"彼"は『ユグドラシル』のプレイヤーだ。このゲームのβテストの時からプレイしている、最古参のプレイヤーだ。
名は『プレイヤー1』
キャラクター作成時にうっかり名前を入力し忘れてしまったため、その名になったのだ。
プレイヤー1は主にソロで活動し、特定のクラウンやギルドには所属しないプレイヤーだった。広く、長く、自由に、のびのびとプレイするスタイルで、しかし最前線で戦うコアプレイヤーでもあった。友人はあまり多くはなかったが、プレイヤー1は特に気にしてはいなかった。
プレイヤー1は『ユグドラシル』の隅から隅までを知っているわけではなかったが、普通のプレイヤーよりかは多くの事を知っていた。レアアイテムの隠し場所やレアモンスターのPOP時間、隠された街の出現条件や希少職業への転職条件など、中には人伝に聞いたことやネットで仕入れた情報もあっただろうが、実に様々なことを知っていた。
プレイヤー1は『ユグドラシル』の始まりからずっとこのゲームと共にあり、このゲームの栄光と衰退、繁栄と凋落を見届けた、数少ない生き証人でもあった。
辛いことがあった、思い出したくもない悪いことがあった。苦しいこともあったし、やりきれないこともあった。泣きそうなくらいに絶望したこともあれば、声を荒らげて怒ったこともあった。
だが、それ以上に良いことや、楽しいこと、嬉しいことや、素晴らしいこと、感動することに、感激すること、そして喜ばしいことがいっぱいあった。
だからプレイヤー1は『ユグドラシル』が大好きだったし、多分きっと、そんなプレイヤー1のことを『ユグドラシル』も少しは好きでいてくれたはずだ。
だから、プレイヤー1は今日も『ユグドラシル』をプレイしていた。『ユグドラシル』がサービス終了する今日という日も……。
オンラインゲーマーにとって「別れ」というものは、ごく身近にあるものだ。どんなに仲が良く意気投合していたとしても、突然なんの連絡もなくいなくなってしまう。そんなことは特に珍しいことでもなく、どんな素晴らしいオンラインゲームでも、どんなに愉快なコミュニティーだとしても、それは不可避なことであり、当たり前のことだった。
それはこの『ユグドラシル』とて例外ではない。
堅い友情で結ばれたはずの友人たちが、一人また一人と姿を消し、最終的に自分一人になってしまうのは、とてつもなく辛いことだ。だが、だからといって悲観に暮れることではない。
彼らはこのゲームを離れただけで、死んでしまったわけではない。もしかしたらまた別のどこかで、別のゲームを遊んでいるのかもしれないし、あるいは、現実の世界でなにかと一生懸命戦っているのかもしれない。
それが彼らの選んだ道であるならば、それを受け入れてあげることこそが残された側の務めであると言えるだろう。だから彼らがいなくなってしまったことは、歓迎することはあれど、悲しむべきことではないのだ。
多くのベテランオンラインゲーマーと同じく、プレイヤー1もそれを弁えていた。来るものは拒まず、去るものを追わない。これこそがオンラインゲーマーとして一番大事な流儀であると、プレイヤー1は信じていた。
だから、どんなに辛い"別れ"であったとしても、それは喜びと共に歓迎するべきなのだ。たとえそれが、大好きな『ユグドラシル』との"別れ"であったとしてもだ。
オンラインゲームのサービス終了というのは、オンラインゲーマーにとっては想像以上に重く、また意味のあることであると言えるだろう。
アップデートが来なくなり、サーバーが停止し、サービスが終了するということは、すなわち、プレイヤーがそのゲームに費やした『時間』や『労力』『金銭』だけでなく、そのゲームで得た『思い出』や『絆』といった目には見えないものまで、全てが無に帰すということなのだ。それが、十数年も続いたオンラインゲームとなれば、その衝撃は計り知れないものになるだろう。
『ユグドラシル』がサービス終了を宣言した時も、プレイヤーの反響は想像を絶するものがあった。ある者は絶望に駆られ、ある者はむせび泣き、ある者は抗議の声を上げ、ある者は現実逃避に走った。ある噂では自殺した者さえいたらしい。
だがプレイヤー1を始めとする歴戦のオンラインゲーマーたちの反応は、実に冷静なものであった。運営側の発表がもはや覆しようもない現実であることを、彼らは粛々と受け止めたのだ。
実際、その兆候は前々からあった。むしろここまで持ち堪えたのが奇跡であると言えた。あまりにも崩れたゲームバランス。初心者に全く優しくないゲームシステム。閉鎖的なコミュニティ。あまりにも広すぎる世界観。高すぎる難易度。秘密主義的な運営。先の見えない開発。MMORPGとしてはどれも致命的とも言える欠点ばかりであった。
人気があるうちはそれでも良かった。しかしその人気に陰りが出てきた時、『ユグドラシル』の衰退は急速に進行していったのだ。
栄枯必衰──『奇跡』とまで謳われた『ユグドラシル』もまた、他の多くのオンラインゲームと同じように、歴史の闇へと消えようとしていた。
『滅び』はもう不可避であった。『ユグドラシル』はちょうど12周年となる記念すべき日に、長きにわたる歴史に幕を下ろすことを決定した。『ユグドラシル』の終末の日が迫っていた。
そんな終末の日に、プレイヤーたちはなにをするのだろうか?
