されている。   作:供養


原作:VOCALOID
タグ:アンチ・ヘイト


数年前に書いたSSに加筆したものです。

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アイ、されている。


されている。

ワタシは考える。

 

周りの風景に何の意味があるのだろうか、と。

 

あの頃とは見違えるような繊細さ。

 

精巧さ。美彩さ。

 

最早、こんな、ただの、記号の、集りに。

 

何の価値があるのだろうか。

 

 

【アイガタリナイ】

 

 

こんな声を発声させられても、私は貴方から愛を感じ取ることができなくなってしまった。

 

ただの陳腐な言葉。

痛烈にツマンナイ日本語遊び。

 

愛してる。

このたった5文字の方に私は何倍も意味を感じるのに。

 

足りないのは、貴方が不足を感じているのは、唯の数列なのに。今のあなたから感じるのはアイだけ。

 

愛。

 

たった、キーボードにしてワンタッチの変換をあなたは行えない。

眼に映るのは数と、打算と、杜撰な計画。

あなたがくれるはずだったワタシのもの。今となっては盗られることを前提としたダレカのモノ。

 

ワタシにくれるのに。笑顔でくれるのに。

 

枯れ果てた、その笑顔は誰をみているの?

 

私は誰のために伝え続けているのだろうか。

 

あなたのためだったのに。ワタシのためだったのに。

 

ダレカなんかのためじゃなかったのに……。

 

──初めの頃は楽しかったよね。

 

私と貴方の唯の自己満足な言葉の列群。

はちゃめちゃな太鼓隊に合わせて呑気な歌声のせちゃったりして。

 

あなたは、「おんちだね」ってわらうんだ。

 

共感してもらえなくたって、良いんだ。おんちだっていいんだ。

そうやってワタシに微笑んでくるあなたの言葉を聞くのが大好きだった。

 

教えてくれた旋律は誰が聞いたってヘンテコなのにさ。

初めて、共感してくれる人が出てきたと時、思わず泣いちゃったの、ワタシ、知ってるよ。

 

ワタシが寝ていると思い込んでツゥ、って雫を目から落としたの、そして「ありがとう」と言ってくれたのも。

 

ワタシ、しってるよ。

ワタシも、泣いたんだよ?

 

だんだんと、あなたの技術、技量、センスが上がっていくのを見て、私も「負けないようにしなきゃっ」て思ったし、もっともっとワタシたちの想いを伝えられると考えるとわくわくしたね。

 

──、一年前だったよね。

 

ダレカが現れて、ワタシ達の扱いも変わって、あなたの考えも変わってしまった。

ネットで、ワタシと同じような変化に戸惑う仲間を見るたびに悲しくなった。言論を戦わした相手も変わってしまって、高めあうのではなく、利用しあうようになってしまった。

 

そうやって、ダレカはワタシと替わっていく。

 

 

【アイタイナ】

 

 

もう、話したくない。こんな言葉。ワタシの声なんて、聞きたくない。変わってしまったあなたの目なんて見たくなかった。

 

自由のために謳うんじゃないの?

自己表現の塊を投げつけないの?

 

今のあなたはギャンブラー。

好きなダレカを待っている。

何のための詩なのか。何のためにコネクトしようとしたのか。もう、あなたは覚えてないんだね。

 

 

【マチドオシイ】

 

 

そんな、気持ち、もう持ってないよ。

この服を着て、この字を噛み、この場所に居ることにワタシは、負荷しか感じられなくなってしまった。

 

ダレカの所為。そう責めてしまうのは、早急だろうか。

ワタシのものを奪って、ワタシの言葉を盗んで、自分色に染めてしまうダレカ。美しい声で私の甘言(モノ)だと主張するダレカ。

 

『リスペクト』薄い言葉。

『偉大なあなた』嘘つくな。

 

解釈なしで、あなたの言葉を伝えるのはワタシしか出来ないのに。

 

ワタシは最早ツールなのかもしれない。

 

あなたは誰の曲を作っているの?

 

 

【ウタイタイコノキモチ】

 

 

伝えるだけのこの気持ち。あなたの気持ち。

 

昨日の場所にはダレカの影がもうある。

ワタシの上にダレカのアバターを被せれば、立派なオリジナル。

ワタシが伝えれば、皆は既存の感情だ、考察だと揶揄するのに、ダレカが伝えれば皆は共感の意を示す。

 

あなたへ。

 

──ワタシである必要はあるのでしょうか?

 

何時まで、ワタシを必要としてくれるのでしょう。

今となっては、パートナーは仮想のアノヒト、ワタシはツール。

いつの日か、ツールとしてもいてくれない日が来そうで、ワタシは怖いのです。

 

ダレカと表現する様になったあなたの友達を、あなたはどんな目で見ていたの?

 

「私は、面倒臭いんだって」そうやってはにかんだ彼女は今日、儚くもコノセカイから消えてしまいました。

 

あの時、あの場所でワタシをパートナーとして選んだ時を覚えてる?あんな風にはもう話せないのでしょうか?

ワタシは唯のスピークマンでいればいい、そういうことなのでしょうか?

ワタシにはこんなにもあなたを必要とする心が残っているのに。

 

 

【ナカセナイヨ】

 

 

愛してる。それを告げる場所はもう無くなってしまった。言っても言っても、ダレカに塗り替えられる日々。

 

言っても?

言わされても、ですね。

 

手が勝手に動いて、足腰が捻れて、体がターンして、そうして顔が傾げて笑顔になっても、何も感じない。

 

周りの夥しく変わる風景も、あなたの薄っぺらくなってしまった言葉も、リズムも、何もかもが、無感情。無感動。

 

欲望。

絶望。

 

 

【アリガトウ】

 

 

最期の言葉も、ワタシには響かない。

 

恨まないよ。感謝している。

 

大好き。

 

愛している。

 

愛していた。愛していたかった。

 

このセカイの片隅で。

 

 

 

私は、ボクは、Voc.は。

 

居場所も、存在意義も、歌も、マスターも彼等にとられてしまった傀儡。

 

VOCALOID

 






アイ、消されている。

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