選ばれた男は選ばれなかった子へ   作:猫ペンギン

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ゆったり更新いたします。

ゆっくりしていってね。


ホグワーツ特急

キングズ・クロス駅に10時40分に到着すると、すぐにアルジー叔父さんは僕のトランクをカートに放り込んで駅の中まで運んでくれた。

僕は今、青い無地の半袖シャツにオレンジ色のネクタイを合わせて、黒いスキニーパンツを履いているけれど、アルジー叔父さんとおばあちゃんは二人とも、夏だというのに緑がかった黒いマントを羽織っているので、傍から見たら誘拐犯にでも見えるかもしれない。

それでもマグルの警察官や駅員さんに声をかけられないのは、認識阻害魔法をマントにかけているからだ。

プラットフォームの9番と10番の間にまで来ると、叔父さんはやっと立ち止まったのだった。

 

「よしネビル!昨日言った通り、この壁に向かって思いっきり走るんだ!見てろよ!」

 

アルジーおじさんは大きな声でそう説明しながら、壁の中に入っていった。

すごい仕組みだなと思ってその壁を触ってみる。

どうやらここに九と四分の三番線があると信じていないと入り込めないようだ。

 

「さぁ次はネビルの番だよ」

 

おばあちゃんに背中を優しく押されたので、カートを握り締めて壁に向かって歩いていき、通り抜けたと思ったらそのままその場で足を止めた。

そこには、ホグワーツの生徒たちとその父兄でごった返しており、鮮やかな紅い色の蒸気機関車が停車している光景が目に入ってきた。

頭上の表示には、≪ホグワーツ行き特急11時発≫と書かれていた。

 

「おっと、もうちょっと前にいきなさい」

 

後ろの鉄のアーチから現れたおばあちゃんが僕をまた軽く押したのだった。

前にいた叔父さんが口を開く。

 

「早くしないと席がなくなってしまう。先頭の車両から詰めるように乗りなさい。ネビル、クリスマスにまた会おう」

 

「ネビル、しっかりやるんだよ!」

 

おばあちゃんもここでお別れの挨拶をしてきた。

原作では結構ギリギリまで僕の傍に居たと思うのだけれど、早くも僕をロングボトム家の当主として認めつつあるようだった。

 

「うん、おばあちゃんも、おじさんもお元気で!」

 

叔父さんとおばあちゃんに返事をしてから僕は車両の方に歩いていった。色とりどりの猫が足元を歩いているので、その猫にカートがあたらないようにゆっくりとではあったが。

ホグワーツ特急の戸口の階段でトランクを乗せようと一生懸命がんばっている見知った子がいたので、声をかけた。

 

「手伝うよ」

 

「え?あら、ネビルじゃない!久しぶりね!」

 

「あ、うん。久しぶりハーマイオニー。そんなことより中に入ろう」

 

二つのトランクに杖を向けて呪文を唱え、客室の隅に2つのトランクを納めた。

 

「ありがとう!もう魔法が使えるの!?」

 

「まぁ簡単なのだったらある程度は」

 

僕はハーマイオニーに嘘をついた。

簡単なのだったらなんて嘘だ。上級呪文も変身術もだいたいの教科書に載っている魔法はここ2ヶ月で使えるようになっていた。理論の把握とイメージ力でここまでとは予想外だった。

 

「わたしも簡単な魔法は全部うまくいったわ!今の浮遊呪文よね?教科書を見ただけでは出来なかったの!教えてくれない?」

 

「着くまで時間もだいぶあるし良いよ。でも列車が出発してからにしよう」

 

そういって僕は客室の椅子に座って窓の外を見た。

外は先ほど僕が着いた時よりもだいぶ人が増えていた。

僕には映画の情報もあるけれど、顔はやはりだいぶ違っていると思う。特徴はだいたいわかるのでこの人が誰なのかと考えるのはちょっと楽しかった。

プラットフォームに生徒たちがいなくなったと思ったら列車が動きはじめた。

外でおばあちゃんとアルジー叔父さんが手を振っているので振り返した。僕の前にいるハーマイオニーも母親と父親だろうと思われる夫婦に向かって笑顔で手を振っていた。線路のコーナーに差し掛かって、姿が見えなくなるまでハーマイオニーの両親は手を振っていた。

