ハイスクールD×D英雄譚 ロンギヌス・イレギュラーズ   作:グレン×グレン

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第二章 28

 

 Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方そのころ、リセス・イドアルもまた、城内に突入することに成功していた。

 

 もともと警備網がある意味で一番少ないところをかく乱するために単騎突入していたのだ。そのため難易度は一番低いといってもいい。

 

 そんな中、いきなり大規模なオーラによって城の一部が吹き飛ぶという事態が発生。これによって戦線は混乱状態になった。

 

 そして、其れを好機と判断したリセスは戦線を突破して城内への突入を選択する。

 

 なにせ、今回の首謀者は旧魔王派の最重要幹部であるクルゼレイ・アスモデウスと首魁であるシャルバ・ベルゼブブだ。

 

 ヒロイたちの任務はあくまでアーシアの救出。それ以外についてはかかる火の粉を振り払う……もとい、吹き飛ばすこと。幹部格との戦闘はさすがに考慮していない、というかできなかった。

 

 仮にも魔王末裔ゆえに最上級クラスの戦闘能力を持っているシャルバとクルゼレイ。さらに彼らが蛇を持っていれば、その戦闘能力は魔王クラスであるアザゼルですら苦戦するほどだ。

 

 英雄として、そんな事態を見過ごすわけにもいかない。それを見過ごしたら自分は強さから遠ざかる。

 

 ゆえに、リセスは全力で城内に突入を試みた。

 

 ……その瞬間、さらに強大なオーラが、今度こそ城をごっそりと吹き飛ばした。

 

 カウンターだった。それも、たぶん味方による。

 

「し、死ぬかと思ったわ」

 

 冷や汗をぬぐいながら、リセスは破壊された城を見る。

 

 下を思いっきり吹きとばされたことで、かなり倒壊している。

 

 これ、ヒロイたちも埋もれてないだろうかと心配になるが、どうも中央部あたりで強大なオーラが放たれている。

 

 どうやらこの調子なら大丈夫だろう。

 

 そう考え、しかしここまで来たのだからと支援を行おうとし―

 

「っと」

 

 とっさに、聖なるオーラを放って放出された魔力を迎撃する。

 

 神滅具のオーラと激突した魔力は、お互いに相殺して吹き飛んだ。

 

 激戦なので特に手加減してなかったはずの一撃。しかし、それを相殺するほどの莫大な魔力。

 

 間違いなく、相手は強敵と認識するべき相手だった。

 

「どちら様かしら?」

 

 振り返るリセスの目に入ってきたのは、軽装の鎧を身に纏った、貴族らしき男。

 

 しかし、見るからになんというか嫉妬深そうというか、偉そうというか、悪そうというか……。

 

 とにかく、悪の幹部というのがぴったりな雰囲気だった。

 

「貴様が偽りの神滅具使いか」

 

「英雄になる女、リセス・イドアルよ。そちらは旧魔王派の幹部でいいのかしら?」

 

 静かに戦闘態勢を取りながら、リセスはそう尋ねる。

 

 それに対して不快げな表情を浮かべながらも、しかしその男はうなづいた。

 

「真なるベルゼブブの後継者。シャルバ・ベルゼブブだ」

 

 ……これを吉と取るべきか凶と取るべきか。

 

 吉と取るなら、手柄を立てるチャンスだ。

 

 なにせ、敵の大きな派閥の首魁なのだ。討ち取れば名が上がるのは確実。その功績で自分はこの戦争の英雄になることだってできるだろう。

 

 凶と取るならば、これは自分の命の危機だ。

 

 なにせ相手は旧魔王の末裔がドーピングという組み合わせをした凶悪コンボ。その戦闘能力は魔王クラスでも苦戦するだろう。

 

 いかにアスカロンの研究で聖なるオーラも使えるとはいえ、禁手に至っていない自分では勝てるかどうかがわからない。

 

 英雄になる前に死ぬのは、できれば避けたいところだった。

 

「然し好都合だ。ここで貴様を確保すれば、死体から神滅具を奪えるかもしれん。秘匿して我らの力として運用しよう」

 

「言ってくれるわね、そう簡単に私を殺せると思っているのかしら?」

 

 内心の警戒心を隠し、リセスはシャルバの皮算用を皮肉る。

 

 しかし、それに対してシャルバは嘲笑を浮かべた。

 

「貴様ら愚か者にはわかるまい。この会合はな、ディオドラのところにいる、躾のなってない雌犬に漏らすところが肝要なのだよ」

 

