月が揺蕩う復活譚   作:マスター冬雪(ぬんぬん)

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原作5話、山本武。
アニリボではないので五話寺……ンンッ獄寺氏は全く出ておりませんご了承ください。
原作編は話数がとんでもないので1話が短いのもご了承ください。
……あ、でも原作編という名のオリジナル要素山盛りの場合は別の話です。そういうことです(定期)


第34話

晴れの日がよく続く。

 

この前のツナと獄寺によるグラウンドの地割れは雲雀殿の名で業者に連絡して30分も経たずに作業が開始され、非常に大きな騒音を立てながら夜半まで休みなく行われた。その甲斐あって深夜には修繕を完遂したらしい。毎度の事なれどご苦労様だ。

 

 

そんな訳で今日も外ではのびのびと体育の授業が行われている。

青い空に描かれる白球の白い線は、実に軽やかな音を立てて舞い上がり、まるで雲に届かんばかりだ。どうやら近頃の体育の授業は野球らしい。

 

野球、といえば。武のやつ、最近随分長く居残ってバットを振っておるらしい。何度かグラウンドの端で練習するあやつにそれとなく苦言を呈したのだが、空笑いするだけで聞く耳を持たぬ。時に無茶無謀は必要である事は否めんが、修練で怪我をしては元も子もないというに。

 

焦っているのだと、父である剛殿は言う。

野球部のすためん……所謂先発選手を外されそうなのだとか。何をしようにも上手くいかず、野球を始めて以来初めての不調なのだという。

今までが上手く行き過ぎたんだと剛殿は困ったように言った。誰しも相対する事になる壁に今漸く対面して、どうすればいいのかわからないでいる。

とはいえ、馬鹿正直にそのような事を口にしては、己の何が分かるのだと糾弾されよう。その感覚は自分自身にしか解らぬもの。それゆえ、自分で気付き、乗り越えるしかないのだ。

 

 

 

 

 

その武が腕を折った、と。

 

副担任として、担任である池沢先生と共に病院に急ぎ向かい、俺達を振り向いた武の顔が。

 

「あ……、……はは、ごめん、政宗さん。オレ、」

 

 

─────政宗さんの話、もっと真面目に聞いときゃよかった。

─────自業自得ってやつだよな。

 

 

……昨晩からずっと、忘れられずにいる。

 

 

 

 

 

「と、思っていた矢先よ。このたわけ者め」

 

吹っ切れたように笑っていた武の顔が引き攣った。それに釣られてか、それとも俺の放った声に不穏な響きを感じたのか、振り返ったツナまでもが硬直する。

 

「まったく、卒倒するかと思ったぞ。爺の心臓を止める気か?」

「ま、政宗さん……、」

「マサに、……八朔先生、!」

 

3階の窓の外を眺めていた時に、突如として己の生徒が目の前を落下していったのを目にしてしまった俺の心境を答えよ。……思わず身を乗り出して飛び出してしまう所だった。リボーン殿の気配を感じて何とか押し留まったが。

ああ、それにしても、肝が冷えた。

 

「あ、あの、オレ……」

「大事ないか」

「え、あ……はい、大丈夫です」

「それは重畳。……─────怪我は治る。然れど投げ出した命は二度と戻らぬ。わかるな、武」

「っ!」

 

 

「お主が生きていて、本当に良かった」

 

 

じわりとその目に水が張るのを見ずに、その黒髪を撫ぜる。

 

「……さ、ツナの制服も用意してやらねばならぬし、大事を取って保健室に行くとしような」

「あっ、そう言えばオレ裸だったーーー?!」

 

うむ。お主のそういうところ、俺は結構好きだぞ。

 

 

 

 

 

俺から言う事はもうない。後は父である剛殿から言葉を賜るべきだ。

勿論言うぞ、事の顛末を。チク(告口す)るのかって?うむ。ははは、言い訳はせん。

 

……月並の言葉だが、知るべきだと思ったのだ。

命というのは決して、その者だけの物という訳では無いと、俺は思うのだ。俺のように存在すら朋友より賜った者はあまり居らんだろうが、その者を形作る存在は数多あるだろう。心を揺り動かされた言葉だったり、些細な思い遣りであったり、大きな傷であったり。恩師、友、……大切なもの。それら全てに、我らは生かされている。

山本武という人のそういった要素のひとつが、山本剛という、父親の愛というものではないかと……そう思ったからだ。

野球という拠り所を一時でも失って、それ以外に何も無いと目も耳も塞いで、それでは悲し過ぎる。

 

