グロい系です。
シロさん本当にごめんなさい…

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白組さんのささやかな願い

「おほー!あなたですね?シロちゃんに食べられたいと申す豆腐さんは!」

 

少女はうっとりとした表情で舌なめずりをした。

 

~20XX年~

 

バーチャル空間によって、現実と非現実は融合された。

 

現実には不可能な事が出来るようになり、死の体験も出来るようになった。

 

もちろん、死ぬことは無く全てが安全。

 

そんな夢の様な世界になったのだ。

 

…が、

 

それはあくまで肉体的な話である。

 

精密に作られた臨死体験は脳を騙し、死を錯覚した脳は、その活動を停止させる。

 

臨死体験が、本当の意味での死をもたらすという事態が多く発生したのだ。

 

結果、精密な臨死体験は違法とされ、一切禁止。

 

私はそんな違法なゲーム空間にいる。

 

とあるサークルが、電脳少女シロをモチーフとして出した同人ゲーム。

 

そのゲームで、今から”食糧”として彼女にこの身を捧げるのだ。

 

「ねえ、どこから食べて欲しい?」

 

目の前の少女はニッコリとほほ笑んだ。

 

その光の無い瞳に、身体の奥がブルリと震える。

 

緊張の所為か、喉の奥がカラカラに乾いていた。

 

ー足からお願いしますー

 

やっと言えた言葉は消え入りそうな程に擦れていた。

 

「おっほー!りょうっかいっでーす!」

 

彼女は敬礼をすると、跳ねるように足元へと向かう。

 

いよいよだ…

 

いよいよ始まるのだ。

 

胸の鼓動が、脳内に響き渡る。

 

足のつま先に、仄かな吐息が掛かる。

 

「いっただきまーす」

 

足のつま先が、柔らかく湿った何かに包まれた。

 

指の付け根には固い歯の様なものが当たっている。

 

ーシロちゃん…ー

 

やがて指の付け根に充てられた固い歯が、ゆっくりと食い込む。

 

押しつぶされた所が熱を持ち、骨がメキリと音を立てた。

 

予想以上の痛みに、身体が勝手に暴れるが、咬合力は衰えない。

 

「がっっ……」

 

痛みを堪えようと、舌を噛もうとした瞬間だった。

 

骨が折れ、指がブチリと切断された。

 

「っっぁああ!!!」

 

声にならない悲鳴が漏れる。

 

あまりの痛みに、自然と涙が零れ落ちた。

 

が、やがて痛みが和らぎ、身体が軽くなる感覚に陥った。

 

涙で霞む景色の先には、咀嚼する彼女の姿。

 

その口には、自分の一部が入っているのだ。

 

ー彼女は今、自分の一部を食べているんだー

 

ーシロちゃんの一部になれたんだー

 

その事実に心臓が鼓動を更に強めた。

 

やがて咀嚼を終えた彼女は、再びひざまずく。

 

その口の先には、指が千切れた足。

 

「二口目、行きまーす」

 

そう言うと、彼女は足に再び喰らいついた。

 

~~~

 

グジュリ…と音を立て、目の前でかみ砕かれた身体が飲み込まれてゆく。

 

身体はもう動かない。

 

始めは一生懸命押し殺していた悲鳴も嘘のように消えた。

 

痛みは無く、嬉しいという感情だけが、満ち、あふれて来る。

 

「ねえ、豆腐さんは幸せですかぁ?」

 

ふいにかけられた言葉に、私は微笑んだ。

 

いや、微笑もうとした、が正しいだろうか。

 

血の通わない肉塊と化した私は、その表情すら変えることが出来ない。

 

「もう、動けないんだったね」

 

優しい声音とは裏腹に、その目は、冷たく冷えきっている。

 

まるで興味を無くした子供の目…

 

彼らは決まって要らない玩具をゴミ箱に捨て、新しい物を欲しがる。

 

ー玩具のように捨てられるのは嫌だ…ー

 

ふいに現れた不安に、目の前が真っ暗になった。

 

ーお願い…捨てないで…最後まで食べて…ー

 

ー食糧としてでは無く、人間としてー

 

ー玩具としてでは無く、一人のファンとしてー

 

ー残さず取り込んで…お願い…ー

 

そんな私の願いを知ってか知らずか、彼女は再び”食事”を始めた。

 

耳元に届く咀嚼音に、堰が切れたように涙が溢れ出す。

 

ーああ、ありがとうシロちゃんー

 

やがてパキリと音が鳴り、それを最後に”音”が消えた。

 

最後の耳が喰われたのだ。

 

あと少しで私はこの世を去るだろう。

 

だが、それは決して悪い事ではない。

 

一人の冴えない人間としてではなく、憧れの存在の一部として、この世を去ることが出来るのだから。

 

ーこんな幸せな事は無いの…ー


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