 ……その言葉に、リセスは警戒心をはね上げた。

 

「シシーリアとか言った子に、わざと詳細情報を漏らしたのね?」

 

「ああ。あえて探せばすぐ見つかる場所に無警戒に置いておいた。もっとも重要な部分を隠してな」

 

 そう言い放つと、シャルバは腕をリセスに向ける。

 

 そこに取り付けられた機械から、光力が放たれた。

 

 リセスはそれを同じく光力をぶつけて相殺するが、然しその余波で周囲の瓦礫が吹き飛んでいく。

 

「新兵器の実験だなんて余裕があるわね。でも、堕天使と天使も協力してるのよ?」

 

 悪魔にとって光力は天敵。確かにこの装置を運用することができれば、旧魔王派は現政権に対して有効な武器を手に入れただろう。

 

 だが、恐らくこれが切り札ではないとリセスも分かっている。

 

 おそらく、もっと強大な切り札がある。それも、確実に圧勝できると確信しているレベルの切り札が。

 

「ああ。アーシア・アルジェントは素晴らしい。彼女の存在がこの作戦を成立させてくれたのだよ」

 

 そして、其れは想像以上に最悪だった。

 

「……あの子に何をしたの!?」

 

 勝負を急ぐ必要があると判断し、リセスは風を利用して飛び上がる。

 

 そして、光力を剣に付加して切りかかった!!

 

 それを魔力をまとった拳で受け止めながら、シャルバは蔑むように笑う。

 

「白龍皇ヴァーリをシトリーが叩きのめしてくれた時は嬉しかったぞ。あの誇りとは無縁の男が下級ごときにたたき伏せられたのも、いいデータが取れたのもな」

 

 その言葉に、リセスはまだまだ此方に内通者が多いことを察する。

 

 そして、その時のことについての知識を一瞬で掘り返した。

 

 あれは、たしか生徒会の匙元士郎が中心となった作戦だった。

 

 女王である椿姫がカウンターでヴァーリの鎧を下し、そして匙がラインをつなぐ。

 

 そして、其れを経由して血を奪い取ることで、白龍皇を戦闘不能にする妙手だった。

 

 さらに半減の力すら、堕天使から供与してもらった反転(リバース)で自己強化へと変化させる。

 

 あれは、本来の用途とはまったく別のアプローチでの運用だった。アザゼルも試作段階でリスクが大きいことからいい顔をしなかったが、データが取れたことには感謝していた。それほどまでに神器の能力そのものを反転させることには新しい意味があり―

 

「―っ!?」

 

 その瞬間、リセスは何かを察した。

 

 そして、其れが致命的だった。

 

「どうした? 隙だらけだぞ?」

 

 気づけば、大量の蠅がリセスを取り囲む。

 

 ベルゼブブとは、蠅の王を意味する名。それはつまり、シャルバの血がなせる固有能力。

 

 そして次の瞬間、大量の魔力攻撃が、一気に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方そのころ、アザゼルたちは徹底的に時間を稼がれていた。

 

 リムヴァンはぼろぼろになりながらも、堕天龍の鎧を時間切れまで防ぐことに成功。この時点で大金星といってもいい。

 

 さらに、サーゼクスが消滅の魔力を相殺されているというのも大きい。

 

 消滅の魔力を的確に扱うことに人生をかけてきたといってもいいサーゼクスは、その操作能力こそが真骨頂だ。

 

 それこそが、彼を魔王にまで押し上げた理由の一つ。ウィザードタイプとして極めて高い戦闘能力を発揮する。

 

 それを、完全に無効化された。

 

 魔力を中心とする悪魔に対する防御を中心とした神器の数々。そしてそれを複合禁手と化し、さらには消滅の魔力を無力化することに特化した。

 

 完膚なきまでのサーゼクス封じ。それがサーゼクスを通常の最上級悪魔レベルに迄落とし込んでいる。

 

 炎や雷など、魔力の運用を変えることでしのいでいるが、しかしそれでは真価を発揮することはできない。

 

 さらに足止めに徹した戦法で動くリムヴァンの戦い。

 

 これにより、三大勢力のトップ二人が完全に縫い付けられているという事態が発生していた。

 

「ふっふ~ん♪ この体、思ったより頑張れるね~♪」

 

 明らかに上機嫌になっているリムヴァンの口調は神経に障るが、しかしそれ以上にこの状況が神経に障る。

 