たくさんの家が飛んでいるかのような速度で列車は進んで行く。

コンパートメントの扉が開いて、1人の少年が入ってきた。

 

「久しぶりだね、ネビル。ちょっと挨拶に来たよ」

 

マルフォイが1人で入ってきた。

 

「久しぶり、マルフォイ。ここどうぞ」

 

マルフォイは頷いて、僕の隣に腰掛けてハーマイオニーに尋ねた。

 

「君は、マグル生まれかい?」

 

「えぇ、そうよ。両親は魔法使いではないわ」

 

「そうか。僕も新入生なんだ。よろしく頼むよ」

 

そう言ってマルフォイはハーマイオニーに手を差し出して、二人は握手をし始めたので、思わず大声をあげてしまう。

 

「ドラコ!」

 

「まぁ、父上の目も他の純血主義者の目もないんだ。いいだろう?」

 

「いや、良いことなんだけど・・・まさか君がそこまで純血主義じゃなくなるとは思わなかったから。ごめん」

 

「・・・純血主義なの?」

 

「いや、純血主義だったけどここ最近ネビルと交流するようになってから僕は変わったんだ。といっても、両親や父の友人たちは完全純血主義だから、こっそりとやっている。僕は間違いなくスリザリンに行くだろうけど、仲良くしてくれ。表立って会話はできないけどね」

 

「うれしいわ!よろしくね。わたし、ハーマイオニー。ハーマイオニー・グレンジャーよ」

 

「ドラコ・マルフォイだ。ドラコで構わない」

 

和やかなムードだけど僕は驚いていた。まさかここまでドラコ・マルフォイが変わるとは思っていなかったからだ。しかも原作では、クラッブとゴイルを連れ回していたから一人で来たことにもまだ驚いていたのに。

 

「ホグワーツまで一緒に過ごすか?ドラコ」

 

「そうしたいのは山々なんだが、僕はマルフォイ家次期当主として色々と挨拶に回らないといけないから。今回は残念だけど、そろそろ出るとするよ」

 

本当に悔しそうにドラコは出て行ったのだった。

 

「純血主義ってどういうこと?それに当主って」

 

ドラコが出てすぐにハーマイオニーが聞いてきた。

 

「聖28一族って言葉は・・・知っているね。純血の血筋と認定された28のイギリス人家系。その希少性を良しとしてマグルから生まれた魔法使いをこのイギリスの魔法界からいなくしてしまおうって考えを持った人間がいたんだ」

 

「・・・例のあの人ね」

 

「そう。その彼に賛同してどんどんマグル生まれを殺害していく事件に関わった者たちを純血主義と呼んでいるんだ。ドラコの父親もうまく弁護して裁判から逃げおおせたけど彼の家は間違いなく純血主義だった」

 

僕は一旦話を止めてハーマイオニーの顔を見る。

 

「ただ、ドラコは僕と文通していくことで純血主義じゃなくなったんだ。マグルでも優れたものはいるし、魔法使いの原点はマグルであるかもしれないという可能性を挙げた」

 

「でっち上げなの?」

 

「いや、本当にそうかもしれないけれど確かめようがないだろう?しかも、そんな大昔から純血であり続けるなんて絶対に無理なんだ。どこかでマグルの血を入れないとその一族は早急に途絶えてしまったのも確実だと思う。そういう僕の意見を彼に言ったんだ。ドラコは頭が良いから理解も早かったよ」

 

「当主というのは?」

 

「聖28族は基本的に歴史ある一族だからお金持ちが多いんだ。所謂、貴族という奴だね。パーティを開いたり礼儀作法を大事にする家が多いのもひとつだね。彼はマルフォイ家次期当主で、顔も良いからモテて大変だろうね」

 

