闇と光より産まれし兄妹   作:エルナ

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 皆様あけましておめでとうございます(今更
 そして、お久しゅうございます。
 新年に1回投稿するとかほざいておきながら結局毎日投稿が終わった2月になってしまい大変申し訳ありませんでしたm(_ _)m

 そして、今回はゴルギウスやザラトラスによる過去鑑賞は全カットです。
 どちらも原作と大差ない上にザラトラスの方は長いのでね。

 後、今回凄まじく長くなりました^^;
 一万字越えはこの作品じゃ初かな?
 切ろうかと思ったけど待たせた詫びがわりにでもと。


第13話 復讐の連鎖

 現在ブリタニア随一の大国であるリオネス王国は魔神族〈十戒〉の侵略を受けていた。

 当初〈十戒〉「無欲」のフラウドリン率いる魔神族相手に何とか持ちこたえていたリオネス王国だったが、フラウドリンの救援に来た他の〈十戒〉の参戦により一気に劣勢に立たされた。

 

 〈十戒〉達の絶大な力だけではなく、〈十戒〉「慈愛」のエスタロッサの戒禁により、聖騎士達は戦う力を失い、最早ただ死を待つのみとなってしまった。

 

 そこで立ち上がったのが〈七つの大罪〉〈傲慢の罪(ライオン・シン)〉エスカノール。〈七つの大罪〉最強の男。

 エスカノールは〈十戒〉「慈愛」のエスタロッサ及び「敬神」のゼルドリスを遥か彼方まで吹き飛ばした。

 

 しかし全力戦闘の結果、エスカノールの魔力「太陽(サンシャイン)」による被害を恐れ、リオネスから離れた場所で待機せざる負えなくなった。

 追い討ちをかけるように「敬神」の戒禁にかかった聖騎士や民が暴徒と化した。

 

 

「悪いことは言わない、もう降伏しなさいよ。正直、この状況での君らの勝算は…。ねえ、デリエリ?」

「0な」

 

 暴徒と化してはいないが、「慈愛」の戒禁にかかり、戦う力を失った聖騎士達に〈十戒〉「沈黙」のモンスピートと「純潔」のデリエリが降り立ちながら言った。

 

「勝算はある」

「ん?」

「お前達を今ここで殺す」

 

 その言葉に返したのは城から出てきた、1人の男。

 リオネス王国、国王の実弟にして、聖騎士長補佐の〈蒼天の六連星〉を率いる団長デンゼル。

 

「おいデンゼル♪奴らにハッタリは効かねぇぞ〜?」

「〈強欲の罪(フォックス・シン)〉バン。陛下と王女達をくれぐれも頼む」

「デンゼル様…本当に実行するおつもりですか…!? まだ、その時では…」

「今がその時なのだ。案ずるではない…覚悟はできておる。王国の未来の…若人達のためならば喜んで、この老骨の命、捧げよう。さぁ下がれデスピアス」

 

 涙ぐみながらデンゼルを止めようとしているデスピアスの言葉にデンゼルはモンスピート達に歩み寄りながら引かせる。

 

「さっき、我々を殺すとか聞こえたんだが」

「耳はいいようだな」

「誰が? どうやって? たかが赤色魔神(あか)に毛が生えた程度の闘級のジジイが——」

「お前達を殺すのは私ではない」

 

 そう言ってデンゼルが腰の剣の柄を握った時だった。

 その場の全員が巨大な気配を感じた。

 目の前の〈十戒〉を軽々と上回る存在感。

 反射的に全員がそちらを向く。

 

 その視線の先には黒い闇の翼を広げ、空を飛び、黒き瞳で見下ろしている少年の姿があった。

 

「〈神殺し〉ザレオス…ッ!」

 

 デリエリがその少年の名を呼んだ。

 


 

 さて、ザレオスがここにいる理由を語ろう。

 

 ゴルギウスに飯を食わせ、ザラトラスに驚き、過去の記憶を見たザレオス達はリオネスへ向かってホークママを進ませていた。

 

 もちろん、ジブリールの〝瞬間移動〟ならば即座にリオネスに着く。

 しかし、ザレオスとジブリールは可能な限りエリザベスを〈十戒〉に会わせたくなかった。

 〈十戒〉ならば当然エリザベスを知っている。下手すれば呪いのことすら知っているかもしれない。

 それをエリザベスに話されると記憶が戻る切っ掛けになりかねない。

 それだけは絶対に避けなければならない。

 

 しかし、エリザベスの故郷であり、家族や知り合いがいるリオネスを蹂躙されればエリザベスは深く傷ついてしまうだろう。

 その苦肉の策として、ジブリールをエリザベスの護衛に残し、ザレオスだけ全速力でリオネスへ向かったのだ。

 

