真・恋姫†無双 - 王の側にて香る花を慈しむ者   作:ぶるー

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第二十四話

「曹孟徳様、王蘭です。」

 

「あら、どうしたのかしら?入りなさい。」

 

 

 

賈駆を連れ、曹操のいる陣幕に入る。

 

 

 

「失礼します。………曹孟徳様、賈文和を捕らえて参りました。」

 

「………へぇ。思いもよらない拾い物ね………。王蘭、よくやったわ。」

 

「はっ。」

 

 

そう言うとかけていた椅子から立ち上がり、曹操が賈駆の前に立つ。

 

 

 

 

「あなたが賈駆、ね………単刀直入に言うわ。我が軍に降りなさい。」

 

 

 

 

あのいつもの覇気を出しながら、曹操らしい言葉が放たれる。

 

 

 

グッと息を呑みながらも、賈駆も返す。

 

「僕が降った所で、あんたなんかに僕がちゃんと使えるのかしら?」

 

 

曹操の横に控えていた荀彧が不機嫌そうな表情を見せるが、ここに割って入る無粋はしない。

グッとこらえて、2人の会話を聞いてる。

 

 

賈駆からの言葉を聞いた曹操は、どこか楽しそうな表情を見せていた。

 

「軍師というのは、人を試したり、上司に向かって啖呵を切るのが好きなのかしら?ねぇ桂花?」

 

荀彧が今にも罵声を浴びせたいのを何とか堪えているのをわかっていながら、あえて話を振る辺り、曹操はそれを楽しんでいるのが伺える。

 

「華琳さまぁ………。」

 

「ふふっ。桂花、冗談よ。」

 

そう言って荀彧に笑みを見せる曹操が、スッと表情を引き締め賈駆に向き直る。

 

 

 

 

「………賈文和、貴様は我を誰と心得る!!この大陸に覇を唱える、曹孟徳ぞ!!一介の軍師1人を使えずに、何が王か!!!」

 

 

 

陣内の空気がビリビリと震撼した。

 

 

 

「………私はこの大陸を必ず手に入れるわ。そのためならば、なんだって使ってみせる。例え元々敵にいた軍師であっても、将であっても。それが私のやり方よ?………賈駆、もう一度言うわ。私に降りなさい。」

 

 

 

「………捕らえられた僕が生き残るには選択肢なんてないんでしょう。………わかったわ。あんたに降ってあげる………。せいぜい僕のこの頭を使い切ってみせることね。」

 

「えぇ、もちろん。あなたを歓迎するわ。あなたの真名、私に預けてくれるかしら?」

 

 

「………僕の真名は詠。………仕方ないわね。この真名に懸けて、僕がいる間はあんたに無様を晒させないわ。せいぜい僕に見限られないように頑張ってよね。」

 

「ふふ、どこまでも強気ね。気に入ったわ。私の事を華琳と呼ぶことを許しましょう。」

 

「………あんたに降ったとはいえ、僕はあんたを様付けで呼ぶのは抵抗あるわね。」

 

「主人を守りきれずに敵に降るのだから、その辺りの心情は考慮してあげましょう。別に敬称は付けなくてもいいわよ。」

 

「華琳さまっ!そんな!!」

 

「桂花、いいのよ。………いずれ詠にも心から仰がれる王になってみせれば良いのだから。そうよね、詠?」

 

 

「………はぁ、なんだかとんでもない軍に降っちゃったわね。そうだ、1つだけ絶対に譲れない条件があるわ。この連合軍が解散する前に、劉備軍に連れて行って頂戴。今後の僕の人生に、大きく関わることだから。」

 

「………?まぁいいでしょう。王蘭、あなた既に面識もあるのだから、私からの遣いとして落ち着いた頃に連れて行ってあげなさい。これでいいわね?」

 

 

 

こうして賈駆が曹操軍に降る事になった。

話がまとまり、曹操たちは賈駆を休ませるため、兵士に空いている陣に案内させる。

 

 

賈駆が陣内から出ていったあと、王蘭が曹操に声をかける。

 

 

「曹孟徳様、よろしいでしょうか。」

 

「何かしら?あの賈駆を捕らえたのだもの。褒美ならば大いに期待していなさい。」

 

 

「はっ、ありがたき幸せ………。それとは別に、お願いしたき儀が。」

 

「何かしら?」

 