全ては俺の自己満足。年寄りのお節介とも言うがな、はっはっは。

 

 

周りの者は山本の身投げの件は冗談の類と受け止めた。しかし俺のお節介で剛殿には真実が告げられ、次の日の武の頬には真新しい痣がガーゼに覆われていた。が、それを照れ臭そうに誤魔化す武の顔はとても嬉しそうだった。

 

 

 

「あ、政宗さ、先生!」

「うむ?どうした」

 

未だに呼び慣れぬようで、取って付けたような"先生"にくすくすと笑う。

 

「あの、……ありがとうございましたッ!」

 

がばっ!と勢いよく頭を下げた武に、俺は眩しいものを見て、目を細めるのである。

 

「オレ、あの時……何にも見えてなかった」

 

自分を肯定してくれたツナの言葉に縋って、やっぱオレは間違ってないって、努力しかないって考えて。……腕を折って。野球の神様に見放されたって。そればっかりに目がいって。

 

「オレを心配してくれてる人の事なんて、頭になくて、」

「……無理もなかろう、お主はずっと野球一筋だった故なあ……」

「っ、へへ……けどさ、目が覚めた」

 

ツナに助けられて。先生に諭されて、周りを見たら友達とか、チームメイトとか、コーチとか……親父とか。

 

「オレには野球しかないって思ってたけど、でもそれが全部じゃないんだって」

 

ああ、もう大丈夫だな。

随分と成長したような精悍な顔に俺はそう感じ取った。

 

「うむ。頑張れよ、武」

「っはい!」

 

 

 

 

 

「ありがとうな、政宗くん」

「礼には及ばんさ、俺は先生だからな」

 

竹寿司にて。

のんびりと寿司を口に運んで味わいつつ。

 

「へえ、立派に先生してるんだなぁ」

「ふふ、そうか?」

 

お節介が過ぎたのではないかと少し不安だったのだが。

そう零すと剛殿は深く、形容し難い顔で口端を上げた。俺は漠然と、ああ、父の顔だと思う。

 

「本当はオレが気付いてやらなきゃいけねぇ事だった」

 

懺悔のような告白だった。

 

 

「人の命もそうだが、自分の命は、自分で繋ぎ留めなきゃいけねぇんだ。自分で、一生。背負わなければならねぇものだ」

 

 

剣士(命を削り合う者)同士だからだろう。通ずるものがあった。

信念と信念がぶつかり合って、刀を合わせて、……相手を斬る。肉を裂き、骨を断つ感覚が、相手の面が。血の海に沈んで、一呼吸置いて、息絶える瞬間……相手の全てを奪い去ってしまう時、それを強く思わせられる。

剣客は、殊更生と死を重んじている。

 

「命を投げ出せる程熱中出来るものが出来たんだって喜ばしい気もしたが、それ以上に悲しかった。オレとあいつの子だ。オレとあいつの、いっとう大切な宝物なんだ。……命の奪い合いをして、それに耽っていたオレが言うのもおかしな話だろう?……親って、そういうもんだよなぁ、」

「……」

「気付けなくて悔しかった。けど、そりゃオレの都合ってもんだ。それを抜きにして、武には教えなきゃなんねぇって」

 

そして、口を閉ざす。

 

「……嗚呼。お主は……前々より良き剣士だと思うていたが、なんだ、父親としても誇れる男ではないか」

「っ!よ、よしてくだせぇや、二重に嬉しいじゃないですか……」

「おや、照れておるのか?」

「……本当に、お人が悪い」

「ふふ、!」

 

口を酒で湿らせて、照れ隠しに握られたそれをまた、口に運ぶ。

 

「ん、美味いな」

「ありがとうございます」

 

 

 

 

山本武にとって八朔政宗という男は、"近所のお兄さん"だった。

店の常連で、少し子供っぽいところや世間知らずなところがある、だけど頼り甲斐のある兄ちゃんなのである。

たった2年がそこらの関係ではあるけれど武や政宗はそういう、所謂コミュニケーション能力が人並外れていたので、自然と遊び相手になっていた。

そんな政宗にも武が野球に熱中したように、剣道にその心身を捧げていた。

 

武は未来、何度もその光景を鮮明に思い出す事になる。

 

 

─────その背は広く、1本の鋼が通ったかのように真っ直ぐで。防具を付けずに相対していたから、その顕になった楽しそうな顔は子供に戻ったように無邪気で、剣に詳しくない頃の自分でも羨ましくなるくらいで。その剣閃はひたすらに実直で、ひとつの美術品のようにうつくしい。武は美術品の価値はよく分からなかったけれど、この光景は何処か、奇跡のように思えたのだ。

