こっそりと更新します。
ダイアゴン横丁に来るのは初めてではない。
聖28族のロングボトム家は旧家であり、貴族らしくはないがちゃんと貴族であり、暖炉はもちろん繋がっている。
家には屋敷しもべ妖精もいるらしいが、僕の前に姿を現したことは一度もない。
家の者に気付かれないのが良い屋敷しもべ妖精だということをおばあちゃんにきつく言いつけられているらしく、料理、洗濯、掃除をとても上手にこなしているとても良い屋敷しもべ妖精だということをアルジーおじさんに聞いたことがあった。
今日は僕とおばあちゃんが出かけているから、堂々と家の中を行ったり来たりしているに違いないと僕は思っている。
グリンゴッツに向かう途中にある箒のショーウィンドウにニンバス2000が飾られているのが目に入った。
僕は原作通りにおばあちゃんから箒に乗ることを禁止されているけれど、クディッチを見るのは割と好きだった。
箒に乗るというのはどう考えても才能に偏るのではないかと思っている。弘法筆を選ばず。本当にすごいプロはどんな箒にも同じように乗りこなせるという。ただし、安い箒は耐久性がないのですぐに壊れてしまうらしいけれど。
「・・・箒に乗ってみたいかい!?」
「いや、乗りたいとは思わないかな」
僕がボーっと箒を見ていると、神妙な面持ちでおばあちゃんが話しかけてきたけど、僕は本当に箒に乗りたいとは考えていなかった。というより、箒に乗るなら本を読んだり呪文を練習したいと考えている。
僕の答えが予想外だったのかおばあちゃんは足を止めた。
「新入生になったし、最近のあんたはドジも全くしない。欲しいなら買ってあげないこともないんだけれど」
「いや、だったら同じ金額分だけの本が欲しい」
「あんたはまったく・・・」
呆れたようにため息を深くついておばあちゃんはまた歩き出して、その後ろを僕はうれしそうに着いていった。おばあちゃんが褒めてくれることはほとんどないからだった。
それにしても、おばあちゃんは僕が杖に選ばれたことがよほど嬉しいようだ。箒なんてあったところで1年生のうちは持ち込むことなどできないだろうに。
漸くしてグリンゴッツに着いた。
小さな店が立ち並ぶ中でひときわ高く真っ白な建物であり、磨き上げられたブロンズの両開きの扉はとても冷たい印象を与えてくる。扉の両脇に真紅と金色の制服を身に纏ったゴブリンは無表情で立っている。グリフィンドールカラーの制服はわざとだろうか。
ゴブリンにお辞儀をしてから扉を2つ通っていくと、広々とした大理石のホールに出る。カウンターの向こう側では百人を超えるゴブリンが働いていた。おばあちゃんから背中を軽くおされて僕はカウンターにいる手の空いているゴブリンに声を掛けた。
「おはようございます。ネビル・ロングボトムの金庫からお金を出しに来ました」
そういってズボンの左ポケットから鍵を取り出してカウンターの上に置いた。「拝見致します」と小さく言ったゴブリンは鍵を取り上げて、宝石を扱うかのように慎重に調べていくとこちらに頭を下げた。
「承りましょう。私が直々にご案内させていただきます」
「ネビル。あんた一人で行ってきな」
おばあちゃんは今までは一緒に来てくれていたけれど、僕に経験を積ませるために、最近は色々とさせようとしている。僕専用の金庫を作ったのもそのためだろう。
ゴブリンが歩いていくので、僕は一人でそのゴブリンについていき、ホールから外に続く無数の扉の1つをくぐって松明に照らし出された細い石造りの通路に入った。
ゴブリンが口笛を吹くと、小さなトロッコが線路を上がって来る。アクシオみたいなものだろう。
トロッコに乗り込み発車して、何回か角を曲がって深く深く潜り込んだところにネビル専用の金庫があった。
金庫の鍵をゴブリンが開けると緑色の煙が立ち上り、それが消えてやっと金庫に入れる。
ガリオン金貨が高く積み上げられていて、銀貨や銅貨は一切ない。
僕は持ってきた財布に金貨を数十枚詰め込み、またトロッコに乗り込んでホールに戻る。他のゴブリンと何やら喋っていたおばあちゃんと再会すると、担当してくれたゴブリンにお礼とチップを渡してから銀行の外に出たのだった。
「今度は制服を作ってきなさい。あたしは先に本屋に行ってるからね」
おばあちゃんはそそくさと歩いていった。
銀行を出て目と鼻の先にある"マダム・マルキンの洋装店"に一人で入っていくとすぐに話しかけられた。
「あら、ネビルじゃない!今日はおばあちゃんは一緒じゃないの?」
「はい。おばあちゃんは先に本屋に行くと言ってました。今日はホグワーツの制服を買いに来ました」
「ちょうど今誰もいないから、すぐに仕立てられますよ」
