根津氏ざまあ回。お待たせしました(待ってない)
発端はといえば、根津先生のいつもの演説を獄寺が耳にしてしまった事だろう。
隣から静かなざわめきと共に怒声と悲鳴が聞こえ、俺は授業を中断した。
「どうしたのかな……」
「この声って根津と転入生だよな?」
隣のクラスといえど獄寺は容貌と素行も相俟って、ある意味有名なのである。
とん、と教科書を置くと生徒達の視線が俺に集まる。
「うむ。暫し待て、様子を見てこよう」
このままでは授業どころの話ではないだろうしな。
そうしてのんびり覗きに伺えば、あわや根津先生が獄寺によって絞め落とされるという所であったという訳だ。
「どうしたというのだ?この騒ぎは」
「あっ、八朔先生……」
本人と見紛わんとばかりの満面の笑顔の獄寺に驚きつつ。まあその笑顔は俺に視線が向いた瞬間にはいつもの顰めっ面に戻っていたが。
「……ああ?!なんか文句あっか」
「文句と言うが、俺には生憎と状況が掴めんのだ。説明してくれるか」
一先ず手を離せ、と言えば盛大な舌打ちと共に乱暴に手を離す。崩れ落ち、大きく咳き込む根津先生は酸欠と怒りによって顔を赤くさせながらぎらぎらと獄寺……とツナを睨み上げた。
「教師に手を上げるなど何事か……!!」
「てめーが先に沢田さんを……10代目を侮辱したんだろうが!」
「まあまあ、双方今一度一息入れようではないか」
そう口にすると、根津先生の剣呑な眼差しが俺に向けられる。
「ふん……私は当然の事を言った迄だろう。それとも何だね、君が私に説教でも聞かせるのかね?八朔先生」
「!! コイツッ、」
「……ははは。私が先達である貴方に説教などと出来るはずもないでしょう?ただ、平和主義なだけです。
─────……然しながら根津先生、今この場で無用な軋轢や諍いを起こすべきではないとはご理解頂けますかな」
2人の間に手を差し入れ、少し語気を強める。
それに少し気圧されたのか。ぐっと黙り込んだ獄寺は外方を向く。根津先生はこの場が教室で、授業中だと思い出したらしい。
「では、根津先生。授業の続きを。その後で校長殿を挟んで2人……否、沢田を含めた3人から話を伺うとしよう」
「んなっ……オレもーーー?!」
「うむ。原因であってもなくても、外から聞いた状況も必要だからな」
「う……わ、分かっ……り、ました」
「……ええ、それでいいでしょう」
何処か、何かしらを企むような根津先生を後目に、俺も授業に戻る事にした。
さて、授業合間の15分休憩の間に、俺はA組の生徒らへ事情聴取をする。
「いつものだよ、独眼竜せんせー」
「あくまで仮定の話だが〜、ってさ。先生聞いた事ある?」
「そんでもって態とらしく点数皆に見せたんだよ、ダメツナの小テスト」
「26点は笑ったけど。今考えればちょっと無神経だったかなー……」
「いやいや、それを狙ったネヅコーが悪いでしょ。足を引っ張るお荷物とか、クズとか、散々言ってたじゃん」
「大体沢田が標的にされてるよ。テストの点数悪いから」
「それを聞いた獄寺がさぁ、沢田を庇って」
「なんていうか、舎弟?ていうか10代目ってなに?」
などなど。
途中から愚痴や世間話になっていたが、概要は知れたので良しとしよう。
根津先生の
となると、一概に獄寺が悪いとも言い難いな?
少なくとも、校長殿からの厳重注意は
言葉も力を持つ。人の
昼休み。食事を早めに終わらせた獄寺とツナを連れ、校長室へと訪れる。
一先ず落ち着いたと見える根津先生は、しかしやはりというか、その目の奥には怒りが未だ燻っている。
そうして眼鏡を押し上げながら心持ち大声で、根津先生は告げるのである。
「貴様らは退学だ……!!」
あなや。
と、いうのは根津先生の気が
場の雰囲気から浮かびそうになる苦笑を殺す校長は、やんわりとそれを諌めている。
「それは些か早計ではありませんか?根津先生」
「八朔君の言う通りだよ根津君、それに─────」
「ならば猶予を与えれば良いのでしょう。確か15年前グラウンドに埋めたまま見つからないタイムカプセルの発掘を業者に委託する予定でありましたよね?それをこいつらにやらせましょう」
「は?」
「今日中にタイムカプセルを掘り出せられれば今回の件は水に流してやる……だが出来なければ、即退学だ!!」
校長殿の意志を介在せず宣言する根津先生。態とではなさそうだ。それ程までに2人を嬲るのが楽しいのか。捲し立てるような言葉の節々には怒りと優越と、猫が獲物を嬲るような傲慢じみた悪意ある敵意が込められている。
校長殿と視線を交わし、同時に首を振る。
「そろそろ休み時間が終わるな……沢田、獄寺。放課後作業の前に校長室に来るように」
「……」
「沢田?……大丈夫か?」
「っ!は、はい!分かりました……」
退学が相当ショックだと見た。その様子を獄寺が心配そうに見つつ。
……当事者のいなくなった校長室で、肩の力を抜いて、今度こそ苦笑する。
「……校長殿、公立中学校に退学は」
「うん。政宗君は察しがいいね。……勿論無いよ」
私立なら兎も角ね、と。
あの場で口にすればきっと、根津先生は暴走していただろうから。……はて、先程の様子は暴走とも言えなくもないのでは……とは、内心に秘めておくとしよう。うむ。
「取り敢えず無難に注意しておくかね。ありがとうね政宗君。戻っていいよ」
「生徒達の為ですから。何かあれば、また」
「ふふ、うん。その時は頼むよ」
ドオォォォン!!