 

だから、不完全燃焼で終わったのだと、何となく思った。

 

明日の寝坊も頭の隅に置いて、武は道場で見つけた隠れ場所にこっそり忍び込んだ。そして、聞いていた。

内容はその当時はよく分からなくて忘れてしまった。だけど。

 

あの刀の舞う様子は覚えている。

剣戟の音。いのちを奪う鋼の音。

 

父親の持つ刀の流麗さ。それに応える政宗の刀の華々しさ。

流水の中を自在に泳ぐ魚と、夜空を明く照らす月。

 

剣道の型はなく、ただ、■■■■■(ヒトゴロシ)の剣舞がそこにあった。……綺麗だった。

なにより、その顔が。

父親はまるで父親ではない顔をしていた。捨て去った筈の未練という剣鬼。それを断ち切らんとする厳かな─────。

 

目に追えなくなって。終わった時、それは夢だったのではないかと思うくらい。

……武が剛に野球がやりたいと言った時、剛は少し悲しそうにも、それ以上に嬉しそうでもあったのを思い出しながら、寝床で目を閉じる。

 

 

 

─────ああ、なんて綺麗な夢だった。

武はそれから数年、それを思い出さない。その覚悟が決まるまで……その心に、刀剣の神と剣修羅の剣舞(祈り)を沈めて。

 

 

 




短いけど2月中に仕上げたんで勘弁な。1日遅れのハッピーバレンタイン!!!(尚、ちょっぴり血腥い模様)


山本武、自殺未遂。
シリアル( )。はぁい省略しちゃいますよ〜
基本原作と同じなら省略します 2度描写は好かんのだ
原作読むか他のハーメラー様の作品見てね!結局はぬん氏の趣味嗜好の模様

お主のそういうところ、俺は結構好きだぞ
ホモォは森へお帰り!そういう意味じゃねぇんだよォ!!
……シリアスとか湿っぽい空気とか、一気にクラッシャーしてくれるよね、10代目だもん。そのくらいできるできる(応援)

年寄りのお節介
諸説あり。
何かしら、大切なものによって我々は生かされている。……多分。
惰性で生きてる私が言える事じゃないってどっかから聞こえてきそう……(空耳)それはそうとチクリ魔は現実にいたら絶許なんで、そのつもりで(燃え滾る眼)

剣客は生と死を重んじている
諸説あり。
実際どうなのかは知らん。けど相手の技を終始舐め切っている奴は直ぐ死ぬだろうし。只管に剣に執着し人を斬る奴は唯の修羅(基狂人)だし。相手の命に何も思わないのは暗殺者とか辻斬りだし……(ry
いや、ほんと、この説は自信ないんで……ミカさんの中の人の主観って訳で……刀剣男士達と暮らしてた幽霊さんだから……勘弁してくれ……(切実)

武はミタ!
尚、現在の武はサラサラ覚えていない模様。
現実に父親と近所の兄ちゃんが斬り合ってるの見たら絶対夢だと思うだろ……そういう事にしといてくれください。


2連休ようやっと取れたので投稿っと。
いやしかし、仕事ないのに早起きしてしまうのどうにかしたい。二度寝したら多分昼まで寝る事になる。それは勿体ない。

あ、感想は勿論きちんと読ませて頂いております。活力です。生きる為の。ただ、最新話を投稿する時にそれまでに送ってくださった感想に対し返信する形になるので、多少遅れます。ひと区切りってやつです。でも必ず返信させて頂きますので、返信が来たら『ああコイツ漸く投稿しやがった』とでも思ってくださいな
誤字脱字はもう、ずっと無くならないんだと思って書いてます(絶望)……基、どうか教えてやってください。とんでもない間違いした時とか、報告受けて確認した際多分爆笑してるので(実際爆笑した)
評価の方もありがとうございます。皆さんの温かい言葉の数々、とても嬉しく思います。これからも皆さんに良き作品を提供できるよう、頑張って参りますので。どうかよろしくお願いします


……ところでもっとリボーンの作品増えません?読むの楽し過ぎるんですけど……


─追記─

あっ!めっちゃ大事な事忘れてた!

祝!お気に入り1000件突破!マジありがとう!オラすっげー嬉しいぞ!!
まさかこんなに人が見に来てくれるなんて思いもしなかったのである。よかったら活動報告の方でリクとか送ってくれてもいいんだぜ。感想の方に送るのはやめといてね!ぬんぬんとの約束だぞぉ!
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