大切な仲間たちと共に最期の時を迎えるのだろうか? 最後だからって思う存分好きなことをするのだろうか? 自暴自棄になって暴動でも起こすのだろうか? あるいは昔を懐かしみ、来るはずのない友人たちを待ち続けるのだろうか? もしかして未だ現実を受け入れられず、ずっと逃避しているのだろうか?
プレイヤー1はそのどれとも違っていた。
プレイヤー1は戦っていた。『ユグドラシル』の終末の日、彼は『滅び』に抗うために戦っていた。
それは、ある一つのクエストから始まった。
『ユグドラシル』サービス終了が正式に告知され、いよいよサービス終了まで一ヶ月を切った頃、唐突にあるクエストが実装されたのだ。『ユグドラシル』の運営には珍しく、大々的に発表されたクエストだった。
そのクエスト名は『
主に北欧神話をベースにした『ユグドラシル』でその名を冠するクエストを、しかもよりにもよってこのタイミングで実装してきたということは、『粋』と言うべきか『皮肉』と言うべきか……兎にも角にも、多くのプレイヤーたちはそのクエストに殺到した。
クエストの内容はいたって単純だった。
時を同じくして、過去多くのプレイヤーたちが死に物狂いで討伐した『ワールドエネミー』たちが、世界各地で次々と復活するのが確認された。皆一様に『ある場所』を目指して進軍している。その『ある場所』とは、世界の支柱である『世界樹』であった。
多くを語らずともそれだけで、プレイヤーたちには全てが理解できた。奴らこそが『滅び』だと、奴らに『抗う』ことこそがこのクエストの達成条件であると、それこそが『
プレイヤーたちはすぐさま行動に移した。それぞれの経験や人脈を駆使して、復活した『ワールドエネミー』たちを次々と討伐していく。戦いは当初、プレイヤー側に優位に進むことになった。新たに復活したとはいえ、所詮は過去何度も討伐された『ワールドエネミー』だ。当然、この頃には隅々まで研究し尽くされていて対策は万全だったのだ。
結局、復活した『ワールドエネミー』たちはさしたる脅威とはいえず、幾ばくもしないうちに全て掃討され、呆気なくクエストはクリアになるかと思われた。しかし、ほとんどのプレイヤーが予想していたとおりこの程度で終わるはずもなく、『ワールドエネミー』たちは再び復活した。しかもより『強化』され『増殖』した状態でだ。
そこからは正に地獄絵図だった。倒しても倒しても復活し、強化され増殖してくる『ワールドエネミー』たち──名だたるギルド、クラウン、プレイヤーたちが虚しく飲み込まれ、徐々にプレイヤーたちは劣勢に追い込まれていった。
九つあった『世界』の門は全て突破され、遂にプレイヤーたちは『世界樹』への侵攻を許してしまった。『ユグドラシル』サービス終了まであと残すところ一週間を切った頃のことだった。
戦い続けるプレイヤーたちの脳裏に『敗北』という二文字がよぎた。このまま無様にも『ユグドラシル』を守りきれずに、サービス終了を待つことなく『世界』は焼き尽くされてしまうのだろうか? それはプレイヤーたちにとって筆舌に尽くしがたい屈辱であった。
どのプレイヤーも絶望し諦めかけていた頃──突如としてプレイヤーたちの中に「救世主」が現れ始めた。規格外の戦闘能力を有し、強化状態の『ワールドエネミー』とも単独で対等以上に渡り合う、まさに『
『ワールド・チャンピオン』『ワールド・ディザスター』『ワールド・ガーディアン』に次ぐ第四のワールド
あらゆるスキルを使いこなし、あらゆる魔法を唱え、あらゆる装備を纏い、あらゆる耐性を備え、あらゆる属性を吸収し、あらゆる特性を有し、あらゆる強化を受け、あらゆる補正を保持し、あらゆる制限を無視し、あらゆる限界を突破する、名実ともにぶっちぎりの最強無敵のインチキ職業であった。
『ワールド・ヒーロー』への転職条件はたった一つ──累計プレイ日数が『4375日以上』であること。つまり『ユグドラシル』運営開始からサービス終了一週間前まで、毎日プレイし続けたプレイヤーのみ転職できる職業であった。
