真・恋姫†無双 - 王の側にて香る花を慈しむ者   作:ぶるー

38 / 86

一昨日は更新が出来ず、大変申し訳ありませんでした。本日2話投稿します。
まずは1話目、楽しんでいただけたら幸いです。
※2話目定期通り20時更新予定。


第三十八話

 

 

 

官渡の地へと向かう曹操軍。

元々二面作戦を想定していたため、軍の手配が早急に完了し、出撃までにかかる時間も驚くほど短くなった。

 

軍全体から見れば比較的余裕が出たとして好意的に受け入れられていたが、王蘭たち斥候部隊としては今まさに佳境を迎えていた。

 

 

「申し上げます! 官渡に集結している袁術軍、袁紹軍は現在集結している兵の他に、展開している伏兵の存在は確認できておりません!」

 

「申し上げます! 袁術軍客将の孫策についても今ほど官渡の袁術軍と合流! この戦に追いても袁術軍の将として、袁術本陣近くにて戦うことが予想されます!」

 

「申し上げます! 袁紹軍陣内にて、巨大な可動型の櫓を確認! 城で用いられる物見櫓に車輪が付いたもので、複数の櫓が確認されております!」

 

 

「潜んでいる可能性はまだあるので、周囲の森林など隠れやすい場所を引き続き探ってください。それと同時に敵軍総数の再確認を。それから孫策軍への斥候は減らしてはなりません。今回の戦いにおける肝となるはずです。彼女の軍の動きは常に追ってください。………その可動式櫓、どれくらいの数が今回の戦で用いられているのか、至急確認を。」

 

 

戦における情報戦とは開戦前にこそ多忙を極める。

なんの情報が重要で、どういうことが考えられるかを常に意識しながら兵たちの指揮をとる王蘭。

 

 

「伝令! 桂花さんにまずは情報の共有を。敵兵の数は初回報告の70万。周囲に潜む遊軍の影は無し。また敵は可動型の物見櫓を用いてきており、その数は現在確認中。対応が状況を左右するとお伝え下さい。」

 

 

伝令兵が王蘭のもとから離れ、静寂の時が訪れる。

夜明けから引っ切り無しにやってくる斥候兵の情報によって、敵軍の状況が少しずつ明らかになってくる。

 

まず、敵兵総数は70万。最新の情報を仕入れるために再度敵数を調査させているが、こちら曹操軍の数は15万。その数自軍の五倍弱にも昇る。

また、袁術軍の食客である孫策軍も敵集合地にその姿を見せていること。

 

そして何より、袁紹軍には可動式の巨大な櫓が今回の戦で導入されていることが確認されていた。

 

 

「次の情報を待って、一度軍師さまたちに対応の方針を聞いたほうが良さそうですね………。」

 

 

そう呟いた王蘭は、再びやってくる斥候兵からの情報を取りまとめた。

 

 

 

 

 

──────────。

 

 

 

 

 

「只今より、来たる官渡での対戦についての軍議を開催する!」

 

 

夏侯惇の声が響く。

ここは官渡より少し離れた位置にある開けた場所。

 

いよいよ決戦の地が近づいてきたこともあり、戦方針確認のために軍議が開かれる事になった。

 

 

「春蘭、ありがとう。まずは蒼慈、敵軍の情報を報告なさい。」

 

「はっ。まず敵軍の総数およそ70万。こちらの五倍弱に昇る兵数が集められております。指揮系統はあまり整っていないようですが、その圧倒的兵数は驚異的です。また、孫策軍については袁術軍の兵たちと同じ動きをとっており、今回の戦ではまだ特筆すべき行動は見られません。それから、袁紹軍内には巨大化した物見櫓のようなものが確認されております。車輪がついており、恐らく可動式であることが予想されます。」

 

「ご苦労。………動く櫓は厄介ね。桂花、私たちの基本指針は?」

 

「はっ。兵数で劣る我々ですが、その質においては雲泥の差があることでしょう。ですので、我々としては敵軍の攻撃をいなしつつ、敵軍輜重隊を見つけ次第、各個撃破。相手が疲弊してくるのを待つのが基本戦略です。70万もの兵を集める資金力は流石と言えますが、その指揮系統はグダグダで、かつ練兵もそこまで行えていないことが予想されます。その点、我が軍においては、この決戦に向けて調練を繰り返し実施したまさに精兵。その差は明らかです。この利を活かさない手はありません。また、可動式櫓については、こちらにも秘密兵器がありますので、それで対応は問題ないかと思われます。」

 

「そうですねー。風と稟ちゃんもその作戦には同意ですよぅ。秘密兵器については良くわかりませんが、桂花ちゃんが絶対の自信を持っているようですので、そこは信じておきますねー。ですので、蒼慈のお兄さんに敵軍の輜重隊の動向を早く掴んで頂くのがこちらの戦いにおける肝となりそうですー。」

 

「ふむ………。承知しました。」

 

「はい。ですので蒼慈さんには輜重隊を見つけ次第、そこから最寄りの将たちに素早く伝達する体制の構築をお願いしたいと思っています。」

 

 

郭嘉からの話を受けた王蘭は、少し思案してから返答する。

 

 

「………わかりました。今回の戦において、少し試したいこともあります。その実地試験と捉えて、試してみますよ。」

 

「そう………。では蒼慈は輜重隊に関する情報取得を最重要課題としてこの戦に当たりなさい。その他の戦術だけど………。」

 

 

こうして各隊での戦術が詰められていき、いよいよ大筋の作戦が整った。

 

 

「………ではこの作戦で行きましょう。各々、奮励努力するように!」

 

「解散!」

 

 

