ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
そして残るニエたちはどうするのかといいますと……。
よっしゃ! 敵将、討ち取ったり!!
魔帝剣グラムの担い手にして、英雄シグルドの末裔。
その戦闘能力は禍の団でも有数の実力者。
姐さんに敗北し、彼女の自嘲の言葉を罵倒を勘違いして暴走して二年間。あの野郎マジでシャレにならない実力者になってやがった。
アドバンテージであった数々の魔剣をあえて捨て、グラム一振りで二年間鍛え続けたその技量、まさに英雄シグルドの末裔に相応しい。
そして姐さんと何度も激戦を繰り広げ、果ては姐さんとは別の形で強化まで行い、姐さんの腕を切り落とすまでに成長した。
だが悪かったな。姐さんは一人じゃねえんだ。もう、一人なんかじゃねえんだよ。
その二年前からペトとずっと一緒で、そして俺達とも一緒なんだ。英雄派として活動しながらも、その実一人で戦ってきたお前とは違う。
友情を理解できないといっているお前には分かるまい。
姐さんには、俺達がいるんだよ。姐さんは一人じゃねえんだよ。
「……姐さん。やったな」
「私じゃないわよ、追い込んだのは祐斗だし、倒したのは貴方じゃない」
姐さんはそう言うけど、少し肩の荷が下りた感じだった。
ああ、その優し気な笑み、それでこそ俺の
元気が出てくる。これならもうちょっとは戦えそうだ。
「うそ~ん!! 被害者減らす為に来たのに、よりにもよってジーク君が戦死ぃ!?」
リムヴァンが、アジュカ様の猛攻をしのぎながら驚愕の声を上げる。
あ、そういやアジュカ様と揉めて被害者が出る事を恐れての参加だったな。ざまぁ!
よっしゃ! とにかくこれで強敵の一人を撃破! これがニュースになれば、三大勢力の士気も少しは上がるだろうよ。俺も英雄らしい戦果で鼻が高いぜ!
……つってもな。こっからなんだがな。
「……ニエ、プリス」
姐さんは表情を鋭くすると、今だドーインジャーを生み出し続けているニエに視線を向ける。
ニエはそれを静かに、かつ無表情で受け止める。プリスはそんなニエを庇う様に、一歩前に出た。
そうだ。ジークフリートを倒しただけじゃ終わらねえ。
姐さんを執拗に狙うやつは、他にもいる。ニエがいる。
レーティングゲームであれだけ執拗にいたぶり、そして殺そうとしたニエだ。こんなところであっさり帰ったりはしねえだろ。
俺達は禁手に至った神滅具使いを警戒して構えを取り―
「―リムヴァン、そろそろ逃げた方がいいんじゃないかい?」
―その視線をスルーして、ニエはリムヴァンに声をかけた。
なんだと?
逃げる? 目の前に姐さんがいるのに? 禁手すら出さずにそのまま撤退だと?
「「え?」」
リムヴァンもプリスも驚いて振り返るけど、ニエはこっちを見て肩をすくめた。
「流石に均衡が崩れたよ。そろそろ増援もくるし、これ以上死人が出る前に逃げた方がいいんじゃないかい? 僕と貴方はともかく、プリスがまずいね」
た、確かに正論だけどよ。マジでいいの?
いや、俺も戦果は挙げたし、これ以上の戦闘は望んじゃいねえが……。
リムヴァンは怪訝な表情を浮かべてたが、すぐにため息をつくとアジュカ様から距離を取る。
「ま、確かに作戦は失敗だしね」
「良いんですか? ジーク君もやられて、こっちが被害を受けただけですよ?」
プリスがこっちに顔を向けながらそう言うが、リムヴァンはそんなプリスの肩に手を置くと、首を振った。
「ムキになってこれ以上犠牲者を生む方がまずい。こういう時素直に逃げれるのも、立派な才能だよ」
そう言いながら、リムヴァンは絶霧を展開すると自分達を包み込んだ。
「……それに、そろそろこっちも別件があるからね。そっちの方が重要だから帰るよん」
って待てやオイ!!
何最後に不吉な事言ってんだ!!
別件ってなんだよ。何か別に作戦あるのかよ。まさか冥界で大絶賛大暴れ中の魔獣どもを使って、何かしようと企んでるんじゃねえだろうな?