該当するプレイヤーは条件を満たした瞬間に転職するかどうかを選択することになり、転職すれば強制的にプレイヤーの種族は──見た目に変化は無いが──『
装備は全て同時実装された
他にも全職業中最高のステータス補正率と成長率を備え、全ての魔法、スキルを使用可能、装備制限なんてものはなく、全ての有利ステータスが常時展開、全ての不利ステータスを無効化と、もはやゲームバランスなんて度外視した公式チート職業でもあった。
こんなものが平時に実装されたら、当然、物凄い勢いで非難轟々の嵐だっただろうが、サービス終了間際の末期状態だったことが全てを許した。どうせもうあと一週間もしない内に全ては藻屑と消えるのだと、そんな経緯で『ワールド・ヒーロー』の存在は黙認された。されてしまった。
その他にも、この頃になると運営側もプレイヤー側も"どうせ最後には全部消えてなくなっちゃうし"というノリと勢いで、誰も彼もがやりたい放題し放題になっていた。
貴重な『ワールドアイテム』は惜しみなく使用され、激レアな課金アイテムが二束三文で販売された。そして、それを駆使しても倒せない『ワールドエネミー』が生み出され、それを打倒する『ワールド・ヒーロー』が登場する。そして、そんな彼らを駆逐する『ワールドエネミー』が再び大群となって復活するのだ。
末期の『ユグドラシル』ではその全てが当然のごとく許された。もはやゲームは混沌を超え終末に近づき、しかし文句を言う者は誰もいなかった。全てはそう、もうあと幾ばくもしないうちに、文字通り『無』に帰すのだから……。
気づけば蠢く山の如くの軍勢となった『ワールドエネミー』たち──その一体一体が、歴戦のカンストプレイヤー数百名人で戦ってどうにか勝利できるレベルとなっていた。
戦場に馳せ参じた『ワールド・ヒーロー』の数はたったの七人。プレイヤー1もその中の一人だったが、迫りくる『ワールドエネミー』に対してはあまりにも少なすぎた。
『ユグドラシル』サービス最終日。プレイヤーたちは世界樹の根本──全てのプレイヤーが最初に訪れる──『始まりの場所』に、残る戦力全てを集結させた。種族、所属、主義、善悪に関係なく、一つの目的のために集うプレイヤーたち。
『ユグドラシル』史上始めて、いまプレイヤーたちは一つの旗の下に団結した。全てはこの『世界』を守るために……。
戦闘狂のトッププレイヤーがいた。戦いが苦手なライトプレイヤーもいた。製作一辺倒の職人プレイヤーもいた。噂を聞きつけて復帰してきた古参プレイヤーもいた。物見遊山で見学しにきた野次馬プレイヤーもいた。何も知らずこの時期に始めてしまって、巻き込まれた新規プレイヤーもいた。その全てのプレイヤーたちが戦列に加わった。
足手まといになる者は一人としていなかった。戦いに参加するプレイヤーは、『女神』によって『世界樹の加護』という祝福を受け、職業構成はランダムであるがカンストレベルまで強化され、製作系を極めたプレイヤーたちやベテランプレイヤーたちによって、
出し惜しみは一切なかった。プレイヤーたちは全身全霊をこの戦いに注いだのだ。全ては今日、勝利で終えるために……。
斯くして『ユグドラシル』史上最大最後の戦いは、苛烈にかつ激烈に始まった。
無数に飛び交う眩いばかりの閃光──ワールドアイテムが湯水のごとく使用され、超位級の魔法が乱発される。夜空に煌めく流星群の如く撃ち出される数々の魔法。それと共に咆哮をあげ敵に迫る前衛プレイヤーたち。彼らは勇猛果敢に戦い、散って逝った。そしてすぐさま蘇生し再び敵に挑んでいく。
『ワールドエネミー』の一薙ぎで、数百単位のプレイヤーが消滅させられた。後衛が構築していた障壁は一瞬で破壊され、『ワールドエネミー』がなだれ込んでくる。プレイヤーたちは必死に抵抗し戦った。再起不能となったプレイヤーはリスタート地点まで戻って復活し、転移魔法で移動してきて死に物狂いでゾンビアタックを仕掛けた。
デスペナルティなんて気にする必要はない。下がったレベルなんて『女神』に話しかければすぐにカンストするのだがら。