「!」
校長室を出て暫く、突如壮絶な爆発音がグラウンドから轟く─────虚しく爆音に掻き消されたチャイムは諸行無常。天を劈かんというまでの大爆発だ。
「は────あっははははっ!元気で何より!子供はやんちゃしてこそよな」
やはり穏便にはいくまいか。やはりか〜。
わかりきっていた事だった。どんな形であれ。
でもまさか、外が爆破されるとは思うまい!
砂塵が舞うグラウンドには更なる爆撃が積み重なる。風に漂うそれは、彼の纏う、どこか甘く香る火薬の匂いがした。
ドドゥッ!ガッ─────ゴオォォンッ!!
地震もかくやと言わんばかりの一際凄まじい振動が爆音と共に轟く。
窓に寄れば丁度砂煙の間に特徴的な銀髪とつんつんした茶髪が見える。それに加え何処か焦った様子で近寄る根津先生の姿もあった。
「よっと」
窓を乗り越える。
死ぬ気の炎を額に灯したツナの一撃は獄寺による爆撃の後押しもあったのか見事グラウンドを真っ二つに割ったようだ。
その地割れは中々深く、埋め立てるにしても何にしろ元に戻るのは時間がかかりそうだ。
「おぅい、怪我はないか〜?」
可哀想なくらいに青ざめた根津先生は獄寺から紙の束を毟り取って後ろ手に隠す。
……取り敢えずそれに関しては後に回すとするか。
「あっ……だ、大丈夫。怪我はしてないよ」
「そうか、良かった。獄寺はどうだ?」
「ああ?……てめぇには関係ねーだろ」
「無くはないぞ。俺はお前の担任ゆえ」
「……けっ」
大きな怪我もないらしい、外方を向いた獄寺から目を離し、改めて根津先生に向き直る。
「大事をとって2人を保健室へ連れて行きますので、根津先生。貴方は校長室へお願いします─────そのテスト用紙の件についても、そこで」
はて、俺の記憶が正しければ根津先生の出身校は並盛中学校とは比べ物にならぬ程上位の中学校だった筈なのだが?
青超えて白くなった根津先生は、はくはくと口を開け閉めして、遂には力なく項垂れた。
根津先生は学歴詐称が問題となって解任される事となった。
ただの推測に過ぎないのだが、根津先生自身が最も学歴についてコンプレックスを抱いていたのではないだろうか。それ故に魔が差し、高学歴のエリートとしての扱いを身に感じ、やめられなくなってしまったのだと思う。なまじ今までやれてしまったのだ、言い出す機会などなかったのだろう。
先も言った通り、これは推測に過ぎない。だがまあ、罪を憎んで人を憎まずとも言う。
……正直学歴詐称に関しては耳が痛いがな、ははは。
解任の報は直ぐに広まった。
ともあれである。
呼び出されたとある教室の戸を開くとほぼ同時。
「ぐわぁっ!!」
「っと、根津先生か……、……あなや」
見覚えのあるスーツを着た人影が此方に向かって吹っ飛んできた。受け止めたものの気を失っているのか、彼はずるずると床に崩れ落ちる。
その顔は原形を留めぬ程に殴打されていた。それも、鋼鉄製の何かによって。
「やあ。遅かったじゃないか」
「うむ、すまぬな」
「暇だったから
俺の所為か?