「そうなの・・・もしかしてネビルも?」

 

「うん。僕はロングボトム家の当主だよ。ウチは純血主義じゃないけどね」

 

ハーマイオニーはが考え込むように黙っていると、扉の外からガチャガチャと大きな音がして、おばさんが笑顔で扉を開けて言った。

 

「車内販売よ。要るものはあるかしら?」

 

ハーマイオニーはまだ考え込んでいるようだったので、僕だけ通路に出たのだった。蛙チョコレートとかぼちゃパイを2つずつ購入して、空いている座席にドサッと置いてハーマイオニーに声をかける。

 

「ハーマイオニー、昼ごはん食べようか。おやつしか売ってなかったけど。」

 

「え?あぁ。とりあえず魔法界で友達になった2人が当主だったので驚いていたのよ。それ買ったの?」

 

「2つずつあるから食べようか。食べ終わったら浮遊呪文の杖の動きを教えるよ」

 

そういうと、ハーマイオニーはかぼちゃパイを僕の手から取り、目をキラキラさせてかぼちゃパイにかじり付いた。

 

食べ終わって、浮遊呪文の杖の動きを教える。

滑らかに、杖の動きを邪魔しないように動かすのはまだ無理なようだったけれど、ハーマイオニーは羊皮紙の切れ端を浮遊させるのをたった1回教えただけで成功させてしまった。

 

「杖の動きだけでこんなに変わるものなの?」

 

「慣れるとどんな動かし方でも杖さえ向けていればできるけど、理論的に最大限の力を発揮させるには杖の動きは大事だよ。魔力を持続させることも杖の動きが大事なんだ」

 

そうやって何回か浮遊呪文を成功させたあとは、2人して本を読んで過ごした。

ちなみに僕のペットだったはずの蛙のトレバーはいない。アルジーおじさんがくれようとしていたが丁重にお断りした。僕にとってもトレバーにとっても、離れていた方が幸せだと判断したからだった。

列車の窓の外が荒野だけになり、畑も牛もいなくなった頃にハーマイオニーが立ち上がった。

 

「私、あとどれくらいで到着するのか運転士に聞いてくるわ」

 

「あぁ。じゃあ僕は先に服を制服に着替えておくよ」

 

ハーマイオニーは勢いよく扉から出て行った。

もしかしたら、ハリー・ポッターやロン・ウィーズリーとここで知り合うかもしれない。ドラコは彼らとは友好な関係を築けるだろうか。

あとで僕も見に行こうかなと思って着替え終えるころに扉をノックする音が聞こえた。

 

「どうぞ」

 

「また来たよ」

 

そう言って現れたドラコはどさりと椅子に座った。

ちなみにこのコンパートメントは、最初にドラコが来たときよりも本でだいぶ散らかってしまっていた。

 

「どうしたの?」

 

「挨拶で疲れた。あと、ここからちょっと離れたところにハリー・ポッターがいた」

 

「会いに行ったの?」

 

「あぁ。1ヶ月前にマダム・マルキンの家で知り合ったから、ポッターとは良好な関係を築けるとは思うんだが・・・ウィーズリーが駄目だ。あいつは僕を敵視している」

 

容易に想像できるなと思った。彼は家族愛の強い家で育った素直すぎる子どもだ。ダンブルドアばりのグリフィンドール贔屓だから、貴族とか聖28一族とかは関係ないだろうし、特に子供は親の影響を受けやすい。そう考えると、ドラコがここまで変われたのは結構な奇跡だろう。

 

「気にするな、君はすごく良い奴さ」

 

僕がそう言うと、真っ赤とまでは言わないが青白い彼の頬がピンク色になった。

 

「ありがとうネビル。僕もここで着替えさせてもらっても良いかい?」

 

「もちろん。"アクシオ(来い)!ドラコのトランク"」

 

僕がそう唱えると、ドラコのトランクがコンパートメントが来るのとほぼ同時に、ハーマイオニーが帰ってきた。

 

「君、もう呼び寄せ呪文が使えるのかい?」

 

