真・恋姫†無双 - 王の側にて香る花を慈しむ者   作:ぶるー

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第二十五話

 

 

洛陽の復興作業を進める曹操たち。

 

炊き出しを続ける劉備軍に予備の食料を届けるなど、いたる所で民への支援を行っていた。

 

 

「ここにいらっしゃいましたか。華琳さま。」

 

 

そこに夏侯淵がやってきた。

 

 

「あ!秋蘭さま!」

 

「言われたとおり、ちゃんと護衛は付けているわよ。文句はないでしょう?」

 

「それは構わないのですが………。」

 

「どうだった?事後処理とやらは終わったの?」

 

「はい。それから華琳さまに会わせたい輩が………。」

 

 

 

「………どもー」

 

 

そうして紹介されたのは、張遼だった。

 

 

「そう、春蘭は見事に役目を果たしたのね。それで、春蘭はどうしたの?」

 

 

 

 

「それが………。」

 

 

 

 

「まさか………冗談、よね?」

 

 

「ご心配なく、至極元気です。………が、華琳さまにはもはや顔を見せるわけにはいかないと。」

 

「どうしたのっ!?」

 

「少々、怪我をしまして………。命に別状は無いのですが………。」

 

 

夏侯淵の言葉を聞くと、曹操が慌てて走り出す。

 

 

「華琳さま!姉者は本陣の救護所におります!」

 

 

 

 

曹操が走り去った後、先程まで明るい表情を浮かべていた将たちだったが、それぞれに心配な表情を浮かべている。

 

 

「うぅ………。」

 

 

いつもは明るい表情を浮かべる許褚も、悲痛な顔で夏侯惇を心配している。

 

 

「よく我慢したな、季衣。」

 

 

こんな小さな少女が、主に要らぬ心配をさせまい、と気丈に振る舞っていたのだ。

それを北郷が優しく労う。

 

 

「季衣、後でみんなでお見舞いに行こうね。」

 

 

典韋が許褚に声をかける。

 

やはり皆夏侯惇の事が心配ということもあり、復興作業が一区切りが付いた所で部下たちに作業を任せ、皆で救護所へ向かう事になった。

 

 

一通り話の区切りが付いた所で、夏侯淵が張遼に声を掛ける。

 

 

 

「すまんな、霞。華琳さまにはまた後で………どうした?」

 

張遼に声を掛けるが、何かに気を取られている様子だった。

 

 

 

 

「いや、なんでもない。ちょっと目にゴミが入ったみたいや………。」

 

 

指で目に貯まる雫を拭う。

 

 

そこに、すっと賈駆が並び立つ。

 

 

「賈駆っち………あんた、曹操軍に降っとったんやな………てっきり月と一緒におるんやと思っとったわ。」

 

「出来るならずっと一緒にいたかったわよ………。でも僕の運命がそれを許さなかったみたいね。………あぁやって、月も自分の居場所を見つけたみたいだし、僕も立ち止まってなんかいられないわ。」

 

「あんた………道が別れたっちゅうことは、ある程度覚悟はできとるんやろうな。」

 

「あったりまえじゃない。本当に月を思うからこそ、そんな事で躊躇ったりしたらダメなの。月がそんなこと………望むわけないことくらい、僕だってわかってる。」

 

「さよか。ならええ。いらん事言うたわ、堪忍な。」

 

「ううん、そうやって言ってくれるの、あんただけだから。………ありがと。」

 

 

 

 

「さっ、ほなウチらも惇ちゃんとこ、いこか。」

 

 

 

 

 

 

 

救護所前。

 

 

 

「あれ?どした、沙和。救護所に居るんじゃなかったのか?」

 

「なんだか、お邪魔みたいだから出てきたの。」

 

 

救護所で夏侯惇の様子を見ているはずの于禁が、陣の外で立っていた。

北郷が声を掛けるが、その表情から察するに、中で夏侯惇と曹操が話をしているのだろうと予測がつく。

 

「そっか。じゃあ、俺達ももうちょっと後にした方が良さそうだな。」

 

 

「………えぇ主やな。あんたらの主は。」

 

「ああ。で、逃げないのか?霞。」

 

「ンな必要あるかい。あの主なら、色々楽しませてもらえそうや。色々肩の荷も下りたし、当分世話ンなるで。よろしゅうな!」

 

 

 

皆で救護所の外で話をしていると、曹操が救護所から顔を出し、夏侯惇の元へ見舞いに行ける様になった。

 

「秋蘭さま!行きましょう!!」

 

典韋が夏侯淵に声をかける。

 

 

「いや、私は怪我の手当をして姉者の様子ならわかっているから、皆で行ってくるといい。」

 

「そうですか………?では、行ってきますね!!」

 

 

特に気にする様子もなく、典韋はそう言って駆けていった。

 

 

 

 

それを優しい顔で見送る夏侯淵に、そっと王蘭が声をかける。

 

 

「………秋蘭さま、あまりご無理なさっても良いことありませんよ?皆の前で息を抜くのが難しければ、どこかご自身の許す場所で気をお休めください。」

 

 

それを聞いた夏侯淵は、目を見開いて王蘭の顔を見つめる。

 

