真・恋姫†無双 - 王の側にて香る花を慈しむ者   作:ぶるー

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第二十一話

 

 

 

翌日、袁紹軍からの情報として、虎牢関に敵が誰一人としていなくなっている、との連絡があった。

もちろん、袁紹軍からの報告だけで信頼する曹操ではなく、王蘭にも虎牢関の様子を探らせるべく指示を与える。

 

 

そしてその斥候が戻り、曹操へ報告を上げる。

 

「申し上げます。袁紹軍からの情報の通り、虎牢関には敵の姿は見えず、もぬけの殻となっている様子。ざっと見える範囲では罠のような仕掛けも見当たりませんでした。」

 

 

「そう………。あなたの事を信頼していないわけではないけれど、怪しいわね。怪しすぎるくらいだわ。………桂花、どう思う?判断に迷うところだから意見を聞かせて頂戴。」

 

「そうですね………。華雄はもちろん、春蘭、袁紹、袁術あたりが敵であれば迷わず進軍を、と申すところですが、呂布も張遼も健在な現状、虎牢関を捨てる価値はどこにもありません。敵軍にも軍師はいる様子ですので、慎重を期したほうがよろしいかと思います。」

 

「おい!どうして私を引き合いに出す!」

 

「やはり罠としか思えないわね………。」

 

「いっそのこと、どこかの馬鹿が功を焦って関を抜けに行ってくれれば良いのですが………。」

 

「さすがにそんな馬鹿はいないでしょう。春蘭でもそこまではしないわよ。」

 

「だから華琳さま、どうしてそこで私を引き合いに出すのですか………。」

 

 

 

虎牢関についての情報に頭を悩ませていると、于禁が連絡しにやってくる。

 

 

「華琳さまー。いま連絡があって、袁紹さんの軍が虎牢関を抜けに行ったみたいなのー。」

 

 

「「「………。」」」

 

 

 

あまりの事に言葉が出ない曹操たち。

彼女らは袁紹の事を、ある意味で甘く見すぎていた様である。

 

 

「たまには馬鹿に感謝するのも悪くないかもね………。袁紹が無事に虎牢関を抜け次第、私達も移動を開始するわよ。」

 

 

 

こうして虎牢関を抜け、連合軍は洛陽の前まで軍を進めた。

 

 

 

 

洛陽の城攻めを始めて数日。

さすがは帝の住まう首都、洛陽。

 

城壁の高さも並大抵ではなく、通常の城攻めよりもかなり苦戦を強いられていた。

 

なるべくならば、早めに方を付けたいところではある。

もともと連携の取れていない連合軍が、こうして何日も行動をともにすることも、

兵士たちにとって見れば、やり辛く面倒な日々だろう。

 

何か現状を打破する策は無いものか、と連合軍全体がそう思っているところに、

天の国、北郷の故郷の話を元にした策が、曹操から提案された。”こんびに”作戦と言うらしい。

 

 

内容を確認すれば、それは1日を6等分し、6隊で1日を通して攻め続けるという作戦。

日没と同時に剣を収めるのが通常であるこの時代において、なかなかに辛辣な作戦を提案するものである。

 

 

これが採択され、その後連合は数日に渡り、丸一日攻め続ける日が続けられた。

 

 

 

 

「………というわけで、敵の反抗がいつもより大人しかった事もあり、敵は今日明日中に決戦を仕掛けてくると思われます。」

 

荀彧から連合の軍議の場に、報告が入れられる。

 

 

「なら、こちらも準備をしっかり整えて………。」

 

「攻撃はこのまま続けないと意味がないわ。ここで兵を退いては敵に休ませる時間を与えてしまうわよ。」

 

 

袁紹が連合軍も決戦に望む準備を、と言おうとしたところに曹操からの反対意見が入る。

 

 

やはり袁紹、袁術の2人からは断られるが、それぞれが代理の軍を立てることによって作戦は継続することに。

袁術の代わりは食客の孫策軍が、袁紹の代わりは劉備軍が曹操の兵を借り入れて請け負うことになった。

 

 

 

「あ、曹操さん………。」

 

軍議が終わり、それぞれが決戦に向けて準備を進めるべく解散したところで、劉備が曹操を呼び止める。

 

「あぁ、どうしたの?」

 

「いえ、お礼が言いたくて………。」

 

「礼を言われるほどの事をした覚えはないわ。少なくとも、この戦の間は同盟を組んでいるのだから。」

 

「それでも………ありがとうございました。」

 

「兵は後で連れて行かせるから、なるべく減らさずに返して頂戴。」

 

