月が揺蕩う復活譚   作:マスター冬雪(ぬんぬん)

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お久しぶりです。石投げないで構えないですみませんすみません
失踪してません
こそっと投下


第39話

今朝の内にあらかたの業務を済ませた三日月は放課後、剣道部に混じって剣を振っていた。

実を言うと、ベルの発言に影響を受けたというだけではない。三日月は日々より(斬れ味)を鈍らせぬよう剣を振っていたのだ。……三日月が知る由もない事だが、密かに設立されているファンクラブが毎朝剣道場の外にて小さく声を上げている。

 

「……ならんな」

 

されど三日月の顔色はいまいち晴れない。

どうにも振り落ちぬ錆付きに、三日月はもう一度ならぬと零す。

ここ最近はリボーンを筆頭としたボンゴレ本部勢力の目を気にしてプルトーネとしての活動はおろか深夜帯の外出をも控えていた三日月。肉体的に(練度)は衰えていない。が、感覚的に鈍りが出ているのは否定し難い事実だった。

何も、血肉沸き踊るような死闘を演じたいという訳では無い。ただ、何れ戻るであろうXANXUSの目に映る自分が、鈍り切っている訳にはいかぬだろう。天下五剣としての誇りもある程度は持ち合わせている。

 

……止むを得まい。

 

 

 

 

 

「戯れに来たぞ」

「ワオ。そんなに死にたいなら言ってくれればよかったのに」

 

限りなくにこやかに言ったのだがお気に召されなかったらしい。返ってきたのは銀に輝くトンファーである。

 

「暫く見ないと思ったら何しに来たの」

「言ったであろう。戯れに来た、と」

「……君には目が付いていないのかい」

 

うむ。書類の山に囲まれている今のお主に言う言葉ではなかったわ。

恐らくあまり休めていないのだろう。雲雀殿には珍しく僅かに疲労が見える。

 

「……。よし、興が乗った」

「はあ……?」

「何もせず手ぶらで帰る訳がなかろうて。雲雀恭弥。今日1日、この私を使う気はあるか」

 

ぽかん、と。有り得ない事を聞いたとも言いたげに筆を止め、目を見開いた雲雀殿。

 

「伝え聞くに、いずれ私を叩き伏せていいように使うと言っていただろう?その前の性能実験のようなものさ」

「頭おかしいんじゃない」

 

弱い者が強い者に従う(食われる)のは当然だと考えている雲雀殿には些か突拍子がなかったようだ。

うだうだと言うようなら機密も関係無く書類の塔を奪うと笑わない目で笑ってやると、───外套と仮面で伺い知れないだろうが───本気であると認めたらしい。雲雀殿は仕方なく塔の一部を抜き出して投げ渡す。

勘違いするな、と言葉を付け足して。

 

「断ったって聞かないだろ」

「まさか」

「僕は同情の類は嫌いだ。特に君のソレは」

「何故?」

「……言うと思う?」

 

言わぬだろうなあ。

ソファーに座ると同時、ダーツのようにペンが投げられる。

そちらに目を向ける事無く指股で挟むと雲雀殿は舌打ちした。

……さて、やるか。

ヴァリアーで5年培われた書類処理技術、どうぞご覧あれ。

 

 

 

 

 

何れ打倒し支配するとはいえ、今は格上。

そんな彼に自分の弱さや欠点を見せるなんて、自分のプライドが許さない。

彼が日の下、窓からひらりと現れた時、雲雀は身を強ばらせた。まるで悪い事をした子供のように。弱味を見せてしまった事を恥じる様は野生の獣のように。

 

近頃町は騒がしく、それに伴って町の各所が損傷している。修復工事を行うにあたり、面倒な手続きは町の実権を握る雲雀に全て回ってくる。部下である草壁に任せるのも悪くはないだろうが、風紀委員会の活動費を扱う事項ばかりは雲雀の目とサインが必要だ。そしてそちらの方が───草壁が無能なのではなく、雲雀が優秀なだけの話───手っ取り早い。

修復箇所の写真と工事内容、そして業者の請求金額とその内訳。最凶と名高い雲雀に経費を誤魔化すような肝の据わった一般人がいるとは思えないが、実際に彼我の差を察しない馬鹿がいるのも事実。雲雀が目を通さない訳にもいかない。

 

