ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
そんな彼女たちは一体何をしでかすのやら……。
そんなこんなで、イッセーはいつも以上に勉強をする羽目になっている。
なにせ、ただでさえ中間試験があるってのに、そのうえで中級昇格試験を受けなきゃいけないからな。
え? 俺? 俺は良いんだよ。
だって俺、勉強は趣味でやってるからな。毎日予習復習は欠かしてねえし、今更赤点はとらねえよ。
普段の学力を試す為の試験なんだから、普段通りのスタイルで挑んだ方が正しく分かるってのも正論だろ? 付け焼刃はすぐに外れるってもんだ。
で、そんな中オーフィスはじーっと見つめてるわけだ。イッセーをな。
……ぶっちゃけ勉強に実が入らねえだろう、これは。
と、いうわけで。
「……ま、ざっとこんなところだな」
「わかった。やっぱり不思議」
ちなみに姐さんは、別室で勉強中だ。
「ほら、これでいいだろ? イッセーは明日試験なんだから、これ以上気を散らせるなよ」
「わかった。ドライグ見たいけど、今日は我慢する」
素直にそう言ってくれるのは良いんだが、さてどうしたもんかね。
ぶっちゃけ、今この場で切りかかっても返り討ちに会うってことだけは分かる。
全盛期の二天龍がタッグを組んでも勝てねえレベルの化け物だ。俺一人で挑んだところで勝てるわけがねえ。
だけど、なんていうかすっげえ隙だらけなんだよなあ。
ここで急所を突き刺したら、それで全て終わるんじゃねえかって気にもなる。
ま、失敗したらその場で大惨事だからしねえけど。
……争いがなければ英雄は生まれねえのが悲しいところだが、だからって争いを未然に防げるのにあえて火を注ぐってのもあれだろうしな。
平和的に解決するなら、そっちの方がいいだろうしなぁ。
「やっほー! ヒロイ大丈夫っすかー!」
と、そこにペトがやってきた。
ちなみにここはグレモリー眷属及びその関係者が使用する特別トレーニング空間だったりする。
「差し入れもって来たッスよ!」
「おぉ 悪いなペト」
俺は差し入れのスポーツドリンクを受け取りながら、天井を見上げる。
しっかし俺ら、色々特別待遇だよなぁ。
こんな特別空間をもらってる若手悪魔なんて、ごく一部だ。しかも関係者の俺が使わせてもらってる。
それだけ俺達がトラブルに巻き込まれてるって事でもあるんだが、しっかし感謝するべきだな。
こんなところがあるからこそ、桁違いに速い所為で広いトレーニングスペースを必要とする龍槍の勇者が使えるんだ。サーゼクス様達には感謝しねえとな。
ま、オーフィスがここにいるから心臓に悪いんだが。
マジで隙だらけなのが逆に怖い。俺達が束になってもかなわないと、アザゼル先生がはっきり言ってるからな。ちょっと怖い。
「はいオーフィス。オーフィスは野菜ジュースを飲むっすよ~」
「ん」
怖い……。
「でもオーフィスはもっと健康に気を遣うッス。お菓子ばっかり食べるのはダメっすよ」
「お菓子、おいしい。ダメ?」
怖……い……。
「強くなりたいなら、健康には気を使わないとダメっすよ」
「強くなる? それ、必要ある?」
「何言ってるっすか。グレートレッドを倒したいんスよね? だったらグレートレッドより強くなることを目指すのは立派な選択肢ッス。同格で満足しちゃいけないっす。格上を目指すッス」
怖……。
「強くなる? どうすれば、いい?」
「お菓子ばかり食べないことっす。食は生活の基本っスから、野菜や肉などバランスよく食べるのは強くなる以前により良い生活の基本っスよ? あ、暴飲暴食にならない程度ならお菓子も食べて大丈夫っすからね?」
「他には? 他にはどうすれば、いい?」
「そうっすねぇ。人間の姿になってるなら、武術を習得するのもいいかもしれないッス。パワーを無駄なく拳に乗せることができれば、それだけで少しは強くなるッスよ」
…………。
「ほかには? どうすれば、グレートレッド、倒せる?」
「まあ、基本的には日々の精進っす。ちょっときついぐらいのトレーニングを毎日続けるだけでも、だいぶ変わるッスよ。ま、ペトは才能がなさすぎて接近戦とか中距離戦とか全然伸びなかったっすけど」
「才能、ない? ヴァーリ、ペト褒めてた」
「狙撃しか能がないっすからねぇ。それ以外だと上級堕天使失格ッス。最近は対策も取られてるせいで、ペトは足手まといになりそうで……」
「そんなことない。
「でも最近の敵は頑丈なのも多いっす。ニエとの時はお姉様の窮地だったのに、露払いしかできなかったっすから……」
「大丈夫? ペト、落ち込んでる?」
「実はそうなんっすよ。ペトは当てることしか能がないから、火力も最近は頭打ちだったもんで……」
……怖くないな。
ペト、いつの間にやらオーフィスと打ち解けてないか? イッセーやドライグより話してないか?
