今までお付き合いくださり、ありがとうございました。
アンパンマンが、マントを外す。
バサッという音を立て高く放り投げられたマントはちょうど、未だ涙を止める事のない親愛なるマスターの少年の、手の中に納まる。
『 あい あむ ざ ぼーん おぶ、 あんぱーん………』(身体はパンで出来ている)
ポストの上に立ち、そう、小さく呟いてから。
アンパンマンが今、¨聖杯せんそう¨のリングへと降り立った――――
………………………………………………
アンパンマンが¨枷¨を外した。
野獣が自らを縛る鎖を食いちぎるように、そのマントを外したのだ。
もう空なんて、飛ばない。
優しい空でのアンパンチで、¨安全に飛ばしてはあげられない¨
―――ぼくは今から、『君を殴る。』
これは、そうゆう合図だった。
マントを外したアンパンマン。士郎は赤く泣き腫らした目で、その背中を見る。
そこには、大きな¨スマイルのマーク¨
アンパンマンの、愛と勇気。
親愛なる君への、誓いの印。
その揺るぎない信念のマークが、背負われていた。
そして、まるでそれに答えるかのように、バーサーカーが『手にした斧剣を捨てる。』
まるであさっての方向へと投げられた巨大すぎる斧剣が、遠くの方で凄まじい音を立てて地面に突き刺さる。
「■■■…。■■■■……」
バーサーカーが、まるで力を誇示するかのように、己の手のひらに拳を打ち付ける。
パンッパンッなどという軽い音ではなく、バーサーカーの鳴らすそれは、その剛腕の破壊力を表すように、重く。
キャスター以外の全てのクラスに該当するという、その凄まじい武勇。
それを今、両の拳に乗せて。
言葉を話さぬバーサーカーが、『お前を殴る』
拳で、そう語っていた。
この両の拳で、お前を倒す。
それが我の望む、新たなる試練。
――
――――これがその、13番目の戦いだ。
………………………………………………
開幕の一撃は、バーサーカーだった。
轟音をあげ一瞬で近づいたバーサーカーが、アンパンマンの身体を拳で吹き飛ばす。
くの字に曲がって吹き飛んだその小さな身体から、信じられない程の重い衝撃音が鳴る。
アンパンマンが地面に叩きつけられ、そこを追撃する為、雄たけびを上げてバーサーカーが突進する
『 ■■■■ーーーーーーーーッッッ!!!! 』
「くぉぉんのやろぉおおおおおっっっ!!」
「止まりなさいッッッ!!!!」
そこに立ち塞がるように召喚されたカレーパンマン、しょくぱんまんが応戦する。
「ああああ新しい顔よぉおおぉぉぉーーーーーーーッッッ!!!!」
弾丸のような速度で、バーサーカーに向けてバタコさんがアンパンを放つ。
「――ぐぅべっっっっ!!!!」
「……っっっ!!!!」
はじけ飛ぶようにカレーパンマンとしょくぱんまんが薙ぎ払われ、投げられたアンパンを、バーサーカーは渾身の拳で撃ち返す。
バタコさんの真横に着弾したアンパンが火薬のように地面を爆発させ、その衝撃破がバタコさんを吹き飛ばした。
「きゃああああああああーーーーっっっ!」
「ああああ゛ん゛あ゛あ゛あ゛ーーーーん゛ッッッ!!」
素早く起き上がり空中でバタコさんをキャッチしたアンパンマンの背中を追い抜くように、チーズがバーサーカーに突進する。
「く゛ぅ゛あ゛あ゛あ゛んあんあんあっ!! ……………………っっ??!!」
バーサーカーの足に噛みつき、そのまま振り回そうと試みるチーズ。
だが、鋼のようなその巨体が「ピクリとも動かない」
『………………きゃあんあんあーーーーーーーーーーんっっっ!!!!』
首の後ろをバーサーカーに掴み上げられたチーズが、その剛腕でおもいっきりぶん投げられ、高く飛んで空へ消えていった。
……………そしてスローイング後の態勢から〈ドォオオシィィン!!〉という重い音を立てて足を踏み下ろし、その姿勢をバーサーカーが正した後。
そこには、アンパンマンの仲間達が全員、地に伏せている光景があった――――
………………………………………………
「ありがとうございます。バーサーカーさん」
立ち上がったアンパンマンが、バーサーカーに言う。
「みんな、気絶して一旦消えちゃったけど、怪我をしてなかった。
ありがとうございますバーサーカーさん」
服に付いた埃を払い、アンパンマンが続ける。
「それにバーサーカーさんは¨顔¨を狙わなかった。
ありがとうバーサーカーさん。やっぱりバーサーカーさんは、とっても優しい人です」
バーサーカーと向かい合い、アンパンマンは苦笑するようにニコリと笑う。
「でも、いいんですバーサーカーさん。
ぼくの¨顔¨を狙ってください。ぼくと勝負をしてください」
「そうじゃないと…………きっとぼくは、ダメだと思うから」
ドォゴォオオォォォォン!!!!!