 ジブリールならば複数の〈十戒〉を相手にすれば負ける可能性が高いがザレオスならば〈十戒〉を複数相手にしても勝率は高く、エリザベスと共に来るジブリールが到着するまでの時間稼ぎくらいなら容易だあるし、〈十戒〉を撤退させる可能性の方が高いだろう。

 

 ジブリールとエリザベスに無理はするなと言い含められてはいたがザレオスはリオネスの〈十戒〉を皆殺しにする気満々だった……。

 


 

「よお、モンスピート、デリエリ。1ヶ月ぶりだな。未だしぶとく生きていやがったのか。非常に残念だ」

 

 嘲笑を浮かべながら、モンスピート達に話しかけるザレオス。

 

「魔神族が1人増えたか。纏めて殺してやる」

「いや、あいつは…」

 

 デンゼルがザレオスを魔神族側だと勘違いしている中、あのメリオダスが死んだ戦いを見ていた者達はそうではないのではと考える。

 

「ルギツ、ヨリ、ロデ…「ネロバスタ」……」

 

 しかし、それを口にする前にデンゼルが剣を抜きながら、術を唱え始める。

 デンゼルは術を唱えながら、剣で自身の手の甲を斬り、出た血を円状にばらまく。

 すると、血が発光し始める。

 

「顕現せよ」

 

 そのデンゼルの言葉に巨大な翼を生やした女性が出現した。

 

「これは…!! ケルヌンノスの角笛から感じた気配に似た…」

「デンゼル様は命を代償にその身に顕現させる道を選択された!!」

 

 その巨大な女性は剣を掲げたデンゼルに吸い込まれた。

 

「女神族を」

 

 その後のデンゼルの瞳には女神族の模様が宿っていた。

 

「嫌なモノを感じていた」「これが…正体」

「とんだサプライズだね」

 

 女神族の気配を感じてか、「不殺」のグレイロードがその場に現れる。

 モンスピートは空からこちらを見下ろすザレオスと女神族をその身に宿したデンゼルを見比べ、冷や汗をかきながらそう言った。

 

(アタシ)が殺る」

 

 そう言ってデンゼルへ向かうデリエリの顔には怒りと殺意に満ちていた……神を前にしたザレオスのように。

 

「なんだ、この邪悪な気配は……!!」

「ひ…」

 

 「敬神」の戒禁にかかった人々がデンゼルを恐れるような声でどよめく。

 

「女神族なのですね…」

 

 自身の体を確かめるように、手を動かしていたデンゼルに宿る女神族にデスピアスが話しかける。

 

「私は女神族〈神兵長〉ネロバスタ。望みを言えばもう少し若い肉体が良かったのですが…」

 

 その言葉にデスピアスが複雑な表情をする。

 当然だろう。敬愛する団長が命をかけて顕現させたのに、そのようなことを言われれば。

 

「…それで何用です? 私を復活させたにはそれなりの理由がおアリなのでしょう?」

 

 デンゼルの中にいるネロバスタはそこで、灰色や赤色の下位魔神に気づく。

 

「!! あれは…魔神族? あの戦で生き延びた残党が、まだいたのか?」

 

 そして、ネロバスタは背後の巨大な気配にようやく気づいた。

 振り向いて視線の先にいた殺気立つデリエリに驚愕を露わにする。

 

「お前は……!!! 〈十戒〉…〈純潔〉のデリエリ!!!? なぜ…〈十戒(きさまら)〉は我ら女神族により「常闇の棺」に封印されたはず…!! 封印を解いた愚か者は誰だ!?」

 

 そして、周囲をよく確認したネロバスタは上空にそれ以上の化け物の存在に気がついた。

 それを視認したネロバスタは驚き以上に明確な恐怖の表情を浮かべた。

 

「ば、馬鹿な…! 〈神殺し〉だとッ! 最高神様に封印されたのではなかったのか!?」

「はっ、ネロバスタ久しぶりだな。ん? いつもの偉そうな威勢はどうした?」

 

 怯えるネロバスタへ近づきながら、馬鹿にするようにそう言ったザレオスの言葉には答えず、ネロバスタは保身に走る。

 

「ま、待て! お、お前は女神族を含めた四種族の陣営にいたはずだ…ッ。ならばお前と私は味方で戦う理由は無いはずだ」

「へぇ——」

 

 そう呟いたザレオスが——

 

「——俺らの両親が殺された時にお前もリュドシエルと共にあの場にいたのにか?」

「!!!!?」

 

