りましたぁ〜〜〜〜(歓喜)


そんな訳で原作2話。
なんか1話につき誰かのショック値上昇させてる気が……わざとじゃないよ!(鬼畜)
なんか書いてて辛いような楽しいような(マジ〇チスマイル)



前回と大分空いてたけどこの話あげる頃には40件お気に入り増えてたんだけど……(手足の震え)
ありがとうございます!死なない程度に書きます
これからもよろしくお願いします!
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