月が揺蕩う復活譚   作:マスター冬雪(ぬんぬん)

8 / 42
3ヶ月目の話。
暗躍パートは無理ぃ……

そういえば評価に9とか10とか入ってたけどホンマにこれにそんなんいれていいん?めちゃくちゃ嬉しい
筆止まりそうだったけど必死に動かした。
エタる事はなかった。よかった……

ではどうぞ


第8話

 

 

「夜半にすまぬな、少し良いか」

「ぁ……!?誰だおま、え、?」

 

貫いたのは月明かりに反射する、美しき刃。

 

「俺は、お主の死神よ」

 

 

 

 

 

監視任務と並行して暴力団の内情を探るのに半月。どうやらこの町を裏だけではなく表からも支配しようとしているらしい。

破落戸たちが不良あがりの少年たちに薬や武器を与え、町を無法地帯にする計画が持ち上がっていた。

その少年たちに町の警察機関を襲わせるなどして暴動を起こしたいらしいが、明らかに浅慮が過ぎる、計画とは名ばかりの夢物語。上手くいく訳が無い。県警やその他の警察機関が動くだけの事だ。

……しかしまあ、麻痺は免れんがな。

 

平々凡々の町ひとつ世紀末にして支配し、住みづらい表社会を闇色に変えて広げていきたいのだという。

関東郷道組樋沢会の若頭が、並盛町にある他の勢力や郷道組の下部組織の比較的若い人間を、言葉巧みに同志にしている。彼が主犯だろうが、それに対し古参の幹部らが何かしら思惑の影もチラついている。証拠として、明らかに財力や流通の集まりが良過ぎているのだ。

それを止めようとする者もいたが、余程の地位か腕のある者以外片っ端から消されていた。

 

警察も実際に事件が起きていない為に表立って動けず、寧ろ計画段階である為に気付いていない可能性すら出て来た。

その要因のひとつに、並盛町に潜伏する勢力の多さが挙がる。

 

17。下部組織、小規模組織併せた数だ。

 

あまりに多い。警察の手が回らないのも無理はない。

斯く言う俺も殆ど寝ずに暇を縫い、時に姿を隠し、時に姿を偽って情報収集してきたが……半月も掛かってしまった。

が、漸く火種になりそうな人物を特定出来た。

 

件の若頭、樋沢淳一。

その側近、椛田吾郎。

相談役、濱弘英二。

そして積極的に煽動を務める実質的な実行者、天堂匡正。

 

 

本当はヴァリアー的に不穏分子は軒並み、とするところだが、任務中である俺がそのように動けば流石に存在が露呈する。

俺がするのは上記4名の暗殺。

……そして同盟間での同士討ちの誘発である。

 

「うむ……少し時間が掛かり過ぎた。此処からは時間勝負だな。……まあ、強行突破の作戦だが」

 

諜報任務とは一体。下手をすれば護衛より護衛してる気がした三日月であった。今更である。

 

 

 

 

 

実行者である天堂匡正以外の3名は基本拠点の自身の部屋にいる為容易に暗殺出来た。

 

相談役は夜遅くまで計画書を書き記していた所を。

側近は自室で晩酌していた所を。

若頭は2人の死体が見つかった時の騒ぎに自室に閉じ篭った時に乗じて。

 

そこで俺は1度その場を脱し、実行者である天堂匡正の場所を追い、徐々に夜が明け始めた空に身を投げる。

どうやら相談役と側近が殺害されたと同時に逃げ出しているらしい。車に付けられた発信機が法定速度を大幅に超えた速度で進んでいっている。

 

計画の前段階でバレるとは思っていなかったらしい、やはり若い。予定通りのルートを辿っていくのに、口元だけで笑う。

着の身のまま高飛びする莫迦ではなかったようで何よりだ。

 

 

「オレは悪くない!オレは悪くない!アイツらが、アイツらがやれって言ったからやったんだ!こ、殺されてたまるか!!」

 

隠れ家にしていたアパートの、錆びれた階段を駆け上がって来る。

 

「っ!?だ、誰だてめぇは……!!」

 

耳に付けていたイヤホンを取り、キャスケットの下で目を細めてふらりと笑う。

 

「俺か?ははは、今日はよく問われる日だ」

「じゃ、邪魔するな!そこを除け!!」

「そうはいかんな。まあ、聞いていけ───」

「退けって……言ってんだろぉぉお!!」

 

目を血走らせ、視界すら、意識すら怪しい、哀れな程に狂乱した男。

取り出したナイフを蹴り飛ばして腕を取って引き、つんのめった所を背後から首に腕を回す。

 