 ——ネロバスタの眼前に現れ、首に手をかけたのを視認できたのはその場に誰もいなかった。

 まだ、右手を添えているだけだが、その手に力を込めるだけで自分は殺される。

 そう理解したネロバスタは冷や汗を滝のように流しながら、弁解——言い訳を言う。

 

「あ、あれは私の意思ではなく、さ、最高神様の、命令で……ッ。仕方がなかったのだ!」

 

 だが、それはザレオスの怒りを煽るのみ。

 

「へぇ、俺らの両親が死んだのが「仕方がなったから」ねぇ」

「!!!!!?」

 

 ネロバスタがここまでザレオスに怯えているのは古の聖戦でザレオスの恐ろしさをその目で見たからに他ならない。

 

 女神族と魔神族の戦闘中に乱入して来たザレオスは自身の部下や自身と同じ〈神兵長〉、敵の魔神族をホコリでも払うかのように殺し、自身の攻撃をまるで受け付けず、自身では手も足も出ない〈十戒〉を一蹴し、敬愛する〈四大天使〉長リュドシエルに重症を負わせた化け物。

 ネロバスタに取っては〈十戒〉などよりも恐ろしい存在なのだ。

 

 ザレオスは滑稽なネロバスタを鼻で嗤いながら言った。

 

「まあ、人間を守れと言われている以上お前と事を構える気は今のところない。命拾いしたな? ネロバスタ?」

 

 その言葉にあからさまにホッとした様子のネロバスタにザレオスは続ける。

 

「だからまあ、今日は——」

 

 そう言いながらザレオスは右手でネロバスタの頬を叩いた。

 

「——これで勘弁してやる」

 

 頬を打たれたネロバスタは轟音を立てて、壁に激突した。

 血を吐きながら、ザレオスを怯えた目で見るネロバスタを鼻で嗤ってザレオスは放置されたデリエリに向き直った。

 

「さてと。待たせたな。ぶっ殺してやるよ」

 

 そう言ってザレオスは剣を抜き、デリエリに向ける。

 

「もう、逃げても、泣いて命乞いしても見逃さないからな」

 

 ザレオスがそう言った直後、ザレオスが消えた。

 その直後デリエリの前に剣を振り上げたザレオスが現れた。

 

「な……ッ!」

「デリエリ!」

 

 その剣がその場の誰にも捉えられない速度で振り下ろされた。

 デリエリはザレオスが目の前に現れた時に左の闇の手で防御の構えを取っていた。

 それ故に間一髪で両断されるのを避けることができた。

 

「くっ……!」

 

 凄まじい力で体が押しつぶされそうになりながら、なんとか押し返そうとするが力の差がありすぎる。

 デリエリは両手で押し返そうとしているのにザレオスは片手でデリエリを圧倒している。

 

「〝神殺しの——」

 

 デリエリの闇の手を剣で押しながら、ザレオスがそう呟く。

 〝神殺しの剣〟でデリエリの闇の手ごと斬り捨てようとしたのだ。

 〝神殺しの剣〟ならば闇や光で守っていようとも紙切れ一枚分の意味すらない。

 

「!?」

 

 しかし、その前にザレオスが何かに気づいたように天を仰ぎ見る。

 その直後、ザレオスは落ちて来た女性に踏まれ、地面にめり込んだ。

 

「デリエリの姉御!大丈夫ですか!?」

「ケツから言って…遅かったな、グレモル」

「すみません。こいつの魔力を探知するのが遅れまして」

 

 ザレオスを踏んだまま、デリエリと会話をする女性。

 赤い髪を腰まで伸ばし、デリエリより僅かに背の高い彼女の名前はデリエリが言った通りグレモル。

 

「モンスピート様、デリエリ様。約束通りザレオス(こいつ)は俺たちの獲物です。お譲りいただけますね?」

「もちろんだよ。私達では彼を倒すのは容易ではない。だが、君達ならば可能だろう。だが、油断はしないようにね」

「はい」

 

 空を飛びながら、モンスピート達に話しかける青い髪のグレモルデリエリよりも背の低い杖を持った少年。

 彼の名はアルケロ。

 2人とも〈十戒〉に匹敵する実力を持つ者達である。

 

「「!?」」

 

 踏まれていたザレオスが剣をデリエリとグレモルに向けて振り回した。

 デリエリとグレモルはそれを避けるために距離を取る。

 

「誰だ、お前ら?」

 

 起き上がったザレオスがグレモルとアルケロを見て問う。

 問われた2人は怒りと憎しみを宿し、返した。

 

「貴様に両親と友を殺された姉弟だ…ッ!」

「惨たらしく殺してやる…ッ!」

 

 アルケロとグレモルの怒りと憎しみの言葉に、しかし、ザレオスは鼻で嗤う。

 

