ようやく恋姫登場…三話目て…笑
「伝令!!村の東方より新たな砂塵を確認!!!旗は蒼に曹、蒼い旗に曹の文字!!!
官の軍が到着した様子!!!お味方と思われます!!!!」
その報告を聞いた王蘭は、ほんの僅か。
ほんの、僅かに数秒ほどの間ではあるが、動く事も、考える事もできなかった。
ようやっと、口から言葉を絞り出す。
「そ…それは、誠ですか………?」
「はっ!旗印をしっかりと確認いたしました!
間違いなく蒼き旗!そこに曹の文字です!!その数およそ500!!」
今回の対盗賊戦においても、自分たちの力だけで村を守り抜かなければならないと思っていた。
さらには、新しい刺史も腐った官である可能性も考えていた。
それが…それがまさかこんな小さな村のために。
それも、500人という数を引き連れて駆けつけてくれるとは思いもしなかった。
賊の数が200人と、大陸で多発している被害からすると、恐らく小規模であろう今回の戦い。
村人にとっては過去類を見ない多さではあるが、官軍からすれば所詮、と切って捨ててしまってもおかしくはない数字である。
王蘭は止まっていた思考を何とか巡らせ、呼応の仕方を考える。
「そうですか…。良い報せを聞きました。たとえあとから大きな賂を要求されたとしても、命あってこそ。
無事に生き残ってから考えましょう。」
そうして落ち着き、頭に血を巡らせ始めた王蘭が、各班、各隊員に矢継ぎ早に指示を出していく。
「まずは官軍の方々から最も遠い門の警備隊に官軍が来たことを知らせ、
騒ぎ立ててもらってください。
そうすれば敵も多少は慌てだし、動きも散漫になるはず。
しばらくすればそれも本当だとわかり、正門の盗賊たちに合流するでしょう。
敵の攻撃対象が減ればそれだけこちらも防備もしやすくなるはずです。」
「正門ともう一方の門には騒がず、門に意識が向き続けるよう決死の抵抗を。
ただし、余裕のない状況だと思わせる様に、少し慌てた様子を見せてください。
それで敵は勘違いし、より視野狭窄となってくれることでしょう」
「賊らがこの村の門に躍起になってくれている間に、官軍も到着するはず。
防衛が無事成されれば本来の目的は達成です。
そして、その後。その時がやってきた暁には………。
………。
我々も………。我々も打って出ます。
これまで我慢に我慢を重ね、じっと耐えてきた思いの丈を各々発散してください。」
ここで一呼吸を入れ、王蘭がつぶやく。
「いい加減、私もほとほと我慢の限界の様です。
こちらも決死の覚悟を以て、賊らを蹴散らしてしまいましょう。」
「「「は…はっ!」」」
伝令を聞いた隊員たちは、王蘭の言葉に戸惑いを覚えつつも返事をする。
これまで堅守に堅守を重ね、ただ村を守ることだけを考えてきた王蘭が、
”打って出る”と言ったのだ。
これまで一度たりともそんな指示を出したことがない、あの王蘭が。
勿論、村の若い青年たちも何度か王蘭に提言したこともある。
攻めなければやられ続けるだけだ、と。
そのたびに血気盛んな青年たちを、自分も同じ青年の身ながら、
滔々と諌めていた。
そのことからも、今回のこの時、この機会がどれだけの要点であるかを物語らせた。
――場所はほんの少し前の、駆けつけている軍に移る。
「秋蘭!村まではあとどのくらいなの!?」
「はっ!このままの速度を保てばおよそ1刻ほどで見えてくるはずです。
しかし、報を聞いてからしばらくの時間が経っているため、
あまり猶予があるとは思えません。」
「そう。あまり急ぎすぎても駄目だけど、私の民を無碍にすることは許されない。
少ない数であっても救える民はこの手で救ってみせるわ。
本陣はこのままの速度を維持。秋蘭は兵500を連れて先遣隊として駆けつけ、略奪行為を働いて村を荒らす盗賊たちを片付けなさい。いいわね?
