真・恋姫†無双 - 王の側にて香る花を慈しむ者   作:ぶるー

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第二十話

 

 

「………と言った策をご提案いたします。」

 

 

荀彧から曹操に、虎牢関攻略のための献策が為される。

 

 

「ふむ………。秋蘭、どう思う?」

 

「はっ、おそらくは桂花の作戦通りになる可能性は高いものと思われます。」

 

「そう………。では桂花、その策を採用するわ。連合の諸侯らに進軍の経路と、布陣する場所を伝えて頂戴。これより我らは、虎牢関に向けて軍を進める!」

 

「はっ!」

 

 

こうして連合軍は曹操軍の指揮のもと、虎牢関に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって虎牢関の城壁の上。

 

 

「おー。来た来た。」

 

「………むぅぅ。」

 

「来た来た………。」

 

「………………むぅぅ。」

 

「来た………っつーか、どんだけ来るねん!来すぎやろ!!」

 

「………っ!!! ………なんと。」

 

「華雄………言うてた数と全然違うやんか………。」

 

「………ん?あ、あぁ、そんなはずはないのだが………。」

 

「これでは作戦も立て直しなのです!まったく、軍師のねねの事も少しは考えて欲しいのですっ!」

 

 

張遼、華雄、軍師の陳宮が連合軍の配置を確認していた。

あまり口を開かないが、呂布の姿もそこにはあった。

 

 

どうやら華雄は汜水関での戦いの情報を陳宮に伝えていたらしいが、飽く迄自分が戦った相手の数と、門に押し寄せた軍の数の概算までしか確認していなかった様で、残りの袁紹、袁術2大勢力のことまで頭が回っていなかったらしい。

 

 

「………兵の確認をしてくるっ!」

 

 

陳宮や張遼とやり取りをしたあと華雄は1人、兵の確認と言ってその場を離れる。

張遼と陳宮の2人に責められた悔しさや恥ずかしさがその顔に浮かんでいるかと思ったが、その眼には、血に飢えた猛獣のようなギラギラと燃える私怨の炎が見えていた。

 

 

 

残された張遼、呂布、陳宮が華雄の背中を見送ったあとも会話を続ける。

 

 

「悪い奴やないねんけどなぁ。ねねも、ちょっと言い過ぎやで。」

 

「うぅ………。ねねは悪くないのです………。」

 

「ま、ええわ。恋、なんとかなりそうか?」

 

「………なんとかする。」

 

「せやねぇ。何とかせんと、月も賈駆っちも守れんか………。それに、あんたの王国もな。」

 

 

敵陣形の確認をしながら、張遼らも戦の準備に取り掛かろうとした矢先。

 

 

「申し上げます!」

 

 

董卓軍の兵士より連絡が届く。

 

 

「なんや?敵の状況ならちゃーんと見えとるで!」

 

「はっ。あの………華雄殿が出撃されるようです。」

 

「………………はぁっ!?なんやそれ!」

 

「そ、そんなの聞いてないのですっ!」

 

 

 

 

こうして華雄に引きずられるような形で、虎牢関にいた武将3名が出撃する事態となったのだった。

 

 

 

 

 

 

虎牢関から敵将の出撃を確認して、口の端を吊り上げる表情を浮かべる者が1人。

 

 

「華琳さま、作戦通り砦の将たちが出てきました。」

 

 

そう、猫耳頭巾をかぶった曹操軍が軍師、荀彧である。

 

 

「えぇ、見事ね桂花。汜水関の時と言い、連中は籠城戦を知らないのかしら?」

 

「先日の失態を取り戻そうと思って、華雄が独走しているのではないかと。こちらの狙い通りに動いてくれて助かりますが。」

 

「まぁそうね………。でも春蘭でもしないわよ、そういう事は。」

 

「華琳さま、どうして私を引き合いに………。」

 

 

 

 

 

彼女がとった策は至って単純。汜水関と同様に華雄を挑発することだった。

 

汜水関では、関羽が言葉を使って挑発し釣りだしたのに対して、荀彧は軍の配置によって挑発することを選択。

華雄その人の性格を考えれば、言葉を用いずとも釣り出せると考えたのだ。

 

 

荀彧は、関羽と孫策の軍を砦前に、しかも、如何にも防備が薄いですよと言わんばかりの配置で展開。

先の汜水関では挑発され、更には一騎打ちでは無様な姿を晒してしまった華雄であれば、罠と気づかずに、雪辱を果たすべく突撃してくるだろうと踏んだのである。

 

 

まさしく、その策通りにおびき出され、猪突猛進してくる華雄隊。

 

 

それを遠くに見つめた曹操は、初陣である典韋の様子を確認し、彼女の様子に問題ないと分かると、全軍に号令をかける。

 

