身体はパンで出来ている。   作:hasegawa

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番外編、その1

 

 

「もしかしたらお前が7人目だったのかもな。まぁだとしても、これで終わりなんだが」

 

 

 衛宮士郎は、死を覚悟した。

 

 数秒後には、目の前の青い装束の男が持つ槍がまっすぐに突き出され、無慈悲に自分の心臓を貫くだろう。

 

「じゃあな坊主、今度は迷うなよ」

 

 爆発的な怒りによって埋め尽くされた感情は、数瞬後の確実な死への恐怖すら吹き飛ばす。

 胸に思うのは、たった一つの、強い想いだけ。

 

 

―――ふざけるな!!

―――お前なんかに、このまま殺されてなどやるものか!!

 

 

 青い男の槍が自分の心臓へと突き出されようとしたその瞬間、士郎の視界は突然の、強烈なまばゆい光によって奪われる。

 

「マジかよ!まさか本当に7人目か!」

 

 

 ……そして、その光の中から――――

 

 

………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 みゃあ~~~~~~~~~ん。

 

 ………タタタタタタッッ!

 

 

 

 

 

「………………え?」

 

「………………………ん、なんだぁ、ありゃ?」

 

 

 士郎の絶対絶命の危機であった、その刹那。

 突然光の中から飛び出し、そして今、ランサーの横をすり抜けて出入り口から元気よく外へ逃げて行ったのは、なにやら口に魚をくわえた、野良猫だった。

 

「こらぁーーー!待っちなさぁーーい!!」

 

 そして次に光の中から出現したのは、一人の女性。

 その女性はお魚くわえた野良猫を追っかけて裸足でかけてく、愉快な人だった。

 

「………………………………………………」

 

「………………………………………………」

 

「まったくも~。まんまと逃げられちゃ…ってあら? 何してるの貴方達?」

 

「ああ゛ーっ!(だみ声) なん~かお兄さん達が喧嘩してるー!」

 

 その時、グローブを引っかけた野球のバットを肩に担いだ坊主頭の少年が光の中から現れ、驚いた顔をしてランサーと士郎を指さした。

 

「あらほんとだわ大変!ねぇアンタ達?何かあったの?怪我したらつまんないわよ?」

 

「そーだよお兄さん達ぃ~!」(だみ声)

 

「……………………え」

 

「……………………………お、おう。そうだなわりぃ」

 

 そしてまた光の中から誰かが現れ、なにやらとても小さい男の子と、おかっぱ頭の女の子が、それぞれランサーの両足にガシッとしがみついた。

 

「けぇんかぁ~~ぁはダ~~ァメでぇ~~すぅぅ~~~~!!」

 

「だめぇ~~~~っ!!」

 

「ぬぅおっ! ……お、おいお前ら一体な………いやお嬢ちゃん、

 坊ちゃん、放してくんねぇかな? ここは危ねぇからよ?」

 

「ダメ~~~~~~~っ!!」

 

「ケンカぁ~はやぁ~めるぅ~~ですぅ~~~~!」

 

「いやっ! ちょっ…! 放っっ!

 …………わ。わかった!わかったからよ!!」

 

 そして左右から女の子と坊やがランサーの腰のあたりを掴み、グイグイグイグイとランサーの身体を揺らす。

 

「ちょっとアンタ! なに持ってるのその赤い棒!

 尖ってるじゃないの! 危ないわよ!!」

 

「あぁ~~ぶな~~いでぇすぅぅぅ~~~!」

 

 

 腰に手を当てて、サザエさんがプンプンと怒る。

 

「ちょっとカツオ! これどっか捨てて来なさい! って放しなさいよアンタ!」

 

「おいおいおいちょっと待てよオイ!!!!」

 

 サザエさんとランサーが、大岡裁きみたいにゲイボルグを引っ張り合う。

 

「オイ馬鹿これねぇと商売あがったりなんだよこっちはっ! やめろよオイ!!」

 

「はぁ~なぁ~すぅ~でぇ~すぅぅ~~!!」グイグイ!

 

「そーだよお兄さん!! 捨てなよそれ!!」(だみ声)

 

「そうよお兄さん! 危ないもんそれ!」プンプン!

 

「アンタいいかげんにしときなさいよアンタ! 警察呼ぶわよ!!」グイグイ!

 

 士郎は口をぽかんと開けたまま、ランサーと謎の一家がゲイボルグを取り合うのを、ただぼけっと見つめる。

 

 その時、マスオさんが背後からゴルフクラブでランサーの後頭部を殴る。

 

「え゛え゛ぇ゛い゛っ゛!!」(裏声)

 

ゴンッ!!

 

「……お゛わ痛った!! って今度は誰だてめぇ!! ……って槍はなせお前らっ!!」

 

「君は僕の家族にいったい何をしているのかぁ゛い゛!!」(裏声)

 

「マスオ兄さん! こいつ悪いやつなんだよやっつけてよ!!」

 

「え゛え゛ぇ゛い゛っ゛!!」(裏声)

 

ゴンッ!!

 

「お゛ごっ!…………っていい加減にしねぇかあお前らぁああーーーっっ!!!!」

 

 その時またしても光の中から誰かが現れ、その人物が突然ランサーのド頭に、げんこつを落とした。

 

 

「ッッばっっっかもぉぉーーーーーーーんっっ!!!」

 

 ゴォツーーーーンッッ!!

 

「…ん゛ごっっっっっ!!!」

 

 

『 こぉーんな深夜に、大声を出すやつがっ、あるかぁぁぁぁぁぁああああああぁぁーーっっっ!!!! 』

 

 

 波平にげんこつを頂いたランサーは、思わず思わず頭を抱えて槍を放した。

 

「あ! 槍とれたよねぇさん! ボクこれ捨ててくるね!」スタタタタ!

 

「いってらっしゃいカツオ!

 ほんとにもーアンタいったい何やってんの青いタイツ着て!

 ほらそこの坊や! アンタもこっち来なさい!!」

 

「………えっ!? 俺?!」

 

 座って呆けたまま油断していた士郎も、一緒に呼びつけられる。

 

「アンタ達そこに座りなさいな! まったくなんなの貴方達!

 チャンバラしてたの? こんな夜中に? ご両親は? 電話番号は?!」

 

「……え! いやあのよ?! ……親は勘弁してくんねぇかな…?」

 

 ランサーは、中学生のような事を言った。

 

「まったくもうこんなご近所に迷惑かけるような事……ってちょっと坊や!

 アンタ怪我してるじゃないの!」

 

「おやおや坊や。さぁこっちいらっしゃい。おばさんが絆創膏はってあげるわ」

 

 ふねさんも光の中から現れて、士郎の手を握った。

 

「……あ、いや……俺は」

 

「いいからいいから、こっちいらっしゃい。さあさあ」

 

 そのままふねさんは士郎の手を引いて、出入り口から外へ歩いて行った。

 

「まったくもう! いい歳してっ! 今度やったら承知しないわよ!

 ワカメ! イクラちゃん! 帰るわよ!」

 

「「はぁ~い!」」

 

「アンタも早く帰んなさい! じゃあねっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………………………お、おう」

 

 

 

………………………………………………

 

 

 

 

 そして磯野さん一家はゾロゾロと藏を出ていき、マスターの待つ衛宮家へと、帰っていった。

 

 暖かい食卓、暖かい家族、そして暖かい日常。

 

 衛宮士郎の聖杯戦争の幕が今、切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『サザエさん / stay night』 了

次回、『サザエさん / ホロウ アタラクシア』

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