軍議が解散され、それぞれの隊へ戻る将たち。

そんな中、王蘭は李典を呼び止める。

 

 

「あ、真桜さん。少しお時間いいですか?」

 

「ん? あぁ、蒼慈さん。別にかまへんよー。どうしたん?」

 

「真桜さんに以前作っていただいた、例の道具。今回の戦で導入試験を行ってみますので、その最終調整をと思いまして。」

 

「おっ! いよいよかぁ………。まぁ隊長と一緒に作ったおもちゃみたいなもんやけど、それが戦に役立つなら良かったわ。何でも言うてや!」

 

「はい。ありがとうございます。それでですね………」

 

 

こそこそと何やら確認、調整をしている様子。

今回の戦いで、何かしら企んでいるらしいが………。

 

 

 

軍議も終わり、再び官渡へと歩みを進める曹操軍。

いよいよ決戦の地が近づいてくる。

 

 

「真桜、そろそろ官渡よ。例のアレの準備を始めてちょうだい。」

 

「ほいよ。じゃ、ちゃっちゃと組み立ててまうわ。」

 

 

荀彧から指示を受けた李典が、秘密兵器の組み立てを始める。

徐々にその全容が明らかになっていくが、まだピンと来るものは居ないようだ。

 

そうして組み上がったソレは、櫓の様に巨大なものだった。

北郷であっても、これが何をするものなのか分かっていないようだ。

 

 

再び歩を進め、いよいよ官渡へたどり着いた曹操軍。

元々曹操軍の領地ということもあり、対袁紹軍用の砦を構築してあるのも大きな利点である。

 

 

まずは野戦で戦を展開する作戦のため、両軍が陣形を広げる。

そして、その時を待つ。

 

 

「華琳さま、袁紹が出てきました。あの櫓も一緒です。」

 

「秋蘭、こちらからも見えているわ。では行ってくるから、準備をしておきなさい。いつでも攻められるように、ね?」

 

「はっ。」

 

 

 

そして両軍の中央ほどで、相まみえる袁紹と曹操。

 

 

 

「おーっほっほっほ! おーっほっほっほ!」

 

「………相変わらずの様ね、麗羽。」

 

「おーっほっほっほ! あーら、華琳さん。高い所から失礼しますわー! おーっほっほっほ!」

 

「まったく、笑うだけしか脳が無いのかしら? 随分と毛並みも悪くなっているようだし、もう年ではなくて?」

 

「なぁんですってぇ! 誰が目尻の小じわの目立ってきたオバハンですってぇ!」

 

「流石にそこまでは言っていないわよ………。」

 

「だまらっしゃい! たかが宦官の孫の分際で生意気ですわよっ! 良いですわ! ここであなたを叩き潰して、この櫓の上からそのクルクル髪を吊るしてあげますわ! もうクルクルには戻らないのでしょうね! おーっほっほっほ!」

 

「残念。その前にあなたを打ち倒して、河北四州と袁術の領土、まるごと頂くことにするわ。だから………そんな光景が見られるのは、あなたの歪んだ妄想の中だけでしょうね。さっさと南皮を明け渡しなさいな。」

 

「ふん! 今のうちにせいぜい喚いていなさいな! 猪々子さん、斗詩さん! 櫓を用意! 弓兵に一斉射撃を命じなさいっ!」

 

 

そう言って袁紹は自軍に控える顔良、文醜に命令を下す。

が、それを聞いた曹操は慌てるどころか、口の端を吊り上げる。

 

 

「あら残念。撃ち方なら、こちらの方が………。」

 

 

そう言って手を前方に大きく振る曹操。

 

すると、曹操軍後方から何かが袁紹軍の櫓に向かって飛来する。

 

 

「………へ?」

 

 

ズガァーン! と大きな音を立てて飛んできたのは、巨大な石。

岩と言っても差し支えないだろう大きさである。それが見事命中し、袁紹自慢の櫓が破壊される。

 

 

「………少し早かったようね?」

 

 

口の端を吊り上げたまま、得意げな表情を見せる曹操。

まだ事態の把握が出来ていない袁紹は、口を開けたまま呆けている。

 

その間にも、岩が袁紹軍の櫓へと飛来してはそれを破壊していく。

 

 

「残念。自慢の櫓は役立たずの様ね?」

 

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬ………! なら、この決着は正面から付けさせていただきますわっ!」

 

「えぇ。あなたにそれが出来るかしら?」

 

「こっんの、クルクル小娘がっ! 今に見てなさい!」

 

 

そう互いに言葉を残し、自軍へと引き上げていく2人だった。

 

 

 

 

──────────。

 

 

 

 

「華琳さま、お疲れ様でした。」

 

「桂花、あとで真桜には褒美をしっかり与えておくように。あの投石機は大したものだわ。」

 

「承知いたしました。」

 

 

自陣に戻った曹操は、早速秘密兵器である投石機の効果を讃え、李典への褒美を約束する。

そして、いよいよ開戦が差し迫る。

 

 

 

 

「皆、これからが本番よ! 向こうの数は圧倒的。けれど、向こうは連携も取れない、黄巾と同じ烏合の衆よ! 血と涙に彩られたあの調練を思い出しなさい! あの団結、あの連携をもってすれば、この程度の相手に負ける理由などありはしない! それが大言壮語ではないことは、この曹孟徳が保証してあげましょう!」

 

 

 

「総員、突撃!!」

 

 

 

今、官渡の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 




前書きにも書きましたが、一昨日大変失礼しました。
投稿予定だった分です。
いよいよ官渡の戦い、開戦!!
次話は本日20時投稿予定。珍しく、戦いの描写を少しだけ。


Twitterやってます。気軽にフォローしてくださいまし。
@blue_greeeeeen
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。