 

「聞け!曹の旗に集いし勇者たちよ!この一戦こそ、今まで築いた我らの全ての風評が真実であることを証明する戦い!黄巾を討ったその実力が本物であることを、天下に知らしめてやりなさい!総員突撃!敵軍全てを飲み干してしまえ!」

 

 

 

 

虎牢関の戦いが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

まず荀彧は、関羽・孫策の両部隊に指示を送る。

 

 

指示を受けた両隊は、華雄との適切な距離を保ったまま、それぞれ後退。

これを見た華雄は、更に速度を増して突撃を開始する。

 

 

関羽・孫策は、後方に控えていた曹操軍、公孫瓚軍らが配置している場所まで下がると一転、隊の向きを反転して味方と共に華雄隊の突撃を迎え撃つ。

 

またその近くに布陣していた馬超隊も加わり董卓軍との戦闘を開始。

 

 

 

華雄隊の突撃と関羽・孫策の後退により、虎牢関から敵将らを引き剥がすことに成功した連合軍。

荀彧が次に指示を出したのは、1番乗りだけを得たいと門から外れた位置でじっと待機していた袁紹軍に対して。

 

 

「麗羽さまー!曹操さまのところから虎牢関の門に攻め立てる指示が出ました!!」

 

「なーんでこのワタクシがこまっしゃくれたクルクル小娘の言うことなんて聞かなきゃいけないんですのー?」

 

「でも麗羽さま、ここで動かなきゃまた1番乗り取られちゃいますよ………?」

 

 

文醜の報告に渋る袁紹、そしてそれを宥める顔良と、いつものやり取りが繰り広げられていた。

 

 

「むぅ………それも気に入りませんわね。仕方ありません。雄々しく、勇ましく、華麗に進軍なさい!!」

 

 

こうして袁紹軍が虎牢関へと攻め始める。

更にその後ろから、劉備軍の本隊も虎牢関へ向かい始める。

 

 

 

 

これを確認したのかどうかはわからないが、慌てた様子で呂布、張遼、華雄の隊は虎牢関へ引き返し始めた。

中でも呂布隊が先行して、虎牢関前に群がる袁紹軍へと向かう。

 

 

「おらぁ!総員駆け足ー!ここで突撃すれば、虎牢関はあたいらのもんだぞっ!」

 

「皆さん、急いでくださーい!」

 

そう兵たちに指示を出す文醜、顔良。

 

 

そこに。

 

「………そうはさせない。時間ないから、本気で行く。」

 

 

そう言って2人に襲いかかる呂布。

 

 

「どわぁっ!?」

「きゃああっ!」

 

 

何とか1合防いだ2人だが、あまりの衝撃に腕が痺れてしまう。

呂布が次の攻撃のため武器を振り上げると、そこに割って入る人影が。

 

 

 

「く………っ!遅かったか………!大丈夫か、2人とも!」

 

 

 

呂布が虎牢関に詰める兵たちに向かった事を確認するや、全速力で劉備軍本隊に戻った関羽の姿だった。

本隊の無事を確認すると、すぐさま張飛と2人で呂布の前に立ちはだかる。

 

 

「な、何とか………。ありがとうございます。」

「ひゃーっ。死ぬかと思ったぁ………!」

 

 

袁紹軍の武将2人を下がらせ、武器を構える関羽と張飛。

 

 

「………あら、劉備の軍も来ていたのね。」

 

「………お主、孫策………?」

 

 

ここに華雄を引き寄せるために並んで配置されていた、孫策も加わる。

 

 

「これが呂布?強いって聞いているけれど………こんなぼーっとした子が、そんなに強いの?」

 

「………桁違いだ。すまんが、助力を頼めるか?」

 

 

こうして3人同時に攻める事にし、攻撃を仕掛ける。

 

 

だが、それに全く動じる様子がない呂布。

それどころか………

 

 

「………遅い。」

 

 

逆に攻撃を返されてしまう3人。

 

 

「くぅっ…!」

「うひゃあっ!」

「ぐっ!」

 

 

何とか受けきったものの、大きく態勢を崩されてしまう始末。

 

 

「恋!ようやった!あんたもはよ戻りっ!」

 

「ぐむむむー!」

 

 

そこに華雄を引き釣りながら、ようやく虎牢関まで戻った張遼の姿が。

 

 

 

「………わかった。」

 

 

 

こうして虎牢関へと引き上げる呂布、張遼、華雄。

 

 

 

 

その姿を連合軍は、指を加えて見過ごす他なかったのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりの戦闘シーン描写。やっぱり難しい…。
王蘭さんどこいったんだろって回ですみません…笑


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