 アザゼルにとってイッセーたちは教え子だし、サーゼクスにとってイッセーたちは妹の家族も同様だ。

 

 その彼らが、クルゼレイによって害されようとしている。これがさらに焦りを生み、隙を生む。

 

 そして、そのうえでリムヴァンは攻撃を多用せずあくまで足止めに徹していた。

 

「この野郎が! 俺たちをここで倒せなくてもいいってか!」

 

「そりゃもうNE! まだまだ序盤だってのに、君たち倒したら楽しめないじゃんKA?」

 

 その言葉に、アザゼルは警戒心をはね上げる。

 

 この男がいう超越者の言葉の意味はアザゼルも知っている。

 

 悪魔という種族に生まれる、魔王クラスすら圧倒するであろう強大な存在。そもそも、悪魔という次元でくくっていいのかすらわからない存在。そんな文字通り悪魔を超越したものの名だ。

 

 彼らは三人しか確認されていないが、リムヴァンの能力が彼の言った通りなら、確かに彼は超越者だ。

 

 神器を大量に移植してデメリット無し。しかも、それを適正次第で自由に操れる。まさに超越者だろう。

 

 あの男とは正反対の位置に属する超越者。こと拡張性という点において、彼の戦闘能力はとんでもないレベルだ。

 

 だが、ゆえにこそ今のこの男を積極的に殺す必要性がなかった。

 

「……リムヴァン。俺たちの目の前にいるお前は、本物じゃねえな?」

 

 その言葉に、リムヴァンは答えない。

 

 だが、しかし絶対に本物ではない。

 

 彼の戦闘能力は、高く見積もって最上級悪魔の上といったところだ。超越者としてはあまりに低すぎる。

 

 第一フェニックスに由来する存在にもかかわらず、傷が再生していない。これはどう考えてもおかしい。

 

 ゆえに、アザゼルは確信すらしており―

 

「―バカのフォローのために、本体がわざわざ出てくる必要はないからね」

 

 ―そして肯定した。

 

「分身ですらその戦闘能力。それも複合禁手によるものかね?」

 

「イッエ~ス! 複合禁手、上流階級の代行者(パペット・オブ・ミラー)だよん?」

 

 そうおどけると、リムヴァンは自分を見せびらかすようにクルリと回る。

 

「本物とそっくりでしょ? 持ち出せる神器には限りがあるし、戦闘能力も最上級悪魔クラスだけど、有利に立てる神器を持ってきたうえで足止め限定なら、君たち二人でも何とかなるよん♪」

 

 腹立たしいが、実際に足止めされていては文句も言えない。

 

 まるでこちらの手の内を全部知っているかのような的確な防御と遅滞戦術に、二人は見事に足止めを喰らっていた。

 

「例の人工神器には苦労したけど、まだまだ試作段階みたいだしね~。そ・れ・に!」

 

 指を立てて、リムヴァンはサーゼクスに視線を向ける。

 

 その視線は、同情すら浮かんでいた。

 

「味方を守るためとはいえ、本気を出せないサーゼクス君なら、さすがに負けないさ」

 

 その言葉に、サーゼクスは静かにため息をついた。

 

「……そこまで知っているのか。やはり、君の情報網は相当根深いところまで冥界を侵食しているようだ」

 

 その言葉は、肯定だった。

 

 サーゼクスは、心から目の前の分身の本体を警戒する。

 

 自分が超越者として呼ばれる所以を、この男は知っている。

 

 秘匿事項というほどではないが、彼の本領を知っている悪魔は数少ないにもかかわらずだ。

 

 だからこそ、対消滅に特化した禁手を持っているのだろう。それほどまでの警戒が、同じ超越者であっても必要だと確信しているのだ。

 

 しかし、だがそれでも彼は甘い。

 

「……リムヴァン、君に一つ忠告をしておこう。どうせすぐに身をもって実感するだろうからね」

 

 その言葉に、リムヴァンは怪訝そうな表情をした。

 

 そして、その直後彼らを包み込むように結界が張られる。

 

 それは、別に彼らの脱出を阻害するような結界ではない。

 

 しかし、その結界の意味に気づいたことで、リムヴァンの表情は引き締まった。

 

「……こりゃ、あと十分も足止め出来たら奇跡かなぁ?」

 

「安心したまえ。……五分で終わる」

 

 リムヴァンにそう答え、サーゼクスは覚悟を決める。

 

