ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ 作:グレン×グレン
さあ、反撃を始めよう
Other Side
その瞬間、曹操は目の前の男の気配を察して、警戒の度合いを大幅に上げた。
今にも崩れ落ちそうだったヒロイ・カッシウスを見て、曹操は難敵であると認めるしかなかった。
それほどまでに、目の前の少年に対する警戒心が本能的に上昇していっている。
「なんだ……? 俺が、恐怖を覚えているというのか……?」
曹操は自分が震えている事に気づき、それを疑念に思う。
覇光を放っている今の自分なら、神滅具四人を相手にしても勝つ事は決して不可能ではない。
唯一極覇龍だけが警戒の元だったが、それもガス欠でどうしようもない。そして慣れていけばその戦闘能力は極覇龍すら超えるだろうと断言できる。
その自分が、紛い物の聖槍使い如きに恐れをなしている。
その事実が、酷く苛立った。
「……モード、ノートゥング!」
曹操は魔剣を切っ先に据えると、それを勢いよく振り下ろす。
不愉快だが、それに感情的になってしまっては勝てる戦いも勝てないだろう。何が起こるか分からないのが戦場なのだから、それ相応の警戒心は必要だ。
ゆえに今までとは違い全力で攻撃を叩き込む。
もとより覇光とは自分に宿る全ての神器を利用した複合禁手と言っていい。ゆえにこの状態でも大幅に威力は向上している。
様子見としての全力攻撃。そんなとんでもない真似を叩き込み―
「―ぬるい!!」
―一息で、それが弾き飛ばされた。
「何?」
警戒心を強め、今度はダインスレイヴを選択。
圧倒的な氷による攻撃を叩きつけようとして、曹操は気づいた。
生み出せる氷塊の量が、想定より圧倒的に少ない。
そして何より、自分の動きの速さが大きく想定より遅い。
先程までは、紅の鎧を纏った兵藤一誠ですら完全には見切れないほどの速度を余裕で出せていた。それが、今は精々反応を許せる程度にまで遅くなっている。明らかに大幅に減速している。
そして、それを認識する時間でヒロイは間合いを詰めていた。
「槍王の型―」
「ッ!?」
とっさに全身に力を籠める。
始原の人間もまた覇光によって圧倒的に強化されている。今の自分なら至近距離でミョルニルを叩きつけられても、一撃程度なら耐えらえるだろう。槍王の型如きなら恐るるに値しない。
だからこそ、これが効く事を曹操は理解し、全力で防御する。
「―
そして、渾身の一撃は防御越しですら曹操に痛痒をあたえた。
ここに曹操は確信する。
ヒロイ・カッシウスは新たに禁手に目覚めた。それも、この覇光を狙い撃ちにするような禁手にだ。
そして曹操は更に気づく。
ヒロイ・カッシウスが持っている聖槍の輝きが鈍くなっている。それでいて、その光は強くなっている。
間違いない。今回至ったのは黄昏の聖槍だ。それが、覇光すら抑え込むほどの出力を発揮している。
「なんだ……! いったい何に目覚めた、この紛い物が!!」
「知りたきゃ教えてやるぜ、この野郎!!」
ヒロイは聖槍を叩き込んで、曹操と力比べ手拮抗する。
否、これはヒロイ・カッシウスの筋力が向上したわけではない。
曹操の覇光の出力が、目に見えて下がった事で始原の人間の能力すら大幅に低下しているのだ。
「これが、対聖槍限定特化型禁手。
その言葉とともに放たれた攻撃の衝撃と共に、曹操はそのカラクリを理解する。
そう、つまりこの禁手は―
「聖槍を封じる事に聖槍の禁手の出力を全て込めただと!? 君は狂っているのか!!」
流石の曹操も驚愕する他ない。
目の前の男は、最強の聖槍である黄昏の聖槍の禁手を、黄昏の聖槍を封じる事だけに注ぎ込んだのだ。
汎用性皆無……否、絶無の禁手。しかも、所有者が四人しか現状いない聖槍を封じる事のみに限定特化した禁手など正気の沙汰ではない。狂気の沙汰でなければできるわけがない。
そんなとんでもない真似をしでかしたうえで、ヒロイ・カッシウスは曹操をあざ笑う。
「……何言ってんだ、曹操?」
拮抗状態を作り出している中、ヒロイ・カッシウスは誰に恥じる事なくまっすぐに、曹操を見据える。
そこに、この禁手を作り出してしまったという後悔は微塵もなかった。
「今ここでこうしなきゃ俺達は死ぬ。そして俺だけがそれができる。……それしか手がねえならするしかねえだろ」
静かに、ヒロイ・カッシウスは曹操にそう言い切った。
そして、そのまま聖槍を構えると、にやりと笑う。
その表情はひきつっている。足は僅かだが震えている。まず間違いなく、それでも曹操は強大だと認識して恐怖を感じている。
だが、それがどうしたと言わんばかりにヒロイは立ちはだかる。
そして曹操は、ヒロイ・カッシウスの赤龍の加護を思い出した。
勇気とは、恐怖を感じないことではない。恐怖を感じないなら誰だって何でもできる。
恐怖を感じながらも、それを乗り越えられるものなのだ。だからこそ、人々は勇者を称賛し褒め称えるのだ。
今彼は、無謀に挑むのではなく、勇敢に強敵に立ち向かっている。
「かかってこいやオリジナル。紛い物にも意地があるんだよ」
静かに戦意を滾らせるヒロイに、曹操は寒気を感じた。
……認めるしかない。そうしないのは愚かだ。
「じゃあ挑もうか、ヒロイ・カッシウス」
曹操は、ヒロイ・カッシウスを紛い物ではなく強敵としてついに認める。
あらゆる聖槍使いの天敵となったこの男は、まず間違いなく自身の脅威だ。
乗り越える壁以外の何物でもない。否、乗り越える事ができなければ、聖槍使いとして
「君は倒すよ。この、俺が!!」
「アンタは倒すぜ、この俺がな!!」
その瞬間、聖槍使いの戦闘は本格的に激化した。
イッセーSide
俺達の目の前で、ヒロイが曹操とまともにやり合ってる。
すげえ! 今の状態の曹操と真正面から切り結んでやがる!!
