真・恋姫†無双 - 王の側にて香る花を慈しむ者   作:ぶるー

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第一話、ご覧頂きましてありがとうございます。
ストックが乏しい状況ですが、始まりが肝心とも申しますので二話目、早々に投稿致します。


第二話

 

 

夜が明けた早朝。

 

 

 

王蘭は見張り台の上から、盗賊たちが撤退していった方角に目をやり、思い耽る。

 

「保って今日1日…。しかし昨日の日没前に仕掛けてきた多面作戦が今日も展開されると…。

それもある程度予測できていたとしても、警備隊以外の人たちには、早々に遠くへ逃げて頂いたほうが良さそうですね。」

 

 

昨日の戦いは、まさしく熾烈を極めた。

 

 

これまでは無闇な攻め一辺倒の盗賊たちが、拙いながらも統率を見せ、

終いには多方面からの攻略と、厄介な動きを見せてきた。

 

 

これまでの盗賊たちからは、全く考えられない動きである。

 

 

ある程度最悪を想定して日々訓練に当たっていたとは言え、

ここまでの状況は正直なところ、王蘭にも想定できていなかった。

 

 

このまま盗賊たちに攻め続けられると、直にこの村は落とされる。

それが目に見えている以上村人たちを危険に晒すわけにはいかず、より安全な場所へ村人たちを避難させることを決める。

 

 

この土地に生まれ、この土地で育った王蘭だからこそ、この村へのこだわりも強く、

その決断は苦渋に満ちたものだっただろうことは想像に難くない。

 

 

 

 

 

 

 

そうして村人たちの避難が終わりを迎えるころ、警備隊の班長が声を掛けに来る。

 

 

「王隊長!そろそろ本日の戦に備え、皆に一言いただきたく!」

 

「わかりました。今いきます。」

 

 

隊員の前に立った王蘭が、隊全員の顔を見やる。

 

 

この戦闘の行く末を思うと、こうして声をかけるのが本当に警備隊の、

そして自分たちのためになるのか?という疑念も湧いてくる。

 

 

しかし、昨日の戦いで疲れているであろう警備隊員たちの顔には、

疲労を映した表情はなく、今日1日の戦いにも希望を抱いている表情が伺えた。

 

 

何も嘘をつく必要はない、戦いの先に撤退があろうとも、

士気をあげるのは重要であると気を引き締める。

 

 

「皆さん、昨日は大変お疲れ様でした。ゆっくり体を休めることは出来たでしょうか。

 

此度の戦、これまでの盗賊とは違い、熾烈を極めた戦いでした。

 

しかし、昨日我々はこの村をまた守り切ることができました。

これも偏に日々の訓練と、皆さんの村を守り抜くという強い想いによるものだと思っています。

 

今朝方、万一があってはならないと、非戦闘員の村の皆さんに村を離れ、遠くの安全な場所に避難して頂きました。

 

恐らく、今日は昨日以上に厳しい戦いを強いられることでしょう。

 

しかし。我々は村の皆さんのため、守れるものがあるならば自らの手で守ってみようではありませんか。

村の皆のため、そして自分たちの家族のために。

 

今一度、賊共に我々の力を見せつけてやりましょう。」

 

 

「「「応!!!!」」」

 

 

 

 

村の外には昨日と同じ様に、盗賊たちが立ち並ぶ。

 

 

盗賊たちは糧食の面から、そして村人たちは戦力差の面から。

今日の戦闘がお互いにとって大きな山場であることは、双方にともに理解していた。

 

 

そして再び、戦端が開かれる。

 

 

この日盗賊たちは、昨日見せた多方面作戦を始めから取ってきた。

 

 

「やはり多方面作戦ですか。

ではお伝えしたとおり、こちらもそれらに対応します。

各位、よろしくお願いします。」

 

 

王蘭は、賊たちが多方面作戦を取ってくる事を予測し、班長各位に対応策を授けていた。

 

 