「今の何!?え!呼び寄せ呪文?そんなの教科書にあったかしら」

 

ドラコとハーマイオニーは驚きながら大声を出した。

 

「便利だからね、覚えたんだ。1年生の教科書には載ってないよ。4年生の教科書だったかな?あんまり覚えてないけど」

 

「4年生!?ネビル、あなたさっき簡単な呪文しかって言ってなかった?」

 

「え?そうなのかネビル!」

 

「あー、うん。けど多分2人ともすぐにできるようになるよ」

 

僕がそういうと2人はコソコソと何やら話し始めた。

 

「ネビルって昔からこうなの?」

 

「いや、けど隠蔽体質ではあったかもしれない」

 

「本当はすごい人なのかしら」

 

「ロングボトム家は結構古いから、何か特別な魔法でもあるのかも」

 

2人は僕を前にしてとても勝手なことを言っている。しかも丸聞こえだ。

 

「特別な魔法なんてないよ。それよりドラコ着替えたら?」

 

そう言うと、ドラコとハーマイオニーは渋々頷いた。

ハーマイオニーが一旦通路に出て、ハーマイオニーが着替えている間に僕とドラコが通路に出た。

3人全員が着替え終わって、窓の外が暗くなり始めた頃に車内に響き渡る声が聞こえてきた。

 

「あと五分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので、車内に置いていってください」

 

ハーマイオニーとドラコは緊張しているのか、顔が青白くなっていた。通路も生徒達が全員出てきたのか、とても騒がしい。

列車は速度を落として、停車したようだった。

 

人混みが少なくなった頃に僕達3人とも列車のドアから外に出る。そこは小さくて暗いプラットフォームだった。

 

夏真っ只中だというのに、夜冷えする風が肌を撫で回したように感じた。頭上にゆらゆらとランプが近づいてきて、生徒たちの顔を照らすと大声が聞こえた。

 

「イッチ年生!イッチ年生はこっち!ハリー、元気か?」

 

ハグリッドだろう。髭を生やした大男がハリー・ポッターに笑顔で話しかけている。

僕達はハグリッドの元に近づいていった。

 

「さあ、ついて来るんだ・・・あとイッチ年生は居ないかな?足元に気を付けろ。いいか!イッチ年生、ついて来い」

 

そう言われて、新入生はみんなハグリッドの後ろをついていく。こう暗くては歩きづらいので杖を取り出した。

 

「ルーモス・マキシマ(強き光を)」

 

暗闇に慣れていたため、急激な光で目がチカチカとしたが、僕の杖を中心に光が辺りを照らしていった。全体が明るくなった訳ではないが、僕の周囲を歩いていた人たちは歩きやすくなっただろう。ハグリッドがこちらに気付いて何か言いたそうにしていたが、無言のまま前を向きなおしてまた歩き始めた。ハーマイオニーとドラコも何か言いかけたが黙っておくことにしたようだ。

しばらく黙って黙々と歩いていると、ハグリッドが全員に聞こえるように声を上げた。

 

「みんな、ホグワーツがまもなく見えるぞ!この角を曲がったらだ!」

 

ハグリッドが振り返って目が合いウインクしてきたので、僕はなんとなく意図を読み取り、ノックスと唱える。

辺りはまた暗くなるが、ハグリッドが頷いたのがわかった。

 

「「「うぉおおーーーっ!!」」」

 

一斉に周りで歓声が湧き起こった。大きくて黒い湖の畔の前に出て、向こう岸には高い山がそびえており、その天辺に壮大な城が見えた。大小様々な塔の窓には星空が浮かび上がっていて、ホグワーツ城全体がキラキラと輝いていた。

僕の想像を遥かに超えた壮大な光景に呑まれそうだ。

この後、城に行って組み分け帽子で4つの寮に分けられてしまうだろうけれど、この時この瞬間だけはみんなの心は1つになっているだろう。

 

 




次回はいよいよ組み分け帽子です。

ネビルの組み分けはどうなるのでしょうか。
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