「はいっ!ありがとうございました!」

 

 

劉備が去ったところで、北郷が声を掛ける。

 

「随分と気前がいいんだな。」

 

「諸葛亮や関羽の指揮を間近で見られるいい機会だもの。その代価と見れば、高いものではないわ。桂花、兵の中に王蘭の部隊から数名入れておくように。人員の選定はあなたたちに任せるわ。」

 

「はっ!」

 

 

 

曹操たちも決戦の準備を進める中、荀彧、夏侯淵、王蘭の3名は劉備軍に向かう斥候兵の選定を行っていた。

 

 

「………では斥候兵を20名ほど、その中に潜ませると。」

 

「うむ。そして蒼慈、お前には劉備軍に向かう兵たちの長としてそこに加わって欲しいのだ。まだどこの軍も、お前が斥候兵を取りまとめる役柄だとは気づいていないだろう。存分に情報を仕入れてこい。それに、一度お前は劉備との面識を持っていて、懐にも入りやすいだろう。」

 

「はっ。承知いたしました。」

 

「劉備軍の担当する時に決戦に入らなくても、決戦の大凡が片付くまで、しばらく劉備軍の指揮を偵察してきなさい。ただし、あんたの素性や曹操軍の指揮の傾向は決して向こうに晒さないこと。劉備たちに知られてみなさい。どうなるか、わかってるわよね?」

 

 

「………相変わらずですね。わかっております。………では、支度を整えて行ってまいります。」

 

こうして劉備軍のもとへ向かう王蘭だった。

 

 

 

王蘭が劉備軍の陣幕にたどり着くと、ちょうどそこから関羽が出てくる。

 

「関雲長殿、ちょうど良いところに。劉玄徳殿はいらっしゃいますか?曹操軍より援軍として参りました。」

 

「む………王徳仁殿か。お主には汜水関では世話になった。今度は援軍として世話になるのか………またよろしく頼むぞ。」

 

 

始めて会ったときの剣呑な雰囲気は既になく、笑みを持って迎え入れられる王蘭。

 

そして劉備のいる陣に通されると、劉備、諸葛亮の2人に加えて、赤く短い髪で虎の髪飾りをつけた活発そうな少女と、先の尖った帽子を目深にかぶった少女、その隣には真っ白な衣と赤い槍を持った女性が控えていた。

 

 

「徳仁さん!今回またお世話になるんですね。よろしくお願いします!」

 

「えぇ、こちらこそ。後ろのお三方は始めまして、でございますね。改めて自己紹介をさせていただきます。曹操軍より援軍を率いる長として参りました、王徳仁と申します。汜水関では我が軍にて掴んでおりました情報をお伝えに上がった際、劉玄徳殿、関雲長殿、諸葛孔明殿には一度目通りしております。」

 

「鈴々は張翼徳なのだ!桃香おねーちゃんと愛紗の妹なのだ!」

 

「あわわ………龐子元と申しましゅ………あぅ。」

 

「我が名は趙子龍。この雛里………龐統は人見知りでな。気を悪くなされたらすまぬな。」

 

 

「いえ。短い間ではありますが、何卒よろしくお願いいたします。」

 

 

 

無事劉備陣営に加わった王蘭たち。

 

こんびに作戦を含めた、劉備軍での指揮系統の確認を行い、いよいよ決戦準備が整う。

 

あとはその時を待つばかりである。

 

 

 

 

 

”こんびに”作戦の提案によって、洛陽攻略の指揮も引き受けることになった曹操軍。

隊がキレイに整列し、洛陽の門をじっと見つめていた。

 

 

「報告っ!城の正門が開きました!」

 

そこに、曹操のもとに楽進からの報告が入る。

 

 

「見えているわ!皆のもの、聞きなさい!ここが正念場!この戦いに勝てば、長い遠征もおしまいよ!けれど、もし奴らをあの城の中に押し戻してしまったら、この遠征は永劫続いてしまうでしょう!この戦いばかりの日々を終わらせるわよ!総員、戦闘準備!」

 

 

「門より敵部隊出撃!突撃してきます!」

 

 

「………さぁ、誰が私たちの相手をしてくれるのかしらね?………春蘭!」

 

「はっ!総員、突撃ぃっ!」

 

 

 

 

洛陽攻城戦、決戦の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




王蘭さん再び劉備軍に。今度はガッツリ中に入り込むようです。
そしてそして、蜀軍のもうひとりの軍師、龐統さんと王蘭さんが会合。
昇り龍さんに、三姉妹の末妹とも出会いましたね。


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