身体はパンで出来ている。   作:hasegawa

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宿敵。

 

 

「まったくお前はどれだけバカなのだ! こ~んな美人のお姉さんに一体何してる!

 俺様はこの人と会った事すらないわ!」

 

 

 今ライダーの目の前では、アンパンマンが地べたに正座をさせられた上、ばいきんまんに猛烈な説教をえんえんと喰らわされていた。

 

「大体アンパンマン!そもそもお前には常識ってモンが無さすぎる!

 腕っぷしが強くても馬鹿じゃダメだろうが! 世間は厳しいんだ!

 もっとよく考えて行動をしろ! この俺様のように!」

 

 絵に描いたような「しょぼん…」とした顔で、俯いて沈痛な面持ちをみせるアンパンマン。

 彼にとって、悪気はなくとも¨女の子を傷つけてしまった¨事というは、それほどに重たい事だった。

 

 腰に左手をあて、右手でアンパンマンを指さしながら、ガミガミと頭上から愛の説教を続けるばいきんまん。

 そんな二人の姿を、彼女は体育座りで可愛らしくモグモグとアンパンを頂きながら、上目遣いにじっと見つめた。

 

 

…………………

………………………………………………

 

 

 アンパンマンに「お前はまるでばいきんのようなうーまんだ」と言われたと解釈し、ライダーは戦いの事すら忘れ、ただただその場で放心し続けた。

 眼帯で覆った瞳にはジワリと涙が浮かぶ感覚。ライダーは少し顔を上向き、涙をこらえ立ち尽くす。

 

――――ひどい、あんまりだ。

――――――いくら私にだって、女性としての尊厳はあるのだ。

 

 実はつまらない事やちょっとした事にもゴリゴリ傷ついてしまう驚異の繊細さなのだ。

 

 私は自分の見た目に劣等感を持ち、自分には無い少女的な可愛らしさに憧れたりもする、コンプレックスの塊だ。

 そんな私の繊細なハートは、アンパンをぶつけられ、砕けてしまったのだ。

 

「ば…ばいきん…」

 

 そうきたか。

 なるほど、今度はそうきたか。新しい切り口です。

 

 私のような大女は、傍に近づく事すら拒否されるのか。大女菌が感染するから~と、みんな私から離れていくのか。

 

「ん? どうしたんだいばいきんうーまん! 大丈夫かい!?」

 

「ばいきん…。」

 

 アンパンマンは、突然棒立ちで放心し始めたばいきんうーまんが心配になり、一生懸命に声をかけた。

 

「ばいきんうーまん! どうしたんだ何があったんだばいきんうーまん!

 しっかりするんだ!」

 

「……。……ば」

 

 なにやら棒立ちだったライダーの脚が、ガタガタと小刻みに震え始めた。

 

 

「ぼくの事がわかるかいばいきんうーまん! アンパンマンだよ!

 ばいきんうーまんの友達アンパンマン!

 ほら言ってごらんばいきんうーまん! ばっ! いっ! きっ! んっ !うー

 

『 ――――やかましいわバカたれッッッッ!!!! 』

 

 

 その時、突如としてどこからか飛来したバイキンUFOが、勢いよくアンパンマンを跳ね飛ばした。

 

 

…………………

………………………………………………

 

 

「……この度は、この度は本当にウチのバカたれが……まことに申し訳ございません」

 

 

 ふかぶかと手をついて謝罪するばいきんまん。それを受ける体育座りのライダーさん。

 先程はばいきんまんの「ほらっ!さっさとお出ししなさい! ほら早く!!」という指示により、誠意を込めた大き目のアンパンマンの顔の欠片を彼女は受け取っていた。

 

「いや、ね。うちのバカたれアンパンも普段はいい所もあるヤツなんですが、

 いかんせん、ちょっと家庭の事情で甘やかされたまま育ってしまった所があったり

 致しましてですね。まぁなんと申しましょうか………。

 ほんとうにっ!!この度はっっ!!!」

 

「「すいませんでしたぁーーーーーーーー!!」」とズザーッと頭を伏せるばいきんまんとアンパンマン。

「いえ……あのもうその辺で…」と、ライダーもなんか申し訳なくなってきてしまう。お前はパン族の面汚しだとばかりに、未だガミガミとばいきんまんの説教が続く。

 

 実の所、今のライダーは、もうすでに結構元気が出てきていたりする。

 もう何も考えたくなくなり、敵の物だとかそんなモンしるかもっと大きくなってやるとばかりにやけくそになってもらったアンパンにあの時はかじりついたのだが、それがもう、とんでもなく美味しかったのだから。

 

 自分が涙を流していた事を忘れてしまう程、それは甘くて幸せな食べ物だったのだから

 

 

「…えっと、所でさっきわたくし共の方でですね?

 本当に少しばかりなんですが、間桐さんのお宅の桜ちゃんや慎二くんの、

 ほんとぉにちょっとあのぉ……事情と言いますかですね?

 そういった物を小耳に挟んでしまったもんですからね。

 ……って、いやいや! 待ってくださいライダーさん!!」

 

 

 でもライダーは¨桜¨の名前がこのばいきん野郎の口から出た瞬間、迷いなく立ち上がった。

 

「お気持ちはわかります! お気持ちはもう! ほんとう存分にっ!!

 しかしそこをどうにか聞いて頂きたい事がですね!?」

 

 ライダーは、わたしがおまえを射程に捉える3歩の分だけ好きにしゃべりなさいとばかりに、【無言、無慈悲、無表情】のスリーカードで最初の一歩目を踏み出す。

 

「今回のこころばかりのお詫びと言ってしまってはアレになるんですがね!

 どうにかして差し上げたいとっ!! わたくし共の方で持つ技術力ででですね!

 なんとかして差し上げたいとっ! 桜ちゃんのお身体の問題や慎二くんの魔力の

 問題は解決できるっ! 出来るます!! なので僭越ながらわたくし共の方で

 ででででですね!? なにとぞっ! 桜ちゃん達の明るい未来を!

 輝かしい明日を!! 護って差し上げたいとぉおおおーーーー!!!」

 

 

………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 ライダーは、今度の今度こそ立ち尽くし、その場からまったく動けなくなった。

 

 

 その場である程度の詳しい話をライダーさんにお聞かせした後、さっそく準備に取り掛かるべく、バイキンUFOは軽快に空へと飛んでいった。

 去り際、〈ガシッ!〉っとアンパンマンの肩を掴み、真剣な表情でばいきんまんが告げる。

 

 

「 こうゆう難しい事は全部俺様がやってやるっ。

  お前はさっさとみんなを幸せにして、さっさと戻ってこい!!!! 」

 

 

 

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