未だ、仕立人は分かっていない。逃げ足が早く、証拠を残さない為だ。

人がガードレールを突き破っただの、町中で銃声がしただの、人とバイクがぶつかっただの、グラウンドが割れただの、爆発があっただの、校門の鍵が融け落ちていただの。その度にどこからか多額の金が風紀委員会所有の預金通帳に入ってくるのには、雲雀自身薄気味悪く思っている。が、使える物は使う主義の為───勿論首謀者はタダでは済まさないが───そこから賠償金や工事費を出している。

 

要するに、請求書の確認という余計な業務の所為で負担が何倍にも膨れ上がっているのだ。例えそれを上回る入金があったとしても割に合わないのである。

それでも、並盛町(ナワバリ)を守るのは支配者たる雲雀のすべきこと。

 

 

 

「終えたぞ」

 

その声に雲雀は顔を上げる。

夏の盛りだというのに暑苦しい分厚い外套に口を覆う頚巻、覗く目元を隠す仮面。

いつもよりは幾分そのフードが浅く被られているが、それでも彼の容貌を窺い知る事は難しいだろう。

書類の束はおおよそ100枚ほど。それが一時の思考の間に目通しされたと言うのである。雲雀は表情に出さないまま驚愕した。

 

「こちらが確認済みだ。問題はなかった。この数枚はおそらく誤算だろう。計算が合わん。……そしてこれは明らかな不正だ」

「……貸して」

 

据わった目をした雲雀が1枚の書類を奪う。

 

「ここと、ここ。事前の調査では道路の補修のみのはず故この二項は不要だ。写真と地図を比較しても重要な設備等は通っていないようだしな」

 

……このような事があるから手を抜けないのである。

 

ふつふつと沸き上がる怒りに細く息を吐く。制裁は確実に下す。

他の書類をざらりと見る限り、問題なしの方にも見逃しは無さそうだ。

 

「なんだ。言いたい事があるならば言うがいい」

「……。ふん」

 

雲雀はプルトーネの目の前に書類の塔を落とした。

……コレを下す理由が今ひとつ増えた。

 

 

 

 

 

書類が片付く頃には窓の外は夕暮れに染まっていた。

肩を回す雲雀は副委員長の淹れた紅茶を味わっているプルトーネを見る。

 

「……」

 

結局コレは何しに来たのか。ふと疲労感に鈍る頭を回す。

 

「ねえ」

「なんだ」

「戯れに来たんだって?」

 

プルトーネはフードの下で傲慢に口角を上げた。

 

「いいよ。付き合ってあげる」

 

書類仕事で固まった身体を解すには良い気分転換になりそうだ。元来、強い人間と戦う事は好きだ。ムカつく対象であるという事を脇に置けばプルトーネは体の良い遊び相手になる。

 

少しばかり機嫌の良い雲雀はプルトーネと遊んでやる(・・・・・)事にした。

 

「随分と傲慢な物言いだな?」

「遊び相手がいなくて寂しがって僕のとこまで来た君に、何かを言える資格はないね」

「……」

 

口をへの字にして何とも言えない顔で閉口したプルトーネにくつりと笑い、今日こそそのフードの下を拝んでやろうと窓の(さん)に足を掛ける。

普段遣り込められている立場が入れ替わった様。雲雀は何とも愉快な心地だった。

 

 

プルトーネは雲雀の視線が逸れた一瞬、仕方ないと言いたげに、それでもとても嬉しそうに微笑み、その後を追う。

 

 

 

 

 

 

「それさぁ、孫に構ってもらって嬉しいじじいの反応そのものじゃん?」

「はっはっは!あやつが孫か。はははは」

 

いやはや、悪くないやもしれぬ。

切り傷と軽い打ち身程度で済んでいる三日月は、やはり機嫌良さげに朗らかに笑う。

ベルフェゴールは呆れたように鼻で笑いながら、しししと揶揄うように声を上げた。

 

 

 




短め。
孫と戯れるじじいの話(語弊あり)


いや……その、大した理由はないです(戒め)
ちょっと他の連載とか自サイトの奴とか某支部様にぬんぬん名義で垢作ったりとかしてただけです……
リアルの事情とか色々重なりましてストレスレベルがカンストする勢いでした(白目)
多分これから月一連載にもど……れるんじゃないかなぁ……だといいなぁ……

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