この日も、戦闘目標は飽く迄村の防衛。

こちらから野戦に展開することも、追撃することも考えていない。

 

1日でも長く生き延びるための作戦である。

 

 

作戦そのものとしては、至極単純。

戦力で負けているならば、少数対多数で敵にあたること。

そして無理な攻撃をせずに、相手の邪魔、嫌がる事に集中すること。

これだけである。

 

 

相手の方が戦いに慣れ、強いのであるならば、こちらは数の利を使えば良い。

つまり、点に対して面で相手に当たることを教えていた。

無論、数においても劣勢なことは承知の上だが、そこは戦い方を工夫する。

 

敵が点になり、こちらが面になれるように門の警備隊列を整えさせた。

ツギハギの子供だましの様にも見えるが、盗賊相手ならば多少の効果は見込めるだろう。

 

 

それと同時に、こちらは相手を倒すのが最終目標ではなく、退けることが目標。

ならば無理に攻撃する必要はなく、相手の攻撃を防ぎ、嫌がる事をし続けるのが肝要であると考えた。

 

 

 

さて、戦場では正門を含めた3つの方角で防衛戦を展開している。

押しつ押されつ、どの門でも大きく崩れることなく戦線を維持していた。

善戦していると言っていいだろう。

 

 

しかし、ここにきて悪い方へと事が動かされていく。

 

 

「王隊長!正門の防柵が全て倒されそうです!!」

 

「わかりました…。防柵で迎撃をとっている隊員に避難経路の確認をさせつつ、もう少しだけ戦線を維持してください。

敵が最終防柵に辿り着いた時点で持ち場を放棄し、我々本陣と合流。

敵はこのまま正門突破に全力を投入してくるでしょう。気を引き締めてください。」

 

「はっ!」

 

 

覚悟していたとは言え、いよいよ敵が防柵を破ってくるとあって、王蘭の顔にほんの少しの焦りが見える。

 

 

「くっ…もう少し持ち堪えられればと思っていましたが…。

やはり厳しい状況ですね。我々警備隊の皆さんも、どこかで折を見て村から逃れる算段をたてなければ…。」

 

 

撤退案と合わせて、もう一つの希望が脳裏に蘇る。

 

 

「そう言えば…。刺史様への伝令はどうなったでしょうか…。

 

我々のために行動をとってくれるといいのですが…。

未定領域が余りに多い現状ですが、もし叶うなら…。

もし叶うなら…。

 

どうか我々を、この境地からお救い頂きたいものですね………。」

 

 

どうせ叶わぬもの、と思いながらも、祈りたくもなる状況にあった。

 

 

そこに、王蘭のもとに新しい情報が届く。

その内容は、絶望とも希望ともとれるものだった。

 

 

 

「伝令!!村の東方より新たな砂塵を確認!!!その数、500ほどと思われます!!!!」

 

 

 

その報告を聞いた王蘭は、すぐさま頭を警備隊の撤退作戦に切り替えようとする。

 

しかし、一縷の望みをどうしても捨てきれない。

 

 

 

「500…。賊共の援軍でしょうか…。まだ別に本陣が居たと…?

 

すぐに撤退作戦に切り替えます…が。

旗は…。その砂塵には旗は上がっていますか………?」

 

 

「申し訳ありません。私がお預かりした情報には何も!」

 

「………。………。そうですか。わかりました。仕方ありませんね。

では、撤退の準備をいそ」

 

 

王蘭の指示を前に、そこにもうひとり伝令役の青年がやってくる。

 

 

「伝令!!村の東方より新たな砂塵を確認!!!」

 

 

見張り役が幾人かの伝令に同じ内容を持たせたのでしょう。

そう考えた王蘭に、伝令役が更に言葉を繋ぐ。

 

 

 

 

 

 

「旗は蒼に曹、蒼い旗に曹の文字!!!

官の軍が到着した様子!!!お味方と思われます!!!!」

 

 

 

 

 

 


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