 

「全くお前というやつは………。気づかなくても良いことまで気づくのだな。………流石に命に別状は無いとは言え、妹としては不安で不安でたまらないのだよ。姉者を前にすると、やはりまだ顔に出てしまう。………私が心配くらいしたって、バチはあたらんだろう?」

 

「申し訳ありません………。お優しい妹君をお持ちで、夏侯元譲様は幸せですね。」

 

「ふふ………ありがとう。だが蒼慈、お前には気づかれてしまったのだ。息抜きに、今夜一杯付き合え。姉者の元には、今夜は華琳さまが付いてくださるだろうしな。」

 

「はい、もちろん喜んで。………では私もお見舞いに行ってまいりますね。」

 

「うむ。では後でな。」

 

 

 

 

こうして、大陸の諸侯たちを巻き込んだ反董卓連合の戦いは終わりを告げた。

 

新しい仲間を得たもの、後のきっかけを得たもの、自らの使命を全うしたと満足を得たもの。

………戦に敗れ、今後の行く末を思うもの。

それぞれの軍に、大きな影響を与えて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、陳留に戻った曹操軍は戦の片付けを終えた後、主だった将が玉座の間に集められていた。

そこには新たに加入した、賈駆と張遼の姿も見える。

 

 

 

 

「………皆揃ったわね。春蘭。」

 

「はっ!これより先の戦いの反董卓連合における評定を行う!!」

 

「まずは新たに加わった仲間の紹介ね。皆も既に知っているとは思うけれど、張遼、賈駆。」

 

 

「はいはーい。ウチが張文遠や!皆よろしゅうなぁ。霞って呼んでや。」

 

「ちょ、いきなり真名預けるの!?………まぁこれから一緒に命かけて戦うんだから、それもいいか。僕は賈文和。真名は詠よ。」

 

 

「霞は武官の将として、詠は軍師として我が軍に加わってもらうわ。詠はしばらくの間王蘭に預け、斥候部隊の強化運営に着手してもらうわ。いいわね?」

 

「別にいいけどなんで………ってその顔、僕が洛陽の諜報対策やってたって知ってる感じね、全く………。了解したわ。」

 

 

 

「我が軍の斥候も捨てたものではないでしょう?………さて、次に褒賞ね。春蘭。」

 

「はっ!名を呼ばれた者は華琳さまの御前まで来るように!」

 

 

先の戦いで功を挙げた隊や将たちが、曹操から次々に褒賞を賜っていく。

 

 

 

「………華琳さま、次が最後です。夏侯淵隊副隊長、王徳仁!」

 

「はっ!」

 

 

「今回の戦いでも大活躍だったわね?………王徳仁、先の戦いにおける斥候活動による敵情報の収集、そして何より敵軍軍師の賈駆を捕らえた功を以て、これより我が曹操軍の将とする!!新たに王蘭隊を立ち上げ、これまで夏侯淵隊傘下だった斥候部隊を、独立した隊として運営せよ!」

 

「はっ!ありがたく拝命致します!!」

 

 

「………よくぞ一兵卒からここまで辿り着いたわ。霞、詠と同じく、私の事を華琳と呼ぶことを許しましょう。あなたの真名も聞かせてくれるかしら?」

 

「は、はっ!ありがたくお預かり致します!我が真名は、蒼慈。何卒お預かりくださいませ!」

 

「蒼慈………ね。確かに預からせてもらったわ。これから桂花や詠とよく連携を取り、益々情報を活用できる体制を整えなさい。」

 

「はっ!」

 

 

「今日の議題は以上かしら。他に何か伝える事があるものは?………居ないようね。春蘭。」

 

「はっ!では、解散!!!」

 

 

 

 

軍議が終わり、皆が席を立つ際に祝いの言葉をもらい、その場に居た将全員と真名を交換していく王蘭。

 

荀彧についてはやはり渋った様だが、北郷ほどまで評価が悪くないこともあってか、すんなり真名を交わしていた。

 

 

 

 

 

最後に声をかけたのは、やはり夏侯淵だった。

 

 

「………蒼慈。おめでとう。」

 

「秋蘭さま………。ありがとうございます。」

 

「事前に華琳さまから通達されてはいたが、こうして皆の前でお前が将となることを聞くと感慨深いものがあるよ。」

 

「これも全て秋蘭様のおかげです………。ありがとうございます。」

 

「お前自身が頑張ってきたことだ。胸を張るといい。これからも華琳さまのために励めよ。」

 

「はっ!ありがとうございます。」

 

 

「ふむ………我が部下の記念すべき出世なのだ。祝いの席でも設けてやろう。楽しみにしていると良い。ではな。」

 

 

 

王蘭の返事を待たずに玉座の間を出ていく夏侯淵。

 

 

 

 

 

激闘の後には、僅かの間かも知れないが、穏やかな日常が訪れるもの。

王蘭にもその日常を楽しんでもらいたいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ようやく反董卓連合が終結!
最後は戦後の状況説明だったので間延びして感じるかも知れませんが、
魏ルートである以上、春蘭さんの状況については触れないわけには行きませんでした。


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