滴る血もそのままに。
トンファーを両手に腕を垂らして立つ
気負う必要は何一つ無い。彼は彼なりの矜恃があり、それに触れなければ話は聞いてくれるからな。……その上で咬み殺してきたりもするが。
雲雀殿は根津先生を咬み殺して今なお、腸が煮えくり返っているようだ。自分の愛する並盛中でこのような事があったのが酷く業腹なのだろう。
「権力を笠に着て群れを見下すなんて何様なのかな」
あまつさえ調子に乗って足元を掬われてちゃ世話ないね。
「……」
何も言うまい。
"捨ててきて"、との事だが、流石に着の身着のままに放り出すのは良くないだろう。後で家に送るとするか……その前に病院だな。
「それで、他に用があったのだろう?」
「まあね」
机の上を視線で指し示した雲雀殿に従い、数枚の書類を手に取る。
「ふむ……根津先生の解雇通知書に、並盛町からの退去通知、今月分の給料についてと、
何故も何もないのだろう。実に恐ろしい限りだ。仕事が早い。
前半は根津先生の意識が戻った時に俺から手渡せと。
「……後ろふたつはまさかとは思うが、」
「当事者に」
だよなあ。
ゼロが1つ2つ多いような数字が、さも当然かのように無機質に並んでいる。
「僕は忙しいからね。咬み殺さないだけ有難いと思ってくれないと。……切っ掛けはそこの、屑肉程の価値もない詐欺師のようだし」
優先順位の関係上、ツナと獄寺は多額の借金で許されるのか。といっても未成年のうちは保護者に請求がいくのだが……まあ、命拾いしたな。破産しかねんが。
「顔も名前も知らないけど君の所の受け持ちでしょ?渡してきて。徴収できなかったら君を咬み殺す」
「……承った」
これではまるで中間管理職とやらである。……なんだか懐かしいような、そうでもないような、うむ。
書類を小脇に、根津殿を背負う。
「ではな」
心を折られたらしい根津殿は粛々と下された命に従うようだ。
根津殿の家から出、続いてツナの家へ足を運ぶ。
日の傾きかけた頃合い。
道すがらに現れたのは、写真越しに何度か目にした覚えのある姿だった。
「ちゃおっす!お前が八朔政宗か?」
「む」
硝煙と珈琲の匂い。
その小さな体躯に見合わぬ独特の香りを纏いながら、彼は俺に問うた。
「如何にも、俺が八朔政宗だ。そういうお主の名は?」
「リボーンだ。沢田綱吉の
「ほう。お主が例の」
沢田からよく話を聞いている、と口にするとリボーン殿は俺もお前の事は知っていると返ってくる。
「ツナの副担任だろ」
「うむ。不肖の身ではあるがな」
やんわりと笑うと不敵に笑うリボーン殿は今帰る途中なのかと聞いてきた。
「まあな……いやしかし、沢田に渡さなければならない物があってな。沢田家に向かっている
「オレがツナに渡しといてやるぞ」
「ん、良いのか?」
聞けば構わねぇと俺の手から書類を受け取った。
「いやはや、助かった。色々と頼まれ事をされてしまってな、幾らあっても時間が足りぬところであったのだ」
帽子越しにその丸い頭を撫でる。
「……ツナの家庭教師なれば、またいずれ会う事があるやも知れんな」
ツナを頼んだぞ、家庭教師殿。……ああそうだ。
しゃがみ込んだまま下衣の
「飴は好きか?」
俺は好きだぞ、と。
アルコバレーノ リボーン。マフィア界最強の7人の赤ん坊の一人。
実際、目の前にした時はただならぬ気配を感じたものだ。
話してみれば、中々に茶目っ気のある良い子だった。
「良きかな良きかな」
さて。
リボーン殿が俺に関わってきたという事は、少なくとも何かしらの意図があるのだろう。
見極めか、協力者としてか。
なんにせよ、まだまだ楽しくなりそうだ。
そういう訳です(定期)
アレなんすよ、忘れてた訳じゃないんすよ、ほんとですってば。
退学クライシス
実際どうなんでっしゃろって。調べたら公立中学校では出来ないんですって。つまり私立では出来る
つまり並中は私立だった……?(真理)
……並中は公立設定でいきます
根津銅八郎(55)
伏線回収。おつかれさまでした(にっこり)
もっと凹したかったけど雲雀さんから凹られてるので許す。……寧ろご褒美なのでは(調教済み)
同時に首を振る
打つ手はない。馬鹿に塗る薬などないのだよ
グラウンド真っ二つ
修繕費に云百万云千万掛かりそうだなって前から思ってました(真顔)
その次の話ではグラウンド直ってるんですよねぇ。凄いね。
怪我なくてよかったね(小並感)
給金の4割納金要請
別名風紀委員会への上納金(と迷惑料含めた慰謝料的な)
雲雀恭弥の名を貶めた者へ科されるそれはこれでも安い方なのだった。
俺の名は
リボーンとミカさんは道端でばったり出会うのである(他意はある)
日常編で出会うならこんな出会い方もアリ?ナシ?
飴は好きか?
甘い奴だ
さあて次はどう書こうかな