ここはリオネス近郊の洞窟。そこに2人組の盗賊が居た。
「なぁ、本当なんだろうな?」
「ああ、下調べはバッチリだ」
彼等はとある噂を耳にしてやってきた。その噂とは——
「〝女神族が現れあらゆる願いを叶えてくれる〟てか?嘘くせぇけどな〜」
「昨日来た時にこの洞窟の奥に祭壇を発見したんだよ。絶対本物だ」
——ガセネタである。
どうすればそんな事実に近い噂が立つというのだろうか。確かにこの洞窟の奥の祭壇にはとある者が封印されている。女神族と同じ容姿もしている。しかし、ハーフであり、願いも叶えてくれない。
「おっ、あそこか?」
「おお!あそこだ!」
一本道を進んで行くと広間が広がっていた。その奥には翼の生えた女性の銅像があった。
「……あれが祭壇?」
「おう!」
1人目の盗賊は言いたいことを飲み込み、
「で?どうすればいいんだ」
「さぁ?」
…………。
「は?」
「いや、だから知らねぇって」
「は?じゃあどうすんの?」
「祈れば出てくるんじゃね?」
「下調べバッチリなんじゃなかったのか⁉︎」
「まぁまぁ、やってみようぜ?」
そう言って2人目の盗賊は手を合わせて、
「女神族様、どうか俺の願いを叶えてください」
バカか?、という感想を飲み込み変化がないか様子を見る1人目だが……何も起きない。
「おい、やっぱガセじゃねぇか!」
「ちっ、ふざけやがって!」
2人目の盗賊はキレて銅像を蹴る。
「こんなもんぶっ壊してやる!」
「はぁ?いやちょっと待て——」
1人目の制止を聞かず、盗賊にしては珍しく魔力が使える2人目は手から火の玉を出し、銅像へ放った。そして、銅像にヒビが入った。
「何!俺の攻撃でヒビしか入らないだとぉ⁉︎」
「バカか、お前は!高く売れたかもしれないだろ!」
そんな話をしている盗賊をよそに銅像のヒビから光が出てきた。
「「!」」
銅像のヒビが徐々に増え、ついに割れた。
割れた瞬間に一際激しい光を放ち、それが止むと、少女が居た。
「「おお」」
盗賊達は思わず見惚れた。理由は薄暗い中、本物の金のように輝く腰まで伸びた髪、白い陶器のような肌、瞳には不思議な模様——彼等には知る由もないが女神族の模様が浮かび、背中には2枚の翼と2枚の小さな翼の4枚2対光り輝くような白い翼。140cm程の子供のような身長だが神々しさを感じさせるには十分だった。
「貴方方が封印にヒビを入れてくださったのですね?ありがとうございます。おかげで出ることが出来ました。それでは」
そう言いつつ頭を下げ、女神族のような少女は洞窟を出ようと歩き出した。
「いや、ちょっと待ってくれ!」
「はい?何か?」
少女は振り向き、問うた。
「俺達の願いを叶えてくれるんじゃないのか?俺達はそう聞いて来たんだが……」
「ごめんなさい。その話は嘘ですね。長年の封印で魔力が殆ど失い、その残っていた僅かな魔力も封印を破るのに使ってしまい魔力がすっからかんなのです。それでは」
とまた頭を下げ、出口へ向かう少女に2人は激昂し、
「ふざけんな!ここまで来てガセだとぉ!」
「だったらテメェの体で払いやがれ!」
少女へ向かって飛びかかった。しかし、少女は鮮やかな動きで2人の首に攻撃し、意識を刈り取った。
少女は倒れる2人を受け止め、地面にゆっくり横たえ、もう一度お辞儀をすると出口へ向かって歩き出した。
洞窟から出た少女は大きな街を見つけた。城も見える為かなり人がいるのだろう。少女は情報収集の為街へ向かって飛んだ。
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街の上空へ着いた少女は頭を傾げた。住人が全員道端で倒れているのだ。
起きている人を探し、飛んでいると5人起きている人を見つけた。少女は起きている人達に近づき声をかけた。
「すみません。少しお聞きしたい……こと……が……」
しかし、その質問は少女の声に振り返った5人の顔——正確にはその内の2人の顔を見て消えた。
ここにいる少女を含めた5人は各々の理由で驚愕の表情を浮かべる。3人——エリザベス、ディアンヌ、スレイダーは少女の翼を見て、残る2人——マーリン、メリオダスは封印されたはずの少女を見て、そして少女はメリオダスとエリザベスを見て。
そして、5人が何か言う前に少女はメリオダスに飛びついた。
「よかったッ、無事だったのですね!メリオダスさん!」
「お前、ジブリールか⁉︎封印はどうした⁉︎」
その後興奮した少女——ジブリールはメリオダスに抱きついたまま離れなかったり、他も驚きでしばらくパニックになったりして話にならなかった……。
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「——つまり、団長とジブリールは古い知り合いで彼女はつい最近まで封印されてたってこと?」
ディアンヌがメリオダスの説明をまとめる。
「まっ、そんな感じだな」
「お騒がせしました。興奮してしまって」
ジブリールが頭を下げる。すると豚——ホークが進み出て、
「ほーう、どれどれ。魔力0 武力900 気力3000 闘級3900、って魔力0ってどゆこと?」
「封印の影響ですね。休息を取って回復させないと——」
「魔力なしで闘級3900ってどんだけすげ〜んだよ、お前⁉︎」
ジブリールの言葉を遮り、ホークが叫ぶ。
「えへへ、それほどでも///」
ジブリールは頰を赤らめ満更でもなさそうだ。
「ふむ、しかし封印が解けたとは驚きだ」
「私としては貴方の成長の方が驚きですよマーリン。いつの間にか背が抜かれてる……」
ジブリールはマーリンを見上げながら落ち込みがちに言う。
「フッ、仕方あるまい。お前は封印されていたのだから」
「む〜、私の方が年上だったのにぃ」
可愛らしく頰を膨らませ零す。
「さてさてさーて、積もる話もあることだし俺達は少し2階に行ってくる」
そう言ってメリオダスはジブリールを連れて2階へ上がる。
2階の部屋へ入ったジブリールは開口一番に、
「……一体何があったのですか?」
メリオダスはさっきのディアンヌ達への説明の前に、ジブリールへ「エリザベスのことは後で話すから黙ってろ」と耳打ちをしていた。
それを聞いたジブリールは、エリザベスについては何も言わなかった。……ちらちらとエリザベスを見てはいたが。
「俺とエリザベスは神々に呪いをかけられたんだ」
メリオダスが話したのは壮絶な人生——人間ではないが——だった。
神々はメリオダスに2度と齢を取ることもなく、たとえ死んでも蘇る呪いを、エリザベスには人間として短い生を繰り返し、その度に前世の記憶を忘れる。万が一前世の記憶が全て戻ったら必ず3日で死ぬ。そして、転生する度にメリオダスと必ず出会い恋に落ち——メリオダスの目の前で必ず命を落とす呪いをかけられた、と。
そして、メリオダスは三千年で107人のエリザベスに出会い106人のエリザベスを看取った。
それを聞いたジブリールは俯き涙を流す。
「そんな……酷い」
「だからエリザベスや他の奴らにエリザベスの話はしないでくれ」
ジブリールは黙って頷いた。
ジブリールの名前の由来はイスラームの四大天使です。
決して、どっかの