ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
さあて皆さん、まさか素直にサイラオーグのストレート勝ちだなんて思ってませんよねぇ?
Other Side
リセスは、その時嫌な予感を覚えた。
英雄派の気配が明確に変わったのだ。
今までの余裕とは違う。そして油断でも断じてない。
そこにあるのは、明確な戦意。
……人間による異形の殲滅。人という主の限界の挑戦。
それを求めるのが英雄派である以上、若手四王の中で個人戦力ならば問答無用で最強のサイラオーグを見て、楽しむのは当たり前だろう。
だが、それでもこの気配は何かが違う。
……全員が、警戒心を数段上に引き上げた。
「バアル家次期当主のサイラオーグ・バアルか。これはまた大盤振る舞いだな」
「ああ、魔力をかけらも持ってねえ癖に、バアルの当主に収まったんだってな。バアルが無能しかいねえのか、それともマジで化物なのかねぇ?」
ゲオルクとヘラクレスはそう言葉を交わし、ヘラクレスが一歩前に出る。
「ちょうどいい。だったら出せよ獅子の鎧を。俺のご先祖様が絞殺したライオンで、俺が倒せるとも思えねえがなぁ?」
挑発的なヘラクレスの物言いに、サイラオーグは微動だにしない。
72柱の中でも特にプライドの強いバアル家において、悪魔のアドバンテージともいえる魔力を持たなかったことからくる迫害。
それに比べれば、この程度の挑発など挑発にすらなっていない。
そして―
「なら、使わせてみるがいい」
―むしろ、サイラオーグこそが挑発をする。
「ぁあん?」
「貴様ごときが兵藤一誠より強いとも思えん。使わせたいのなら、実力を示してみるがいい」
その言葉に、ヘラクレスはふんふんとうなづき―
「―そりゃいい。楽に殺せるな」
そう笑った。
そして次の瞬間、大量のミサイルがサイラオーグに叩き込まれる。
一瞬でサイラオーグのいるビルの部分が跡形もなく吹き飛び、そしてヘラクレスはせせら笑った。
「生きてるかー? 大口たたいといてその程度って落ちは勘弁してくれよなー?」
そう完膚なきまでの余裕を見せてヘラクレスは嘲笑を浮かべる。
―その瞬間、サイラオーグは拳が届く距離まで一気に詰めていた。
負傷はしている。血は流れている。
だが、その程度でしかない。
並みの上級悪魔なら塵一つ残さず吹き飛ばすであろう力の塊である禁手が、しかしサイラオーグ相手では軽傷でしかない。
「―この程度か。なら、次はこちらの番だ」
そしてその瞬間、文字通り目にもとまらぬ速度で拳が振り抜かれ―
「―こんなもんか?」
その鳩尾に叩き込まれた一撃は、しかしヘラクレスには決定打とはならなかった。
威力は間違いなく絶大だ。こちらも並の上級悪魔なら一発で致命傷だろう。
その証拠に、打撃の方向上にあるビルの壁が粉砕されている。
近接打撃技の余波でこれだ。直撃を受けたヘラクレスに入ったであろう衝撃は想像を絶するはず。
しかし、ヘラクレスはそれを受けて平然としていた。
その事実にリアスたちが唖然とする中、ゲオルクは冷静に魔法攻撃を放つ。
そこに驚愕も狼狽もない。想定通りのことが想定通りに起きただけという、冷静さがそこにあった。
そして明確な隙を見せたリアスたちは攻撃に反応しきれず、しかし無傷。
……その流れを予測できたリセスの属性支配によって、氷の壁が生まれて魔法攻撃を防いだからだ。
「まあ、あのジークフリートよりレベルが上ならそうなるわよね」
「わかってくれているようで何よりだ。……敵の能力を正確に把握するのは、現代戦の基本だからな」
リセスにゲオルクがそう答えるのと同時、ヘラクレスの体から文様が生まれる。
魔法によって生み出されたと思しき文様は、しかし強化によるものではない。
「……そういや、お前さんも負荷かけてたんだってなぁ? ……まさか自分だけだなんて思ってねえよなぁ!!」
その言葉共に、ヘラクレスの拳がサイラオーグに叩き込まれる。
その瞬間、のけぞったサイラオーグの向こう側にあるビルの壁が砕け散った。
神器は使っていない。ただ単に殴っただけだ。
それが、サイラオーグと同等の攻撃力を発揮した。
もし、彼がこの時点で神器を使っていればどうなっていたか。考えるだけで恐ろしい。
「余裕は良いが油断はよくねえぜ、油断はなぁ!!」
そのまま追撃で放たれた拳を、サイラオーグは手首をつかむことで受け止める。
そして力比べの状況になる中、サイラオーグは空いている手で鼻から出た血をぬぐった。
「……なるほど。確かに英雄を名乗るだけのことはあるようだな。その自称は不遜でも何でもない」
サイラオーグの目が鋭く変化する。
この時点で、サイラオーグはヘラクレスを強敵と認識した。
「認めよう。貴様は、俺が獅子の鎧を使うに値すると!! ……レグルスッ!」
『ハッ!』
すぐさまレグルスは鎧へと変化し、サイラオーグは拳を構えて反撃の一撃を叩き込む。
そしてヘラクレスにその拳が触れたその瞬間。
「―甘いぜぇ、小獅子ちゃん?」
爆発が発生し、サイラオーグの拳が弾き飛ばされる。
「チッ! 当然の如く神器を移植してるか!!」
放った拳の部分にひびが入る中、サイラオーグはすぐにその理由に気が付く。
そもそも、ヴィクター経済連合はリムヴァンによる神器の移植が持ち味の一つだ。
そして、彼らはジークフリートが強化改造を最小限に抑えているとも言っていた。
なら、当然の如く彼らが神器を移植しているのは当たり前なのだ。
「当然よ!