「はっ!ラッキーパンチを一回当てたくらいで俺に勝てるつもりか?デリエリ達より弱い雑魚共が?」

 

 ザレオスの言葉通り、グレモルとアルケロは確かに〈十戒〉に匹敵する。

 だが、それでも闘級三万ほどしかない。

 十分に強者ではあるがザレオスから見れば雑魚そのものである。

 

「両親を殺される気持ちはわかるだろ?大人しく殺されろ」

 

 しかし、ザレオスの言葉には答えず、アルケロが言う。

 

「はあ?寝言は寝てから言え。力のないやつは奪われるしかないんだよ」

 

 ザレオスの脳裏に浮かぶのは両親を殺されるのを黙って見ていることしかできなかった自分。

 

「だから、雑魚が復讐なんてできるはずがないんだ」

 

 憎しみを浮かべながら、ザレオスは言った。

 

「貴様らが死ね」

 

 そう言いながら、高速でグレモルへ向かって跳びかかりながら剣を振り下ろ——

 

「!?」

 

 ——そうとした直後ザレオスは頬を殴られたような痛みを感じながら、吹き飛ばされていた。

 

 否、それは正確ではない。

 ザレオスから見れば先の説明の通りだが、他の者から見ると違う。

 ザレオスがグレモルへ斬りかかる直前で空中で静止した。

 そして、その静止したザレオスをグレモルがぶん殴った。

 ただそれだけだった。

 

 混乱しているザレオスはリオネス近くの平原に墜落した。

 そのザレオスへグレモルが追撃を加える。

 

「ハアァァァァァァッ!」

 

 連続でザレオスへ向けて殴り続けた。

 その凄まじい力で地が揺れ、陥没した。

 

「くっ……!」

 

 腕を顔の前に構えて防御するザレオスはその力に驚く。

 自分と同等の力なのだ。

 

(どうなってやがる…ッ!)

 

 ザレオスの武力は数値にして10万2000。

 それと同等となると〈十戒〉の闘級を軽々と上回る。

 その上さっきまでは確実にデリエリ達より下だった。

 

 そう考えていたザレオスは再び不自然な体勢で静止する。

 グレモルは無防備なザレオスを殴りまくる。

 そして、再びザレオスが動き出す直前に殴り飛ばし、地面へ叩きつける。

 そして、ザレオスは殴打されている自分の体と自分のいた場所と変わっているのに驚愕する。

 

「き、貴様らの魔力のせいか…ッ!」

 

 ザレオスは闇で傷を治しながら、こちらへ歩み寄るグレモルと空中からこちらを見下ろすアルケロへ零す。

 

「そうだ。俺の魔力「停止(ストップ)」が貴様の動き、思考、魔力の全てを5秒間停止させる」

「そこを、(アタシ)の魔力「同一(セイム)」の力で貴様と同じ武力になった(アタシ)が貴様を殴る」

 

 それがこのおかしな現象の正体だった。

 モンスピートがこのタッグならばザレオスを倒せると思った理由でもある。

 

「はっ、自分から手の内を明かすとはバカな奴らだ。〝神殺しの領域〟ッ!」

 

 ザレオスを中心にして紅い光が周囲を覆った。

 これならば自分と同じ武力になったとしても力が弱まる。

 そんなザレオスを考えをつぶすようにアルケロが呟いた。

 

「問題ないんだよ。〝絶対強制解除(アブソリュートキャンセル)〟」

 

 直後周囲を覆った紅い光が消える。

 

「俺の魔力を一瞬で消しただと…ッ!?」

 

 驚き、喘ぐザレオスへグレモルが殴り掛かる。

 ザレオスはそれを腕をクロスして受け止める。

 しかし、その直後ザレオスの体が静止し、グレモルはザレオスの腹や背中などの無防備な部分を殴る蹴る。

 そして、5秒経つ前にザレオスを蹴り飛ばした。

 

 再び動き出したザレオスは分かっていても抵抗すらできないことに舌打ちする。

 

「先にお前から殺してやるよ!」

 

 そう言いながら、空を飛ぶアルケロへ飛びかかる。

 その前にグレモルが立ち塞がる。

 

「だろうな!」

 

 ザレオスはそう叫び、グレモルへ斬りかかる。

 グレモルはそれを受け流し、防御に専念する。

 同じ身体能力で防御に専念されれば、ダメージを与えるのは非常に困難だ。

 何度もグレモルへ剣を振るが、その全てを受け流すか、避けられる。

 再びザレオスの体が静止し、グレモルはザレオスを攻撃する。

 そして、5秒経つ前に地面へ叩きつける。

 

「ゴハァッ!ク、クソ!」

(あっちの男の魔力は連続で使えないんだな。だからその間あの女は防御に専念してやがるッ!めんどくせぇ連携だ!なら——)

