真・恋姫†無双 - 王の側にて香る花を慈しむ者   作:ぶるー

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第十七話

 

 

反董卓連合に参加を表明した曹操軍は、早速その準備にとりかかった。

今は洛陽の情報よりも、戦いに関する情報が優先ということで、王蘭も軍に戻るように指示を受ける。

 

此度の洛陽での諜報結果として、”董卓”という人物に関する情報は何も掴めないまま陳留に戻ることになった王蘭。

王蘭が斥候隊として与えられた任務において、これほどまでに情報の掴めなかった事などあっただろうか。

 

時代が大きく動き始めるのと同時に、諸侯に関する情報収集はますます難しくなっていくのだろう。

そう考えながら、洛陽を後にする。

 

 

 

陳留に戻って早々、最終の諜報報告を行い、反董卓連合参加の準備に取り掛かる。

 

連合の内外に向けた諜報活動が主な任務であろう王蘭だが、勿論夏侯淵隊副隊長としての任務もこなさなければならない。

あまりの忙しさに、倒れてしまうのではないかと心配にもなるが………。

 

流石に夏侯淵も、王蘭の繁忙具合は察知している様で、他でも出来る事は回ってこないように手配していた。

 

 

 

 

いよいよ軍全体の準備が整い、曹操の号令の下、連合の集合地へと向かう。

 

 

 

 

 

集合地が近くなるにつれ、徐々に連合に参加する諸侯の旗が見え始める。

 

「曹操さま!ようこそいらっしゃいました。」

 

そう言って曹操たちを迎え入れる顔良。

 

到着早々すぐに軍議を行う様で、曹操、夏侯惇、夏侯淵、そして北郷の4名は袁紹の陣営に向かう事に。

 

「凪、沙和、真桜は顔良の指示に従って陣を構築しておきなさい。それから桂花は、どこの諸侯が来ているのかを早急に調べておいて。」

 

そう言い残して曹操たちは軍議へ向かった。

 

 

残された荀彧は、早速動き出す。

 

「王蘭、聞いてたわね?手伝いなさい。袁紹の所はどうせ何も探るものもないでしょうから最小限でいいわ。それよりも馬騰、公孫瓚、袁術の軍の情報持ち帰ってきなさい。特に将に関する情報と、斥候の優位が我が軍にあるかどうか調べてきなさい。」

 

「はっ。」

 

「あ、あと汜水関、虎牢関の様子も探らせてきなさい。軍を進める時に概算に使える情報があればそれでいいわ。実際に華琳さまの軍が攻めるときにはその限りではないけれど。」

 

 

王蘭たちも、諜報活動にとりかかる。

 

 

 

 

今回最も注力すべきは北の勢力と考え、公孫瓚と馬騰両軍へ部下を多く割り当てる。

 

この連合を以て、各軍が頭角を現す場合の事を考えると、やはり北に位置する軍勢は軽視できない。

 

 

 

 

ちなみに王蘭自身だが、斥候としての技能はあまり高くないため、普段は報告された情報の取りまとめや考察を主な仕事としている。

だが、此度の連合はそうも言っていられない。

 

これだけの諸侯が一堂に会する機会は滅多にあるものではないため、どの軍に向けても斥候を放たねばならない。

この連合での諜報に於いては、質より量が肝要である。人手が足りないなどと、甘い事は言ってはいられない。

 

そのため、王蘭自身も他陣営の様子を見に出ることにした。

 

 

 

その王蘭が向かったのは袁術陣営。

北の諸侯らは部下に任せたほうが確実である、と言う理由で袁術軍に向かう事にしたようだ。

 

 

 

 

早速袁術軍に辿り着いた王蘭だが、………なんと言うか、流石は袁家。

おおらかな、と言えば聞こえは良いが、特に何をするでもなく内部情報の入手ができてしまう。

 

余りの無警戒さに、戸惑う王欄。

 

 

このまま楽な気持ちで、内部の情報を全て掴めると思っていたのだが、一部のみ諜報に対する防備が堅かった。

 

 

 

 

袁術軍の食客、孫策軍である。

 

 

 

 

内部関係者を装おうが、人知れず中枢の陣を探ろうが、不定期に周囲の孫策軍兵士が歩き回ってみたり、逆に静まり返ってじっと辺りを注意深く見渡してみたりと、あまり深くまで探りを入れられないでいた。

 

特筆すべきは、鋭い眼光で周囲を警戒している、お団子頭の女性。

何者も近づくことを許さぬ、と言わんばかりの形相だった。

 

 

 

袁紹陣内での軍議が終わる頃に合わせて、自陣に戻る王欄。

諸侯に関する調査結果を確認する。

 

 

 

まずは北に位置する諸侯らについて。

 

 

 

公孫瓚軍には、比較的容易に潜り込めたようだ。

陣近くには平原から来たという劉備という将がいて、これらは公孫瓚軍と動きを共にしながらも、別の部隊という体裁をとっているらしい。

少し特殊な関わり方をしているようだった。

 