勘弁してくれ。こっちも流石に手一杯なんだぞこの野郎が!!
俺は文句を言いたかったが、そんな時間は欠片もなかった。
既に霧は消え去り、そしてリムヴァン達には綺麗に逃げられちまった。
その後、俺達はアジュカ様の好意でビルの一室で休憩中だった。
流石は魔王の隠れ家。菓子が美味い!!
「お姉様! ペトは慣れない中距離戦を頑張ったッス! ご褒美くださいッス!」
「はい。じゃあアーンして―」
そして姐さんは人目もはばからずペトに口移しでジュースを飲ませた。
な、なんてことだ! そんなこと、あって言い訳がねえだろうが! 許せねえ!!
「ジークフリート倒した俺は!? ペトずるい!!」
「はいはい。じゃ、ちょっと待ってなさい」
え? 俺もいいの? やったー!!
そう思った瞬間、俺の襟が引っ張られて首がゴキっと。
「ヒロイさん?」
「し、シシーリア待って。死ぬ……」
お、おれは一体何をした? シシーリアの機嫌を損ねるようなことをしたのか?
ま、まってくれシシーリア。今俺は、天国の階段を上るところだったんだ。そっちの天国には行けるわけがねえしまだいけねえ! 頼むご慈悲を!!
姐さんの口移し! KUTIUTUSHI!!
「あらあら。シシーリアはヒロイと結婚でもしたいのかしら?」
マジか。そう言う方向なのか。
俺は結婚できるのか? 姐さんで童貞を卒業して、シシーリアと結婚するのか?
俺に英雄の道を示した姐さんで大人になり、俺を英雄にしてくれたシシーリアの夫となる。あれ? 俺、ものすごく恵まれてね?
「いえ、そういうのは良いんで」
上げて落とされたぁ!?
俺は、思わず崩れ落ちた。
Other Side
リセス・イドアルは、思わぬ展開にちょっと驚いた。
シシーリアにバッサリ切られて、ヒロイはショックのあまり部屋の隅で丸くなっている。
「ヒロイー。しっかりするッスよ~?」
「ごめん。俺、ちょっと顔洗ってくる……」
相当ダメージが入ったらしい。ヒロイはペトの慰めにも耳を貸さず、そのままとぼとぼと洗面所に向かっていった。
少し同情する。シシーリア・ディアラクは、ヒロイにとっても特別度が大きい少女だ。
ヒロイの初任務の相手であり、彼が
恋愛感情かどうかはともかく、根源である自分に次ぐレベルで重要だろう。グレモリー眷属より特別度は大きいかもしれない。
それがバッサリ「恋愛対象としてない」と切られたのだ。ちょっと落ち込むだろう。
「駄目でしょうか? ヒロイさん、良い人ですけど」
以前直接会話した事のあるアーシアがそう尋ねると、シシーリアは少し苦笑した。
「いえ、好きです。大好きです。結婚するなら、ヒロイさんを思わせる方としたいです」
さらりと、シシーリアは爆弾発言をした。
ド直球である。
でもまあ、無理もあるまい。
なにせヒロイは、シシーリアにとって救世主である。
聖女時代は彼女の心を少しとはいえ癒し、悪魔に堕ちてからも彼女に決心をさせる切っ掛けになった。果ては絶望の淵に叩き落されるその時に見事に助けに来てくれて、死の覚悟を決めた時はそれを覆す為に覚醒までしてくれている。リアス達がイッセーに恋した時以上に助けまくりである。
大真中事情は知っているので、リセスはもちろんリアス達も納得している。
なのに、結婚するか否かで言えばないとバッサリ。
「……ツンデレ?」
「違います。単純に、ヒロイさんそのものと結婚する気がないだけです」
リセスの言葉にそう答えると、シシーリアは苦笑した。
「……私は、ディオドラに手を加えられています」
いきなりブラックすぎる発言が飛び出たが、リセス達は全員とりあえず飲み込めた。
なにせ、リセスとペトの過去話で慣れている。ディオドラがそう言う手合いだという事も知っている。他ならぬシシーリアがメールで説明した。
なので、ペトやリセスと同じような後遺症を持っていてもおかしくない。いわゆる快楽中毒というか、S〇X依存症というか。とにかく性的にオープンになるというか淫乱にならざるを得ないだろう。
だが、それが何の問題だろうか。
確かに、一般的な男性なら気にするだろう。決意を決めるのは結構大変で、できるのは器の大きい方だろう。