「〝神殺しの煌炎〟!!!」

 

 ザレオスは左手から紅い光を放つ炎をグレモル達へ放った。

 神々を地獄の苦しみを与えながら、焼き尽くす技だ。

 もちろん、闇や光の回復を阻害する効果付き。

 遠距離攻撃ならばグレモルでは対処できないだろうという判断からだ。

 しかし——

 

「〝殲滅の光(エクスターミナイト・レイ)〟」

 

 アルケロから放たれた魔法によって相殺された。

 

「貴様の闘級は確かに俺らや〈十戒〉おも上回る。だが、殆どが武力で魔力は俺にすら劣る。そんなお前の魔力攻撃を相殺するのはわけない」

「雑魚が…ッ、粋がるなよ…ッ!」

「いつまで、自分が上のつもりだ? お前では俺らには勝てん」

 

 アルケロのその言葉と共にザレオスの体が静止する。

 そこをグレモルが攻撃する。

 

「クソがッ!」

 

 5秒後、〝神殺しの剣〟や〝神殺しの鉄拳〟でグレモルを攻撃するが、それすらも紅い光に触れぬようにしながら受け流し、回避する。

 完全に2人はザレオスを追い詰めていた。

 ザレオスの回復力を持ってしても何度も攻撃を喰らい続ければ消耗する。

 魔神族の力は傷は治せるがダメージは残るのだ。

 

「終わりだな」

「クソ野郎が。とっとと死んだ方が身のためだぜ? まあ、簡単には死なせないがな」

「ハァッ……ハァッ……」

 

 その後も何度も停止(ストップ)の魔力を受け、無防備に攻撃を受け続けたザレオスはかなり疲弊し始めていた。

 

「ハァァ……ハァァ……。なるほど? 確かに手強いな。だがな、その程度で俺に勝てると思うなよ? 魔神と女神を震え上がらせた〈神殺し〉の力を見せてやるよ」

「減らず口を」

 

 ニヤリとザレオスは笑うと、地面を全力で殴った。

 

「「!?」」

 

 それにより、辺りを土煙が漂う。

 

(煙幕か? そんな手で)

 

 2人は特に動揺することもなく、グレモルが即座にアルケロの側に寄る。

 

「〝嵐の球体(テンペスト・スフィア)〟!」

 

 アルケロとグレモルの周囲以外を球体状に地を砕くほどの突風が吹き荒れた。

 しかし、それをザレオスは剣を一振りしただけで搔き消した。

 

「「!?」」

「テメェ程度の魔力で俺をどうにかできると思ったか!?」

 

 そう言いながら、2人に向かって飛びながら、2人へ手をかざす。

 

「〝聖櫃(アーク)〟ッ!!」

 

 女神族の力を発現させながら、2人まとめて〝聖櫃(アーク)〟に閉じ込めた。

 

「「ハァッ!!!」」

 

 2人はそれを闇を放出して脱出する。

 その隙にザレオスが2人の背後に回り込み、反応して振り向いたアルケロの両眼を斬り裂いた。

 

「ぐあ…ッ!」

「テメェ…ッ!」

 

 グレモルがザレオスへ乱撃を加える。

 それを防御しながら、嘲笑いながらザレオスが闇で眼を治しつつあるアルケロに問う。

 

「どうした? ()()()()()()()()()?」

「「!?」」

 

 問われたアルケロのみならずグレモルも眼を見開き、驚愕を露わにする。

 それによって生じた隙に、グレモルの腹部へ蹴りを叩き込み、地面へ蹴り飛ばした。

 

「が……ッ!」

 

 〝探知(ロケーション)〟したのかザレオスへ向けて〝獄炎(ヘルブレイズ)〟を放とうとしているアルケロの背後に回り込みながら回し蹴りを加え、グレモルの上に墜落するように蹴り飛ばした。

 

「何度も見せたんだ。連続で使えないなら次までを数えるのは当然だろ? しかも、思った通り視界内の奴を停止させるみたいだな。そして——」

 

 地面に着地して、地面でダメージに悶絶する2人に近づきながら、グレモルへ眼を向ける。

 

「——そこの女は武力は同じになるが体の頑丈さは変わらないみたいだな。俺以上にダメージを受けてるじゃないか。——なんだ、どっちも弱点ばかりの欠陥魔力だな?」

 

 忌々しそうに顔を歪める2人に嘲笑を浮かべて見下ろす。

 

 本来ならば2人の弱点はあって無いようなものなのだ。

 この戦法は短期決戦向けである。

 グレモルが敵と殴り合い、足止めしているところをアルケロが魔法や魔力でダメージを与えたり、動きを止め、敵の動きが鈍ったところをグレモルが追撃を加えるというものだ。

 

