読み専でしたが別サイトで全く反応のなかった超短編を不法投棄します。
お目汚し(具体的には目に1d20のダメージ)失礼します
おにぎりみたいに手軽に読める超短編を目指して
※なお具はダークマター
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おにぎりだ
故郷に向かう列車の中に漂ってきた湿った海苔の独特な匂いを嗅いで、私は何か懐かしいものを食べたがっていた。
それに気付くまでに三駅分費やした。
それほどに久しい存在になってしまっていたのだ、おにぎりは。
おにぎりと言ってもコンビニで売っているようなものではない。
更に言えば作りたての、海苔のぱりっとした食感が心地よい温かなソレとはちがう。
冷めきった米に、湿った海苔が歯にくっつく。そんなおにぎりが食べたかった。
そのようなおにぎりを食べる機会というのは人生に於いて何回訪れるのだろうか。
小学校、中学校の運動会か?
それとも日々のお弁当か?
私の記憶にあるのは、ただ一度祖母の葬式に向かう列車の中で母が広げた弁当の中にもあった小ぶりのおにぎりだった。
電車の中で弁当を広げるなど非常識だと言う人もいるだろうが、普段仕事ばかりで弁当など作ることがない母の弁当は幼かった自分の目には輝いて見えた。
鮭、おかか、昆布等の定番のものばかりで面白味の無いおにぎりたちだったが、それはつまりハズレの無い無難な選択だった。
しかしもうひとつの定番である梅は、なぜか入っていなかった。
おにぎりと言えば鮭と梅、なんて会話をいつかテレビかなにかで聞いたことがあり、そもそもおにぎりを頻繁に食べる環境ではなかった自分は、おにぎりとはそういうものと勝手に思っていた。
そんなところに梅の無いおにぎり群が出てきたものだから、当然疑問を母にぶつけることになった。
そして返ってきたのは、父は梅が嫌いだったからというものだった。
厳格だったと聞き及んでいた父にも好き嫌いがあったのだ、と聞いてはしゃいでいたことは朧気ながら記憶している。
親というには余りに知らなすぎた存在に一歩近付けた事が、きっと嬉しかったのだ。
結局、あの時が母の作るおにぎりを食べる最期の機会だった。
お世辞にも綺麗とは言えない形をしたソレは、少しのことで騒ぎだしかねない幼子を黙らせるための道具に過ぎなかったのかもしれないが、確かに私の中で母の味として息づいていた。
実家に帰り、母を見送った。
母親らしいことなど欠片ほどしか記憶にはなかったが、無性にあのおにぎりが食べたくなった。
別サイトに投稿した時そのままの原稿(メモ帳)をコピペで投稿しようとしたら600字位しかなくて水増しせざるを得なかったかなしみ
本文が1014字なので400字程度の水増し
つまり四割水のおにぎりでした
握れないじゃん…オノレ文字数制限!