「───冥土の土産にな」

「ぁ、」

 

枝が折れるよりも鈍く、生々しい"潰れる"音。

 

「三日月宗近だ。次があるのであれば、もう少し真っ当に生きるのだな」

 

男を背負い、階段を降りて男の車に乗せ、それを走らせる。

この車は樋沢会の事務所で乗り捨てる。

 

 

 

 

 

同盟は計画がおじゃんになった事に激怒するだろう。

武器の取引、薬の取引の最中に警察が突入した件から、足が着いて一斉検挙された組も少なくない。

かなりの金を投資していた裏の存在も手を引くどころか、報復すら有り得る。

……まあ、検挙の件は俺が匿名で流した事だが。

 

これに乗じてトップを失った樋沢会に報復し蹴落とすも良し。

焦って尻尾を出して、見回り中の俺にリークされて検挙されるも良し。

樋沢会の殺人事件の情報で一般人に手を出そうという者が牽制されるも良し。

 

……諜報の副産物として手に入れた、並盛町にある組の内部情報を対価に、協力を取り付けた組がある。烏合の衆となっている会を彼らに取り仕切ってもらう事になっている。

この半月、内情を知る為だけに潜入を繰り返していた訳ではないのだ。

後は成り行きに任せるしかないのだが。

 

「では先生、後は儂らが取り仕切ってええんじゃのぉ?」

「ああ、構わん。好きにしろ」

 

顔を隠し、黒ずくめで、勧められたソファーに腰掛ける。

目の前には巨漢だの強面だのが並ぶが……はっきり言ってヴァリアーに較べれば実力的には下だな。

殺気と軽い組手で直ぐに降参したのには拍子抜けだったが。……その後は協力者として、柔軟に聞く耳を持ってくれて、俺としてはとても助かった。

……、……改めて思うが、俺に策を立てる才は無いな。勘弁してくれ。はっはっは。

 

「やりやすぅてしゃぁないわ。センセが儂らの目の上のたんこぶ、全部排除しちまった。若いもんばかりの浅ぇ組だが、あれだけ結束してた同盟がバラバラだもんなぁ」

「ほんま、先生は怖いお人じゃ。散らばったわけぇもんはちゃぁんと引き受けますけ。名簿に書いとる人間は1人たりとも残しゃせんです。ええ、先生。この恩はきちんと返させてくだせぇ」

 

それは重畳。

 

「煽ては良い。それより、貴様ら分かっておろうな?無辜の民を巻き込むような極道にあるまじき行為をしてみろ。今度はこの牙が貴様らの喉笛を噛み千切る」

「も、勿論ですけ。……ただ、向こうから飛び込んで来た奴ァ、その……」

「それで良い。そこまで私も無理は言うまい。寧ろ骨の1本や2本圧し折って捨ておけ」

「容赦ないですなぁ……」

「この組の若人にも勝てぬような、覚悟もなく此方に入ってくる者には……寧ろ勉強料としては格安だろう」

 

増えるのは、少し困る。

少し顔を引き攣らせた組長と補佐に釘を刺して席を立つ。

 

「"此処ら一帯は貴様らに任せた"。何かあれば手を貸そう。利子は高いがな」

「それは末恐ろしい。自分たちで何とかしてみせますとも」

「いつでもウチに来てくだせぇ。先生なら歓迎しますけぇ」

 

 

権力はひとつに絞った方がいい。多ければ多い程争いは増える。少しずつ少しずつ、暴力団は数を減らしひとつに纏まるだろう。俺がいる限りは、治安維持にも少しばかり手を貸そう。

 

 

「報告する事が山程あるな……今の内に纏めておくか」

 

大きく欠伸しながら物陰で変装を解き、帰路につくのだった。

 

 

 

 

 

「ねえ」

「あぁ?ンだガキか……悪い事ァ言わねぇ。とっとと帰んな」

「……此処のトップ、出してくれる」

「……!……おいおい坊ちゃん、ウチに入ろーってのか?じゃあ話は別だ」

「此処の方針でな。イキがってるガキには現実を教えてやる事になってる。その許可もな」

「骨の二、三本は覚悟して、」

「ぐだぐだと煩いよ。邪魔をするなら一人残らず────」

 

 

「────咬み殺す」

 

 

 

 

 

「暴力団の管理は委託して事を終えた。暗殺した者の捜索は有耶無耶になり、樋沢会トップ暗殺事件は実質迷宮入りだ」

《……まあいいだろぉ゙。護衛の様子は変わりねぇのかぁ゙?》

「ないな。事を起こしたのは監視対象の家から1km先。護衛の拠点からは2km先だ。元々小競合いが多い事もあって、暗殺事件が起きた、程度にしか思っていまい」

 