それから、陳留にまだ赴任したばかりで、まだあなた達の名まで知れ渡っているかわからないわ。
もし仮に戦時中であるならば村人が気づくこともあるでしょう。私の旗を持っていきなさい。」
「承知しました。それでは行ってまいります。
…夏侯淵隊!行軍速度をあげよ!!遅れるな!!」
夏侯淵は正直なところ、すでに村は壊滅させられていてもおかしくはないだろう、と考えていた。
村の伝令役から報せを聞いてから、幾分かの時間が過ぎている。
援助を求めてきたのが軍で、また籠城が可能であれば間に合うことができたと考えるが、今回はただの村である。
多少、一般的な村よりも防衛に優れたことはあっても、村としての範疇は超えることはない。
それでも、村の略奪行為の最中に駆けつけることはできる。そうすれば多少なりとも民を救える。
その程度に考えていた。
そして先程の曹操の口ぶりからも、夏侯淵と同じ様に考えている事が読み取れる。
凡そ半刻ほどの時間を駆け続け、ようやく目的の村の姿が見えてくる。
「ご報告!この先に報告の村を発見!!
砂塵が見えており、まだ防衛戦が維持されている様子!!」
「なんと…。あれからまだ村の防衛が続いているのか。
至急駆けつけるぞ!!全速前進せよ!!!!」
軍が村に辿り着く頃、盗賊たちの様子も見えてくる。
「賊らはこちらに気づいている様子はありません!
このまま後背から当る事が可能かと思われます!!」
「うむ。ではこのままの速度を活かし一当てするぞ!
その後村の中に入り戦線維持へと移る。
全軍、突撃せよっ!!」
盗賊たちは軍に気づくのが遅れ、バタバタと崩れていった。
そうして無事に村に入ることが出来た夏侯淵軍らは、
村の防衛にあたっていた若者たちと合流する。
門を守っている集団に夏侯淵が問う。
「陳留刺史、曹孟徳様の臣下、夏候妙才だ!ここの村の責任者はいるか?」
「は…はいっ。村長は非戦闘員の村人たちと遠くの安全な場所へと避難しております!
現在この村には警備隊員のみが在中し戦闘中!責任者は正門にて指揮をとっております!!」
「ほう…。ではその責任者の元へ案内せよ。
こちらの門はこれより我軍が防衛に当たる故、安心されよ。」
夏侯淵隊に防衛の指示を出し、班長と王蘭の元へ向かう夏侯淵。
「隊長!夏侯淵将軍がいらっしゃいました!!」
「お主がここの責任者か?
到着が遅くなった。軍を預かる夏候妙才だ。無事村を守り続けたその功、実に見事だ。
これより我が軍も手を貸そう」
「はっ。ありがたき………!!!」
王蘭は班長の声に振り返り、夏侯淵を目に入れた途端に固まってしまう。
「…ん?どうした?私の顔に何か付いているか?」
警備隊員たちも、固まる王蘭などこれまで見たことがない。
何かあったのだろうか?と不安な顔をするものも見受けられる。
「いっ、いえ!申し訳ありませんっ!!
軍の手配、誠にありがとうございます!
…。これで村を守りきれる算段が付きました。」
慌てて応える王蘭だが、心なしか顔が赤くなっているようにも見える。
「ほう…。お主が防衛に関する指示を全て出していたらしいな。
是非ともその知略、我が軍にも賜りたいものだな。」
「そんな、恐れ多い…。この村の防衛指揮についても、全て夏侯妙才将軍にお譲り致します。
どうか軍の皆様と一緒に、この村をお救いください。」
「ふむ…。いろいろと問い詰めたいところではあるが戦時中である。
確かに指揮権を預かった。村の他の者も、良いな?
これより対盗賊防衛戦の指揮権はこの夏侯妙才が預かった!
防衛の前線には夏侯淵隊を配置せよ!村の警備隊員たちは我が隊の補佐を頼む!
くれぐれも気を抜かぬよう、心がけよ!
直に本陣の華琳さまたちも到着されるであろう!
無様な姿を晒すなよ!!」
こうして夏侯淵の指揮のもと、盗賊との防衛戦が展開されていく。
これまで戦いになれた盗賊相手に苦戦していた防衛戦も、
戦が本職の軍にかかれば何のことはない。
訓練された動きに加え、賊らを打ちのめすその手にも戸惑いは見られない。
あっという間に門に押し寄せた賊らを退けていく。
盗賊たちは思いもよらない反撃にあい、自然と1箇所に集まっていった。
まさか、集まってしまった事が悲劇を生むとは思いもよらないであろう。
盗賊たちに取って、悪魔の叫び声が飛び込んでくる。
「春蘭!全軍に号令を!!
あそこに見えている盗賊めらに突貫なさい!!」
「はっ!承知しました!!
全軍、とぉぉつげきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
この村の防衛戦が今終わりを迎えようとしていた。