 この結界は、万が一のために眷属たちが総出で張った結界だ。

 

 自分が全力を出しても、周囲に被害を出させないようにするための特注結界。自分の僧侶であるマクレガーが、全力をもってして作り上げた傑作だ。

 

 ゆえに、遠慮なく全力を出すことができる。

 

「君がどれぐらい私のこの力を知っているかは知らない。だけど、それが間違ってないかどうかをあえて試させてあげるよ」

 

「御親切にどうも。()()()の君がどれぐらいできるか、僕もデータがとりたかったしね」

 

 その言葉の応酬とともに―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 超越者同士の戦いの意味を、アザゼルはその目に焼き付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時だった。

 

「……え?」

 

 アーシアの声に、俺たちはとっさに振り返る。

 

 いつの間にか、アーシアを封じている拘束具が、何かしらオーラを生んで妙なことになっていた。

 

 な、ななななんだ?

 

「ふふふふふ」

 

 と、殴り飛ばされたディオドラが、含み笑いとともに立ち上がる。

 

 な、なんだ一体?

 

「ディオドラ! てめえ、アーシアに何をしやがった!!」

 

 イッセーが怒鳴りつけると、ディオドラは勝利を確信したもの特有の態度を見せつける。

 

 一体どういうことだ? 状況は俺たちに傾き始めてるはずだぞ。

 

「それは、絶霧(ディメンション・ロスト)の禁手で作られた結界装置なんだ」

 

 な、なんだと!?

 

 絶霧といやぁ、リムヴァンが大量に保有していて、さらにゲオルクとかいうヴァーリと互角に戦ったやつが持っていた神滅具!!

 

 神滅具の中でも特に強い、上位神滅具の一つ。結界系最高といわれる、禍々しい霧の神器。

 

 霧に包まれたものを封じ、そして転移させる、転移と結界の力を持った神滅具だ。

 

 その禁手でなんで拘束具ができるんだよ!!

 

「名前は霧の中の理想郷(ディメンション・クリエイト)。霧の中から所有者の思い通りの結界装置を作り出すって代物さ」

 

 な、なるほど。ようは結界発生装置限定の創造系神器になったってわけか。

 

 ってちょっと待て。それに態々アーシアを組み込むってことは……。

 

「アーシアをコアにすることで発動する結界でも張るってのか!?」

 

「ああ。さすがに何でもできるってわけじゃないからね。こと回復の力を利用するには、それなりの材料が必要なのさ」

 

 俺の言葉にディオドラはうなづいた。

 

 そして、得意げに説明を始める。

 

「発動条件は、僕が倒されるか戦闘開始から一定時間がたつか。そしてその効果はアーシアの力を広範囲に展開し―」

 

 て、展開し?

 

 アーシアの回復力をフィールド全体に張れば、すごい回復空間ができそうだな。

 

 そ、それに神滅具の結界装置なら敵味方の識別も可能かもしれねえ。そうなったら戦況はこっちがむちゃくちゃ不利になるぞ。

 

 だが、ディオドラの次の言葉はその斜め上をぶち抜いた。

 

「その回復力を反転させる。そして蛇を持たないものに効果を等しく与えるのさ」

 

 なんだと?

 

 おい、ちょっと待て。

 

 アーシアの回復力は、致命傷でも即座に回復しかねねえ代物だ。フェニックスの涙にもケンカ売れるぐらいのレベルだぞ。

 

 その回復力が、反転するだと?

 

 それも、蛇を持ってないのは基本的に俺たち側だぞ。

 

 そんなことになったら……っ!

 

「私達が……全滅するかもっ」

 

 最悪の答えに至り、シシーリアが顔を真っ青にする。

 

 ま、マジでやばい! それだけはマジでやばい!!

 

「さあ、これで終わりだよ下級悪魔ども!! 君たち全員、まとめて死ぬといいさ!!」

 

 ど、どうすんだよ、この状況!!!

 




リムヴァンは複合禁手をかなり大量に用意しています。

そのうちの一つが分身生成。この分身、素体状態でも最上級悪魔クラスある上に、さらに神器を一部狩りてくることが可能。今回は堕天使用の対光力魔剣と、対サーゼクス用の複合禁手を持ってきました。

そして、相性抜群とは言え三大勢力首脳陣を同時に相手にして足止めする分身。因みに本体はこんなもんじゃありません。

なお、最初に登場してからポンポン不思議なことを言っているリムヴァンですが、全部伏線ですのでお楽しみください。
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