後日こっそりと三日月が探りを入れたのだが、警察の一斉検挙も概要は深くまで調べの手が入っていないようだった。

 

《裏を治めるジャパニーズマフィアとのコネか……役に立つのかぁ゙?》

「期待はするな。古強者といえど平穏な町の人間だ。……とはいえ現地を占める組、……万が一"不測の事態が起きた時"の備えは、多い方が良いだろう?」

《!……まさか全部計算ずく、とは言わねぇよなぁ゙?》

「さて、どうだったか」

 

三日月は飄々と躱して好々爺然と笑った。

 

《ふーん、じゃあ三日月、殺したんだ》

《あ゙っ、おいベルぅ゙!!》

「ベル殿か。何だか久しいな」

 

脇から受話器を掠め取ったらしい、ベルは特徴的な笑いを零しながら三日月に問う。

 

《どうやって殺した?》

「うむ……。1人目は給仕を装って飲み物を持ってきた時に喉に刀を滑らせた。2人目は酒に酔っていた所を酌をしてやると言ってな、近付いて首を刈った。3人目は2人の死体が見つかる頃を見計らってその者の部屋に待ち伏せてな、内鍵を閉めて閉じ篭った所を後ろからトスッと」

《最後は?》

「血を出させる訳にはいかなかったのでな。ナイフで斬り掛かられたので、手元を蹴り飛ばして、背後から首を折った」

《ふぅん。……でもま、王子ソッチ行かなくて良かったかも》

「と、言うと?」

《3ヶ月で4人だろ?全然殺し足りねー。ぜってーフラストレーション溜まる》

 

それに下民と仲良く暮らすなんて有り得ねー。だってオレ王子だもん。

ベルの口癖に、少しだけ前の筈であるが酷く懐かしく思い、三日月は思わず口元を綻ばせた。

 

「こちらはこちらで、中々良いものだぞ。そうだ、美味い寿司屋を見付けたのだ、ベル殿もこちらに来る時は食べるといい」

《スシ?……ふーん、王子が気に入らなかったら、じいさん針千本の刑だからな》

「年寄りは労ってくれ」

《見た目レヴィより若い癖に何言ってんだ》

《おい、世間話してんなぁ゙!報告中だぁ゙、どっか行けぇ゙ぇ゙ぇ゙!!》

《耳元でうっせーんだよ!……あ、三日月、此奴お前がいなくて剣の相手がいねぇって寂しがってるぜ》

《ゔお゙お゙ぉぉぉい゙!!何適当言ってやがんだてめぇ゙ぇ゙えええ゙!!》

《うげっ、剣振り回してんじゃねぇよクソ鮫……っじゃーな三日月!》

「おう、息災でな」

 

ベルが部屋を出て行き、スクアーロは怒りを抑えながら早口で電話口に出る。

 

《詳しい事は報告書に書けぇ゙。忘れんじゃねぇぞぉ゙》

「あいわかった。スクアーロ殿、」

《あ゙?》

「帰った後、お主の研鑽を見せてくれ」

《……お゙う。てめぇ゙もその剣、鈍らせてんじゃねぇぞぉ゙》

 

 

 

 

 

観察記録・其の参

監視対象に異常無し。行動範囲に多少変化あり。

今回の事態で護衛に影響は無い。護衛の情報収集能力及び情報の取捨を調査するべき事柄として第3優先事項とする。

前回の記述通り暴力団計17の内8を検挙・壊滅、現地協力者の組織に吸収させた。現地協力者との関係は良好。彼ら自身の今後の方針として、残りの小規模団体の合併が予測される。

暗殺した人物は4名。何れも目撃者無し、死体は樋沢会が処理済み。尚、武器によって特定は出来ないよう切口、及び鬱血は焼き、判別は不可能。

以上の過程で脅威の排除を終えた。

今後も情勢を見ながら本部に許可を仰ぐ。

報告は以上。任務を継続する。

 

 

 

 




露骨に伏線張ったけど許して
今日本にいる守護者って半分くらいなんだね。直ぐネタが切れそう

空白の8年編は全26話の予定です。
先が長ぇぞ!



没セリフ集

同士討ちを誘発〜のところ。
三日月「まあ、なんだ。精々潰し合って数を減らしてくれれば良し。見るに耐えんが、な」

ブラック過ぎるわ……闇堕ちしてるわ……


「まあ、聞いていけ……。月に代わってお仕置きだ」
コキャッ
「月(俺)は何時でもお前達の悪行を見ているぞ」

ギャグかよ


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。