マダム・マルキンは僕を踏台に立たせて、頭から長いローブを着せ掛けると、丈を合わせてピンで留めて仕立て始めた。おばあちゃんについて話しているとすぐに終わったので、僕はいつも通りにロングボトム家に郵送するようお願いしてから店を出た。
次に教科書を買うためにおばあちゃんの待つ"フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店"に入っていった。
僕は一人でもここに本を買いに来ていた為、ここの店員さんの顔は全員覚えていた。
「あらもう終わったのかい!?早かったね!教科書は買っておいたから、好きな本を見てきていいよ」
そう言われて僕は新刊コーナーのところに行って、呪いについての本を読んでいると、後ろからマグゴナガル先生に声をかけられた。
「あら、ネビル?こんにちは。今日も本を探しに来たのですか?」
「こんにちは、マクゴナガル先生!今日はおばあちゃんと一緒です。入学の準備に来ました」
「あら、そうなのですか。今、私は仕事中ですからオーガスタとはまた今度話すこととしましょう」
マクゴナガル先生が残念そうに言うと、マグゴナガル先生の後ろからひょっこり顔を出した同年代くらいの女の子が早口で先生に話しかけた。
「いえ、大丈夫です先生。私、本をたくさん読んでみたいし、この子とも喋ってみたいです」
「あらそうですか。じゃあネビル、この子を頼みましたよ」
マクゴナガル先生はそう言うとおばあちゃんを捜しに歩いていった。
女の子の茶色い目と目が合った。
髪は茶色く量の多い縮れ毛でボサボサしており、前歯が大きい。左脇には新しい教科書や本を大量に抱えていた。
「わたしはハーマイオニー・グレンジャー。あなたは?」
「僕はネビル・ロングボトム。君と同じで今年からホグワーツに入学するんだ。よろしくね」
そう言って差し出した僕の右手をハーマイオニーは握って言った。
「わたしの家族に魔法族は誰も居ないの。だから手紙をもらった時はとても驚いたけどとても嬉しかったわ。今朝マクゴナガル先生に最高の魔法学校って聞いて、今からすごく楽しみなの。教科書も早く読んでみたいわ!あなたも本を読むのが好きなのね!」
とても興奮した様子で、とても早口で言い切った彼女に、僕は予想以上だったと面食らってしまったが、気を取り直して返事をした。
「うん。杖は今日手に入れたから、今日までは本ばかり読んでいたよ」
「わたし、マグルっていうんでしょう?魔法族の子たちに後れをとらないか今から心配なの」
「いや、勉強している子はあまりいないと思う。魔法使いになる為の勉強をするんだから、スタートラインはみんな同じだよ」
「あら、そうなの?でもやっぱりわたしは教科書を早く読みたいわ」
「予習するのは良いことだね。僕もグレンジャーに負けないようにがんばるよ」
「ハーマイオニーでいいわよ。わたしもネビルには絶対に負けないんだから!ところでネビルはどの寮に入りたいの?」
「うーん。僕はどこでも良いかなぁ」
「わたし、いろんな人に聞いて調べているんだけど、グリフィンドールが一番いいみたいよ。ダンブルドアもそこ出身だって聞いたわ」
「どの寮でも、そこで頑張ればいいんだよ。けどハーマイオニーはグリフィンドールに入れると思う。たぶんそこが一番向いているよ」
「そう?ありがとう!今からとても楽しみだわ!ネビルと同じ寮になりたいわ」
「おや、仲良くなったみたいね」
話し込んでいると、おばあちゃんとマグゴナガル先生が声をかけてきた。この2人は昔から仲が良いので家にもたまに来ていた。その時に変身術で分らない理論を質問しているうちにマクゴナガル先生とちょっとだけ打ち解けたのだ。
「グレンジャー。そろそろ杖を見にいかないといけません。またホグワーツで話はできますから今日は別れましょう」
「はい、先生!じゃあまたね、ネビル!ホグワーツで!」
2人に向かって手を振ってから、おばあちゃんに声をかけた。
「僕まだほとんど本を読んでないから、もうちょっといたいんだけど」
「えぇそうでしょうとも」
「ありがとう、おばあちゃん。自分で買うからお金はいいよ」
そういってまた2手に別れて、いろいろと本を物色したが、最終的には、合計7冊の色々な専門書を購入した。
おばあちゃんと合流してから家に帰ったらご飯があるということだったので、まっすぐ漏れ鍋から家に帰ったのだった。
家に帰ってから入学までまるまる2ヶ月ある。
今のうちに出来る限りの呪文の練習をしようと意気込んで過ごしたら、9月1日まであっという間だった。
理論を理解している為か、結構な数の呪文を使えるようになったのだった。
次回はロンドンのキングズ・クロス駅からになります。