「この連合軍が始まる前、洛陽の情報は再三兵を忍ばせて見たものの、殆ど成果を上げることが出来ませんでした。それも偏に、洛陽の斥候に対する守りが堅かったためにございます………。その洛陽で、諜報に関する指揮をとっていたのは恐らく………。」

 

「詠である、と。………そうだとするならば、私が思っているよりもかなりの拾い物ね………。いいわ、王蘭。陳留に戻ったらあなたに賈駆を預けます。斥候兵のさらなる強化を期待するわ。」

 

「華琳さま!そんな男に預けてしまえばきっと賈駆が襲われてしまいます!!」

 

 

「………その辺はちゃんと合意の上でしなさいよ?まぁ全く心配していないけれど………。ねぇ?王蘭。」

 

「は、はいっ!かっ、賈文和殿の配置ご配慮、ありがとうございます。」

 

 

含みをもって問われた王蘭は、言葉を吃らせながら返事を返した。

 

こうして賈駆は斥候強化のために、しばらくの間王蘭の預かりとなることが決まった。

 

 

 

「………さて、詠の処遇も決まったことだし、私達は洛陽の復興作業にあたるわよ。幸い、復興工事の許可もおりたことだし。桂花、指揮を任せるわ。」

 

「御意」

 

 

 

 

 

そして翌日。

 

 

 

 

曹操軍は洛陽の復興の為、早速街の整備に当たっていた。

 

王蘭達斥候兵も街の復興のため手を動かし、それに伴って賈駆も王蘭に同行してそれを手伝っている。

また北郷隊の将たちもこれに合流し、道路の整備など復興作業に着手。

 

 

 

途中、袁家の軍団が抗議のため押し寄せることもあったが、淡々と作業を継続する曹操達。

 

だが、ある方向に目を向けた曹操が、何かに気づく。

 

 

「………あら?」

 

「どうしたんだ?」

 

 

曹操の様子に北郷が首をかしげて問いかける。

先程の袁家とのやり取りがあったため、魏軍の将たちは皆曹操の周りに集まっていた。

 

 

「あれ………?」

「あっ!ちびっこ!」

 

 

 

 

その視線の先には、劉備たちの姿があった。

 

 

 

 

「はいっ!まだありますから、慌てないでいいですよー!」

 

「愛紗ー!ご飯、足りないのだ!もっと持ってきて欲しいのだ!」

 

「鈴々!お前、よもや自分で食べているのではないだろうなっ!」

 

「ほら二人共、ケンカしてる場合じゃないよ!ちゃんと手伝ってよぅ!」

 

 

 

洛陽の民たちに、炊き出しを行っているようだ。

 

 

そしてそこには。

 

 

「桃香さま………。これ、ここで………いいですか?」

 

民たちのために一生懸命に働く、1人の少女の姿も。

 

 

 

 

 

 

「………あぁ、劉備たちか。」

 

「彼女たちも早いうちから城に入っていたとは聞いていたけれど………あの関雲長が炊き出しとはね。」

 

彼女たちの様子を、しばらくの間じっと見つめる曹操達。

 

 

 

北郷や曹操と同じ様に、だが彼女らよりも温もりを持った視線でその様子を遠くから見つめる少女もまたここにいる。

 

 

 

「あんな無邪気に笑ってる月、久しぶりに見た………。あの娘ちゃんと自分の居場所、自分で見つけたんだね………。」

 

「………声、かけに行きますか?」

 

 

そっと王蘭が問いかける。

 

 

「………ううん。僕が出ていったら、また月が大変な目にあっちゃうかも知れないし、あそこが月の見つけた平穏の場所なら、僕はそれをそっと見守ってあげたいかな。」

 

「………そうですか。曹孟徳様とのお約束、賈文和殿が叶えたいと願う時で構わないと思いますよ。私からも上申しておきます。」

 

「うん………。そうするわ。さっ、続きやるわよ。」

 

 

 

 

 

この時代に生まれ、この時代を生きるために強くあらねば、と必至に藻掻いた少女達。

 

時代が違えば、2人はただ仲良く静かに暮らせていたのかもしれない。

 

 

 

戦乱の世が生む悲劇の中で、穏やかな風が2人を優しく包むように、そっと吹いた。

 

 

 

 

 

 

 




賈駆さんが曹操軍に加入することになりました。

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@blue_greeeeeen

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