その言葉と共に、ヘラクレスの拳がサイラオーグに叩き込まれる。
その瞬間、爆風がサイラオーグの腕を貫通した。
「……ぐぅっ!」
「今のは
更に連撃で攻撃が放たれ、しかもその全てが圧倒的攻撃力を発揮して襲い掛かる。
サイラオーグはその全てを直撃を避ける事でいなすが、然し獅子の鎧はすぐさまボロボロに変質していった。
その光景に、ゲオルクを除く全員が思わず唖然となる。
最強の若手悪魔が神滅具の禁手を身に纏ってなお、圧倒されている現状が信じられない。
攻撃を放っても弾き飛ばされ、そして攻撃は頑丈な鎧をいともたやすく貫通する。
急所にもらえば一撃で死ぬ。それほどまでの脅威を前に、流石のサイラオーグも防戦に徹するほかない。
その事実に戦慄して、然しリセスはすぐに我に返った。
「サイラオーグ・バアルはこっちでカバーするわ! あなた達は朱乃達をサポートしなさい!!」
リセスはすぐに判断すると、即座に援護の為にヘラクレスに飛び掛かる。
躊躇なく禁手を発動して放つ拳に、ヘラクレスの爆発による防御が対抗する。
そして、それを強引に突破して、ヘラクレスの顔面にディストピアアンドユートピアが叩き込まれる。
だが浅い。防御の爆発でオーラの大半が相殺され、熱相転移クラスの矛盾はただの熱衝撃に収まっている。
その程度で倒せるのなら、サイラオーグが苦戦するはずもないのだ。
「はっはぁ! ぬるいぜ姉ちゃん!! ジークフリートは、この程度の女に拘ってたのかぁ?」
その言葉共に叩き込まれた裏拳を、リセスは高密度の聖魔のオーラで受け止め、そして更に狙われた頭をオーラの壁から遠ざける。
ごく僅かに爆発が突破されるが、顔を離していた為熱いと思う程度だ。
「あら、貴方もそこまで無敵じゃないのね。……禁手の種も分かりそうだわ」
「言ってくれるじゃねえか、このアマ」
リセスの皮肉にヘラクレスが苛立つが、その側面にサイラオーグの拳が叩き込まれた。
当然爆発も発生するが、しかし強引に突破して今度は拳が突き刺さる。
「……爆発による防御は驚いたが、しかし突破できんほどでもないな。……拳が砕けるより先に貴様を殴り倒せばいいだけか」
「……やればできるじゃねえか、無能大王!!」
テンションを上げ、ヘラクレスはミサイルを大量に放つ。
それを即座に迎撃しながら、リセスとサイラオーグはヘラクレスを睨み付ける。
「一対一が好みだと思うけれど、ここは共闘と行きましょうか」
「仕方ないな。これも俺の未熟の責任か」
煌天雷獄と獅子王の戦斧。
二つの神滅具に相対するは、英雄派の幹部の一人。
かつて神々が与えた十二の難行を乗り越えし、ギリシャの英雄の頂点。ヘラクレスの魂を継ぐ者。
その猛威を前に、2人は拳を握り締めて共闘を決意した。
ヘラクレスの強化は巨人の悪戯の多重盛りです。しかも長可がしっかり鍛えてるので、本人の能力も桁違いに上昇してます。
ぶっちゃけ、英雄派の幹部はイグドラフォースとまともに渡り合えると思っていくださってかまいません。最終決戦でも強敵として暴れまわることを約束いたします。