っていうか、なんでペトは敵の親玉のパワーアップに貢献してるんだよ。指導すんな。
というより、そんなもんは禍の団が教えてないとおかしくねえか? なんで割と簡単な事も教えてねえんだよ、禍の団の連中は。教えろよ馬鹿か。
そして今やペトの悩みをオーフィスが聞いている状態になってんな。
まあ、最近はペト対策をしている連中もいるからな。
上級堕天使の攻撃程度じゃびくともしない奴を連れてきたり、狙撃の警戒担当を用意したり。
ペトはある意味で俺らの中で一番の化け物なんだが、スペックが上級堕天使止まりだからな。しかもオーソドックスだから特殊な切り札とかないし。
ペトも何かしらの底上げが必要なんだろうが、しかしそれも困難ってわけだ。色々と悩むところもあるんだろうな。
……最近は人工神器の開発も進んでるとかいうし、アザゼル辺りがアップグレードするしかないんだろうか?
「大丈夫、ペト、とても脅威。だから元気出す。よしよし」
「こ、この子いい子っす! 可愛いっすー!」
完全に立場が入れ替わってるな、オイ。
……俺、ツッコミ入れた方がいいんだろうか?
Other Side
「小猫の友達に怒られちゃったにゃん」
そうふざけて部屋から出て行った黒歌は、少しだけ歩くと視線を廊下に向ける。
「……隠れても無駄よ。仙術使いってのはね、気で感知できるから感知能力は高いの」
鋭く、敵意すら向けた視線。
それに観念したのか、リセス・イドアルは肩をすくめながら廊下の角から姿を現した。
「……そう言えば、美候がそんなことを言っていたそうね」
その言葉とともに、沈黙が訪れる。
黒歌は明確に警戒心を向けていたが、リセスは別段警戒心を強めていない。
「……小猫のガードマンのつもりだったんでしょう? ちょっかいかけた私に何か言うことはないの?」
「まあ、最初はそのつもりだったんだけどね」
黒歌の言葉を、リセスは全くごまかそうとしなかった。
元々ヴィクター経済連合のメンバーである黒歌は、三大勢力に与しているリセスにとって敵である。
そんな勢力から、よりにもよって一応の首魁であるオーフィスがやってきた。
大検を取る為の勉強をしているとはいえ、現在進行形で試験準備に忙しいイッセーほどの忙しさはない。そんなリセスが監視をするのは当然だともいえる。
そんな時に、よりにもよって小猫にちょっかいを駆ける馬鹿が出てきた。
小猫は本来まだ発生しないはずの発情期だ。更に、その欲求に従えば死ぬ可能性が非常に高いという厄介な状況。そこに因縁のある黒歌が介入。
はっきり言おう、イッセーが入ってきた時は闘う事すら本気で覚悟した。
なにせ小猫はイッセーに発情しているのだ。黒歌も発情期を持つ猫又である以上、その手の手練手管を習得していてもおかしくない。小猫の誘拐を試みて、無理だと悟ると殺す気で仕掛けてきた事もある前科がある。
なので、オーフィスを敵に回す覚悟すら決めかけていたのだが―
「―流石は体つきのいい雌猫ね。発情期のコントロールはお手の物って事かしら。アザゼルも制御できるらしいとは言っていたし」
「まぁね。術に関してはお手の物だし、それ位はできないとやってられないわ」
皮肉交じりのリセスの言葉に、黒歌は苛立ちながらも返答を返す。
既に、小猫の発情期は収まっている。収まるように黒歌が手を加えた。
それを、直接確認せずにリセスは察してのけたらしい。
「まあ、私は淫売だから、そういうのには鼻が利くのよ」
「あらあら、自分の男を自殺に追い込んだ雌奴隷ちゃんは言う事が違うにゃん」
殺し合いレベルの喧嘩をするつもりで黒歌は嫌味を言ったが、リセスは苦笑を浮かべるだけだ。
まるで気にしてないわけではない。だが、激昂する様子は欠片も見せなかった。
……間違いなく人生最大の黒歴史を、塩だらけの手で触れた自信がある。黒歌としても思いつく限り最大限の罵倒をしたつもりだ。
なのに、リセスはあまり気にしてなかった。
「……怒らないの?」
「事実だもの」
さらりと、リセスはそう言った。
