ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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とりあえずイッセーの命だけはどうにかなったD×D

しかし、ヒロイとリセスの呪いは現在も進行中。

そして、2人は―


最終章 2話 二人の決断

 

 そして数日後、俺は病院のデイルームで情報をまとめていた。

 

 トライヘキサの分裂同時強襲攻撃は、一時的に収まっていた。

 

 どうやら、さすがのリムヴァンもトライヘキサを完璧にコントロールできるわけでもないようだ。それとも、今迄のは本当に前座で、本格的な襲撃はまた別で行われるっていうことか。

 

 ま、どっちにしてもこれはチャンスだ。こっちが準備を整える最大の好機でもある。

 

 と、いうわけで俺たちも準備中だ。姐さんも、おれと同じようにいろいろ調べていたはずだ。

 

 そして、俺が缶コーヒーでも飲みに行こうかとした時だった。

 

「……ヒロイさん」

 

 シシーリアが、俺の目の前にいた。

 

 やべ。全然気づかなかった。

 

 俺も、いろいろあって動揺してるってことかね。さすがにシシーリアが近くに来ていたなら、気づいてもかしくねえんだが。

 

「シシーリア。……情けないところを見せちまったな」

 

 俺は苦笑する。

 

 なにせ、次戦闘をしたら高確率で死ぬようなシャレにならない呪いをうけちまった。

 

 リムヴァン・フェニックスの複合禁手、極刑の宣告者(デス・オブ・ルーラー)。神ですら解呪に百年かかると豪語する、死の呪い。たぶんリムヴァンの手札でも、質の悪さじゃ最高峰だろう。

 

 戦闘を開始すれば半日で死ぬ。しなくても、十数年で死ぬ。そして解呪には神クラスでも百年かかる。

 

 強力すぎるせいで条件もきついみたいだが、下手な神滅具の禁手を凌ぐレベルだ。

 

 このせいで、俺は病院で半ば軟禁状態だ。出るに出れねえ。

 

 だから、まず間違いなく俺は戦力外通告なんだが―

 

「ヒロイさん。私は今からすごくひどいことをします」

 

 そういって、シシーリアは二つの護符を取り出した。

 

 そして、俺にそれを押し付ける。

 

「これがあれば、この病院の結界を素通りすることが可能です。一人一個ですので、お忘れなく」

 

 ………シシーリア。

 

「……ああ、ありがとな」

 

「本当なら、こんなものを渡すべきじゃないんです」

 

 シシーリアはそういって、半泣きで俺に笑顔を見せる。

 

 そこにあるのは、恋愛感情じゃない。

 

 ああ。シシーリアは、俺のことが大好きだろう。

 

 だけど、それ以上に―

 

「私は、あなたを愛しています」

 

 そういって、そしてシシーリアは首を振る。

 

「でも、それは英雄(輝き)として愛しているんです。だから、私は貴方と結ばれる気はないんです」

 

 そして、シシーリアは、おれに微笑む。

 

 そして、そのまま涙をぽろぽろとこぼして、しっかりと俺の手を握った。

 

 複雑な心境っていうのは、今のシシーリアのことを指すんだろうな。それぐらい、シシーリアは俺にいろんな思いを向けている。

 

 そして、その中でも一番強かった感情を俺に向けたんだ。

 

「ヒロイさん。何があっても、輝いていてください。私は、それを望むことを選びました」

 

 その言葉で踏ん切りをつけたのか。シシーリアは頭を下げるとそのまま背を向けた。

 

 そしてデイルームの出入り口で立ち止まると、背を向けたまま口を開く。

 

「本当に、ありがとうございました」

 

「ああ、俺こそ、本当にありがとうな」

 

 ああ。本当に、ありがとうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方そのころ、リセスはパソコンを貸してもらうと、そのままテレビ電話で二人の少年少女と会話していた。

 

 戦闘をしたら高確率で死ぬとわかっているから、事実上リセスは軟禁状態だ。

 

 そして、だからこそリセスはこんな方法を取っていたわけ……ではない。

 

 リセスからしてみれば、これは全く別の理由だ。

 

 なにせ、2人と同時に会話するには、これしか方法がないのだ。

 

 別々の場所に収監されて、そしてそう簡単には外に出れないのだ。同時に会話するには、通信を利用するしかない。単純な答えである。

 

『リセスちゃん、本当に大丈夫なの?』

 

「ええ。少なくとも、戦わなければ数日やそこらで死ぬような呪いじゃないみたい」

 