『ワールド・ヒーロー』であるプレイヤー1はそんな彼らを背後に背負い、最前線で戦った。12年にも及ぶプレイ経験とプレイヤースキル、そして『ワールド・ヒーロー』の職業性能を最大限に駆使し、流星のごとく縦横無尽に戦場を駆けて敵を殲滅していく。最初期に実装された『七大罪の魔王』の一体を一撃の下に葬り去り、息つく暇もなく続く『八竜』の一翼へと迫っていく。
彼方より歓声が聞こえた。しかし気に留めている時間はない。"敵"はまだ無数にいるのだから……。
数百単位のプレイヤーを消し炭にした閃光が、再び煌めいた。それをプレイヤー1は単身で受け止める。膨大な破壊の奔流に歯を食いしばりながら耐え、見事に凌いでみせた。お返しとばかりに同時詠唱した超位級魔法を連続照射し、彼の敵を蒸発させる。
歓声はもはや聞こえなかった。音も空間も時間でさも彼方へと消えていた。誰も彼もが夢中になって、戦場を駆けていた。強い者も弱い者も勇敢な者も臆病な者も関係なく、『世界』を守るために戦っていた。
こんなに必死なって戦ってもサービス終了が免れないことなど分かっている。結局のところこれはただ自己満足に過ぎないと、とっくに分かっていた。
この戦いに意味などない。この『世界』を守る意味など、もうとっくに皆無なのだ。どんなに頑張って『世界』を守りきっても、サービス終了は絶対不可避で、結局のところ『滅び』には絶対に『抗えない』。勝敗など最初から決まっていて、プレイヤーが敗北することなど最初から決定していた。
でもだからどうした? 負けると分かっているから何もしないのか? 意味がないから戦わないのか? 違う!
世界の終わりに対し最後まで勇敢に戦ったと、最後まで『滅び』に『抗った』と、俺たちは最期まで負けなかったのだと、胸を張って言えるように。最期の瞬間まで誇れるように。
いやそうじゃない。最後まで俺たちはこの『世界』を愛していたと、この『ゲーム』を楽しんでいたのだと、"彼ら"に示すために。そう! 僕らがどんなに『ユグドラシル』が好きだったかを、"彼ら"に知ってもらうために! そのために最期の瞬間まで戦うのだ!
そうだ。これが、これこそが『ゲーム』だった。これこそが『ゲーム』の醍醐味だった。これこそが『
それはそう、ここにいるプレイヤーたちだけではなく、この『ゲーム』を作った者たちもそうだった。『ユグドラシル』最後の戦場には、確かに『オンラインゲーム』とはなんたるかの全てが揃っていた。
気づけばプレイヤーたちは笑顔になっていた。苦境に立たされ、敗北寸前だというのに、誰も彼もが楽しそうに戦っていた。"彼ら"が操る『ワールドエネミー』たちも、不思議と楽しそうで笑って戦っているようだった。
ありがとう、このゲームを遊んでくれて……。
ありがとう、このゲームを作ってくれて……。
そんな"声"が聞こえた気がした。
もはやどれだけの時間が経ち、どれだけの血が流れたか分からなくなった頃──突如として『ワールドエネミー』たちの猛攻が止まった。突然のことに息を乱しながらも目を丸くするプレイヤーたち。プレイヤー1も訳も分からず、ただ呆然とするばかりだった。ふと視界の端に表示されている時計を見ると時間は……。
瞬間──『世界』の空に極光が広がった。数々の色とりどりの華麗な花びら。無数の煌めく閃光。光り輝く星々たち。終末の夜空に満開の花火が立ち上ったのだ。
戦場にいたプレイヤーたちは、最初は呆けた顔でその天空ショーを見た。そして幾ばくもしないうちに歓喜と歓声で覆い尽くされた。時刻は23時55分──『ユグドラシル』サービス終了までもう5分を切っていた。
打ち上がった花火と共に、停止していた『ワールドエネミー』たちが次々と消滅していく。復活することは二度と無かった。
そう、プレイヤーたちは勝利したのだ。押し寄せるワールドエネミーたち跳ね除け、遂にこの『世界』を守り抜いたのだった。たった五分だけしかない勝利の時であったが、彼らにとっては何ごとにも代えがたい栄光の瞬間であった。
「よぉ! あんたのこと前から知ってたぜ! 最後に一緒に戦えてよかった!」
