真・恋姫†無双 - 王の側にて香る花を慈しむ者   作:ぶるー

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第二十六話

 

 

反董卓連合の戦いから少し落ち着き、陳留には一時の日常が戻っていた。

 

 

王蘭は先の戦いによって1人の将となり、新たに自身の隊を設立するため、毎日慌ただしく働いている。

 

 

ここ数日の間に、夏侯淵からの祝いの席については未だ音沙汰はなく、

期待を持っていた王蘭は悶々としつつも、いくつも積み重なっている仕事をこなす毎日だ。

 

 

やはり新規で隊を設けるというのは容易なことではなく、

軍費の予算、兵の募集や訓練、防具の用意等々、しなければならない事を上げればきりがない。

 

夏侯淵隊の中で既に斥候部隊としての運用はされていたとは言え、

全ての兵をそのまま王蘭隊に組み込むわけにも行かず、新たに運用を整えるところも多くあった。

 

賈駆という優秀な人材もいるが、彼女は曹操軍に来てからまだ日も浅い。

王蘭隊にかかりきりになるわけにも行かず、まだしばらくはこんな状況が続きそうな状況である。

 

 

 

そんな王蘭だが、気がつけば休みなく働いてなんと20日は経とうかというところまで来ていた。

 

流石にこれを見かねた部下たちが働きすぎです!と、その日の昼から明日の間、無理やりにでも休みを取らせた。

王蘭の性格上、急ぎの対応が必要な案件はその日の午前には片付けておく質で、

それを知っていた部下たちは問答無用で執務室から追い出すのだった。

 

 

 

「何もあんな目くじら立てなくても………。しかし急に暇になってしまいました。どうしましょう………。」

 

 

 

そう独りごちながら城内を歩いていると、廊下の向こうから夏侯淵が歩いてきた。

ただ、いつもの夏侯淵らしくなく、どこかゆったりとというか、ぼーっと歩いている様だった。

 

 

 

「あれ?秋蘭さま、どうなさったのですか?」

 

「ん?あぁ、蒼慈。いやな、華琳さまに働きすぎだとご心配頂いてな………。急遽、非番となってしまったのだよ。」

 

 

 

どこかで聞いた話である。

 

 

 

「そういう蒼慈こそどうしたのだ?お前がただぶらついているなど、珍しい。」

 

「えっと………お恥ずかしながら、私も部下に働きすぎだと怒られてしまいまして。今日の昼から明日の間、仕事をしてはならぬと執務室を追い出されてしまいました。」

 

 

それを聞いた夏侯淵は驚いたような呆れたような表情を浮かべる。

 

 

「何というか………。私が言えたものではないが、お前らしいな………。」

 

 

この元上司にして、この元部下である。

 

 

「返す言葉もございません………。それでまぁ急に暇になったので、どうしようかと考えていたのですが………。もしよろしければ秋蘭さま、お茶などご一緒に如何でしょうか?」

 

「ふむ。お前の淹れる茶は美味いからな。是非頂こう。」

 

「えーっと………申し訳ありません。私が淹れるのではなく、今日はよく行く茶屋に行こうかと。美味しい茶葉を売ってるんですが、横には茶を飲める場所も併設されているので、もしよければ………ですが。」

 

「ほう、これが北郷のいう”でえと”というやつの誘いか。………私も暇になってどうしようかと考えていたのだ。喜んでご一緒させてもらおう。」

 

 

 

同じ様な働き方をしていたために奇跡的に休暇が合った2人。

急な誘いながらも、茶屋へ行くことなった。

 

 

 

 

ゆっくりと2人が街を歩いていると、目的の茶屋が見えてきたようだ。

 

「お待たせしました。こちらが私がよく通う茶屋です。華琳さまが訪れるような、高級で綺麗な店ではないので恐縮ですが、値段の割に茶葉の質が良い店です。」

 

そう行って中に入ると、店主が王蘭の顔を見て声を掛ける。

 

「徳仁様、いらっしゃい。………そちらは?」

 

「店主、いつもお世話になっています。こちらは夏侯妙才将軍。今日は横の卓で茶と茶菓子を2つ頂けますか。」

 

「………承知しました。徳仁様の”良い”人なら、うちのおすすめ淹れさせていただきますよ。お待ちくださいませ。」

 

そう行って奥に消えていく店主。

 

 

「………秋蘭さま、お気を悪くされたなら申し訳ありません。あとできつく言っておきます………。」

 

「ふふ、いや構わんよ。かけて待とうか。」

 

 

そう言って二人がけの小さな卓に座る。

 

 

「そう言えば秋蘭さま、お誘いした時に言っていた”でえと”ってどういう意味なんでしょう?」

 

「あぁ、北郷の国の言葉らしくてな。直接北郷に聞くほうが良かろう。私と”でえと”してきたと言えば、喜んで教えてくれるさ。」

 

「??………そうですか、秋蘭さまがそう仰るなら直接聞いてみる事にします。」

 

 

そうしているうちに茶とお菓子が運ばれてくる。

 

「お口に合うと良いのですが………。」

 

「では頂こう。」

 