 そうリセスが告げたのは、女性悪魔用の監獄にいるプリスだった。

 

 天界での戦いの後、プリスはそのまま収監された。

 

 それが彼女自身の意思だったうえ、グラシャラボラス家も保釈金を出すつもりはなかったからだ。

 

 当然といえば当然だろう。グラシャラボラス家からしてみれば、彼女は主ともども実家に恥を塗ったもので、その前から主であるゼファードルは厄介者だ。ゼファードルを優遇していた者たちは、ほぼ全員が旧魔王派に亡命を試みている。そう言う意味では、プリスは厄介者でもあった。

 

 そんなわけで、プリスは刑が確定するまで留置所に収監されていた。その後、冥界の司法で裁きが下されることをプリス自身が望んでいる。

 

 その意を組んで、リセスも、そしてリアスも保釈金を都合することはしなかった。

 

 そして、同じように収監されているものがもう一人。

 

『それで? 僕たちと話したいことっていうのは何なんだい?』

 

 少々むすっとしながら、しかし敵意だけはもうないニエがそう尋ねる。

 

 こちらはプリスと違い、明確な捕虜として捕縛されている。

 

 プリスの場合は現政権からゼファードルが脱走したこともあって犯罪者待遇だが、ニエはヴィクターの正式な構成員になるまで冥界政府に関わっていたわけではないので捕虜待遇だ。

 

 元々一般人であったニエに話しても意味はないとヴィクターも思ったのか、ニエ自身が知っている情報はあまりない。

 

 しかし、ニエ・シャガイヒは神滅具の持ち主だ。それも、上位神滅具である魔獣創造を二つも移植されたイレギュラー中のイレギュラー。冥界政府はもちろんのこと、どの勢力もほっとくことはできないほど警戒をしている。

 

 しかし、割と捕虜収容所では好待遇らしい。

 

 彼によってドーインジャーの詳細な情報が手に入った。これだけでも値千金。

 

 さらにドーインジャーを利用して一気に人が増えた収容所の作業を手伝っているらしい。そのせいで所員からは人気があるそうだ。

 

「まあ、ちょっと言いたいことがあったのよ。それを、きちんと言わないとと思ってね」

 

 そういって、リセスは立ち上がると、頭を下げた。

 

「こんなことを言うのなんだけど、謝ってしまって、ごめんなさい」

 

 謝罪したことを謝罪する。そんな、矛盾に満ちた行為をリセスはした。

 

 天界での最後の戦い。リセスはニエに敗北した。

 

 二重で魔獣創造を使用するというニエに、リセスは全力で挑んで、然し敗北した。

 

 そして、本来ならそこで殺されるはずだったのだ。それこそが、ニエ・シャガイヒの復讐だ。

 

 しかし、半死半生で意識が朦朧としていたリセスは、謝ってしまった。

 

 心の底から後悔していたから。嘘偽りなく悔やんでいたから。本心から罪を悔いていたから。

 

 だから、あの時謝ってしまった。

 

 それは、ニエが望んでいたことだっただろう。

 

 それは、ニエに最後の一線を守らせていたのだろう。

 

 それは、ニエの心を救った一言だったのだろう。

 

 だが、それでもリセスは自分が許せない。

 

 謝って済まないことをしたのに、謝って済ませてしまったことがどうしても許せなかった。

 

 だからこそ、それを謝ったのだ。

 

『リセスちゃん、それ、きっとニエ君も望んでないよ?』

 

「それでもよ」

 

 プリスの言うことは正論だが、然しどうしてもしないわけにはいかない。

 

 これは、リセスなりのけじめだった。

 

「怒っていい。恨んでいい。それでも、私があのことを恥と思っていることを示すべきよ。それが、リセス・イドアルのけじめなの」

 

 此処で罵倒されてもおかしくない。それはリセスも分かっている。

 

 だが、ニエはため息を一つついただけだった。

 

『ぼくの知っているリセスもプリスも、幻想だった』

 

 そう、ニエは言った。

 

 それは天界でも似たようなことを言った。それが、ニエの結論だった。

 

 そして、それを改めて行ってから、ニエはまっすぐにリセスを見る。

 

『言ったら言ったでややこしくなるのに、あえて言う。……リセス、今の君にとって一番大事なことは何だい?』

 

英雄(自慢)でい続けることよ」

 

 リセスは即答した。

 

 そして、悲しげな微笑を浮かべた。

 

「半分ぐらいできなくなってるけど、だからこそ、残り半分は死守するの。これは、その一環よ」

 