公孫瓚自身の評価は軍内でもまぁまぁ良い方だ。卒なく何でもこなせてしまうが故に、その苦労もあるようだが。

 

 

西涼の馬騰軍についてだが、今回は残念ながら馬騰本人の参加はなく、その娘の馬超が名代として参加しているようだ。

 

そしてこちらも比較的容易に内部を探る事ができたとのこと。

 

馬超の評価は軍内では非常に高く、馬騰に匹敵する武勇を誇る。

ただ、馬騰ほど物事を俯瞰して捉えられず、短慮な面も併せ持つ様だった。

 

 

 

次に南方袁術軍について。

 

 

先の通り、潜り込むまでは王蘭でも出来る程に容易だった。

確認した所糧食はとても多く、この連合が長引いたところで痛くも痒くもなさそうだった。

 

 

ただし袁術軍内食客である、孫策軍についてはこれの限りではなかった。

 

 

王蘭の他、同じく任務に当たっていた兵においてもなかなか情報の収集が行えず、

唯一掴めた情報としては、糧食が通常用意されるべき量よりも、かなり少ないことくらいか。

 

袁術軍には過分とも思えるほど糧食があるのに、食客である孫策軍には糧食がない。

袁術にどう扱われているのかが浮き彫りになったと言えよう。

 

また王蘭としては、孫策軍では明らかに斥候対策、もしくは斥候兵の確立がされていると判断していた。

 

 

 

 

これら内容を曹操に報告した後、軍議にて袁紹が総大将として正式に決まったこと、

更には先鋒には幽州公孫瓚軍が指名されたことが伝えられた。

 

 

 

しばらくすると、連合軍が軍を進め始める。

 

 

 

その道すがら、汜水関と虎牢関に関する情報が入ってくる。

汜水関には華雄が、虎牢関には張遼と呂布が配置されているようだ。

 

「汜水関は華雄か………。あまり強い相手とも思えませんし、虎牢関まで兵を温存出来るので都合が良いかと。」

 

「そうね。その情報、あとで公孫瓚と劉備の所にも送ってやりなさい。」

 

「………よろしいので?」

 

「公孫瓚は小物だけれど、麗羽と違って借りを借りと理解できる輩よ。劉備というのは良くわからないけれど………公孫瓚が信用する人物のようだし、戦いぶりは汜水関で分かるでしょう。」

 

「承知いたしました。」

 

 

荀彧と曹操のやりとりが行われているが、楽進が駆け寄ってくる。

 

 

「軍議中失礼します。華琳さま、報告が………。」

 

「何?また麗羽が無理難題でも言い出したの?」

 

「いえ、そうではなくて………。袁術殿が先行して勝手に軍を動かしたそうです。」

 

 

その報告を曹操の後ろで聞いた夏侯惇が問う。

 

「先鋒は誰だ?」

 

「先鋒は孫の旗。おそらく孫策殿かと。」

 

「華琳さま!今こそ過日の借りを………!」

 

 

それを聞いた夏侯惇が、借りを返す機会だと曹操に頼み込む。

 

 

「今はまだ借りを返す時ではないわ。それを孫策も望んではいないでしょう。………自制なさい。」

 

「しかし!」

 

「孫策を助けるには軍を動かすことになる。そうなれば我々は麗羽から不興を買うし、助けられた孫策も袁術の不興を買うことになる。それこそ借りを返すどころか、借りの上積みよ。とにかく、今は自制なさい。彼女の力が本物なら、いずれ十倍………いや、百倍にして返せる時が来るでしょう。桂花、この戦の結果も、一緒に公孫瓚に送ってやりなさい。共有して損のない情報は遠慮なく、ね。」

 

「承知いたしました。」

 

 

 

こうして荀彧が向かわせる人員を選定するにあたって、王蘭が手を上げる。

 

「荀文若様。私が行ってもよろしいでしょうか?」

 

「………あんたが?どうしてよ?」

 

「先程の兵からの報告によれば、公孫瓚軍と劉備軍の関わりは複雑な様相です。………まぁ興味本位な部分もありますが、私が直接見てみる事で何かわかるかな、と。」

 

「斥候部隊の取りまとめは?」

 

「秋蘭様もいらっしゃいますし、荀文若様も。それに我が軍の出番はまだ先になるのでは?」

 

「………まぁいいわ。行ってきなさい。劉備に鼻の下伸ばして切られました、なんて華琳さまの名に泥を塗るような事をしてみなさい?殺すわよ。」

 

「は、はぁ………。承知しました。では。」

 

 

 

そう言って公孫瓚、劉備軍へと向かうことになった王蘭。

 

 

 

 

 

曹操とは異なる、むしろ対を成すとも言えるだろう、新たな英雄との会合である。

 

 

 

 

 

 




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