ヒロイの奴、このタイミングで聖槍を禁手にするとかやるじゃねえか。
しかも、対聖槍に限定して禁手を覚醒させやがった。そう簡単にできることじゃねえ。尊敬するぜ。
ああ、だからまともに曹操とやり合えてる。
……だけど、このままだと押し切られる。
今すぐにでも援護に行かなきゃいけないんだけど……。
「……くそっ」
「ここで、この状況は……っ」
俺もリセスさんも立ち上がれない。
曹操の攻撃が強烈で、俺もリセスさんもダメージがでかすぎる。
まずい。今言ってもヒロイの足を引っ張るだけだ。役に立たねえ。
だけどこのままだとヒロイは負ける。それがはたから見てると分かっちまう。
「残念だったね。例え覇光を削減されても、それでも覇光は維持できている!」
「チィッ! なり立ての禁手じゃ出力が足りねえか!!」
曹操もそれを分かってるし、ヒロイもそれを分かってる。
クソッ! ギリギリで何とかなってるってのに、こんな時に俺達は何もできねえのかよ!!
「……エンチャントならできるけど、イッセー、動ける!?」
「腕は動かせるけど、足がもう限界です!!」
ああもう! 女の人なリセスさんはともかく、男の俺がこんな時動けなくてどうするんだよ!!
あと一押しなんだ。あと一押しで曹操を倒せるんだ。
だから動けよ、俺の体。
あとちょっと戦えればそれでいいんだから……。
「……まったく。二人揃って俺のことを忘れるな」
その時、俺達の後ろで声が響いた。
……ぁあ。そうだった。
まだ、俺達にはこの人が残ってる!!
やっぱすげえや、この人。マジですげえ。
「ここは、俺が出る!!」
その心強い言葉と共に、サイラオーグさんが曹操に突貫した。
「ここで来るか、次期バアル!!」
「無論だ! ここで動かずしてバアル家の当主を名乗れるものか!!」
殴り掛かるサイラオーグさんを交わしながら、曹操は舌打ちする。
そして、その隙をついてヒロイが動いた。
「もらったぁあああああ!!」
一瞬だけとはいえ、曹操が視界から外したその隙をついて、ヒロイが槍王の型を構える。
曹操がそれに気づくのと、ヒロイが攻撃を放ったのは全く動じ。
「
そして放たれた一撃は曹操の顔面にまっすぐ飛んでいき―
「―なめるなぁああああっ!!!」
それを、曹操は強引に回避する。
しかも輝きが一瞬だけ強くなった。
マジか。このタイミングで、覇光を無理やり発動させやがった。
ヒロイが覚醒すれば、曹操も同じように限界を押し上げる。こいつらこのタイミングで覚醒すんなよ!!
曹操の頬には深い切り傷が付いたけど、致命傷には程遠い。この程度じゃ曹操は逃げたりなんてしないだろう。
そしてヒロイはこれで限界だったらしい。そのまま勢い余って地面に倒れ伏す。
畜生! 今の満身創痍のサイラオーグさんだけで、曹操を倒す事ができるわけがねえ。
覇光だって、これで復活するし……。
「……舐めんな」
その時、ヒロイが血を吐きながら声を出した。
そして、ヒロイの聖槍からより強い鈍い輝きが放たれる。
その輝きに押され、曹操の鋭い輝きが薄らいだ。
……あの野郎。まだ禁手だけは維持してるのか。
………だったら、俺達だって!!
「リセスさん! 俺を風でサイラオーグさんに!!」
「ッ! そういうことね!!」
リセスさんが俺の言いたい事を察してくれる。
ああ、これは賭けだ。無謀な賭けだ。
それでも、今はこれに賭けるしかねえ!!
「うぉおおおおおお!!!」
「無駄だ獅子王! 君一人では俺は倒せない!!」
サイラオーグさんの攻撃を余裕を見せてかわしながら、曹操は連撃を叩き込む。
どんどん獅子の鎧がボロボロになる中、俺はリセスさんの生み出した突風で、サイラオーグさんに向かって飛ぶ。
そして、最後の力で腕を突き出した。
なあ、神器は想いの力で答えるんだよな。
だったら、今ここで答えてくれ。
俺達の、仲間を思う想いは絶対に強い。曹操が
だから、届ぇええええ!!!
「……礼を言うぞ、兵藤一誠!」
そして、届いた。
スーパーヒロイタイムは終了。ですが、まだ禁手の効果は続いています。
この禁手、まだ能力を向上させる余地があります。ですが聖槍限定です。
なんていうか、汎用性絶無ですがそれゆえに使える状況下では絶大に協力という技にロマンを感じるんですよ。
下位互換が上位互換に勝つために、他を投げ捨ててでも手に入れた奥の手。曹操もこれにはヒロイを認めざるえません。
そして次はスーパーサイラオーグタイム! さあ、無能が天才に反撃の一撃を叩き込む時だぜ!!