本当に彼女は怒ってない。仙術などで体調を探ってみるが、怒りの感情を浮かべているようには見えなかった。
「一万人以上いるスタジアムで、まるっと全部見せられたのよ? あの後どれだけクレームが来たか分かってるの?」
既に慣れたとでも言わんばかりに、リセスは再び肩をすくめて両手を広げる。
確かに、言われてみればその通りだ。
だから自分も知っている。そして、少なくともあの会場にいた者達は知っている。老若男女問わずにだ。
子供の情操教育に悪すぎるから、あの後クレームの百や二百は来てもおかしくないだろう。
「私は、ペトとヒロイの
自虐でもなんでもなく、事実としてリセスはそう言った。
そして―
「―あなたの方が、まだ英雄と思えるんじゃないかしら?」
「―どこまで知ってる」
本気で殺意が漏れ出た。
……黒歌の主は、間違いなく質の悪い部類だった。
父親は自分達を子供と認知するのを面倒くさがり、主は主で外道。そして我らがリーダーの子供を産みたくても、リーダーにその気はない。
黒歌は間違いなく男運が悪い部類だ。
その中でも、特にかつての主が問題だ。
……眷属の強化に熱心。そう言う意味ではリアス・グレモリーと似ているかもしれない。実際同類と思った事もある。
だが、あの男とリアス・グレモリーを一緒にするのは流石に失礼だと今なら断言できる。
眷属に無茶な改造を施す外道と、眷属の成長を手助けする才媛。これを同列に扱うほど、黒歌は馬鹿ではなかった。そんなものが術の使い手として大成するわけがない。
だが、それを彼女が知っているとは思えない。
なのに言い当てた。
その警戒心むき出しの視線を真正面から堂々と受け止めて、リセスは眉間に指を当てる。
「……流石に何日もいれば分かるわよ。下衆に翻弄された経験者の匂い、隠しきれてないわよ」
「女の勘も、侮れないわね」
どうやら、ほぼ勘で当てられたらしい。
この女の人生経験も壮絶だが、何やら同列扱いされているようだ。
「言っとくけど、私は改造手術を受けさせられそうになった事はあっても、凌辱された事はないわよ?」
「……なるほど、姉妹丼を強引に迫られて殺したわけじゃないようね」
「エロから離れるにゃん」
まあ、ゲスが自分の欲望の為に体を弄んだ……といえば似てるのかもしれないが。などと黒歌は呆れ果てた。
「まあ、リアスはそういうことはしないから安心しなさい。あの子ほど善良な子、中々人間でもお目にかかれないわよ?」
「確かにね。心配したのが馬鹿らしくなったにゃん」
悪魔など皆同じ……と考えるのは流石にリアスに失礼だったと、少しは反省している。
もうそれで充分だと思ったのか、リセスは苦笑を浮かべると踵を返した。
「……お互い、恨まれたままはつらいでしょ? 酒と一緒に愚痴言うぐらいなら、一回ぐらい付き合ってあげるわよ」
その最後の言葉に、一瞬本気で飲んでしまいそうになったのは、なぜだろうか。
そこまで考えて、黒歌はすぐに自嘲した。
そんなもの、大好きな人に敵意を込めて睨まれた者同士だからに決まっているのだから。
Side Out
ペト、オーフィスに愚痴るの巻。
いや、結構最近になって気づいたんですが、ペトの強化が割と大変なんですよ。
戦闘スタイルが間違いなく完成している部類だから、変にいじくると違和感だらけになる。だからといって努力で底上げしようにも、ペトは一生懸命努力して得た者が、ちょっと練習した狙撃の技量に追い抜かれるぐらいセンスがない。
そこで今回、とっかかりとなる苦肉の策を開発しました。お楽しみください。
そしてリセスは黒歌の事情をよくは知りません。なにせ現政府も良くわかってないところがありますからね。
ですが、かつての自分の経験により、嗅覚は人よりちょっと敏感なので、何日も過ごしているうちに「あ、コレ誰かの悪意で人生めちゃくちゃにされた心当たりあるんじゃないか?」と気づきました。
なので、黒歌に対する評価はだいぶ変わっていますね。むしろ、駄目な方向に動いてしまった者同士のシンパシーとか感じているでしょう。