だが、そういう意味でも別ベクトルでも、ヒロイは安牌である。
「あの、私とペトでいろんな意味で鍛えられてるから、そういうのは大丈夫よ?」
「あ、そういう意味じゃないんです。ヒロイさんとそういうことをしたいという気持ちは有りますけど」
とりあえずディオドラは罪深い。聖杯が手元にあったら殺す為に蘇らせる気になる程度には罪深い。
全員のヘイトを死んでからも上げるディオドラである。
それはそれとして、シシーリアはリセスをまっすぐ見つめた。
「リセスさん。貴女は転生悪魔や転生天使になる気はありますか?」
「いえ、気が進まないわね」
リセスは即答した。
もしそのどちらかになれば、ペトと永い年月を共にすごく事ができるだろう。
それに対して後ろ髪を引かれる想いはある。確かにそういう欲求がないわけではない。誘惑にはなる程度には、興味がある。
だが、実際にするか否かとなれば、強い抵抗を感じる。
「私は人間として生を全うする事にも興味があるわ。なにより、人間の英雄は基本人間でしょう?」
そう、リセス・イドアルは英雄である。
リセスはペトとヒロイの英雄である。だから、心からそういう風に振る舞うと決めている。
それは長生きしたいという意味ではない。むしろ、長生きに対する抵抗もある。
細く長く生きるのではなく、太く短く。なにより一瞬でもいいから閃光のように強い輝きとしていきたい。
だから、転生システムに頼る気はない。
それに、長く生きたら自分のような手合いは腐敗しそうだ。
そんな感情を語る前に、シシーリアは頷いた。
「人間から転生した転生悪魔は、長い人生を持て余す人も多いそうです。……私は、ヒロイさんの輝きがくすむところを見たくありません」
そう苦笑するシシーリアは、しかし暗くはなかった。
「それに、ヒロイさんは閃光ですから。一瞬でも強く確実に照らしてくれたからこそ、私はヒロイさんが大好きなんです」
その言葉に、リセスは共感を覚える。
ヒロイ・カッシウスは長生きに興味がないだろう。むしろ、その分のリソースを英雄として輝くことに費やすだろう。
リセスもそうだ。長生きよりまず、英雄として自慢でい続ける事が重要だ。
「第一、神滅具を含めた多重神器移植者を転生できる駒ってないでしょう? 私が上級悪魔になって、運よく全ての
「確かに、私もヒロイも転生するのにかかる駒価値は多すぎるでしょうね」
リセスはシシーリアの言葉に苦笑した。
現実的な問題も、きちんと考慮していたようだ。意外とシビアな一面もあるらしい。
とは言え、そういう理由がなければシシーリアはヒロイに告白していた可能性もあるようだ。それは中々好感が持てる。
同じ男を好きになった女の対応など二つに一つだ。
すなわち、仲が悪くなるか、それとも良くなるかの二つに一つ。意にも介していない限り、このどちらかが基本である。
なので―
「だったらあなた、誘導するから今度ヒロイを食べてみたら?」
「ちょ、ちょっと待ってください!? 私これでも元聖女です! 失格した屑ですけど!!」
「あら、いやな男とだけ経験するのは良くないわ。良い男で上書きするのは精神衛生上に良いわよ?」
とりあえず、同病類憐れむのもあるので巻き込んでしまおう。
「いや、それはどうでしょうか?」
祐斗にツッコミを入れられた。解せぬ。
Side Out
一理どころか明らかに正論だけど、執着する相手に対してあまりにも軽いニエの対応。これに関してはまあ一応の伏線です。
そして、ある意味こじらせているシシーリアのヒロイに対する感情。
恋愛感情どころか信仰心の意気に踏み込んでいるからこそ、ヒロイが自分を救ってくれた時のような「英雄」のままでいてほしいという、複雑な感情もかかわっています。あと現実問題ヒロイと同じときを歩み続けることは不可能に近いという、ペトのリセスに対する感情のような現実的な問題も含んでいたり。
実際問題、一応格下の神滅具である一応歴代最弱のイッセーですら、普通に兵士の駒を8駒使ってようやくでしたから。はっきり言って普通の方法で神滅具込みの多重神器保有者を転生させるのは不可能ですね。