 アルケロの「停止(ストップ)」のクールタイムが終わった瞬間に再度使用するといったことはしない。

 したとしても戦闘中に、グレモルの相手をしながら正確に体内時計で時間を計るのは非常に困難である。

 だが、今回は敵が規格外過ぎた。

 闘級が倍どころか4倍近い。

 アルケロの魔法攻撃は殆ど意味をなさないと見て、「停止(ストップ)」魔力にアルケロは専念することにしたのはいい判断だろう。

 アルケロの魔力では僅かに気をそらす程度しかできない。

 その上「神殺し(ゴットキラー)」の魔力は掠るだけでも危険でアルケロは魔力を連発せざるおえなかった。

 それでもクールタイムを正確に測るとは想像もしていなかった。

 

 グレモルにしても武力10万2000、女神族の力を発現させれば11万2000。

 これほどの武力を持つ相手と戦ったことなど一度もない。

 もちろん、グレモルは自身も魔力の弱点を知っていた。

 故に、受け流しをメインとした武術を習得していた。

 だが、一度打たれればしばらく戦闘不能になるほどの大ダメージを受けてしまう。

 さらに、ザレオスの「神殺し(ゴットキラー)」の魔力による緊張感も加えてかなり集中し続けなくてはいけなかった。

 

 その上彼等は若かった。

 ザレオス達よりは年上だが100歳程度の年齢だった。

 ザレオスへの復讐心で鍛えた力は〈十戒〉に匹敵し、数多の多種族を葬った。

 〈四大天使〉との戦闘経験もなく、負けを経験したことがなかった。

 故に彼等は慢心し、ザレオスを絶望させようと自分達の手の内をバラしたのもまずかった。

 

「舐めるなよッ!!」

 

 眼を治し終えたアルケロがザレオスの動きを止める。

 嘲笑を浮かべたまま固まったザレオスへグレモルが飛びかかるがザレオスへその拳が当たる前に、ザレオスの足元から紅い光を放つ炎が終え上がった。

 

「!!? ア、ガァァァァァァァア!!!!?」

 

 反応が間に合わず、体を焼かれたグレモルがその痛みに悶絶する。

 〝神殺しの煌炎〟だけではなく「神殺し(ゴットキラー)」の魔力は自身や味方を魔力の対象外にできる。

 それを利用して足元に〝神殺しの煌炎〟を地雷のごとく設置していたのだ。

 

「姉ちゃんッ!!」

 

 広がる炎から逃げることもできずにいるグレモルを〝瞬間移動〟でアルケロが手元へ取り寄せ、回復を阻害する紅い光を〝絶対強制解除(アブソリュートキャンセル)〟で消す。

 

「っと、上手く引っかかったようだな。やっぱ、お前ら大したことないわ。まあ、〈十戒〉よりは小賢しかったがな」

 

 体を焼かれたグレモルを見てそう言ったザレオスにアルケロが憎々しげに睨む。

 

「大丈夫!? お兄ちゃん!!」

 

 そろそろ仕留めようかとザレオスが2人に近づこうとする前に、慌てた様子のジブリールが合流した。

 ジブリールは治しつつあるが、傷だらけのザレオスを見て兄の心配をしつつ、兄をここまで傷つけたのは何者だと、アルケロと傷を治し終わったグレモルへ眼を向ける。

 

「ああ、ジブリールか。お前が来たってことは結構な時間手こずっちまったようだな。次からは雑魚でも手の内がわからない相手は全力で消すことにしよう」

「ゆ、油断してたの?」

 

 呆れたように零したジブリールへニヤニヤ笑いながら首を振る。

 

「まあ、油断もあったがそれでも中々小癪な手を使うもんでな。だが、もう片付く」

「油断してたとはいえ、お兄ちゃんを手こずらせるって彼等は?」

「俺に両親と友を殺されたらしいぜ?」

 

 それを聞いたジブリールは眼を見開き、悲しげな表情を2人に向ける。

 それを向けられた2人は、一気に劣勢になった戦況をどうにかする策を考えていたことも忘れ、怒りに震える。

 理由は敢えて語るまでもないだろう。

 

「……それを聞いて、平気で返り討ちにしようとしたの?」

 

 真剣な声音で問うジブリールにザレオスは肩をすくめて返す。

 

「戦争だぞ? 死ぬ覚悟のないやつは戦場に立つなって——」

「違う!!!」

「あ?」

 

 ザレオスの言葉を切り、アルケロが叫ぶ。

 

「貴様は俺達がいない間に集落に襲いかかって、非戦闘員だろうと関係なく、女子供だらうと皆殺しにしただろう!!!」

 