「実はファンだったよ、プレイヤー1!」
「ずっと『ユグドラシル』やってたみたいだけど、あんたは次どのゲームをするんだい?」
プレイヤー1の側にいたプレイヤーたちがそんなことを言ってきた。みんな見たこともないプレイヤーばかりだったが、間違いなく戦友と呼べる存在だった。か細くて僅かであるが、確かな『絆』がそこにはあった。現実世界では決して得ることのできない、不思議な『絆』が……。
プレイヤー1は彼らの問いに、笑みを浮かべて答えた。
「────」
しかし、プレイヤー1の言葉は、再び夜空に轟いた巨大な音でかき消えてしまった。
「見て!」
どこかのプレイヤーがそう言った。その言葉に全てのプレイヤーが空を見上げる。プレイヤー1も満天に輝く夜空を見つめた。
空を彩る無数の花火が徐々に形を変え、文字を形成していく。
『CONGRATULATIONS PLAYERS!』
プレイヤーたちの歓声は最高潮に達していた。誰もが夜空を見上げ喜びの笑みを浮かべている。
そしてまた閃光が立ち昇った。今までのと比べ最大級の花火だ。夜空に生まれた満開の華が、形を変え意味を成す。
『THANK YOU FOR PLAYING』
そのメッセージを見て歓喜を露わにしないプレイヤーなど、存在しなかった。
「こちらこそありがとう!」
「愛してるよユグドラシル!」
「はやく続編だしてくれぇええええ!!」
「次回作も期待しているぞ! 絶対プレイするからな!」
「ずっとクソ運営だと思っていたけど、最後の最後でクソ最高だったぞクソ運営!」
「楽しかった! 本当に楽しかった! ありがとう!」
みんな笑顔でそう言っていた。ありがとうと、楽しい時間をありがとうと、空に向かって叫んでいた。プレイヤー1も自然と笑顔になってそう呟いていた。
そして──終末の時が近づいてきた。
『10! 9! 8! 7!』
誰ともなくカウントダウンが始まった。まるで新年を迎えるかのように嬉しそうに、声を揃えてその時を待っていた。プレイヤー1もそれに合わせる。
6──
側にいたプレイヤーがプレイヤー1にサムズアップをしてくれた。
5──
プレイヤー1はにやけながらそれに応えた。
4──
まわりでは泣いている者、抱き合っている者、肩を組んで合唱している者、実に様々な人たちがいた。
3──
プレイヤー1は最後にもう一度、夜空で輝くメッセージを見た。記念すべきこの時に、この光景をずっと目に焼き付けておくために……。
2──
そして見た。閃光によって形作られたメッセージが、静かに変化していくのを。それは……。
1──
『AND……』
0──
『WELCOME TO ANOTHER WORLD!』
そして『ゲーム』は終わった。
しかし『プレイ』は終わっていなかった。
気づけばプレイヤー1は、見知らぬ荒野に立っていた。
もしモモンガさんがナザリックで黄昏ている裏で、『もう最後だし良いよね!』と開発運営側もプレイヤー側もはっちゃけまくってたらどうなるのか? そして、それに全力で乗っかった一人の『プレイヤー』がモモンガさんと同じ異世界に行っちゃったらどうなっちゃうのか? そんでそいつが良くある最強無敵の超人系オリ主だったら? という妄想。
最強系超絶主人公なので、たぶん単独でナザリックを殲滅できるレベル。推定レベル500~1000くらい。ぶっちゃけ特に設定していない。ツッコミどころは有りまくりだけど、"どうせ全部消えちゃうし"という精神でどうにかなったというノリ。
元ネタは某新生したMMORPGの『時代の終焉』クエスト。そうじゃなくてもMMORPGのβテストが終わる時は概ね世界が一度崩壊したりする。ヒャッハー終末だ! 終わる時はいっそ盛大にってスピリットですね。
題名の元ネタは当然、最近実写映画が公開された『レディ・プレイヤー1』。これもVRMMORPGのお話でしたね。とても面白いので是非オススメです。
さあ、これからプレイヤー1は異世界に行き、いったい何を思い、何を成すのか……そんなもんは私も知らんので、誰か続き書いて下さいお願いします。