前回の話は投稿後しばらくしてから全体の修正やラスト部分などを大幅に書き加えており、それを持って本編の最終話としています。ご注意ください。
これは皆様への感謝の気持ちを込めた、おまけのエピローグです。
大会の優勝は、『ジャムおじさんだった』
今現在リング上では、頭の上のたんこぶから「ブシュ~…」と煙を出し、なんか¨きをつけ¨の態勢のままで地面に倒れているランサーの姿。
そしてその傍らに立ち、「ほっほっほ」と朗らかに笑うジャムおじさん。
彼の右手には、未だ小さく煙の上がる少しだけペコッと凹んだ¨パン生地こねる用の棒¨が、握られていた。
厳密に言うと、この大会の優勝者は、ランサーなのだが。
『不殺の試合ルールだから』という事でデッキブラシを操り、そして布団叩きのセイバーとの壮絶な死闘を制したランサー。
しかし直後『ズゥゥゥン!!』と音を立て、まるで格闘ゲームの隠しボスのようにリング上へと舞い降りたジャムおじさんにより、ランサーは死んだ。(心が)
「私は本来権利を持っていないし、そもそも我々はアンパンマンともども
聖杯を出現させる前には元の世界に帰る予定なのだからね。
この大会の優勝は君だよランサー君。おめでとう」
「ほっほっほ♪」と朗らかに笑うジャムおじさん。
とりあえず士郎も、笑顔で笑ってみた。
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休日の朝、士郎は最近新しく購入してみたちょっとお高めのオーブンで、パンを焼いていた。
ジャムおじさんのを参考にして投影してみた¨パン生地こねる時の棒¨をぐりぐりとがんばって押す。
もちろん、「おいしくな~れ、おいしくな~れ」と心をこめる事も忘れない。
これにより、作ったパンに愛情をこめるのだ。
パンが出来たら藤ねぇや桜と共にあいんつべるんのお城に行き、イリヤに食べてもらおう。
ほっぺを膨らませモグモグと笑顔でパンを食べるイリヤの姿を想像し、士郎は笑う。
あの日、元の世界に帰る時。
セイバーは、女の子座りで空を仰ぎながら、わんわんとスヌーピーみたいに泣いた。
士郎のお腹にギューっと抱き着き、「あんたぁー!すてんとってぇ~!」とよくわからない事を言いながら、おいおいと泣いた。
「私は必ず貴方のもとに帰ってきます士郎!今度会う時まで私もパン作りを勉強しておきますから!……………通信教育で!!」
そんな事を言って、セイバーはジャムおじさんに沢山パンを詰めてもらったリュックサックを背負い、元の世界へと帰っていった。
なんか腑に落ちない顔をしたランサー、そして同じく頭にたんこぶのあるアーチャーやアサシンも、元の世界へと帰っていった。
アーチャーはツンデレの人みたいに〈プンッ!〉とそっぽを向き、俺に「まぁ、せいぜい頑張ってみるがいい」とエールをくれた。
アサシンは帰る時、「坊主。無いにこした事はないが、次があるなら今度は私を呼ぶといい。お前に日本刀の良さを教えてやるぞ」と言っていた。
どうやらアサシンは、いつも士郎が山門まで持ってきてくれた差し入れを、とても気に入ってくれていたようだ。
そしてランサーはどうやら、聖杯にかける願いをほんとに何にも考えてなかったみたいで、聖杯が出現してからも、なんかオロオロとしていた。
さすがに漫画みたいに「ギャルのパンティおーーくれ!」とは言わなかったけれど。
「漠然とし過ぎ!」と遠坂にツッコまれながら『坊主達のこれからに幸あれ』とだけ願った。
バーサーカーさんはたんこぶを治してもらってから、膝を付き、わんわんと泣いてギュッっとしがみつくイリヤの頭を、優しく撫でていた。
士郎の肩に手を乗せ、穏やかな表情で微笑んでから、大きな背中が元の世界へと消えていった。
士郎に「頼んだぞ」と、そう言ってくれたように思えた。
ライダーは桜と長い抱擁を交わし、桜と慎二に「私はいつも貴方達を見守っています。ありがとう」と言って帰って行った。
何故か帰る時はアンパンマン号に乗り、『ぶぅーーーん!』と走り去っていくように彼方へと消えていった。
そしてキャスターは、アンパンマンが帰る前、葛木先生アンパンマンと親子のように三人で手を繋ぎ、一枚の写真を撮った。
その写真を大切に胸にギュっと抱きしめ、優しい顔で目を閉じ、元の世界へと帰っていった。
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玄関のチャイムが鳴り、「せんぱーい!おじゃましまーす!」という桜の声。
そして「衛宮ぁー。マウントポジションの練習しようぜー」という慎二の声が聞こえた。
俺は手を洗って玄関に向かいながら。ふと部屋にある鏡に映った、自分の背中に目を向ける。
俺の服の背中には今、大きな¨スマイルのマーク¨がある。
あの、アンパンマンとさよならをした日の夜。俺は裁縫をして、これを縫い付けたのだ。
――――彼の笑顔を思い描きながら作るパン。
――――――それはもちろん、ニッコリと笑ったアンパンだ。