 それを聞いたザレオスは小馬鹿にした態度を一転。

 真剣な表情にして答えた。

 

「あ〜、そいつは悪かったな。あん時は憎しみでどうかしてた」

 

 ザレオスが〈神殺し〉として猛威を振るったのは基本的に戦場だったが、メリオダス達に出会う前のザレオスは戦場であろうとなかろうと、男だろうが女だろうが子供だろうが非戦闘員だろうが神ならば殺しまくった。

 無論、魔神族だけでなく、女神族にも多くの犠牲者が出ていた。

 故にメリオダスとエリザベスがザレオスとジブリールを匿った時の批判は凄まじかった。

 

 ザレオスの言葉を聞いた2人はさらに怒りを燃え上がらせる。

 ザレオスはだろうなと苦笑する。

 自分もリュドシエル達にそんなことをほざかれればキレて暴れる確信がある。

 

「ま、そういうことなら今すぐ失せれば見逃してやるよ」

「ふざけるな!!!」

「貴様ら兄妹まとめて殺してやる!!!」

 

 それを聞いたザレオスは少し嬉しそうに笑う。

 

「ああ、そうだろうな。そうかなくては。よくいるんだよ。敵討ちだってくるやつは。友を殺された、仲間を殺された、親を兄弟を恩人を。そう言ってかかって来るくせして俺の力を見ると逃げ惑い命乞いするやつまでいる。……おかしくないか? 大切な人を殺されたんだろ? なぜ逃げる? なぜそんな奴に命乞いできる? 復讐の果てに死ねるなら本望だろ? 死すら恐ろしくないだろう? それともその程度の覚悟しかないのか? その程度の人だったのか? 俺は奴らを殺す。殺して殺して殺し尽くす。その果てに死のうと関係ない。復讐は何も生まないなどとほざく奴がいるが知ったことではない。俺らの大切な人を殺した奴がのうのうと生きているのを許せるはずがないッ」

 

 ザレオスの深い憎しみに敵討ちに来たはずのアルケロとグレモルですら気圧された。

 メリオダスとエリザベスに出会って憎しみが消えたわけではなく、ただ心の奥底にしまわれていただけだったことを再確認したジブリールは悲しげに顔を伏せる。

 そんな3人をを差し置いてザレオスはさらに続ける。

 

「てっきり俺がおかしいと思ってたんだが……そうだよな。復讐のためには命なんか投げ捨てるものだよな。所詮は俺のエゴだ。父さんと母さんが望んではないだろう。ならばそのエゴを押し通す。命乞いなどするものか。逃げてたまるか。逃げるのならば次は確実に殺す。殺す殺す殺す殺す殺すッ!殺すッ!!!

 

 放たれた殺気がアルケロとグレモルに怒りを忘れさせ、恐怖させる。

 かつて、エスタロッサとなる前のマエルやリュドシエルですら死を覚悟させた憎しみが2人を襲う。

 

「さあ、かかってこい。復讐の果てに殺してやる。上手くいけば復讐を果たせるかもな?」

 

 殺気をしまったザレオスが嘲笑も怒りもなく、ただ無表情で2人に告げる。

 

「ジブリール、手は出すな。奴らの勝ち目が完全になくなるからな」

「は、い……」

 

 顔を伏せたままのジブリールが返す。

 ザレオスに対するアルケロとグレモルの頭にはもはや撤退の2文字しかなかった。

 作戦の練り直しが必要だ。

 現状では勝ち目はほぼない。

 

 アルケロは「停止(ストップ)」でザレオスの動きを止める。

 ジブリールが突如止まった兄に顔を上げ首を傾げる。

 それを捨て置いて、グレモルがザレオスを殴り飛ばし、距離を開ける。

 

「お兄ちゃん!?」

 

 ザレオスを心配するジブリール。

 

「ザレオスに伝えろ。次は必ず殺すと」

 

 それを気にせず、グレモルが悔しそうにジブリール言う。

 そして、ザレオスが轟音と土煙を上げながらこちらへ飛ぶのを尻目にアルケロの〝瞬間移動〟で2人は消えた。

 直後2人がいた場所にザレオスの斬撃が襲い、地を割った。

 

「チッ!逃したか」

「『次は必ず殺す』だって……」

「そうか……」

 

 ジブリールから伝言を聴くと、ザレオスは剣を鞘にしまう。

 

「お兄ちゃん…。もうやめて…ッ。復讐は復讐しか生まないよ。お兄ちゃんが傷つくのなんて見たくない…ッ。死んでも構わないなんて言わないで……。私、お兄ちゃんが死んだら生きていけないよ…!」