 その言葉に、ニエはもう一度ため息をつくと、目を伏せる。

 

『……そう言うことなんだね』

 

『………リセス、ちゃん……』

 

 ニエもプリスも、何かを察し、しかしそれ以上何も言わない。

 

 それがどういうことかを理解して、理解してもらえたことを察して、リセスは苦笑した。

 

「ごめんなさいね。私、馬鹿なのよ」

 

『わかってるよ。天界で痛いほど理解したからさ』

 

 そういうと、ニエは一瞬だけ目を伏せ―

 

『それでも、僕たちが友達だったのは変わらないしね』

 

 そういって、苦笑を浮かべる。

 

 その言葉にリセスが目を見開いている間に、ニエはもう通信を切ってしまっていた。

 

 暗くなっている画面に視線を向けてから、プリスは苦笑を浮かべる。

 

『ニエ君も、私も、リセスちゃんも変わっちゃったね』

 

 確かにその通りだ。

 

 自分は変わった。それだけの七年間だった。

 

 プリスも変わった。それだけの七年間だった。

 

 ニエも変わった。リセスもプリスも、それだけのことをニエにしてしまった。

 

 それは、きっと不可逆だ。火の通った肉のように、ワインになったぶどうのように。もう二度と戻らない変化だ。

 

 それをリセスは痛感し―

 

『でも、私達は友達には戻れたから』

 

 そのプリスの言葉に、涙が浮かんできた。

 

 にじむ視界の中、プリスは寂しげにほほ笑んで、しかしあえて何かを言わない。

 

『―がんばってね、リセスちゃん』

 

 それだけを絞り出して、プリスもまた、通信を切った。

 

 それを沈黙と共に受け容れながら、リセスは自分の愚かさを痛感する。

 

 どうしようもない愚か者だ。ここで何か別のことを言っていたら、引き返すことができたかもしれないのに。

 

 しかし、それだけは選べない。

 

 かつて、曹操は言った。

 

 英雄とは人より前に進んだものだと、人間たちに英雄と呼ばれているものは、その中でたまたま歴史に遺されたものなのだと。歴史に残らなくても、英雄なのだといったのだ。

 

 なら、これだけは譲れない。

 

 ペトの自慢(英雄)ではいられなくなったのかもしれないが、しかしヒロイの自慢(英雄)はまだやめていない。そして、辞めるつもりは毛頭なければ、辞めること自体がいやでたまらない。

 

 それは、自分の何年も前から続いている友達から嫌われてでも、絶対に成し遂げたいことなのだ。

 

「……本当に、ごめんなさい」

 

 謝罪の言葉が自然に出る。

 

 しかし涙はにじむだけ。こぼれ落ちることはなかった。

 

 なぜなら、リセス・イドアルにとって最優先で大事なことは未だ守られているから。この悔恨はその次だから。

 

 救いようのない愚者であることを自覚しながらも、この道を貫くことこそが本望だと心から確信して、リセスは決意を固めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Side Out

 




 D×D全体の意向として、ヒロイとリセスは戦線離脱させることが決定。とはいえこっそり参戦しかねないのは読んでいるため、病院を結界で包み込みました。その結界も二人が英雄であろうとしていても良識があることを利用しての感知特化型。下手に動いて仲間割れしては元も子もないので、これで抑えることは可能でした。超越者であるアジュカ特性なので、2人でもそう簡単には突破できません。

 が、肝心の結界の監視担当で痛恨のミス。ヒロイを慕っているシシーリアなら馬鹿な真似はしないとの判断だったのですが、ヒロイを「英雄として」慕っているシシーリアからすればここでヒロイたちをとどめておくことは断じて認められませんでした。

 結果、ヒロイたちは出るタイミングさえ計ればいつでも抜け出せる状況に。完璧にシシーリアが原因で二人の参戦は確定しました。






そして、リセスはリセスで身勝手なけじめをつけました。

どれだけそれが最善の結末でも、リセスはそれを赦せない。そうしてしまったことこそを謝らないと気が済まない。

常人には理解できないほどに、リセス・イドアルは英雄に焦がれてしまったから。自分の英雄の自慢でい続けたいと願っているから。其の在り方に反していると思ってしまうから。

それを察して、そして彼女の決意も察して、プリスとニエは送り出しこそしませんでしたが、かつての友情だけは認めました。









2人の覚悟は決まり、手段も手に入り、けじめもつけました。








これで、2人の準備は万端です。


 
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