即座に凄まじい爆音を立て、バーサーカーの渾身の剛腕がアンパンマンの顔に向かって叩きこまれる。
しかしそれは、¨顔¨の側頭部のあたり。
顔が少し削られたアンパンマンの、まんまるの手に。攻撃は受け流されていた。
「やっぱりすごい、バーサーカーさんの拳。」
「“優しい“から、強い。……今まで、たくさん守ってきたから」
今一度叩きこまれるバーサーカーの拳。今度は顔の反対側を削ったが、受け流される。
「だから、ぼくもがんばります、バーサーカーさん。」
「こらしめるためじゃなくて、やっつけるためじゃなくて」
〈ゴォオキィイイイッッ!!!!〉という音を立て、顔に打ち込もうとしたハズのバーサーカーの右腕が、へし折れる。
「士郎くんにぼくの事……、ずっと、おぼえておいて欲しいから」
―――アンパンマンの下からの拳が、バーサーカーの巨体を跳ね上げる。
ドォゴォオオオオオオォォォォォォォォォンッッッッッ!!!
………………………………………………
「えいえーーーーーーーい!」
ドォォォオゴドゴドゴドゴ!!!!
「えいえいえいえいえいえいえーーい!!」
どぉぉぉぉおおおごどごどごどごごどごどごどごご!!!!
バーサーカーの身体が、まるでアニメでよくある“マシンガンで撃たれてる人“のように、立ったままくねくねする。
「さっきはよくもやってくれたなこんにゃろうっ!!」
「成敗します! 成敗します!」
ドォオオオオオオガガガガガガガガガガガガ!!!!!!
いつの間にかさっきの二人も混ざってきて、バーサーカーを三方向から殴りまくる。
びっくりするくらいくねくねしているバーサーカーの足が、ちょっとだけ地面から浮いてくる。
「新しい顔よ!(スライダー) 新しい顔よッ!!(フォーク) 新しい顔よッ!!(シンカー)」
ニンジャのような大きな凧にのったバタコさんが、空からなんかうまい事角度をつけて、バーサーカーのど頭に新しい顔を投げつける。
バーサーカーの頭が、パンチングボールみたいに左右にグニョングニョン揺れる。
ゴインッ! ゴイ~ンッ!! ゴイィ~~ンッッ!!!!
「~~~~~~~~~~~~~ぁぁぁぁぁぁぁぁああああんあーーんっっっ!!」
そこへがんばって地球を一周してきたチーズが、ロケットみたいにバーサーカーの腹に突き刺さる。
ドォッゴォオオオーーーーーーーーーーンッッッ!!!!
「いてぇじゃねぇかこの野郎この野郎!!」ドゴドゴドゴ!!
「でもありがとうございます! ありがとうございます!」ドゴドゴドゴドゴ!!!
「新しい顔よ!(ナックル) 新しい顔よ!(スプリット) 新しい顔よ!!(カーブ)」ゴインゴイン!!
「あんあーーーーん!!」ガブガブガブガブガブゥ!!
そして怒りが激おこぷんぷん丸に達したみんなで、まんが土煙を上げ「わああああ!!」とばかりにバーサーカーをふんづける。
どすぅどごっどすぅどごっばぎゃぐしゃッッッ!!!!
『 ~~~~~~~~■■■■■ッッッッ!!!!!! 』
バーサーカーが〈ブゥゥゥンッ!〉と腕を振り回したので、「わー!」と言いながら、みんなが散って逃げた。
そこへ「ええーーい!」という掛け声を上げ、バーサーカーの上から¨ばんざい!¨の態勢で、アンパンマンがふってきた。
どっすぅぅぅぅーーーーーーーーーんんんんっっ!!!
『 ~~~~~ッッッッ!!!??? 』
―――そして、バーサーカーに馬乗りなったアンパンマンが、マウントポジションの態勢から、拳を天に、高く振り上げる。
「 アアアアアアアアアンンンッッッ……………………!! 」
―――¨愛と勇気¨がリンリンリンと音を立て、
――――――連続で拳を打ち下ろし続けるアンパンマンの身体が…、
ドォゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!!!!!!!!
―――『黄金色に輝いた』
『 ………………パァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーンチッッッッッ!!!! 』
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ッッッッ!!!!!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
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………………………………………………
三段たんこぶを作り、気を失って大の字のバーサーカー。
その上に、マウントポジションの態勢でまたがり、
目をつぶり、お空を仰いだまま、
まるでスポットライトをあびているみたいに、太陽の光でキラキラと光る、アンパンマン。
歓声を上げながら駆け寄る、桜、ライダー、キャスター達。
そして、またちょびっと涙顔のままで笑いながら、士郎が彼に抱き着いた。
―――アンパンマン。
―――――その背中には、大きな¨笑顔¨のマークがあった。