 

 涙を零しながら、そう訴えるジブリールにザレオスは眼を見開き、目をそらしながら返した。

 

「俺が死んでも、メリオダスとエリザベスが——」

「それでもッ!それでも……たった1人の家族なんだよ? もう家族を失うのは嫌なの……。1人にしないで……」

 

 ザレオスの服を掴み、震えながら消え入りそうな声でその小さな体、幼い精神には不釣り合いな巨大な力を持つ少女は言う。

 57歳。

 人間ならば大人どころかおばさん呼ばわりされる年齢だが魔神族や女神族から見ればまだまだ幼い。

 そんなうちから、親を失い、兄を失いかけ、恩人に酷い仕打ちをされてしまった。

 

 ザレオスは先程とは打って変わり、ごく一部の者にしか向けない——それどころか見たことすらないほどの優しい笑みでジブリールの小さな体を優しく抱きしめた。

 そして、憎しみを語る声や敵に向ける声とはまるで違う別人のような優しげな声で、安心させるように言った。

 

「わかった。悪かったな。もう、死んでも構わないなんて言わない。無茶も無理もしない。メリオダスとエリザベスのクソみたいな呪いを解いて、くだらない戦争も終わらして、平和な世界でまた4人で暮らそう。ジブリールの美味い飯を食って、時々マーリンが遊びに来たりして、メリオダスの新しい仲間——〈七つの大罪〉って言ったか? そいつらとも馬鹿騒ぎしてみて。穏やかで、かけがえのない日常を。な?」

「うん…ッ」

 

 ザレオスの胸に甘える猫のように顔をこすりつけながら、鼻をすすってジブリールが答える。

 そんなジブリールが泣き止むまでザレオスは優しくジブリールの頭を撫でた。

 

「もう、大丈夫です。また、頑張れます!」

「そうか、んじゃリオネスに戻るぞ」

「はい!」

 

 笑顔で元気に返事をして飛び立つジブリールの後を追いかけながらザレオスは考える。

 

 先程ジブリールに言ったことは紛れもない本心だ。

 だが、自分はリュドシエルやエスタロッサを前にして同じことを言えるだろうかと……。

 




 うん、長ったらしいったらありゃしない。
 予定ではジブリールが来てから少し2対2で戦う予定でしたが書いてたらなぜかなくなりました。
 怪奇現象だ((((;゚Д゚))))

 ガランがエリザベス見て無反応だったのなんでなんでしょうね?ボケたのかなガラン爺。

 復讐に関しては世界中で数多の意見があるとは思いますが少なくともザレオスの考えは「エゴなんてことはわかったんだよ。何も生まない? 憎しみを育てるだけ? 知るか殺す」と言った感じです。

 後はオリキャラ2名。
 書き始めた当初には予定にはありませんでした。
 リオネス防衛戦は特にザレオス達の役目はないという予定だったのですがそれだと味気ないので追加されました。
 暴れまわっていたザレオスに敵討ちを挑むキャラがいた方がいいかなとも思ったので。
 以下、2名のプロフィール。

グレモル

身長:165cm 体重:68kg
誕生日:3月4日
年齢(封印前):103歳
血液型:A型 利き腕:右
魔力:同一(セイム)
特技:肉料理 趣味:筋トレ
好きな食べ物:肉
コンプレックス:気が弱いこと
尊敬する人物:デリエリ
自分の好きなところ:赤い髪
夢・野望:デリエリに認められる、復讐
好きな動物:豚
闘級:32000
魔力:1000
武力:29000
気力:2000


アルケロ

身長:160cm 体重:58kg
誕生日:12月21日
年齢(封印前):91歳
血液型:AB型 利き腕:右
魔力:停止(ストップ)
特技:速読 趣味:読書
好きな食べ物:甘味
コンプレックス:才能の無さ
尊敬する人物:ゴウセル(本人)
自分の好きなところ:頭が良い
夢・野望:世界の全ての知識を得る、復讐
好きな動物:特になし
闘級:34000
魔力:31000
武力:500
気力:2500

 はいそこ、「ざっこwww」とか言わない。ガランが可哀想でしょ!

 詳しい設定は後に語られるかもしれないし、語られないかもしれません。
 語られなければ完結した後にでも載せます。
 まず原作が完結しないことにはなんとも言えませんが。
 どうしても知りたいことがある人は感想をいただければ、答えます。
 まあ、想像してみてくださいw

 あ、ちなみにザレオスは〈七つの大罪〉のことをジブリール達に聞いていますがエスタロッサごと焼いたバンがその1人だとは知りません。
 というかバンの存在に気づいてすらいませんでした。

 次回は今月中に上げたいですねぇ。
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