 

そっと一口を含み、ゆっくりと味わう夏侯淵。

鼻から息を吐き、香りも楽しんでいるようだ。

 

「ふぅ………。うむ。確かにこれは美味い茶だ。こんな所にこの様な茶を出せる店があるとは………正直驚きだ。」

 

「お口に合ったようで良かったです。ここの店主に私は茶の手ほどきを頂きましたので、安心しました………。」

 

「是非華琳さまにも召し上がっていただきたい。私も買って帰る事にしよう。」

 

 

しばらくは茶を楽しむ2人だが、ふと夏侯淵があることを思い出した。

 

 

「そう言えば蒼慈、黄巾党の討伐が完了した後だったか、私と食事に行っただろう。………あの後、大丈夫だったか?」

 

「はい、なんとか………。しばらく動けないんじゃないかと思いましたが………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

前回の逢引きが終わった後、城内でのこと。

 

 

 

兵士たち、特に夏侯淵隊で話題になったのは、どうやら夏侯淵と王蘭がいよいよ逢引きする間柄まで進んだという事についてだった。

 

もちろんこの噂の出処は三羽烏。

楽進を除いた2人が、こんな美味しい話を誰にも話さずに居られるわけがない。

 

夏侯淵隊のみならず、城内のいたるところでその話がもちきりになっていた。

 

 

兵たちが耳にし、口にすることは将たちにも伝わる。

 

………もちろん、あの愛すべき姉にも。

 

 

 

「王蘭!!貴様ぁぁぁぁぁ!見つけたぞぉおおおおおおお!!!」

 

「………!? か、夏侯元譲将軍!?」

 

 

愛刀の七星餓狼を構えながら突進してくる姿が目に入る。

 

 

「貴様ぁぁぁぁぁぁ!秋蘭と付き合っているだの、恋仲だのというのは、どういうことだ!!!それがもし本当ならば、叩き切ってくれるわぁぁぁ!!!!」

 

 

そう言いながら、既に剣を振り下ろしている夏侯惇。

 

 

 

 

ガキィィィン!!と、周囲に剣がぶつかりあう音が響く。

 

 

 

 

たまたま隊の訓練が終わった直後で、まだ模擬刀を手に持っていた王蘭が、なんとかその一撃を防いだ。

 

 

魏武の大剣夏侯惇。本来の王蘭であれば、一撃たりとも受けきることなどできずに、叩き切られていてもおかしくはないであろう。

それ故に、1度だけであっても防げたという事実は、幸運というほかないだろう。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください夏侯元譲将軍!!!秋蘭さまとはまだそういった関係ではございません!!!!」

 

 

「まだ、とはどういう意味だああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

 

 

再び遅い来る夏侯惇の攻撃になんとか剣を合わせるも、2度も奇跡は起きないらしい。

人が空を舞う光景がそこにはあったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………なんと、姉者の剣を1度とは言え受けきったのか………それは誇って良いぞ。」

 

「あはは………二撃目で完全に伸されてしまいましたが………。それにまぁ将来通らなければならない道と言いますか。」

 

 

「ん?すまぬ、後のほう聞き取れなかった。」

 

「あ、いえ!特に何も。」

 

 

「そうか?まぁ良いが。………そう言えば蒼慈、お前明日も休みだと言っていたよな。」

 

「はい。本当にそんなに休んでいいのかわかりませんが………。」

 

「お前の部下が問題ないと言ったのだろう?それに今では詠もお前の預かりだ。多少は無理してもらっても問題なかろう。」

 

「そうですねぇ………。まぁ今回は有り難く皆の好意に甘えて休みを頂くことにします。」

 

「うむ、それで良いのではないかな。………で、だ。特に予定が無いなら、遠乗りにでも行かぬか?」

 

 

「遠乗り、ですか………?いいですね!最近はゆっくり景色を楽しむゆとりもなかったですし。」

 

「隊の演習でな、少し離れた所に小川の流れる良い場所を見つけたのだよ。機会があればそこでゆっくりと体を休めるのも良いと思ってな。」

 

「それはいいですね!今からもう楽しみです………。急な休みでどうしようかと思っていたのに、こんなに楽しみな休日になるとは正直思ってもいませんでした。」

 

「ふふっ、まだ出かけてもないのに調子の良いやつだな。では今日はもう城に戻ろうか。店主、この茶と同じ茶葉を用意してくれるか。」

 

「あ、私にも。あといつも買っている種類の茶葉もお願いしますね。」

 

 

そう言って店主からそれぞれが茶葉を受け取り、城に戻った2人。

 

 

「今日は急なお誘いだったのに、ご一緒してくださってありがとうございました。明日の遠乗り、とても楽しみにしています。」

 

「うむ。私の方こそ茶を馳走になった。私も明日は楽しみにしているよ。ではな。」

 

 

 

そう言って別れた2人は、それぞれが明日の事に頭を巡らせながら夜を過ごすのだった。

 

 

 

 

 

 

 




久しぶり?の拠点フェーズ。
ちょっと数話に渡って長引くかもですが、お付き合いくださいませ。


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