「んっふっふ………はーーーっはっはっは!!
……いや許せ許せ♪ それにしても言峰よ、お前ともあろう物が、
まぁ随分とこっ酷くやられたものよなぁ♪」ニッコリ
『大儀である』とばかりに言峰のグラスにワインを注いでやり、愉快そうに金色のサーヴァントが笑う。
「それにしても貴様、どうやったらあんな漫画のような三段重ねのたんこぶなど
こさえる事が出来たのだ! あのようなコミカルな負傷の仕方をするなどと!
30を半ばにし、ようやく貴様にもユーモアという物が
わかってきたと見えるなぁ!」ニッコリ
『大儀である』とばかりに、言峰の頭に乗った氷嚢を、氷の新しい物へと取り換えてやる。
なんだかんだ、黄金のサーヴァントは甲斐甲斐しく言峰のお世話をしている。
「………ギルガメッシュ、……貴様、先ほどまで…一体どこで何をしていた…?」
「おお!そうであったそうであった! 我は公園にてケンタやヒロシらと共に、
カブトムシを戦わせ覇を競い合っておったのだ!まぁ~あれはわざわざ
回収するまでもない。我の自慢のヘラクレスオオカブトはあの子らに
くれてやろう。ケンタやヒロシであれば立派に強く育てる事も出来よう。
心配せずともよいぞ?言峰♪」ニッコリ
「 助けに来いッッ! と言っているのだッッ!! わ た し は っ!!!! 」
『んふっ♪』っと、まるで猫のような口元でにやけながら、ギルガメッシュはグラスをまわす。
ちなみに、氷嚢を変えてやるのもワインを酌してやるのも「仮の主従とはいえ王たる我にこんな手間をかけさせるお前は仕方の無いヤツだなぁ♪」という、言峰の自尊心をへし折る愉悦を得んが為の、英雄王の策謀だ。
「まぁそう言うな。我が″サーティワンたんこぶタワー″という世にも珍しい物を
見られたではないか。貴様がボカスカ殴られた甲斐はあったという物よ。
それにあ奴らは″殺さん″。けして人も英霊も殺める事はせん。
げんにほれ、あれだけドスドスバンバンドゴゴゴと愉快に成敗された貴様は、
タワー以外に大した怪我もせず、今もピンピン我に怒っているではないか。」
「あれだけ苦行を味わえばさぞ徳も高まろうという物。坊主の本懐よな」と黄金のサーヴァントはあっけらかんと言い放つ。
本当は言峰の危機をビビビッと感じたその時、ギルお兄さんはヒロシ君(5)との白熱した虫相撲の真っ最中であり、『えっ…あっと…、我どうしよう?』と自慢のヘラクレスを取るか言峰を取るかでオロオロ迷って若干教会への到着が遅れたという事情があったものの、そこは天下の英雄王、あの愉快な面子が言峰のマイルームの扉を蹴破る直前には、しっかりと現場に到着はしていたのだ。
だが¨一目見た瞬間¨この者の事を、そして彼の人間性(?)の深淵までもを深く読み取った英雄王の『眼』は、ほうほうとばかりに腕を組み、そして黙って眼前の愉快なおしおきの光景を鑑賞させる事を選ばせた。
「たまには言峰もこういった愉悦を味わうがよかろう」という気持ちもちょっぴりと少しだけ全体の9割だけあったのだが、なにより、この目の前の愉快な者に、黄金のサーヴァントは強く関心を持ったのだ。
その関心が、今まで彼がけしてした事もなかった「己の財を荒らす賊を見逃す」という行動を取らせた。
「まぁ貴様にとってはあの地下室の供物共を解放された事は残念やもしれんがな言峰?
あのような物、我が必要としていると、本当にお前は思っていたのか?
10年前のあの日ならば多少の手間もかかろうが……、今の我は魔力供給の方法など
いくらでも用意している。……お、お前がっ、…ふふふ! お前があまりにもっ…
¨愛情を込めて¨甲斐甲斐しくあれらの世話をしているものでな!
させてやっていたんだよ!……んはははは!
まるで雛鳥を愛でる我が子の成長を慈しむ親のようよなぁ!!」
膝を叩き、目に涙を浮かべながら笑うギルガメッシュ。
ギシリと歯を食いしばり、屈辱の表情を浮かべる言峰。
「だがまぁ安心せよ言峰。貴様はいまだ聖杯戦争の監視役とやらなのだろう?
あのアンパンマンとかいう¨童¨(わらし)とまみえる機会はこの先またあろう。
それよりも言峰! ところであやつのアンパンとかいう物の味は、
いったいどうだったのだ!? んふふふふ!貴様ここでぶっ倒れている時、
なにやら口元がつぶあんだらけであったが!!」
――――言峰綺礼の瞳は今、80年代の少女漫画のヒロインのように、キラキラしていた。